先日下見に行った新道峠の西側にある中藤山(なかっとうやま)。黒岳では確認できなかったあの星が、少し西側に位置するこの山からならば見えるかもしれない。富士山西側の裾野ギリギリの低空におそらくは姿を現すはずだ。撮影場所は下見して確認してあるので、あとは自分の目とカメラで確かめるだけだ。
空気が澄んで星が輝いたこの日、嶺朋クラブの忘年会が行われたが9時前には閉会となった。一旦は自宅に帰ったがあまりにも美しい星空、西に傾いている月齢8の月を見て、あの星を見に行きたくなった。来週になると明るい月が夜半に空を照らすため、星は観察しにくくなってしまい、12月下旬までは星の観察には不向きとなってしまう。この日ならば・・・月が沈んだ後にオリオン座と冬の大三角形が南中し、あの星を見るには好条件となる。準備して深夜11時半に自宅を出発し、新道峠に向かう。林道の途中ですれ違った車のドライバーに新道峠はもう人がいっぱいで入れないと告げられた。今宵はそちらでは無いので大丈夫と思うのだが、車が止められるかどうか?運良く駐車場の車が1台帰ったばかりだったので、正規の駐車場に止めることができた。午後1時、テント装備と準冬山装備をザックの中に入れて出発。計算では午後2時頃にあの星が見え始めるはずだ。

カラマツ林に昇ったオリオン座と冬の大三角形 中藤山手前で撮影。

同上(縦位置)

同上解説図

別の場所からのカット

同上
予定通りの午後2時に中藤山山頂に到着した。撮影適地は山頂からもう少し先に行った岩の上だ。見ると、ヘッドライトの明りが点っている。ここならば誰もいないだろうと思っていたが、先客がいたようだ。その場所まで行ってみると、重さ4kgほどはありそうな大きな三脚2本に大型カメラを2台セットして富士山を撮影している若者が一人いた。撮影場所は踏み外すとその先は崖なので、ザイルで体を固定して撮影に臨んでいた。脇に入れさせてもらって私も撮影を開始する。夜景と夜明けの富士山を撮影に来たそうだが、星のことはあまり詳しくないようで、たぶん南の低空に一目見れば長生きできるという伝説の星が昇って来るはずだという話をしながら、その星が現れるのを待つ。

河口湖の夜景と富士の星空 富士山の上に輝くのがおおいぬ座シリウス、その左にうっすらと立ちあがる帯が冬の天の川。

まだお目当ての星は現れない。中央部上の赤い線は他のカットには写っていないことから、小さな流星らしい。

富士山の右、雪の境目あたりに赤い星が現れた。お目当ての星かと思ったが高度が高過ぎる。
待つこと20分ほど、富士山右側の雪の境目あたりに赤い星が見え始めた。これだ!と思ったのだが、富士山5合目と同じくらいの高さにあり、標高2400mほどの位置から現れている。現在地の高度が1650mくらいで、あの星は水平線から1度か2度くらいしか上がってこないはず。なので、この星は違うということになる。引き続きシャッターを切りつつモニターで確かめていると、午前2時25分過ぎ、遂に明るい星が富士山の裾野に姿を現した。

撮影中は気付かなかったが、富士山の右裾野に明るい星が姿を現している。

同上トリーミング

遂に姿を現したあの星、南極老人星カノープス。

同上解説図

同上トリーミング

河口湖の明りとおおいぬ座、そしてカノープス。

別カットのトリーミング。富士山の裾野を転がるように移動して行く。

空気の澄んだ夜ならば町灯りを入れてもこの程度は写ってくれる。白い帯は冬の天の川。
あの星とは、南の超低空、冬の大三角形の真下に出る星カノープスだ。日本からだと低空に現れるため3等星ほどの明るさになってしまうが、本来はシリウスに次いで明るい1等星だ。日本と緯度が同じくらいにある中国でもこの星はなかなか見ることが出来ず、一目見ることができれば長生きできるという伝説があり、「南極老人星」と呼ばれている。カメラで捉えることができても肉眼では見えないことが多いが、この日は富士山の裾野を転がるように移動して行くこの星を肉眼で捉えることができた。満足な一夜だった。

河口湖に昇った木星

同上解説図

中藤山山頂からの夜富士
元気な若者はそのまま夜を徹して撮影していたが、体力が無く、南極老人性を見ても生活態度が悪くて長生きできなそうな私は中藤山山頂に移動してテント設営して一旦寝る。2時間ほどウトウトしたところで、日の出前の6時15分に起床して朝富士の撮影にとりかかる。

中藤山からの朝富士

同上

日の出

日の出と富士山

夜明けの富士山と河口湖

朝日射す富士山

朝日射すカラマツ林と十二ヶ岳・節刀ヶ岳

朝日射す紅葉の山裾と富士山

雲が巻き始めた富士山

中藤山からの富士山。この後テントに戻って爆睡。
河口湖の湖面に朝日が射しこむあたりまで撮影するが、次第に雲が増えて霞も多くなってきた。テントに戻って朝食をとって7時過ぎにまた寝る。今度は爆睡、目が醒めれば時刻は12時半だった。その頃には山の上はすっかり霧におおわれ、富士山は全く見えなくなっていた。テント撤収し、下山する。

すっかり霧に覆われた中藤山
黒岳、釈迦ヶ岳、中藤山界隈からだと、富士山はほぼ南側に位置するためにカノープスを観察することは難しい。おそらくは黒岳、新道峠からでは見えないだろうと思われる。釈迦ヶ岳ならばなんとか見えるかもしれない。三ツ峠ならば確実に見え、御坂山からもおそらくは見えると思われる。しかし、この2つの山からだと河口湖町や富士吉田市の町灯りが邪魔になってなかなか見えにくいという不利なところがある。新道峠から西側ではこの中藤山がギリギリの場所で、ここから西側にある大石峠、節刀ヶ岳、十二ヶ岳あたりでは条件さえ良ければ容易に観察できるだろう。甲武信ヶ岳山頂からだと富士山山頂を越えて輝くカノープスが観察できるが、その手前の山でいつか一夜を過ごしてみたいと以前から思っている山がある。鎖場が何ヶ所かある山なので雪が降ってからだと難しくなってしまう。年末年始、雪が降る前に行けるかどうか・・・検討中。
空気が澄んで星が輝いたこの日、嶺朋クラブの忘年会が行われたが9時前には閉会となった。一旦は自宅に帰ったがあまりにも美しい星空、西に傾いている月齢8の月を見て、あの星を見に行きたくなった。来週になると明るい月が夜半に空を照らすため、星は観察しにくくなってしまい、12月下旬までは星の観察には不向きとなってしまう。この日ならば・・・月が沈んだ後にオリオン座と冬の大三角形が南中し、あの星を見るには好条件となる。準備して深夜11時半に自宅を出発し、新道峠に向かう。林道の途中ですれ違った車のドライバーに新道峠はもう人がいっぱいで入れないと告げられた。今宵はそちらでは無いので大丈夫と思うのだが、車が止められるかどうか?運良く駐車場の車が1台帰ったばかりだったので、正規の駐車場に止めることができた。午後1時、テント装備と準冬山装備をザックの中に入れて出発。計算では午後2時頃にあの星が見え始めるはずだ。

カラマツ林に昇ったオリオン座と冬の大三角形 中藤山手前で撮影。

同上(縦位置)

同上解説図

別の場所からのカット

同上
予定通りの午後2時に中藤山山頂に到着した。撮影適地は山頂からもう少し先に行った岩の上だ。見ると、ヘッドライトの明りが点っている。ここならば誰もいないだろうと思っていたが、先客がいたようだ。その場所まで行ってみると、重さ4kgほどはありそうな大きな三脚2本に大型カメラを2台セットして富士山を撮影している若者が一人いた。撮影場所は踏み外すとその先は崖なので、ザイルで体を固定して撮影に臨んでいた。脇に入れさせてもらって私も撮影を開始する。夜景と夜明けの富士山を撮影に来たそうだが、星のことはあまり詳しくないようで、たぶん南の低空に一目見れば長生きできるという伝説の星が昇って来るはずだという話をしながら、その星が現れるのを待つ。

河口湖の夜景と富士の星空 富士山の上に輝くのがおおいぬ座シリウス、その左にうっすらと立ちあがる帯が冬の天の川。

まだお目当ての星は現れない。中央部上の赤い線は他のカットには写っていないことから、小さな流星らしい。

富士山の右、雪の境目あたりに赤い星が現れた。お目当ての星かと思ったが高度が高過ぎる。
待つこと20分ほど、富士山右側の雪の境目あたりに赤い星が見え始めた。これだ!と思ったのだが、富士山5合目と同じくらいの高さにあり、標高2400mほどの位置から現れている。現在地の高度が1650mくらいで、あの星は水平線から1度か2度くらいしか上がってこないはず。なので、この星は違うということになる。引き続きシャッターを切りつつモニターで確かめていると、午前2時25分過ぎ、遂に明るい星が富士山の裾野に姿を現した。

撮影中は気付かなかったが、富士山の右裾野に明るい星が姿を現している。

同上トリーミング

遂に姿を現したあの星、南極老人星カノープス。

同上解説図

同上トリーミング

河口湖の明りとおおいぬ座、そしてカノープス。

別カットのトリーミング。富士山の裾野を転がるように移動して行く。

空気の澄んだ夜ならば町灯りを入れてもこの程度は写ってくれる。白い帯は冬の天の川。
あの星とは、南の超低空、冬の大三角形の真下に出る星カノープスだ。日本からだと低空に現れるため3等星ほどの明るさになってしまうが、本来はシリウスに次いで明るい1等星だ。日本と緯度が同じくらいにある中国でもこの星はなかなか見ることが出来ず、一目見ることができれば長生きできるという伝説があり、「南極老人星」と呼ばれている。カメラで捉えることができても肉眼では見えないことが多いが、この日は富士山の裾野を転がるように移動して行くこの星を肉眼で捉えることができた。満足な一夜だった。

河口湖に昇った木星

同上解説図

中藤山山頂からの夜富士
元気な若者はそのまま夜を徹して撮影していたが、体力が無く、南極老人性を見ても生活態度が悪くて長生きできなそうな私は中藤山山頂に移動してテント設営して一旦寝る。2時間ほどウトウトしたところで、日の出前の6時15分に起床して朝富士の撮影にとりかかる。

中藤山からの朝富士

同上

日の出

日の出と富士山

夜明けの富士山と河口湖

朝日射す富士山

朝日射すカラマツ林と十二ヶ岳・節刀ヶ岳

朝日射す紅葉の山裾と富士山

雲が巻き始めた富士山

中藤山からの富士山。この後テントに戻って爆睡。
河口湖の湖面に朝日が射しこむあたりまで撮影するが、次第に雲が増えて霞も多くなってきた。テントに戻って朝食をとって7時過ぎにまた寝る。今度は爆睡、目が醒めれば時刻は12時半だった。その頃には山の上はすっかり霧におおわれ、富士山は全く見えなくなっていた。テント撤収し、下山する。

すっかり霧に覆われた中藤山
黒岳、釈迦ヶ岳、中藤山界隈からだと、富士山はほぼ南側に位置するためにカノープスを観察することは難しい。おそらくは黒岳、新道峠からでは見えないだろうと思われる。釈迦ヶ岳ならばなんとか見えるかもしれない。三ツ峠ならば確実に見え、御坂山からもおそらくは見えると思われる。しかし、この2つの山からだと河口湖町や富士吉田市の町灯りが邪魔になってなかなか見えにくいという不利なところがある。新道峠から西側ではこの中藤山がギリギリの場所で、ここから西側にある大石峠、節刀ヶ岳、十二ヶ岳あたりでは条件さえ良ければ容易に観察できるだろう。甲武信ヶ岳山頂からだと富士山山頂を越えて輝くカノープスが観察できるが、その手前の山でいつか一夜を過ごしてみたいと以前から思っている山がある。鎖場が何ヶ所かある山なので雪が降ってからだと難しくなってしまう。年末年始、雪が降る前に行けるかどうか・・・検討中。