山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

富士山麓の森 その後  平成25年6月24日

2013年06月25日 | 番外編
 コアツモリソウの咲く富士山麓の森、気になっている花があり、そろそろ咲く頃ではないかと出かけてみた。気になっているのは花だけではなくて、その先の林道がどこまで続いているのか、そしてその先にも貴重な花があるのかどうか、調べてみたいと思っていた。

 前日の23日、山梨県北西部の某所に花を探しに出かけたのだが、地図を忘れ林道に入るだけでかなりの時間を費やし、さらに取り付き口を探しているうちに林道を抜け出てしまうという大失敗。前年に山上の稜線から見た感じでは草むらの中に車道らしきものが見えたと思ったのだが、その林道沿いにはそれらしき道は無かった。結局は全く山に登ること無く帰って来ることとなり、かなり悔しい思いが残っていた。今日こそはどこかに行かないと腹の虫がおさまらないという感じだった。

 林道脇の広場に車を止めて歩く。花見隊メンバーを楽しませてくれたスズムシソウはもう散っている。コアツモリソウの森はちょっとだけ確認に入ってみると、大部分終わっているがまだ残っている花もあった。そして目的の一つ、まだ咲いていなかったクモキリソウ属の花は・・・OH MY GOD!! 先が食いちぎられている。


    スズムシソウは終焉。昨年杓子山で発見したのはこの状態だった。


    コアツモリソウは手前の花は終わっているが向こう側はまだ咲いている。


    クモキリソウ属の花は・・・せっかく咲いたのに先が食いちぎられている。鹿の仕業だろう。


    一輪だけ残っている花を見ると、予想通りこれはクモキリソウ。初めて見る花です。


    近くにあと2株残っており、無事に咲いて欲しいものです。

 この先の林道はまだ歩いていないのでどこまで行けるのか行ってみる。途中、鹿の踏み跡がたくさんあり、それを辿って森の中に入ってみたが目ぼしい花は発見できなかった。20分ほど歩くと林道は終点になっており、その先は獣道らしき籔道になっていた。それを登って行くと堰堤が3つか4つほどあり、この林道はこの堰堤工事のために作られたものらしい。最後の堰堤から先はかなりの急斜面だが、その先に尾根らしきものが見えるので、登りやすそうな左側の斜面に取り付いて登ると、もう少しで尾根に取り付けそうなところで道らしきものを発見。ところがこれも鹿の踏み跡で、その先の草むらで道は消失していた。この草地はかなり食害がひどく、草の上部はほとんど食いつくされている。陽の当たり易い草地のところまで行ってみると、そこには見たことが無い葉が出ていた。これは・・・!!

    林道終点。この先に堰堤がある。道無き堰堤の脇を強行突破。


    もうすぐ尾根に取り着くというところで道らしきもの発見。ところがこれは鹿の踏み跡。この先の草地で道は消失。


    草地は鹿の食害がひどく、ほとんど食い荒らされている。


    そんな中で奇妙な葉を発見。これは・・・!


    葉は3枚あったが茎は出ていない。今年は咲かなかったか、咲く前に食われたかもしれない。これはクマガイソウの葉。

 その先、稜線に取り付いて上に登り着くとまともな道があった。それを下って元の林道に戻ったが湿った斜面で見事にスリップ転倒し、服もカメラも泥だらけになってしまった。しかし、籔を歩いても何も発見できないことが多い中にあって、今回の葉っぱだけでも発見できたことは大収穫、満足だった。また来年の楽しみが増えた。が、もう一度行けと言われても行けるかどうか??


    こいつはいつになったら咲くのだろう?茎はだいぶ伸びてきた。

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植生の再生はいかに? 櫛形山  平成25年6月22日

2013年06月25日 | 山梨百名山
 櫛形山のアヤメ祭が行われなくなってからもう7年ほど経つだろうか。かつては一面にアヤメが咲き誇ったアヤメ平と裸山だったが、今は柵の中にわずかに残っているだけでほとんど消滅してしまったと聞く。この山は私が登山を始めるきっかけとなったクモマツマキチョウという稀少な蝶がかつて生息していた山だが、植生の変化と乱獲にあい、おそらくは絶滅してしまっている。そして、ホテイアツモリは盗掘によって無くなってしまい、キバナノアツモリソウはアヤメと草むらが消失して土地の保水力が無くなったために枯れて絶えてしまった。さらに、森の中の登山道脇に咲いていたコケイランや、腐生植物のヒメムヨウラン、サカネランなども見られなくなったと聞く。ここ10年ほどでこれほどの変化があった山は少ないであろう。全てが鹿の食害とは言い切れないとは思うが、数年前にアヤメ平全体を保護柵で囲み、鹿の食害から保護する取り組みがなされ、少しずつ植生が戻りつつあるというニュースをローカルテレビで見た。果たしてどれほど戻っているものなのか?そして私を山に導いたあの蝶はまだ飛べる環境にあるのだろうか?

 アヤメ平に直登する北尾根から登り、裸山、山頂を経て中尾根を下り、林道を歩いて戻るという周回ルートを巡ることにした。天候は曇りだが、登り始めの10時ごろにはまだ富士山が見えていた。展望台から登る北尾根ルートは、まだ登山にのめり込んでいない頃に興味本位でアヤメ平まで行ったことがあり、その頃は登山靴を持っておらず、靴底が暑いスノーシューズで歩いた記憶がある。アヤメ平までの道のりが果てしなく遠く感じ、何度も引き返そうと思いながらもようやくたどり着いた。そしてその年2度目に登った時にあのクモマツマキチョウと運命的な出会いをしたのだった。しかし、その後はもうあの蝶とは出会っていない。

    展望台からの眺め。左が金峰山・奥秩父山塊、右が大菩薩連山。


    階段道を行く。どんより曇り空でシャッタースピード遅く、1日中撮影に苦労した。しかも担いで行った新しい三脚は故障して使用不能。


    樹木見本林のような看板がつけられている。


    森に入れば足元にギンリョウソウ


    ピンボケ&まだ蕾だが、この葉っぱはおそらくツバメオモト。かつてはカモメランが咲いていたそうだが、発見できず。


    イチヤクソウだが、蕾が紅色がかっており、おそらくはベニバナイチヤクソウ。


    クサタチバナがたくさん咲く。そしてバイケイソウもたくさん。


    思い出すのはこの階段。初めて来た時にこの階段を見て引き返そうと思ったのだが、ここからは10分に一度の休憩を入れてヘトヘトでアヤメ平までたどり着いた。


    鹿の食害と思われるシダ類を食べた痕跡。


    アヤメ平到着。相変わらずサルオガゼが出迎えてくれる。


    柵の張られたアヤメ平

 森の中や草むらの中を捜索しながら2時間かかってアヤメ平に到着した。柵の手前にある草むらの中を歩いてみたが、そこは鹿の糞だらけで、すっかり鹿たちのサロン場と化しているようだった。目ぼしい花は見つからない。柵の扉を開けて中に入ると、以前とはずいぶん違った景色が広がっていた。地面を覆いつくしていた草がほとんど無くなっており、まるで放牧地のようだ。アヤメは全く見当たらない。

    放牧地のような草むらに変わってしまったアヤメ平。キンポウゲはかなり咲いている。


    探していたもののひとつがこれ、クモマツマキチョウの食草ミヤマハタザオ。結構あるが、陽が当たり過ぎて幼虫がひからびてしまいそうだ。クモマツマキチョウは3年がかりで羽化する蝶。


    シダや草がもっと生い茂っていた記憶がある。

 アヤメ平避難小屋の前で昼食をとるが、マジックライスが出来上がる15分間の間にその先の様子をうかがいに、カメラだけ持って散策に行ってみる。こちらも同様に牧草地のような草むら、しかし、キンポウゲはたくさん咲いている。そして、以前から植生保護のために柵が張られていた場所を見ると、その中は以前と同じように草がたくさん生い茂っていた。やはり、鹿の食害によって植生が変わってしまったと考えて良いのだろう。今となっては遅いが、あの稀少なキバナノアツモリソウもこのような柵で覆っていてくれたら、あるいはアヤメが減少してきたもっと早い段階でアヤメ平全体を柵で囲んでいてくれたら、と嘆くばかりである。

    キンポウゲはたくさん咲いている。


    手前が柵に囲まれていない場所、向こうが柵に囲まれていた場所。植生の違いは明らか。


    こちらが柵の外


    こちらが柵の中。かつてのアヤメ平はこんな野草が生い茂っていた場所で、この野草の中にキバナノアツモリソウが身を隠すようにひっそりと咲いていた。

 食事後、今度は双眼鏡を片手に蝶を探す。クモマツマキチョウはモンシロチョウやスジグロシロチョウよりもひとまわり小さく、脆弱な翅で桜の花びらが舞うように飛ぶので、遠くから見ても比較的容易に判別することができる。それらしい飛び方をする1頭を見かけたので追いかけて双眼鏡で確認するが・・・残念ながら小型のスジグロシロチョウだった。その他にはそれらしいものは飛んでいない。1時間半ほどアヤメ平で時間を費やしたが、とうとう姿は見られなかった。次の目的地、裸山に向かう。

 裸山もかつてはアヤメで山が紫色になるほどたくさん咲いた場所だが、私が初めて訪れた8年前にはもうすでにだいぶ少なくなっていた。こちらも保護柵で囲まれており、柵の中は一面のキンポウゲお花畑になっていた。アヤメが再生するかどうかは難しいが、このような花が増えることによって地面の保湿力が改善し、植生が蘇って来る可能性は高い。今後に期待したい。

    裸山。保護柵でお花畑が守られている。


    保護柵の中は一面のキンポウゲお花畑。


    キンポウゲお花畑


    隅のほうにアヤメが少々。


    裸山山頂。櫛形山越しに富士山が見えるはずだが、この日は雲隠れ。

 小休憩後、今度は櫛形山山頂に向かう。ここから先は天然のカラマツ巨木が立ち並ぶ櫛形山の見事な原生林になる。

    山梨の森百選、櫛形山の天然カラマツ原生林


    山頂付近の天然カラマツ


    櫛形山山頂。ここを踏むのは2度目。

 櫛形山山頂に到着したのは午後2時50分。空はますます暗い雲で覆われるようになり、今にも雨が降り出しそうだ。休憩せずに下山を始める。ほこら小屋を経由して中尾根を林道に下山する。森の中は薄暗く、花が探しにくかったことがあるが、目ぼしい花は見つからず、期待していたコケイランは発見できなかった。ほこら小屋まで下りるとこのあたりは空が明るく、雨は大丈夫そうだ。小屋の前でゆっくり休憩して、林道まで下りる。

    きれいなほこら小屋。中もきれいに清掃されている。


    ほこら小屋前の草地。かつてはここも草繁く、キンポウゲがたくさん咲いていた記憶がある。


    林道に下りる。あとは45分ほど林道を歩いて展望台の駐車場へ。


    林道脇に咲いたヤグルマソウ


    キツリフネが1本


    展望台の近くの林道から雲のかかった富士山が見えた。


 かつては花の宝庫だった櫛形山はすっかり変わってしまい、現在は植生再生に向けての取り組みがなされている最中である。元通りに戻るとは今の状況では考えにくいが、今後に期待したい。対処が遅れたのが残念であるが、これはこの山に限ったことではない。茅ヶ岳のオキナグサも同様に鹿の食害で絶滅の危機に瀕している。地元の知人の話では、かつては金ヶ岳側のガレ地にも咲いていたのだそうだが現在では消滅してしまっている。山梨県庁に報告したが予算が無くて対処できないとの返事だった。櫛形山のアヤメのようにならないように、なんとか対処を考えて行きたい。
コメント (2)
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