山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

厳冬の雨ヶ岳一夜(後編)  平成24年2月4-5日

2012年02月20日 | 御坂・毛無・天子山系
 平成24年2月5日(2日目)

 冬の山で一夜を過ごすためには不可欠な燃料が夕暮れを過ぎた午後7時で尽きてしまい、替え燃料を持って行くのを忘れてしまった。このピンチをシュラフ2枚にシュラフカバーを掛けた3重の装備で夜を過ごすことにした。-15℃までは十分に耐えられるはずだ。幸運にも雪を溶かさずとも十分な量の水を持ってきており、火力を必要としないパンや行動食は十分にあった。さらに、幸運にも風があまり吹かなかったので体感温度はさほど寒くはなかった。

    富士に昇る春の大三角形  月が明るすぎて星の写りはいまひとつ。


    星空の解説。土星と火星があり、そちらのほうが春の大三角形よりも明るい。

 夜9時、一旦寝て、次は春の大三角形が富士山の上に昇ってくる未明1時過ぎに起きる。そしてまた寝て次はさそり座が昇って来る3時半に起きる。(ほとんど寝た気がしない。)そのままシュラフとカメラを行ったり来たりで夜明けを迎えてしまう。さそり座は計算した通りの位置に昇って来た。その尻尾のところから伸びる天の川が富士山の上で弧を描くような構図、Milky Way Bowが今回の狙いだったのだが、若干時期が早く、天の川は朝焼けの明かりの中に消えてしまい、写らなかった。

    昇りはじめたさそり座  富士の右側にさそり座の胴体あたりまでが昇っている。


    薄明の空に昇るさそり座  天の川は朝焼けの中に消えてしまう。


    黎明の富士

 ダイヤモンド富士にはならなかったが、山上の夜明けは美しい。赤く染まる水平線、蒼く染まる空、夜明けとともに次第に消えて行く星々、そして日の出。この時ばかりは寒さを忘れて東の空を眺めていた。夜明けとともに富士山には雲が巻き始め、雲の上のダイヤモンドのような富士山を見ることができた。

    日の出直前の富士


    富士山から昇る朝日  1週間遅れでダイヤにはならない。


    山頂の木を入れてダイヤモンドな富士


    雲霞の上のダイヤモンドな富士


    同上


    あっという間に雲が湧きはじめ、下山開始後は完全に雲の中に隠れてしまう。

 思ったほど寒さを感じることなく一夜を過ごせた。朝食はパンとシリアルバーで済ませてテントを撤収、8時半に下山開始する。登りよりも下りのほうがスリップしそうで気を使う。順調に下山し、10時25分、車を止めた広場に到着した。車のフロントガラスには氷がびっしりと張り付いていた。

    フロントガラスに張った氷

 雲海に昇るダイヤモンド富士はそれらしきものは撮影したものの、今回もおあずけとなる。いつかきっと・・・。
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厳冬の雨ヶ岳一夜(前編)  平成24年2月4-5日

2012年02月20日 | 御坂・毛無・天子山系
 平成24年2月4日

 予定では前週の1月28日に山頂で朝を迎え、ダイヤモンド富士を撮影して下山するはずだった。ところが・・・朝地震が2回、しかも震源地は富士山に近い位置。もっと凄い揺れが来るかも知れないと思うと、登る気にはなれなかった。1週間遅れて、ダイヤモンド富士にはならないが、薄明に昇ってくるさそり座と天の川を見たいのもあって、行ってみることにした。

    端足峠への本栖湖側登山口  雪が積もるが、踏み跡は明瞭。

 静岡側の根原から登ったほうが道はわかりやすいが、今回は本栖側から登る。距離が短かく、地図上からは早く登れそうに見える。竜ヶ岳登山口のある青少年スポーツセンター側の道路は冬期閉鎖されているため、本栖湖北側の道を回り込んで端足峠登山口に向かう。ゲート手前の広場は積雪15cmほどあり、ここに車を止めて12時45分に出発。ちょうど下山してきた2人連れがいたのでコース状況を聞くと、ずっと雪が積もっているそうだ。端足峠中腹で軽アイゼンを装着、峠には午後2時半に到着した。その際に、ヘッドライトを持ってくるのを忘れたのに気付くが、懐中電灯にもなるLEDランタンを持っていたのでこれで間に合わせることにする。

    端足峠登山道の中腹から見上げる雨ヶ岳。すぐそこに見えるが、峠からの登りがきつい。


    端足峠から見る富士山  峠から朝霧高原側の根原に行く道も踏み跡明瞭。


    端足峠から見る本栖湖と竜ヶ岳。10mm広角レンズだとここまで収まる。

 ここからが雨ヶ岳への急登となる。毛無山塊らしい急登が1時間以上も続く。日没が迫る4時過ぎ、ようやく富士山の眺望が効く山頂直下の草地に出た。眼下の朝霧高原には毛無山塊の影が伸び始めていた。その先も急登が続き、4時45分、ようやく山頂に到着した。

    雨ヶ岳への急登。1時間半ほどひたすら登る。


    山頂直下の草地(笹原)から見る朝霧高原と富士山  夕暮れが迫る。

 テントを張る前に撮影場所の確保のために笹原の雪を踏んで足場を固め、三脚を出して夕暮れの富士を撮る。日没を過ぎて薄暗くなったところでテント撮影、バーナーを炊いて暖をとりながら撮影を繰り返す。

    雨ヶ岳山頂と夕暮れの富士


    月昇る夕暮れの富士


    Earth Shadowの富士

 午後7時、月が富士山頂まで昇ったあたりで夕食をとると、間もなく燃料が無くなってしまった。もう1個の燃料に変えようとザックの中を探るが・・・なんと、替え燃料が入っていないではないか。いつもザックに入れっぱなしにしてあるのだが、この日はシュラフを入れ直す際に一旦取り出し、そのまま入れ忘れてきてしまったらしい。気温は軽く-10℃を下回る。暖をとらずに星空の撮影を行うことは相当厳しい。月明かりを使って下山することも考えたが、折角重い荷物を背負ってここまで来た意味がない。持ってきた替え下着、ももひき、靴下など全て着込み、シュラフ2枚とシュラフカバーを掛けてその中に潜り込んでみるとなんとか耐えられそうだ。ただし、外で撮影に時間をかけすぎて手足が冷えてしまうと暖める術が無く、凍傷になりかねない。そこで、レリースタイマーをセットして、構図を決めたらタイマーを使ってオートで繰り返し撮影し、その間はシュラフに潜り込んで体を冷やさないようにするという方法でその夜を過ごすことにした。

    冬の大三角形昇る富士  画像上のあかるいところは月。


    富士に昇る月とオリオン座  明るすぎる十三夜の月だが、空気が澄んだ山の上では星も写る。

 これで朝まで持つのだろうか?(後編に続く)
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