明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



『三遊亭圓朝全集』(別巻)図録・資料集 角川書店(1976)は届いてすぐに包装紙を引き破いて読んだが、残念ながら肝心の圓朝像に関しては得るものはなかった。ただし資料として圓朝を作る人間には必携であろう。(私以外に誰がいる) 九代目團十郎を作った時のように、じわじわと、その偉さが染みてきている。 九代目は五代目尾上菊五郎とともに明治天皇に歌舞伎を披露し、その二年後には圓朝が口演をする。御維新以降、そんな物わかりゃしない田舎役人が演劇演芸、なんでも改良運動である。 明治23年に英国の軽気球乗りスペンサーが来日し興業をおこなう。大変な人出だったらしい。菊五郎はそれを観て舞台化しようと考える。英語のセリフも使いたい。そこで相談するのが伊藤博文。さらに菊五郎が圓朝を演じた。猫背の雰囲気まで出ていたという。 圓朝が猫背なのは正面からしか撮っていない写真では判らない。撮影した写真師もおおかた「師匠背筋伸ばして。」とかいったのであろう。判るのは斜めから描いた鏑木清方の画だけである。清方はその猫背の感じを表現したかったので、この角度を画にしたのは間違いない。伝えられる圓朝の“品格”も写真からは伝わってこない。

HP



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