明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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行き先の違う電車
制作
/
2017-07-21
子供の頃から写生の類いが大嫌いであったが、実在した人物を手がけるにあたり、写真資料を元に制作することを随分長いこと続けて来た。気持ちとしてはすでに亡くなっている人物といえど、本人に見せてウケたいと制作して来たし、ましてご遺族が健在な場合もある。失礼があってはいけない。そこへきて出合ったのが鏑木清方作の肖像画の傑作といわれる三遊亭円朝像であった。私の知る限り、写真に残された円朝と顔が違う。表情も伝えられる人となりとは違う気がする。若い頃の記憶をもとに制作した作品とされてはいるが、それにしても。そこから始まった迷いの日々は、長々当ブログで駄文をさらしてきた。結果、単純にいえば、これが清方の中の圓朝のイメージなのだ。それは残された写真を超えている。 私はまだ黒人の人形を作っていた頃、あるブルースミュージシャンの日本ツアーのポスターの仕事をした。参考用に写真、最新ライブビデオなどが渡され、それを元に制作した。(つもりでいた。)しかしそれらの資料を目にしながら作ったのにもかかわらず、自分の中にある、かつての姿になってしまった。なにしろ髪の長さ体形からして明らかに違う。しかも完成後、知人に指摘されるまでそれに気が着かない私であった。幸い来日時には短い髪で現れ、特に問題にはならなかったが。 その一件で、目で見たことより頭の中のイメージが先行してしまう自分に呆れ、客観性を持たなければならないと反省した。その時の反省点は当然であったし、その後日本人の作家を作るに当たり、良い教訓ではあった。しかしここへ来て出合ったのが清方作の円朝である。 そろそろ作りたい人物が少なくなってきたところに、立体から陰影を消す新手法を試み、おかげでこれなら可能ではないか、と気になり出す実在したか不明の寒山拾得。私はまた行き先の違う電車に乗り換えようとしているのではないか?今までの経験からいけば、なんでそうなのか判らなくても、そんな気がする時は乗ってしまえ、と決めている。幸い私には「無能の人』のように「あんたはなんでいつもそうなの」と泣き崩れる人もいない。
HP
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