旅に出たはずのKさんからは昼夜問わず泥酔状態で電話がくる。年金と退職金でフラフラしている風船玉にそう付き合ってはいられない。先ほども電話が来たばかりである。しかしそれほど私と飲みたいのかというと、そうとばかりはいえないのである。店が終った後女性を誘い出すにしても、Kさんの不行状がたたって、二人きりになれるのは、Kさんが触りまくっても、ハエが止まってる程にも気にしないIさんか、いざとなったらノーモーションの強烈なビンタのYちゃんくらいのものなので、私を誘うのである。それでもロレツが回らない調子で、好きだ好きだとしかいわないので、相手もウンザリして私と話すことになる。とたんに悲しそうな顔になってしまう。いくら愛敬があるといっても、少ないボキャブラリーで、同じ話をくりかえされる方はたまらない。 昨日、飲んでいたところに母から電話があった。日ごろKさんの話をしているものだからKさんに代われという。中学の時亡くなったKさんのお母さんは、健在なら母と近い齢なので嬉しそうに話していた。Kさんの女好きは大半が母恋しさからきているようである。酔えば自分の娘や下手をしたら孫のような娘に「カアチャン々」と連呼している。 小学生のKさんとお母さんが二人で写っている唯一の写真がある。お母さんの命日に、遺骨と一緒に汚い布に包まれた写真を見たが、何にはさむでもないので皺くちゃで、肝腎の顔が欠けてしまっていた。それならお母さんの顔が写っている写真があれば、合成して上手く修正してあげようと、割烹着姿のお母さんの写真のコピーを預かっている。 そういえば、お母さんの命日に家で転んでコタツの角に、オデコをぶつけて23針のへの字のへェさんになったのであった。
過去の雑記
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