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上の写真はタイの田園地帯にあるお寺の写真です。タイのチェンマイにご夫婦で住んでいるgakuさんの書いているブログ(http://gaku404.exblog.jp/)から貸して頂いた写真です。そして下の写真は同じくgakuさんからお借りした写真です。僧院から繰り出した僧侶の托鉢の状況です。
タイやミャンマーやベトナムなどの諸国は佛教国です。しかし日本の大乗仏教とはかなり違う小乗仏教です。
どのように違うのでしょうか?
分かり易く言えば小乗仏教は生活に密着した戒律を守ればお釈迦様の教えが分かると信じられています。
それに対して日本の仏教にはあまり戒律がありません。江戸時代までは生物の肉を食べないという戒律がありましたが、現在は一般の日本人は自由な生活を送ります。
タイの僧院の中での僧侶の修行の様子は青木保氏が出版した「タイの僧院にて」を読むと明快に分かります。1976年に中央公論社から発行されています。私は1977年頃、読んで感銘を受けました。
この本は、青木さんが人類学者として研究を始めた頃の1972年3月から1973年12月までの1年8ケ月間、小乗仏教のタイの僧院に修業僧として戒律を守りながら生活した時の記録です。
この本の面白さはその戒律の内容が解り易く説明してあります。殺すな。盗むな。性的な事は禁止。黄色の衣を着て、托鉢をする事。などなどの戒律が227もあります。そしてその戒律が生活の中に自然に溶け込んでいる僧院の中の日常が書いてあります。
もう一つ興味深い事は一般人と僧との関係です。成人すると男性は必ず数か月から1、2年、髪を剃って僧院で修業僧の生活をします。それが修了してから、環俗して職業生活を続行するのです。男性は全員ある一定の期間僧になるのです。
一般の女性は托鉢に来る修業僧へ食べ物や供物を捧げ、僧を尊敬します。
タイでは仏教が身近な日常生活の一部になっているのです。
昔この本を読んだ時は、小乗仏教の戒律の内容に興味がありました。そして現在、老境になって再度読んでみると成人した男性が一度、僧院に入る事実に感動します。
宗教は訓練です。一度でも訓練を受けると一生忘れないのです。その訓練を現在も重要視している国が存在している事に感銘を受けます。
今年はタイで大洪水がありました。しかしタイの人々は慌てません。悠々と暮らしています。洪水がいずれ終わることを信じて、動じないのです。タイの男性は全て僧院で修業しているのです。それを考えるとタイの人々の冷静ぶりが理解できます。
一方、日本も佛教国です。しかし日本の学校では佛教のことを習いません。従ってお寺に特に関係の深い人々以外は仏教の教義をあまり詳しく知っていません。
日本人がお寺のお世話になる時はお葬式の時だけです。僧侶が有難いお経を読んでくれるのですが意味が分かりません。
お経は丁度キリスト教の福音書に相当します。お釈迦様の教えをいろいろな人が違う時代に書いたものです。非常に数多くの経典があります。
日本で読まれているお経は唐の時代に、三蔵法師がインドから持ち帰った経典です。インドの現地語で書かれたお経と、漢文に翻訳されたお経を読んでいます。
お経のエッセンスは般若心経です。その骨子は色即是空、空即是色という哲学的な宇宙観です。宇宙にある全ての物は人間も含めて空です。空なるものこそ宇宙の全ての物の本質です。
お経には戒律はほとんど書いてありません。
日本の仏教の大きな宗派は、浄土真宗、曹洞宗、真言宗、浄土宗、日蓮宗、臨済宗、天台宗の7つです。この7つの宗派のお寺の数を下に示します。
(出典:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1210106697)
浄土真宗系・・21487
曹洞宗系・・・14680
真言宗系・・・12701
浄土宗系・・・8336
日蓮宗系・・・7466
臨済宗系・・・5758
天台宗系・・・4257
黄檗宗・・・462
時宗・・・411
融通念仏宗・・・358
奈良仏教系・・・294
(10年ぐらい前の資料ですが、現在もそれほど変化はないと思います。)
以上を合計すると日本には66200余のお寺があるのです。
こんなにお寺の数があるのに一般の日本人は仏教のことをあまり知っていません。極く少数の人だけがお寺で修業をしています。
タイのように成人男性のほとんどすべてが僧侶の修業をするのとは大変違います。
同じ佛教国でもタイと日本はこんなにも違うのです。何故か考え込んでしまいます。日本はこのままで良いのかと考えてしまいます。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)
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