明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



完成するまで『貝の穴に河童が居る事』以外、本は読まないと決めていたが、『夢野久作と杉山一族』(多田茂治/弦書房)を読んでしまった。出版社の方からいただいて側にあったので抗し難かった。茂丸、久作、その息子三人の杉山家三代にわたる物語を一気に読んだ。特に杉山茂丸に関しては、頭山満との関係も含めて興味深い。東大の標本室で目撃した茂丸の骨格標本。頭山とともに断指の誓いを立てのだが、そこにぶら下っていると知らず驚いて、指を見損なった。  以後本は読むが小説は読まない。ということにする。 『ドグラマグラ』制作用の資料として、久作が記者として出入りしていた頃の九州帝大の卒業写真アルバムを入手しておきながら、柱時計に収めた作品一体制作したのみで頓挫している。『ドグラマグラ』はともかく、久作的世界を描こうとすれば、九州は筑豊などの独特な空気をイメージできないと難しいと考えた。おなじくニジンスキーやディアギレフなどロシアバレエの世界を描こうとした時も、スラブ的世界が自分の中にイメージできないことが引っ掛かった。制作のためにどこまで理解する必要があるかは判断が難しいが、知ったかぶりほどバレて格好の悪いことはない。 『精神科学応用の犯罪とその証跡』は、柱時計を入手後、修理のできる店に持ち込んで調整してもらった。これはグループ展に出品した作品だが、肝心なのは時刻が正確なことより「ブーーーーン」という音だったはずである。しかしはりきってゼンマイをフルに巻いたおかげで、会期中30分おきにせわしなくボンボン鳴り続けた。やはりこれはトロトロと、ゼンマイが事切れる寸前のゆっくりとしたテンポで鈍い音を発するべきであろう。  来月乱歩作品のプリントを20数カット展示する予定がある。旧作ではあるが、そのために作った書籍の出版社はすでになく、時間も経った。乱歩像出品は予定していないが、そのかわりというわけではないが、この久作作品を出品しようと考えている。普段やりたくても出来ない暗めの照明でいきたい。ゼンマイは二箇所あり、右側が稼動用、左側が時打ち用である。左側を緩めにすればドグラマグラ調になるかもしれない。

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