明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ビートたけしの『アウトレイジ』は2作品観たが、役者かどうかさえ判らない登場人物がリアルである 。お茶の間でお馴染みの役者は殺されても、お疲れ様、とでもいいながら起き上がりそうなのはしかたがない。そういう意味においては、私の知人、またそのツテのみでキャスティングしている制作中の作品は、誰も知らない演者ゆえに、私が漁師だ、と決めたら漁師である。
昨日撮影の二人。一人は麦わら帽子、一人は鉢巻である。麦藁帽子は使いたおした物を借りていて、おかげで取り出した時点で、一部破れ傘のようにりリアに破けた。私が鉢巻用の手拭を忘れてしまい、念のため持参してもらっていたフンドシ用の白いサラシを裂いてもらった。二人のうちどちらが帽子で、どちらが鉢巻でも良かったので任せたが、一方の彼の使用感の出たフンドシを鉢巻にするのを、もう一人が「俺は嫌だよ!」と拒否。隣りの部屋で彼等の笑い声を聞いていて、弥次郎兵衛と喜多八コンビのような二人をイメージしていたので、今日の撮影は上手くいくだろうと確信した。 小雨がパラつく中撮影が終わり、撮影場所のマンションの駐車場から引き上げる途中、1カット思いついてしまい、急遽上半身だけ裸になってもらった。 今回、出演者全員、顔で選んでいる。彼等も当然そうだが、大きな魚を担ぐだけに、全身をとらえたカットが多い。そこで彼らの顔を生かそうと、とっさに思い付いたのは、突然出合った河童に驚いて二人は一旦は逃げてしまう。恐る々、イシナギを放りだしたままの神社の石段の下に戻ってみると河童はもういない。河童が登っていったであろう石段を呆然と眺める二人。この場面は、石段を見上げる後姿を想定して撮影していたが、せっかくの顔を生かしたい。脚立の上から、見上げる彼らを撮影した。10カットほど撮り終了。後でチェックすると、まさに河童を見た直後の若者二人にしか見えない。目がそういっている。アップにしたら、二人の瞳に河童の後姿が写っていそうである。最後に急遽思い付いたカットが本日のハイライトとなった。 素人の皆さんの意外な演技力に撮影のたびに驚いている。もちろん私が運が良いのであろう。ここに河童がいて、とか大きな魚が上から落ちてきて、といって、ちゃんと頭の中にイメージできる人でなければこうはいかない。また、むしろより肝心なのは、楽しんでやってもらえている、ということであろう。

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