
土曜日、まだこんなめに合うのか、という寒さ。いわゆる花冷え。キンタが旅立ったのも、今思えば花冷えの日だったかもしれない。春の陽気がきた後で、冷たい雨のふる夜だった。
それから25年か26年が過ぎた花冷えの日、海に行った。2週間ぶりの海なのに、寒いし雨降るし。
ヴィゴでパンを買って由比ヶ浜へ。雨は止んで、空はわりと明るく青空も出た。太陽はなくて寒いけど、そんな日の海もいい。
海藻がたくさん打ち上がり、磯の香りが濃くて、カラスが漂流物を物色してたけど、海藻ばかり。
トンビがたくさんいて、パンを食べてると偵察に来た。Cも私も慣れっこなので、トンビに持ってかれることはない。ダークチェリーのデニッシュ美味しかった。
潮は冷たいけど、空気よりは温かい。気温は8℃きってた。

海でも「失われた時を求めて」。スワンは、オデットの側を離れたくなくて、春のコンブレーに行くこともできない。
◯彼の心に引き起こされた動揺と、つきまとって離れない熱に浮かされたような不快感とは、自然の姿に感動するためのなくてはならない基盤である落ち着きと安楽とを彼から奪っていた。
夜会に行ったらオデットは帰った後で、スワンはオデットを探しにいく。この夜から、スワンの恋心は激しく燃える。が、オデットはスワンの知らないところで別の男とも会っているらしい。
オデットはそこまで魅力的な女だとは思えないし、スワンもそれをわかってるようなのに、会いたい衝動、嫉妬、恋心をおさえきれない。
お寺の参道の桜は、もう五分くらい咲いていた。小雨がまた降ってきて寒い中、お堂の屋根の下で紅木蓮の大木の満開を眺めた。花つきがものすごくて美しかった。
バナナの木はツボミがいっぱい。いろんな木の芽吹きが始まった。
鳥居に入るとウグイスが鳴いて雨が止んで寒さが消えた。
何年か前まて春の楽しみだった猫柳はあとかたもない。
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日曜は、キンタのお墓参りで横須賀へ。パパママは同時に数年ぶりに風邪をひいて、一緒に散歩できなかったのは残念だけど、お弁当を作っておいてくれた。
ついてすぐ庭のお墓参り。お墓は石のまわりに緋寒桜が積もって、かわいく彩られていた。春分の日の当日には、ママがおかかとシラスをお供えしてくれた。
桃の花が咲き始めていた。
坂の上の池にはもうおたまじゃくしがうじゃうじゃいた。花の広場はピンクの桜が満開だったので、そこでお弁当。これから咲きそうな桜は、たぶん大島桜。風が冷たいけど、日射しは春らしくてポカポカ。

山にわけいって、蓮の池の公園に出た。蓮の小さい葉がたくさん出ていた。クレソンも。
海に出てすぐ、フグを見つけて、今日は久しぶりに魚がいそうだ、と話してたら、その後本当にたくさんの魚を見れた。ダーも熱心に魚を探していた。
潮干狩りポイントで水に入ると、由比ヶ浜よりだいぶぬるかった。潮はひいてなくて、アサリには会えず。
防波堤の上から、イワシかコウナゴの群が二種類見えて、キラキラ。冬の間ほど澄んでないけど、群はよく見えた。クラゲもいた。傘の深い白っぽいクラゲ。
K崎でソフトクリームを買って浜から海に伸びるでっぱりの上でお茶。そこには茶色でお腹の丸いおたまじゃくしみたいな稚魚が無数にいた。
T浜も日のあるうちについて、そこでお茶と一服。橋の上からも、イワシらしき群と、フグに似てるけど泳ぎ方のちがう6、7匹が素早く泳ぎ去った。
早く海に入りたい。
具合悪いならご飯は作らなくていいよ、って言ってたけど、ご馳走を用意してくれてた。私の顔を見たら鼻水がぴたっと止まったそうだ。
キャベツの葉を皮にしたシュウマイ、牡蛎のグラタン、手羽先のネギ塩焼き、など。お食事はタケノコご飯とゴボウのお吸い物。
パパはもうすぐ誕生日なのが嫌そうだった。

花冷えで殿の食欲が心配なので6時半には出て、乗り継ぎよく特急で帰った。
電車でも「スワンの恋」。
スワンは「やりきれない連中」(社交界の人)であることをヴェルデュラン夫妻に知られて、嫌われて、旅行や夜会に呼んでもらえなくなる。オデットに会える時間も減ってしまう。この状況がまた、彼の恋心を燃え上がらせる。
スワンが燃えれば燃えるほど、オデットは冷めて、スワンに冷たくして、スワンはますます激しく燃える。
スワンの恋の描写は、長々と続いてしまいにはうんざりしてくる。ロマンティックかというとそうでもなく、お金やプレゼントでつなぎとめるのってやっぱりオヤジくさい。