「鬼平犯科帳」や「剣客商売」で知られる作家、池波正太郎さんのエッセイ「ル・パスタン」の文庫新装版が2月10日に出されたので購入しました。
表紙
(裏表紙にある本書の紹介)
内容は、『4部構成で、Ⅰは食の記憶、Ⅱは映画と芝居、Ⅲはフランスとヴェニスの旅日記、Ⅳは思い出と嘆きという感じでまとまっている。』(解説から引用)ものです。
(著者の紹介)
(感想など)
「ル・パスタン」(フランス語で「暇つぶし」の意味)を読了して、よいエッセイを読んだという満足感を得て、その余韻に浸っています。著者の記憶力の良さや、映画、歌舞伎や長唄、芝居などに関する広くて深い知識があってこその面白い文章です。
「アービング・バーリン」と「歌曲と時代」の二つの章を読むと、著者がアメリカンスタンダード曲やミュージカルにも造詣が深くて、感激しました。例として、二つの章を抜き書きしてみます。まず、
(「アービング・バーリン」の章から)
『私が自分の仕事の上でめざすところは、アーヴィング・バーリンで、この姿勢は三十年来、少しも変わっていない。・・・私は、バーリンの曲を聴くたびに、ちからをふるいおこすことができる。』と記しています。
(「歌曲と時代」の章から)
『ミュージカル・プレイ「南太平洋」が人気絶頂のオペラ歌手キリ・テ・カナワとホセ・カレーラスによってレコーディングされた。・・・このレコードでは、ジャズ・シンガーのサラ・ヴォーンが二人のオペラ歌手にまじり、名曲「バリ・ハイ」を歌って、テ・カナワの「ワンダフル・ガイ」を圧倒する。』とあります。
次にフランス日記から、著者の嘆きが聞こえてきます。
(「フランス日記(三)」の章から)
『フランスの穀物の自給率は、ついに150%を超えたという。・・この二十年、日本は農政において何をしてきたのだろう。フランスの地方都市は生産の誇りをもっていて、目に見えぬ活力に溢れている』と記しています。
また、元週刊文春池波担当の彭 理恵さんが2022年1月に書いた解説が素晴らしい。彭さんは、『何度読んでもたまらないのは「ホットケーキ」と「祇園小唄」だろう。そしてこの原稿をいただいた時に、話されたことが忘れられない。・・・』など担当者ならではの話も披露されています。
【トニー・ベネットの歌でアービング・バーリンが作った曲を楽しみました。】
池波正太郎さんが、『私は、バーリンの曲を聴くたびに、ちからをふるいおこすことができる。』と書いています。そこで、いい機会なので、バーリンが作った曲を上記CDで聴きました。
バーリンが作曲した最も有名なものは、「White Christmas」だと思いますが、「Let's Face The Music and Dance」や「Cheek to Cheek」、「The Song is Ended」あたりも忘れられません。
このCDに関する拙ブログページへのリンク:トニー・ベネット「BENNETT / BERLIN」と「スターバックスコーヒー 信州善光寺仲見世通り店」