明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



タイトルのわりに愉快な話ではない。 先日某出版社に出向いたわけだが、そこで飲まされた焼酎が粗悪な物で、悪酔いしたらしく気を失ってしまった。目が覚めると社長と編集者が改まった調子で企画書を示しながら、実は原作がある作品は原作料が払えないので、ビジュアルだけでなく文章も私に書いて欲しいという。人に頼むと金がかかるからお前が書け、とは二冊目の『Objectglass12』で似たようなセリフを訊いた気がする。ところが今回は冒険物語だというではないか。「そんなもの私に書けるわけないじゃないですか!」すると粗筋はすでに出来ているという。企画書のタイトルを見ると『への字のKさん漂流記』とある。夢という物は不思議なもので、Kさんが二十歳の時、自分で買って読んだ唯一の小説が『十五少年漂流記』だった、ということが頭に残っており、それを引っ張りだしてきたのであろう。粗筋を読むと『桃太郎』と『ロストワールド』を混ぜたような話であった。目が覚めるとどう混ざっていたのか定かではないのだが。 「ところで主人公のへの字のK公の野郎は、最後どうなるんです?」と訊くと「ビールを飲んで酔っ払って水の入ったカメに落ちて、おぼれて意識が薄れていくところで終る」。夏目漱石か? Kさんは猫というよりイタチかカワウソに近いのだが。 やはりタイトルのわりに愉快な話ではない。

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