季節の中で 暮らしの中で -Through the seasons and daily life-

現代の都会でプチ昔&田舎暮らし
-old & country style in modern urban life

2008-11-02 22:22:14 | 心と体 Mind&Body
私たちの仲人をしてくださった方が亡くなった。
お線香を上げに行った。

お宅の居間に入ると台の上に遺影と骨壷の入った桐の箱。
「やっぱり亡くなったんだ。」と思った。
聞いただけだったらなかなか実感としてわからないから。

その後ろの床の間に掛け軸があった。
般若心経を筆で書いた上に四国八十八箇所参りの印がたくさん押してある。

彼は病気とわかってから写経を始めたそうだ。
プロが書いたのかと思ったくらい丁寧で美しい。
彼は私たちの恩師であるが、黒板の字からは想像も出来ないくらい。

しばらくその掛け軸を観た。

遺影、遺骨からは彼の存在と言うのは感じられない。
もうそこには彼はいなかった。

でも掛け軸を観ていると彼の存在が感じられた。しっかりと伝わってきた。
そこには彼がいた。

彼が紙を用意して、一文字一文字祈る気持ちで書いた事、
一つ一つの印を自分が足を運ぶ事で押してもらった事、
名前の朱印を押す時の緊張感や集中力。

墨とは液体だ。(詳しくはニカワに囲まれた炭素の粒子が水に浮かんでいるコロイド溶液だが。)
それを筆に含ませて紙に下ろし、滑らせることでその形跡を残す。
それが書道。

筆の下ろし具合や運ぶ早さ、墨の付け具合などでその形が定まる。
それは体の動きや心の動きをそのままに表すのだ。

液体が残ってそれが乾くと固体になり、それから長い年月それがそのまま残される。

自然とそう考えさせられるほど、その書には静かな迫力があった。

息遣い、思い、彼自身そのものがその掛け軸から伝わってきて
遺骨や遺影を見た時とは違う何かがこみ上げてきた。

また彼に(掛け軸に)会いに行きたいと思う。
自分の中で、夫と二人で、彼の死を受け入れてそれが落ち着くまでしばらくはかかると思う。それから。










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