明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



昨年の6月に女将さんが熱中症で倒れ、以来休業している木場の居酒屋『河本』であるが、冷凍保存されていたわずかばかりの煮込みを解凍。超常連で消費することになった。一般客に出せるものではないが捨てられるのは惜しい。ちまたでは◯大煮込みと称されているそうだし、吉田類さんの煮込みランキングにも入っている。私にしては30年に渡りなじんだ味である。 現在『タウン誌深川』で木場の居酒屋K本として駄文を連載しており、厨房担当の女将さんの弟の“あんちゃん”に煮込みの作り方を聞いてみたことがある。「ただ味噌を入れるだけ」とそっけない返事。“親父におそわったまま”だそうである。レシピを聞いて再現できる類いのものでない。河本のホッピーや酎ハイを家で飲もうと、同じキンミヤ焼酎、ホッピーや炭酸を冷やし、同じジョッキやグラスで飲んでも何故か同じ味にはならない。私以外にも試した人は同じことをいう。店の雰囲気?と目をつぶっても無駄である。ホッピーや酎ハイでこの有様であるから煮込みに関しては言わずもがなであろう。これをもって河本の煮込みは消滅ということになった。女将さんはとっくに元気をとりもどしているが、姉弟いずれもご高齢である。一縷の望みといえば、あんちゃんの「仕入れ先に何回電話しても出ない」という言葉である。出ていれば仕入れるつもりがあったのではないか? 一年ぶりの煮込みは若干しょっぱかったが、皿の煮込みが一つ減る度これが最後か、とついシャッターを切った。

HP 



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