平成21年7月25日 天候曇り時々雨
鹿の食害でお花畑が壊滅的な状況にある仙丈ヶ岳。そしてかつては南アルプスでは大仙丈沢特産種だったタカネキマダラセセリ(北アルプスにもいる)は乱獲によって数が激減し、絶滅の危機に瀕している。あるいは、もう絶滅しているかも・・・。以前から調査に行こうと話があがっていたのだが、なかなか機会に恵まれなかったのだが、ようやく今回、花と虫の師匠、虫林花山(ハンドルネーム)師匠とともに大仙丈沢に入ることができた。
芦安駐車場4時45分待ち合わせしたが、途中で携帯電話を自宅に置き忘れてきたことに気付く。取りに行く時間はないのでそのまま駐車場に行くと、虫林師匠は既に到着して待っていた。5時10分の朝一番のバスがあるのだが、今回はバスではなく、両俣小屋に行く林道工事関係者を偶然知っていたので、大仙丈沢入り口まで乗せていっていただくことにした。おかげで6時過ぎにはもう大仙丈沢入り口に到着することができた。
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堰堤の脇を通り抜けて大仙丈沢に入る
さて、人の入ることが少ないこの沢はいったいどういう状態になっているのだろうか。ワクワクしながら堰堤の横を通り抜けて沢に入る。10分ほど歩いて対岸に徒渉するのだが、連日の雨で水かさが増しており、沢の中を渡るのはかなり難しそうだ。ちょうど良い具合に大きな木が橋のように川をまたいで倒れていたので、その上を歩いて対岸に渡った。落ちたらまず骨折は免れないだろうという高さ、かつ、どこまで流されるかわからない危険な丸太渡りだ。対岸は緩い傾斜の草付と石のゴロゴロした河原が上部に向かって延びている。ところどころ道らしきものもあり、歩くにはほとんど支障がない。草の中に濃いピンク色が鮮やかなハクサンフウロがちらほら咲いている。途中で小雨が降ってきたので林の中に逃げ込み、雨宿りするが、その林の中には明らかな道がついていた。しかし、その道も途中のガレた沢のところで崩れ、その先はやがて消失してしまっていた。あとは適当に歩きやすい場所を歩く。
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対岸に渡る.大仙丈沢下部の風景.荒れた沢のように見える.
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テント設営に敵地な草付の広場がある.前を歩くのは虫林師匠.
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Snow bridge
2時間ほど歩いたところに二重橋のスノーブリッジが形成されていた。立ってくぐれるほどの大きなブリッジだが、下は川が勢い良く流れていて、くぐるのは止めた。そのスノーブリッジを越えたあたりから、目を見張るようなお花畑が広がっていた。まずはタカネコウリンカ群落。甲斐駒ケ岳に登る途中で数株咲いているのを見た他はあまりお目にかかったことはなかったのだが、ここはいったい何なのか。雑草が生える如く、足元は咲き始めたタカネコウリンカの大群落が広がる。踏んで進まなければ登って行けないのが申し訳ない。さらに菜の花畑にでもいるかのような錯覚に陥るヤマガラシ大群落。一面が黄色いお花畑だ。沢筋が細くなり、傾斜がきつくなってきたところで右手の草付に取り付いて登って行くと、今度は山の斜面一面に広がるマルバタケブキ大群落だ。こんな凄い群落は見たことがない。花はまだ咲き始めたばかりだったが、これが一面に咲いたときはいったいどんな凄い景色になるのだろう。鹿の食害でバイケイソウとトリカブトしか残っていないのではと、全く期待していなかったこの大仙丈沢に、これほどの花・花・花の群落があるとは、感激・感動した。
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タカネコウリンカ群落.雑草の如くたくさん咲く.踏むのが申し訳ない.
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タカネコウリンカの花
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マルバタケブキ大群落.カメラに収まったのは群落の半分ほど.こんな大群落見たことがない.
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ヤマガラシの群落.菜の花畑に迷い込んだようだ.
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マルバタケブキ群落2.花が咲き始めている場所もあった.
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タカネコウリンカ群落2.この花も咲き始めている場所があった.圧倒される花の量だ.
まだ森林限界は超えていないので、おそらくは標高2500mあたりの場所ではないかと推定される。ここで時間は午後11時。食事をとってそろそろ下山にとりかかるのだが、次第に雨足が強くなりはじめ、カッパを着る。下山して行くと、途中で土砂降りになってしまい、沢の水の勢いがどんどん強くなって行くのが見える。これはまずい。丸太橋はおそらく雨に濡れてツルツル、渡り返すのは危険だろう。かといって下部で沢は渡れない、ならば・・・対岸に道があるかどうかわからないのだが、スノーブリッジを越えた少し下で、まだ水量の少ないあたりで対岸に渡る策をとる。膝まで水は来ないが、靴はずぶ濡れで徒渉に成功した。対岸は幸運にも林の中に道があったのだが、ところどころで崩落しており、そういう場所は上を巻いて通過した。そのうち道は全く無くなってしまい、谷の横の急斜面をスリップに注意して木や岩につかまりながら慎重に通過する。そして右手から流れ落ちて来る支脈の沢を数本乗り越して、ようやく丸太橋のかかる場所までたどり着いた。
こんな状況の中でも虫林師匠は虫や草花の観察をおこたらない。カミキリムシやカメムシ、さらにタカネキマダラセセリの食草がこちら側の斜面のほうが圧倒的に多いことをチェックしていた。さすがは虫屋さんだ。私は斜面で2度ほどスリップして右肘にあざを造っていたが、虫林師匠は私よりも遥かに多くスリップしていた・・・しかし、無傷(だと思う)。
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ベニヒカゲ.これも高山蝶のひとつ.この日に出会った蝶はこの一頭だけだった.
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虫林花林師匠とスノー・ブリッジの前で記念撮影.この後の下山が大変でした.
天候不良だったために残念ながらお目当ての蝶を見ることはできなかったのだが、食草が残っていること、そして花がたくさん咲いていること、その花の中にはミヤマハタザオという私があこがれる蝶の食草が混じっていることを確認してきた。来年はテント泊で、天気の良い日にじっくりと蝶が飛んでくるのを待ってみたい。
鹿の食害でお花畑が壊滅的な状況にある仙丈ヶ岳。そしてかつては南アルプスでは大仙丈沢特産種だったタカネキマダラセセリ(北アルプスにもいる)は乱獲によって数が激減し、絶滅の危機に瀕している。あるいは、もう絶滅しているかも・・・。以前から調査に行こうと話があがっていたのだが、なかなか機会に恵まれなかったのだが、ようやく今回、花と虫の師匠、虫林花山(ハンドルネーム)師匠とともに大仙丈沢に入ることができた。
芦安駐車場4時45分待ち合わせしたが、途中で携帯電話を自宅に置き忘れてきたことに気付く。取りに行く時間はないのでそのまま駐車場に行くと、虫林師匠は既に到着して待っていた。5時10分の朝一番のバスがあるのだが、今回はバスではなく、両俣小屋に行く林道工事関係者を偶然知っていたので、大仙丈沢入り口まで乗せていっていただくことにした。おかげで6時過ぎにはもう大仙丈沢入り口に到着することができた。
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堰堤の脇を通り抜けて大仙丈沢に入る
さて、人の入ることが少ないこの沢はいったいどういう状態になっているのだろうか。ワクワクしながら堰堤の横を通り抜けて沢に入る。10分ほど歩いて対岸に徒渉するのだが、連日の雨で水かさが増しており、沢の中を渡るのはかなり難しそうだ。ちょうど良い具合に大きな木が橋のように川をまたいで倒れていたので、その上を歩いて対岸に渡った。落ちたらまず骨折は免れないだろうという高さ、かつ、どこまで流されるかわからない危険な丸太渡りだ。対岸は緩い傾斜の草付と石のゴロゴロした河原が上部に向かって延びている。ところどころ道らしきものもあり、歩くにはほとんど支障がない。草の中に濃いピンク色が鮮やかなハクサンフウロがちらほら咲いている。途中で小雨が降ってきたので林の中に逃げ込み、雨宿りするが、その林の中には明らかな道がついていた。しかし、その道も途中のガレた沢のところで崩れ、その先はやがて消失してしまっていた。あとは適当に歩きやすい場所を歩く。
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対岸に渡る.大仙丈沢下部の風景.荒れた沢のように見える.
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テント設営に敵地な草付の広場がある.前を歩くのは虫林師匠.
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Snow bridge
2時間ほど歩いたところに二重橋のスノーブリッジが形成されていた。立ってくぐれるほどの大きなブリッジだが、下は川が勢い良く流れていて、くぐるのは止めた。そのスノーブリッジを越えたあたりから、目を見張るようなお花畑が広がっていた。まずはタカネコウリンカ群落。甲斐駒ケ岳に登る途中で数株咲いているのを見た他はあまりお目にかかったことはなかったのだが、ここはいったい何なのか。雑草が生える如く、足元は咲き始めたタカネコウリンカの大群落が広がる。踏んで進まなければ登って行けないのが申し訳ない。さらに菜の花畑にでもいるかのような錯覚に陥るヤマガラシ大群落。一面が黄色いお花畑だ。沢筋が細くなり、傾斜がきつくなってきたところで右手の草付に取り付いて登って行くと、今度は山の斜面一面に広がるマルバタケブキ大群落だ。こんな凄い群落は見たことがない。花はまだ咲き始めたばかりだったが、これが一面に咲いたときはいったいどんな凄い景色になるのだろう。鹿の食害でバイケイソウとトリカブトしか残っていないのではと、全く期待していなかったこの大仙丈沢に、これほどの花・花・花の群落があるとは、感激・感動した。
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タカネコウリンカ群落.雑草の如くたくさん咲く.踏むのが申し訳ない.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/d5/1832e45d0b4941541cea72ecc03e78d4.jpg)
タカネコウリンカの花
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マルバタケブキ大群落.カメラに収まったのは群落の半分ほど.こんな大群落見たことがない.
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ヤマガラシの群落.菜の花畑に迷い込んだようだ.
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マルバタケブキ群落2.花が咲き始めている場所もあった.
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タカネコウリンカ群落2.この花も咲き始めている場所があった.圧倒される花の量だ.
まだ森林限界は超えていないので、おそらくは標高2500mあたりの場所ではないかと推定される。ここで時間は午後11時。食事をとってそろそろ下山にとりかかるのだが、次第に雨足が強くなりはじめ、カッパを着る。下山して行くと、途中で土砂降りになってしまい、沢の水の勢いがどんどん強くなって行くのが見える。これはまずい。丸太橋はおそらく雨に濡れてツルツル、渡り返すのは危険だろう。かといって下部で沢は渡れない、ならば・・・対岸に道があるかどうかわからないのだが、スノーブリッジを越えた少し下で、まだ水量の少ないあたりで対岸に渡る策をとる。膝まで水は来ないが、靴はずぶ濡れで徒渉に成功した。対岸は幸運にも林の中に道があったのだが、ところどころで崩落しており、そういう場所は上を巻いて通過した。そのうち道は全く無くなってしまい、谷の横の急斜面をスリップに注意して木や岩につかまりながら慎重に通過する。そして右手から流れ落ちて来る支脈の沢を数本乗り越して、ようやく丸太橋のかかる場所までたどり着いた。
こんな状況の中でも虫林師匠は虫や草花の観察をおこたらない。カミキリムシやカメムシ、さらにタカネキマダラセセリの食草がこちら側の斜面のほうが圧倒的に多いことをチェックしていた。さすがは虫屋さんだ。私は斜面で2度ほどスリップして右肘にあざを造っていたが、虫林師匠は私よりも遥かに多くスリップしていた・・・しかし、無傷(だと思う)。
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ベニヒカゲ.これも高山蝶のひとつ.この日に出会った蝶はこの一頭だけだった.
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虫林花林師匠とスノー・ブリッジの前で記念撮影.この後の下山が大変でした.
天候不良だったために残念ながらお目当ての蝶を見ることはできなかったのだが、食草が残っていること、そして花がたくさん咲いていること、その花の中にはミヤマハタザオという私があこがれる蝶の食草が混じっていることを確認してきた。来年はテント泊で、天気の良い日にじっくりと蝶が飛んでくるのを待ってみたい。