おれの下では冒険が
和室に寝転んでドラクエやってると、
寒いので殿が私の腹の上に乗りに来て、
腹の上で丸くなる。
重くてウッとなりながら、
ドラクエを続けていると、
ものまね小猿のモンチも殿の後について腹の上に乗り、
殿の脇に来て丸まろうとする。
私の腹はそんなに広々していないので、
殿はモンチに譲って去っていく。
モンチは足場を組みなおして丸くなり、
あろうことかコントローラーの左スティックに添えた左手の親指を、
あご乗せ台にする。
モンチのあごを乗せたまま、
主人公を動かすためにぐりぐり親指を回すが、
モンチは気持ちよさそうにしている。
あごのマッサーになってちょうどいいのか。
こちらは結構気をつかって動かしてるんだけど。
なーにが面白いんだか
土曜日、Cからピクサー映画の誘いがあったけど、
ピカソを観た日にこれ以上何か観る気にはなれず、
もう少し先に延ばした。
ピクサーはピクサーで主役はってもらいたい。
夜ごはんは初挑戦のチゲ鍋。豚バラ、韮、白菜、ねぎ、豆腐、えのき。
寝る前、大事にとっておいた町田康猫エッセーのラストを読み、
泣きまくる私をビーがじっと見ている。
「何泣いてるの? バカじゃない? ビーコはここにいるのに」という顔。
ビーにキスして、ビーのお腹に手を当てながら寝る。
ふだん小説とか読んでて泣くことはあるけど、
ここまで嗚咽するようなことはない。
猫の話はリアリティがありすぎて、面白すぎるし、悲しすぎる。
ダーの話。
電源入れっぱなしで温まったステレオの上にモンチが寝ていたが、
そろそろ寝るつもりでステレオの電源を切ると、
モンチが「寒いじゃないの」という顔で起き上がり、
いつまでもダーのことを見ていた。
同じ美術展に3回行ったのは初めて。
チケットを貰えたし、たまたま誘いも重なった、
ってのもあるけど、何度行っても最高に刺激的で面白いピカソ展。
いいなあ、パリに住んでる人は。
ロメールの映画であったな、パリに住んでる女の子が、
毎日美術館に歩いて行って、ピカソの絵を眺めるの。
たしか帽子をかぶった女の絵。
Iくんの仕事の都合で朝イチ。
10時すぎに家出て、池尻の駅のホームで待ち合わせ。
黒いスーツに黒いサングラスに黒いマフラー、
銀のアタッシュケースでビシッときめていた。
地下鉄を出ると雲ひとつないいい天気。冬の太陽。
お寺の前にピンク色「ピカソ通り~身体とエロス~」の旗。
青いアクロバットの絵、
石を投げる女のアナトミーの絵、
マリー・テレーズのピンクな身体の絵など。
線画も、実物の筆致の滑らかさは印刷とは全然違う…。
Iくんは途中で絵にやられてため息ばかりついてた。
牛が女を襲う暴力的な一連の絵の後の、
途中の吹き抜けになったホールの休憩所で、
ぐったりして私にもたれかかった。
「欲望の塊みたいな人だから」
その時点でそんななのに、まだ教皇の連作が!!
私は3度目だけあって、
次に何がくるからわかってたので余裕があった。
美術館を出ると、すぐに手を握ってため息とともに「危険だ」。
公園は、紅葉が少しだけ残っていた。
とりまきを5人くらいつれて、
「先生」と呼ばれている初老の着物の男がずっと近くで絵をみてて、
若くていけめんな男二人がよりそうように付いて回っていた。
タクシーで丸ビルへ。
Iくんが仕事前でお酒は飲めないので、すいてる天ぷらの店へ。
出来杉くんなIくん、天ぷら食べて「多少落ち着いたよ」
天ぷら屋の板前さんは、
最初の5年は大根おろしばかりで、
おろし方によって水分の具合が変わる、
でも型というものはなくて、皆違うやり方でやる、とかそんな話。
東京駅で別れて、私は美容院の予約を入れて毛づくろい。
毛づくろいをすればどんな気分もだいたい落ち着く、
というのは猫たちが教えてくれたこと。
表参道をぶらぶらしながらドトールで一服、カットとカラーリング。
頭をごしごし洗ってもらって、マッサージされてるううちに、煩悩が和らいだ。