それにしたってベランダの掃除である。外壁補修のため、毎日足場をいったり来たりして、ウチのベランダの様子を知っている職人さんには、誠意は見せられたのではないか。おかげでベランダの荷物が室内に。ヌード撮影用に入手していた椅子が、風雨にさらされすっかり枯れて良い感じになっていた。
私が高校生の頃に、空前の黒人ブルースブームがあった。町の小さなレコード屋にさえ、マジック・サムが並んでいた。それまでブルースっぽいロックを聴いていたところに、そのロッカーが手本にしていた黒人音楽が流れ込んできたので夢中になった。それになにより参ったのは、連 中のビジュアルである。当時『ブルースのすべて』といったか、残念ながら人に貸してそれっきりになった雑誌にズラッとならんだ顔は、あきらかにジャズミュージシャンとは違っていた。変なヘアースタイルや、プロレスのリングネームのような芸名。妖怪、怪獣、プロレスラー図鑑と同系列の匂いがした。おかげで後に初個展『ブルースする人形展』につながって、今に至っているのであり、人形といっても澁澤龍彦とはまったく無縁なスタートであった。よってこの黒人のブルースは、私にとっては単なる音楽とはいえない。 先日やはり同い年でブームの洗礼を受けた田村写真の田村さんと電話で話していて、ブルース用のハーモニカを買った話を聞いた。あちらの世界ではハープという。そういえば初めてスタジオを借りる日が迫っている。思わずハープとハモニカホルダー。それにガムテープで張りつけるに丁度良さそうな小型マイクを入手してしまった。 今度一緒にスタジオに入る連中は私より大分若い。当然、聴いてきた音楽は違う。今は丸くなってしまった再結成オヤジ達の、尖っていた頃の音楽などを聞かせたりして、そんな物聴いてないでこれを聴け、と私のレコードで勧誘したいと思っている。中学の頃もアイドル好きな連中を罵倒し、このロックを聴け、とやったものだが、キャンディーズを好きになり、同級生にかくれて近所のレコード屋にいったら店のお姉さんに「ツエッペリンの新しいのが入ったわよ」。結局遠くまでコソコソ買いに行ったのを想い出してしまうが。
過去の雑記
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