Julianの部屋

小さい頃は特に、個室を 持たせない、
そう決めていたのは、食事以外 部屋に閉じこもっていたら、
話も できないし、こどもが何を しているか、
今 何を 考えているのか、普段の様子も分からない、
あっと言う間に手を 離れて行ってしまうのに、
それは一番 避けたいことだったから。
それ以前に、家の事を しなくてはならないのに、
宿題やら何やら、部屋まで行って見ろとでも？
そんなこと普通に考えて無理な訳で、結果、
面倒臭いから放置された こどもは、それなりに育つ。
料理中でも、リビングに居れば、いつでも何でも付き合えるし、
大きくなって、ベッドや勉強机、粗大ごみを 出さなくて済む。
だから、お義母さんに何と言われても、申し訳ないけれど、
これだけは譲れなくて、頑として拒否し続けた。
お金を 渡され、勉強机を 買うよう言われてたからね。
もう コスモスは社会人、近い将来 出て行くだろうし、
Julianだって、もう長くは居ないと思うけど、
そろそろ部屋を 持たせても良いかと思っている矢先、
同居人が、こどもの為の部屋を 占拠して、もう何年にもなる。
卓球台が置いてあったから、難しくて手間取ってたんだけど、
邪魔になったら、さっさと人に やってた同居人。
自分の利益になることなら何でも早いこと。
人の目を 避けたい人には、部屋って必要なんだよね。
私は要らないもの。
Julianが部屋を 欲しがるのは、そういう嫌らしい理由ではない。
だって、今まで ずっと、リビングで育ってるし。
ただ、自分の思い通り、好みの空間を 創り出したいから。
で、無理だと思った時に思い付いたのは、
唯一、個人のものである スペース、サイドボードの中。
ここを 好きなように飾り付けしよう！ と思ったんだよね。
今までは、勉強道具や私物を 入れてたんだけど、
それを 全部 出して、私が寝ている部屋に置いてくれるから、
それは それで迷惑なんだけど、別に私の部屋じゃないし。
普段は憎たらしい思春期の女子高生、だけど、
こういう、一生懸命工夫したりする所は健気で、
できあがりを 見て一人勝手に満足してるのも可愛くて、
可哀想だから文句も言えず、見て見ぬふりを してる。
馬鹿親っぽいけど、センスは良いと思って昔から見てたから、
いつか、夢を 叶えてあげられればなと思う。
人って、手に入らないものは欲しいと思うものだしね。
今、部屋を 占拠している人間のように、
自己の利益を 追求するだけのものとかなら拒否だけど、
相性の悪い姉妹ではないから仲良く使うだろうし、
もうあと何年、一緒に居て笑顔を 見れるか分からないから。