明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



鎮守の森の姫神様に仕える、灯ともしの翁の柳田國男がほぼ完成である。河童が神社の長い階段のふもとで漁師の二人組みを驚かせ、階段をとぼとぼ登り、最初に顔を合わせるのが翁である。初登場シーンをまず制作しようと考えている。地べたにひれ伏した河童の目に映った神主姿の柳田。作るのがもったいないような気がする。しかしそんなことをいっていると私の癖の一つ、作り惜しみをして作りたい自分を盛り上げ、我慢できなくなるまで自分を焦らす、という癖がでてしまうかもしれない。快感を得、長引かせるためにはどんな手でも使う私である。 しかし異界の住人の翁。ただ逢う魔が時の境内に立っている老人、ということで良いのであろうか。ちょっと頭を絞りたい。 せっかくの河童と柳田の対面である。何カットか考えているが、必ず作ろうと考えていた場面がある。クライマックス直前、人間に腕を折られ、あだ討ちを頼みに姫神の元を訪れた河童の三郎は、色々あって機嫌がおさまり、住まいの沼に空を飛んで帰ることになる。それに際し、町は行水時である。道中、また若い娘のスネでも目にして、フラフラと舞い降りてしまいかねない。そこで翁はカラスに向って三郎の見送りを頼むのである。『漁師町は行水時よの。さらでもの、あの手負が、白い脛で落ちると愍然(ふびん)じゃ。見送ってやれの――鴉、鴉。』河童の後見人?たる柳田にいわせたいセリフである。 実は翁のいいつけに耳を傾けるカラス2匹は、翁の灯した燈籠の上に随分前から待機している。

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