後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

「日本の高度成長と日本人の価値観の転換」

2024年12月22日 | 日記・エッセイ・コラム
数年前に、日本と中国のGDPが世界の3位と2位になったことに私は驚きました。日本が貧しかった時代に生まれ育った私は驚いたのです。
日本は第二次大戦後に復興期があり、続いて経済の高度成長期があり、そのGDPが世界で2位になりました。
同じ様に中国は1966年から1976年の文化革命という凄惨な内戦があり、荒廃した中国の復興期があり、続いて経済の高度成長期があり、そのGDPは日本を抜いて世界2位になっています。
この日本と中国の高度成長を支えてきたのはどちらも欧米の技術を導入した工業技術の進歩によるものでした。
この高度成長にはいろいろな要因があります。政府の経済政策、資金調達に関する法律の整備、工業団地の設置、アメリカ式の経営と品質管理方法の導入などなど多数の要因の相乗効果で経済の高度成長が起きると考えられます。
そしていろいろな分野で優秀な人材が集まりました。中で重要なものの一つは、優秀な技術者を集めることです。そしてそれを育てる大学の工学部の学生が熱心に勉強することが非常に重要です。
日本の復興期と高度成長期の工学部の学生は猛烈に勉強をしたものです。大学を卒業して会社に就職した後も、技術者は職場で熱心に勉強会を開催して欧米の技術書を原語で読むことをしていました。兎に角、工学部の学生はよく勉強しました。工場の技術者達も職務時間の後も会社に残って欧米の専門書を読み、輪読会もしていたのです。そんな時代が日本にあったのです。
ところが現在、日本では大学生は勉強しなくなりました。技術者も勉強をしなくなりました。
1990年前後のバブル経済の崩壊によって多くの日本人の価値観が大きく変わってしまったのです。
一言で言えば、「経済成長よりも人間性を豊かに生きることがより重要だ!」という方向に価値観が転換したのです。
人生にとって生活を維持するためのお金は必要です。しかしボランティア活動をしたり趣味を楽しむ余裕を持ちながら自分らしい一生を送ることが一番幸福だと考えるようになったのです。結婚しないで自由に自分の独自の一生を送るのも幸せな一生だと考えるようになったのです。

高度成長期まで日本の社会にあった立身出世主義が消えてしまったのです。現在は東京大学や京都大学の卒業生で吉本興業に入ってお笑いタレントになる人もいます。
昔は大会社に入社して出世競争に勝つことが世の中の尊敬を集めました。中小企業は大会社の傘下に隷属し、縦社会を作っていたのです。
その産業構造が高度成長の基盤にあったのです。それが1990年前後にもろくも崩れたのです。
縦社会の崩壊は産業構造だけでなく社会のいろいろな分野で起きました。
その結果、価値観が大きく変化してしまったのです。
「経済成長よりも自分らしく生きることがより重要だ」という価値観です。
日本人の人間性が非常に良くなったことです。特に若い日本人は素晴らしい人間性を持つようになたのです。
現在の若い日本人は親切で優和で上品なのです。そうでないと反対する高齢者がときどきいますが、それは自分の心が貧しいだけです。
私は毎週一回、4時間ほどあるリハビリ施設に通っています。そこのスタッフは30歳代の男女ですす。いろいろな運動器具を使います。
全身のストレッチをしてくれます。ボールやゴムバンドを用いた奇妙な運動もします。そしてその合間、合間に盛んに話しかけるのです。高齢者の口の筋肉の劣化を予防するのです。
その話し言葉が綺麗な日本語なのです。彼等は皆人柄が良いのです。親切で優和で上品なのです。彼等は高齢者だから親切にしているのではありません。相手が人間だからなのです。それはスタッフ同士の会話を聞いていると分かります。嗚呼、日本人も変わったものだと心豊かになります。
さて独創的な技術の創造は容易なことでしょうか?
不可能ではありませんが、それには気の遠うくなるような日本文化の大転換をしなければなりません。
独創性の一例を箱根の彫刻の森の写真で示します。
展示されている彫刻を見てみると兎に角、嗚呼、独創的だと感動するのです。そしてその作者の名前をみます。ロダン、アントワーヌ・ブールデル、へンリー・ムーア、ジャコメッティ、ロッソ、ブランクーシなどの名前が銅板に彫り込んであります。
工業技術の独創性は芸術の独創性と密接に関連しているのです。芸術に独創性が無い限り、技術の独創性は生まれにくい社会と理解するのが自然ではないでしょうか。

今日は日本人の価値観の転換の歴史について少し書きました。
なお彫刻の森の写真は以前に訪れた時に撮りました。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)



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