現在マスコミを賑わしている朝鮮総連関連の中央会館の土地と建物のカネが支払われないままの所有権の移転登記は世間にザラに転がっているよくある偽装取引の一つだろうが、その登場人物たちが偽装劇にふさわしい悪臭漂う面々ではなく、よもや登場するとは予想だにできない朝鮮総連を調査対象としていた公安調査庁の元トップであり、最高検検事も務めたことのある現在弁護士に収まっている元公安調査庁長官・緒方某(73)と朝鮮総連代理人となっている日本弁護士連合会元会長の土屋某弁護士(84)だとは世にも稀とはいかない奇々怪々な話である。尤も奇々怪々だからこそ、世間の関心を呼ぶのだが。
世にも稀とはいかないとは、学歴あり、社会的地位の高い政治家・官僚、その他の著名人たちの犯罪・不正は決して珍しくもないからである。
そのうちの一人、特に元公安調査庁長官・緒方某73歳は〝昨日の敵は今日の友〟の素晴らしい関係へと進化を果たしている。当初テレビで、「在日北朝鮮人の方々の権利を守るために義で引き受けた、カネ儲けで引き受けたわけではない、ましてや架空取引ではない」といった内容で弁明していた。公安調査庁長官時代は日本の方々の権利を守るために朝鮮総連を監視対象としていたはずだが、現在は日本の方々の権利を守るのは放棄したというわけではなく、公安調査庁長官から弁護士という立場に変わった以上、双方の権利を守ることを守備範囲とするに至ったというわけなのだろう。
だが、朝鮮総連は金正日が拉致を自ら認めたことや核実験を行ったことでその構成員を40万人から9万人に減らしたと、多分TBSだと思ったが、テレビで伝えていたが、それが事実とするなら、なお金正日体制を信奉、もしくは崇拝している狂信的傾向ある9万人の在日朝鮮人の権利を守るために元公安調査庁長官が立ち上がったことになるが、これも奇々怪々のうちに入るおかしな話とはならないだろうか。
一連の顛末を詳しく解説している昨6月19日(07年)の『朝日』朝刊(≪緒方元長官「乗せられた」 総連本部 売買取引の経緯は≫)を見ると、元公安調査庁長官・緒方某73歳が偽装取引に実体をつくり出そうと懸命の努力を重ねているのが手に取るように理解できる。
所有権の移転先である元公安調査庁長官・緒方某73歳が代表取締役を務める投資顧問会社「ハーベスト投資顧問」は資本金88万円だということだが、テレビ(日テレ「ザ・ワイド」)ではペーパー会社で35億もの内部資本があるわけではなく、売却代金に出資者を募る目的でと言っていたが、『朝日』記事では元公安調査庁長官・緒方某73歳は東京駅構内の喫茶店で売却交渉の仲介役だった不動産会社の元社長(73)を通じて、元銀行員(42)から紹介を受けた40歳代ぐらいの小柄な人物と会う。海外で60億円規模の資金運用をしていると説明し、米国の永住権を持っているとのことで、「私は高校時代に米国に行き、人種差別で迫害を受けたので弱者についてはよくわかります。お金は大丈夫です」と出資を請合ったと出ている。
「弱者についてはよくわかります」と相手が言ったということは、元公安調査庁長官・緒方某73歳が朝鮮総連を弱者に位置づけて、その救済を口実に話を持ちかけたことになる。これは元公安調査庁長官・緒方某73歳がテレビで言っていた「在日北朝鮮人の方々の権利を守る」云々との整合性を持たせる意味合いから、出資の引き受けの趣旨も弱者救済に合わせたのだろう。しかし朝銀信用組合のいい加減な融資から生じた債権の返済を求められて応じることができずに立ち往生している朝鮮総連と人種差別者を受けた者とを「弱者」の立場で同列に置くとは話をうまくつくり過ぎている。
元公安調査庁長官・緒方某73歳は朝鮮総連代理人の日本弁護士連合会元会長の土屋某84歳に「出資者を確保できそうだ」と連絡。日本弁護士連合会元会長・土屋某84歳は出資者がどのような人物かは「土地やビルを買ってもらう側なので、出資者の素性については根掘り葉掘り聞かなかった」というのも、存在しない人間をさも存在するかのように装わなければならない場合の筋書きにはふさわしい曖昧な話ではあるが、35億もの出資となれば、普通は大丈夫ですかと確認を取るのが人情の自然で、確認の過程で安心を得る第一条件は何と言っても人間が確かであるかどうかであろうから、「根掘り葉掘り」とまでいかなくても、その点に確認の重点が向かうのも人情の自然であろう。
『朝日』の記事では、元公安調査庁長官・緒方某73歳が名刺を貰おうとしたとき「旅行先から来たので持ち合わせていない」と断られ、資金運用しているファンドの詳細についても明らかにはされなかったとなっているが、日テレの昼の「ザ・べスト」では、名刺は持っていなくて、名前は聞いたけど、その場では覚えていない。ファンド名は分からないけれども、60億円程度の投資はしているという話を聞いた。出資者の要望で元公安調査庁長官・緒方某73歳と日本弁護士連合会元会長・土屋某84歳との信頼関係の下、所有権の移転が行われた。しかし金は振り込まれなかったと解説していた。
これも35億の出資を求める話が実体ある話なら、不用心極まりない態度としか言いようがないが、大体このような人物がなぜ登場したかである。『朝日』記事は「うかつと言われるかもしれないが(検察官が)被疑者を調べるわけじゃありませんから」と元公安調査庁長官・緒方某73歳は言ったという。
自分の前の職業に照らしての弁明だろうが、「被疑者を調べるわけじゃ」ないのは分かりきった話で、どういった方面へ投資しているのかぐらいは聞くのが常識的な確認であろう。但し実体のあった話とするための作り話なら、名刺を渡された、どこそこの誰それである、ファンド名はこれこれと言うと固有名詞を並べ立てたりしたなら、逆に捜査機関やマスコミから確認を取られて、たちまちウソが露見する。それを避ける方法がすべて曖昧模糊に付すということなのだろう。
いわば最初から存在しない人物だから、名刺を貰えるはずはないし、その素性については根掘り葉掘り聞けるはずもない。カネの動かない売買・登記がマスコミに知れて、取引の実体を後から付け加える必要が生じた、そのための登場人物、ただそれだけのことだろう。
朝鮮総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)責任副議長(72)は「仲介役の元社長に4億円余と緒方氏への謝礼金1000万円を渡した」とのこと。
元公安調査庁長官・緒方某73歳は自分は受け取っていないから、「寝耳に水でびっくり」して確認したところ、元社長は「あとで緒方先生に渡すつもりだった」と釈明。
総連が出資者を仲介する元社長に見つかった場合の謝礼をするのは当然かもしれないが、確実に出資者が見つからないうちからの支払いと言うことと、債務の支払いが不能状態に陥っている総連のが出す額にしては1億円は法外に過ぎる額ではないだろうか。
元社長への1億と比較して元公安調査庁長官・緒方某73歳への謝礼が1000万円と10分の1の少なさと、自分は知らされていなくて、「寝耳に水」の関知しない謝礼話は元公安調査庁長官・緒方某73歳は不正に関与していないとするには格好の筋書きとなるが、それが正当な取引であるなら、なぜ朝鮮総連側が買手側の元公安調査庁長官・緒方某73歳に謝礼を支払わなければならないのだろうか。もし支払う理由があるとしたら、第三者に託さずに直接支払うのが筋であろう。
<「元社長に疑念を抱くことがなかったのか」と記者団に問われると、緒方氏はぶぜんとして言った。「元社長を信頼していたが、僕の知らないこともある」
朝鮮総連を調査対象にする公安調査庁の元トップがなぜ、総連の取引に関与したのか。
「私は総連が問題を起こす組織ではないとは思っていない。公安調査庁や警察がウオッチするのは当然だが、北朝鮮を祖国と思っている在日朝鮮人の権益を圧迫していいのかとおもんぱかり、私も火中の栗を拾った」。緒方氏はこう説明する。「だまされたとは言いたくないが、乗せられたという表現がいいのかなあ」>
そう、「乗せられた」とすることで、実体のあった取引だとする筋書きは上々の完結を迎えることができる。東京地検が偽装取引だと断定したわけではないが、売買の成立は差押さえ逃れとなる事案であって、いくら日本弁護士連合会元会長・土屋某84歳が朝鮮総連の代理人だろうと、国民の税金を回収不能にしかねない不正に手を貸す行為となり、元公安調査庁長官・緒方某73歳はそのことへの協力者に名を連ねることとなって、登場すべき立場にある人物とは言えないにも関わらず実際に登場しているということはやはり奇々怪々な話とするしかない。
偽装取引と証明された場合は、その奇々怪々さは格段に増す。
贈収賄や各種談合、不正利益追求行為等々の悪事・不正に登場すべきでない学歴もあり、社会的地位を確固とした政治家・官僚、企業人、著名人が登場する奇々怪々な場面が所属する立場に関係なしに跡を絶たない。誰であろうと、人間から、その素性に関係なしに悪事・不正を取り上げることができないからだ。ましてや安倍晋三如き単純思考の政治家に取り上げることなどできようがない。
跡を絶たないという事実はこれからも起こり得る人間の現実として存在し続ける絶対真理であって、「規律を知る、凛とした美しい国つくり」を無とするアンチテーゼでもあろう。
自身の首相就任前の国家主義的歴史認識を封印し、国家主義を薄める「凛」とは無縁の奇々怪々を犯しながら、あるいは「 国のリーダーたるもの、国のために戦った人に追悼の念を捧げるのは当然。次の総理もその次の総理も靖国に参拝すべきだ」と言いながら、自分が総理になると中国・韓国との関係に配慮して表面的に参拝を控える奇々怪々な豹変を見せたが、それは自分の主張とは違ったことを平気でする「凛」を捨て去った態度であり、一旦口にした自分の言葉を軽くする行為でありながら、それをご都合主義に無視して、「規律を知る、凛とした美しい国つくり」を宣言して止まない裏切りの矛盾を犯し続けている。
こういったこと自体も「規律を知る、凛とした美しい国つくり」を無とするアンチテーゼとして立ちはだるかる人間の実態としてある避けようもない現実であろう。
こういった言う資格もない思想、主義・主張を人間から取り上げることも誰であろうとできない。
人間から悪事・不正を、あるいは矛盾行為を誰であろうと取り上げることができない、そのことが絶対真理として存在し続けるならば、悪事・不正、矛盾行為は法律や批判を以って厳しく一つ一つ対処していくしか方法はない。安倍首相はこういった人間の現実、人間の実態を悟るべきである。そうしたなら、少しは利口になって、「規律を知る、凛とした美しい国つくり」などといった標語の役にしか立たないような、自分を格好づけるだけの奇麗事は言わなくなるだろう。
ともあれ、「規律を知る、凛とした美しい国つくり」といった言葉は何ら役に立たない、人間の始末に負えなさを教えた朝鮮総連騒動の奇々怪々な登場人物の面々であった。