Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

1月のポトラッチ・カウント(9)

2025年02月02日 06時30分00秒 | Weblog
 「・忠兵衛(仁左衛門) 亀屋の養子。(実家は大和の百姓) 遊女梅川と恋仲。人当たりはいいので人気はあるが、軽くて調子がよくて、粗忽。飛脚屋のボンボンだが、自分で自由になる金はない。
 ・梅川(孝太郎) 遊女だがピュアで、忠兵衛に心底惚れている。
 ・八右衛門(愛之助) 梅川に惚れているので忠兵衛の存在が面白くない。人望はないが、金はある。梅川を身請けするために250両持ってきた。
 ・井筒屋の女将おえん 忠兵衛と梅川の恋に、理解を示しており、久々に来た忠兵衛を梅川に会わせてやる。
 ・槌屋治右衛門 梅川を抱えている親方。こちらも人間味があり、梅川の幸せを考えてくれている。

 昼の部ラストの演目は、「恋飛脚大和往来」より「封印切」で、鴈治郎/扇雀兄弟が亀屋忠兵衛/丹波屋八右衛門を交互につとめるという目玉付き。
 「ほんまもんの関西弁」が歌舞伎座で響くのが久しぶりという感じなのだが、そういえば、このところ愛之助が出演していないのだった。
 近松の「冥途の飛脚」に基づくこの演目は、登場人物が多いので「人物関係図」が必要だと思うのだが、例によって筋書には書かれていない。
 なので、最初に主要な登場人物を押さえておく必要がある。
 上に引用したのは登場人物についての解説だが、主人公・忠兵衛について重要なのは、「養子」であるために自由がないという点と、「カネに一夜を貸す」家業である「飛脚」のメンバーであり、信用システムの一端を担っているという点である。
 これが「公金横領」につながるわけである。
 次に重要なのが、世話物に頻出する「遊女」という存在、あるいは「遊郭」という制度である。

 「遊廓は室町時代の末に京都で起こったのが、その始まりであるといわれている。江戸時代になると公娼集娼制度が導入され、各所に散在する遊女は幕府が定める特定区画に集められた。大坂の新町、京都の島原、江戸の吉原、長崎の丸山など全国20カ所がその指定であった。なかでも新町、島原、吉原は3大遊郭と呼称され栄華を極めた。
しかし、いっけん華やかに見える遊女たちも、その多くが暗い過去を背負っていた。年貢上納のため、親の借金のため、不作による口減らしのため、孤児になってしまったため、……。そのような理由から廓に来た者がたくさんいた。江戸時代には人身売買が禁止されていたため、年季奉公という形をとりながらである。

 この状況は古今東西にみられるもので、「ヘタイラ(遊女)の解放」は、古代ローマでも喜劇の主要なテーマだった(傑作の欠点(7))。
 お定まりのパターンあるが、本作でも「人身売買(売春)→身請け(カネ)による解放」というサクセス・ストーリーとはならず、途中で様々な障害が出現してくる。
 梅川を身請けしたいもののカネがない忠兵衛に、八右衛門、ついで肝入由兵衛(治右衛門の債権者)までが梅川争奪戦に参戦してくる。
 こうして、忠兵衛、八右衛門と由兵衛の3人による「セリ」というか「ポトラッチ合戦」が繰り広げられることとなる。

 
 

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