昔、私は大学で工学の研究をしていました。したがって自衛隊の技術研究所のことも多少は知っていますし、自衛隊の士官から個人的に話を聞いたこともあります。
その結果、私は2つの点で自衛隊の人々へ深い同情を感じています。しかし誤解の無いように言いますが、「シビリアン・コントロールは厳守すべき!」です。
(1)自衛隊は警察の指揮下に入るという諸法律や規則。
自衛隊が国内で民間と直接まじわる災害援助の場合です。その出動は地方の自治体の長の要請がなければ出動していはいけないのです。そのうえ要請に基づいて出動した場合でも、全ての支援活動は警察の指揮下に入って行わなければなりません。
それから、自衛隊が国内を移動する場合は、一般の道路交通法に従わなければなりません。ブレーキランプが切れていたら、警察につかまり切符を切られます。
例えば、新潟海岸にある敵国の軍隊が上陸した場合、緊急移動の戦車が敵に見つからないようにヘッドライトを消して走っても道交法違反で捕まります。
どこの国でも現場の状況によって「交戦規定」が具体的に明快に決まっています。敵が上陸したら無灯火で私有地の畑や牧草地を踏み荒らして疾走しても良いと決まっています。ところが日本の自衛隊にはこれが無いのです。自衛隊の士気が上がらないのは当然です。したがって田母神氏のような感情論にもいささかの同情を禁じ得ないのです。
(2)自衛隊はアメリカ軍の指揮下で作戦行動をすることになる
この問題は日米の契約があっても無くてもこうなるという話です。それは日本の軍事技術は全てアメリカ軍から提供されているからです。技術というものを少しでも理解している方々にとっては賛成してもらえると思います。技術を提供している方とそれを受けとっている方は必然的に上下関係が出来てしまうのです。たとえば作戦を指令するコンピュータシステムをアメリカ軍が開発し自衛隊へ提供すれば自衛隊の作戦行動がすべてアメリカ軍に分かってしまいます。戦場の現場では先端的な兵器の使い方をアメリカ兵が自衛隊の兵へ教えます。このときどうしてもアメリカの指揮権が上位にきます。この状態を知ってい居る自衛隊の現場はアメリカ軍に頭が上がらな雰囲気になります。人間の自然な心情です。このような不愉快な状態を変える為には自衛隊が完全な意味でアメリカ軍から独立する必要があります。
私はこのような技術の上下をよく知っているつもりです。従って田母神氏がアメリカから自立すべしと主張したくなる気持へもいささかの同情を禁じえないのです。
同情はしますが間違った方向へ進むことには断固反対すべきです。最大の間違いは、シビリアン・コントロールを止めて、軍人が作戦行動の決裁権を持つべしという主張です。現在はそこまで極端な表現をしては居ませんが、田母神氏の議論を進めて行くとその方向へ行く可能性があるのです。ですから怖いのです。
まあ、これが私の個人的な意見です。個人的なブログへ個人の意見を発表しても良いと思いますので、この小文を掲載する次第です。皆様から、コメントを頂ければ嬉しく思います。(終わり)