鳩山首相、党首討論で明かした“腹案”の正体

2010-04-23 07:53:26 | Weblog

   

 一昨日4月21日午後に衆議院で鳩山首相と自民・公明両党首との2回目となる党首討論が行われた。そこで鳩山首相は谷垣自民党総裁との遣り取りの中で、谷垣総裁が「前回のときに腹案ありとおっしゃった。そろそろ腹案をですね、きちっと明らかにすべき時期じゃないですか。総理、腹案って何なんですか」と迫ったのに対して、“腹案”はアメリカの理解が先で、先方の理解が得られなかった場合、それを地元に示すことはある意味迷惑になるからといったことを言って、この場で申し上げることはご容赦くださいと到頭明かさなかったが、実際は冒頭の谷垣総裁の追及に対する鳩山首相の答弁の中で間接的、且つ暗示的に答えている。

 どのような遣り取りがあったか、「msn産経」記事を参考引用する。
 
 《【党首討論詳報】》msn産経/2010.4.21)

 (冒頭発言)

谷垣氏「総理。先日は米国に行きまして、核セキュリティーサミットに参加されましたね。これは米国と日本がイニシアチブを取って始めたもので、確かシェルパ会合も日本で行われたと記憶しています。日本は唯一の被爆国という立場であり、当然このサミットでは外交的なリーダーシップを発揮しなければならない。こういうことであったと思います。ところが私はこれが終わりました後のメディアの評価を読みまして、がくぜんとしました。ワシントン・ポストであります。オバマ政権の当局者の意見によれば、このショーの最大の敗北者は、哀れでますます愚かな鳩山首相だったとまで言っている。私は怒り心頭に発しました。なんたる日本国総理大臣に対する暴言だろうと、私はそのように思いました。しかし、考えますと、その原因が総理、あなたにあるこということも否定できません。問題は前回の党首討論でも申し上げましたが、総理の政治の責任者としての発言。これが軽い。そして、うまくいかないときにはあたかも他人事のように責任を転嫁する。こういうことが今までいくつもありました」

 ――(中略)――

 そして先ほどの核サミットに返りますと、総理は10分間、オバマ大統領と会談をされたということであります。この10分間で何を議論されたのでしょうか」

 首相確かに、ワシントンポストのいわれるように、私は愚かな総理かもしれません。それを、昨年の12月において、もし、『エイヤ』と、辺野古という場所に新たな普天間の移設先を決めていれば、どんなに楽であったか、はかりしれません。そしてそのことでオバマ大統領との間で、日米関係が一見、良くなったようにみえたかもしれません。しかし果たしてそうでしょうか。私はそうは思わなかった。決して、愚かだったから、愚直だったから、あるいはそうかもしれません。しかし、結果として辺野古の海、果たして工事が進んだでしょうか。私は結果としてあと数年間、何も動かなくなる。結果として日米関係が一見よくなったにもかかわらず、結局は日米安保、おかしくなったね。あの結論、間違いだったじゃないか、そのようにいわれたかもしれない

 ここで鳩山首相の“腹案”なるものの正体を、少なくともどの程度のものか明らかにしている。

 前回昨3月31日の党首討論で鳩山首相は、「私には今、(5月末決着の)その腹案を持ち合わせているところでございます。そして、関係の閣僚の皆様方にも、その認識の下で行動していただいているところでございます」と解決の道筋を確約した。

 そして、「腹案は、現行案と比べて、少なくとも同等か、それ以上に効果のある案だと自信を持っている。さらに、普天間基地の危険性の除去は、さきの日米合意で移設を完了するとしている2014年より遅れることはできず、その前に解決したい」と、その“腹案”の効力を聞く者をして確信を与える保証を自ら断定的に力強く示した。

 ところが今回の党首討論では、「昨年の12月において、もし、『エイヤ』と、辺野古という場所に新たな普天間の移設先を決めていれば、どんなに楽であったか、はかりしれません。」と、弱気とも取れる一抹の後悔を見せている。

 勿論、引き続いての発言で、旧政権が決めた現行案でいけば、「日米関係が一見、良くなったようにみえたかもしれ」ないが、その「結論、間違いだったじゃないか、そのように言われたかもしれない」と、「エイヤ」と決めていたなら、「どんなに楽であったか、はかりしれ」ない現行案決定を否定しているが、“・・・かもしれない”、あるいは、“・・・でしょうか”と確信や断定から程遠い推定・仮定の用語を使った否定の推測となっている。決して現行案は間違いだとキッパリと断定しているわけではない。

 これは前の党首討論で述べた、「腹案は、現行案と比べて、少なくとも同等か、それ以上に効果のある案だと自信を持っている」の断定的な確約を自ら裏切る推定・仮定の展開であろう。

 もし発言どおりの自信を持っていたなら、「昨年の12月において、もし、『エイヤ』と、辺野古という場所に新たな普天間の移設先を決めていれば、どんなに楽であったか、はかりしれません。」などという弱気と把えられかねない言葉は決して口にすることはないはずである。私は間違っていないとさえ言うことができるだろう。

 いわばその程度の“腹案”だと、その正体を自ら暴露したのである。

 ところが谷垣総裁は引き続いての追及で、“腹案”の正体を明らかにするよう迫っている。
  
 《【党首討論詳報】》msn産経/2010.4.21)

 ――(中略)――

 谷垣氏きのう官房副長官が(鹿児島県の)徳之島の3人の町長に電話をされて、会いたいと。こういうことをおっしゃったそううです。国民もいったいこの問題を総理がどのように解決するか、じりじりしながら見ているんですよね。で、実際本音のところ、総理はどうやってこれを解決するつもりなのか。前回のときに腹案ありとおっしゃった。そろそろ腹案をですね、きちっと明らかにすべき時期じゃないですか。総理、腹案って何なんですか

 首相「あの、まず、私どもがあおったとおっしゃいますが、あおったんじゃありません。沖縄の県民の意思を理解しながら、私どもは選挙を戦ったわけでございます。そして、その結果として、選挙に勝利を収めたということでありますから、その前後を誤解されないほうがよろしいかとまず、申し上げておきます。そして、今、おたずねのことでございますが、私は今、ここで腹案というものを持っていることは事実でございます。しかし、それを当然のことながら、地元よりもまず、本当にこの腹案がアメリカに対して理解をされるかどうかということを水面下でしっかりとやりとりをしなければならない。そのように思っておりまして、それをやらないうちに、さまざま、地元のみなさんにこうなるからと言っても、先方が必ずしもそこに対して理解を示さないということになれば、まったくある意味で地元の方に対してご迷惑をおかけしてしまう。徳之島のみなさん方にもあのように大きな集会をなさったということで、われわれとして、まだ何も申し上げていない中であのように懸念をお与えしてしまったということには、大変申し訳ない思いであることは事実でありますが、まだ腹案というものをやりとりをしている最中でありますだけに、先方に対してそのことを今、どこだから、だから頼むなどというようなことを、このQT(党首討論)の立場で申し上げることができないことをどうか、谷垣総裁、ご容赦ください」

 谷垣氏「これだけ徳之島のみなさんにですね、不安を与えているんですよ。これだけ不安を与えておきながらまだ腹案を言えない。おかしかないですか。徳之島は案なのか、案ではないのか。あれだけの反対集会があった後も依然として案なのか。お答えください」

 首相「私は今ここでどちらかに申し上げれば、そのことによって徳之島のみなさんや、あるいはそうでない場合に、その別の方々にもご迷惑をお与えすることになる。それを、したがいまして、私はもっとしっかりとしたすりあわせ、やりとりを申し上げながら、その中で私どもとして、できるだけ早い時期が望ましいということは、言うまでもありませんが、そのときにみなさま方にお話をさせていただきます。今ここでは控えさせていただきますことをご容赦ください」

 谷垣氏「この期に及んで言えないというのではですね、徳之島の方に私は気の毒すぎると思うんです。徳之島の方々がですね、今、怒っているのはいくつか理由があると思います。1つ。今、アメリカと水面下で話し合うといようなことをおっしゃった。総理もアメリカに行って何かこれ、オバマさんにおっしゃったんでしょう。しかし、自分たちのほうにはちっともボールが返ってこないということにいらだちが高まっていることも事実です。それからもう1つ、ぜひ申し上げたいんですがね、今年はですよ、この沖縄の、いや、奄美の振興予算ですね。これをですね、29%カットしたんです。で、やっぱり離島はなかなか厳しい状況にある。そういう離島の経済的厳しさをいわばだしにして、もしこういう基地の移転につきあうならば何とかすると言わんばかりの手法がね、かいま見えることに奄美大島の人は怒っているんです。徳之島の人は怒っているんです。どうですか」

 首相「谷垣総裁、それはまったくの誤解でございます。奄美の振興に関して予算と、たとえば、札束を、この、いわゆるほっぺたをたたくようなやり方を今までされていたかもしれませんが、私ども新政権は決してそういうやり方はいたしませんから、どうぞそこはご懸念なきようにお願いします」

 相手側から断られたものの、平野官房長官の指示を受けて、「きのう官房副長官が(鹿児島県の)徳之島の3人の町長に電話をされて、会いたいと」。当然、首相が少しでも県外へと考えていることと併せて、“腹案”が内容としている移設地の対象は徳之島以外にないはずである。

 鳩山首相の、「地元よりもまず、本当にこの腹案がアメリカに対して理解をされるかどうかということを水面下でしっかりとやりとりをしなければならない。そのように思っておりまして、それをやらないうちに、さまざま、地元のみなさんにこうなるからと言っても、先方が必ずしもそこに対して理解を示さないということになれば、まったくある意味で地元の方に対してご迷惑をおかけしてしまう」はマスコミの多くが米側は地元合意のない案については協議はできないとの立場を取っているとして、それに矛盾する態度だと指摘しているが、米が理解しても、地元が理解しない場合、米の理解を反故にするのだろうか。

 反故にはできないからと、米の理解を楯に地元に同じ理解を求めるとしたら、いくら“説得”を手段とすると言っても、地元本来の理解を米の理解を優先事項としてそれに従属させる強制を働くこととなる。

 このとき1月24日の名護市長選の基地受入れ反対の稲嶺氏の当選を受けて発言した平野官房長官の「民意の1つであることは事実であり、それを否定はしないが、今後の検討では、そのことを斟酌して行わなければいけない理由はないと思う」が生きてくる。地元本来の“理解”を「民意の1つ」に貶めて、斟酌対象とはしないという手である。

 また、米の理解を優先事項として、それを地元に従わせることは政府が江戸時代の“お上の態度”を取ることでもあろう。

 《5月末決着、極めて大変と防衛相 重ねて表明》47NEWS/2010/04/22 12:04 【共同通信】)

 北沢防衛相(22日の参院外交防衛委員会で5月末決着に関して)「米軍、地元、連立与党というさまざまなハードルを越えなければならず、極めて大変なことだ」

 岡田外相「地元の理解、日米間の合意のために同時並行的に進めないといけない。どちらかをまず百パーセント固めてということは考えられない」

 “お上の態度”を取りたくなかったなら、鳩山首相が言っている米の理解を優先させる方法ではなく、岡田外相が言う「同時並行的」理解の方法を採るべきであるはずだ。

 地元理解だけではなく、米側が要求しているヘリ部隊と地上部隊の一体的運用可能120キロ以内距離に対して、沖縄本島と徳之島は約200キロの距離にある壁が立ちはだかっている。“腹案”などと勿体振っている場合ではない。

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