普天間移設/鳩山首相は自らの身内さえ説得していなかった

2010-04-19 05:35:05 | Weblog

   

 民主党鹿児島県連が17日夜、普天間移設問題で臨時常任幹事会を開催、政府検討の部隊一部徳之島移設案の白紙撤回を19日以降、鳩山総理大臣に申し入れる方針を決めたと、「NHK」記事――《民主県連 白紙撤回申し入れへ》(10年4月18日 5時52分)に出ている。

 この臨時常任幹事会開催は地元の支援者などから移設反対意見が多く寄せられていたことからの動きだという。会議は非公開、終了後、民主党鹿児島県連代表川内博史衆議院議員が発言している。

 「報道されている徳之島案は我々地元選出の議員にも何の話もない。政府から何の説明もないまま報道が先行し、島民や県民に不安が広がっている現状を遺憾に思う。早急に、政府に対し、そもそも徳之島案があるのかどうか確認し、あるとすれば白紙撤回するよう求めたい」

 言っていることは、報道のみで知っている徳之島一部移設案だということであろう。政府からは「何の話もない」「何の説明もない」、報道上でのみ存在する移設案だと。

 これが鳩山首相取って置きの“腹案”だからだろうか。主要関係閣僚のみの腹に収めて、秘密にしておく。だから“腹案”なのだと。

 だとしたら、笑えない冗談となる。

 政府からは「何の話もない」「何の説明もない」ということなら、徳島案に関して誰を相手に交渉していたのだろうか。ただ単に普天間の部隊のこれこれだけを徳島に移すことができたなら、沖縄の負担軽減と言える、県外移設の約束もある程度は果たしたとすることができると計算していただけのことなのだろうか。

 どちらであっても、不手際の印象のみが浮き立つ。鳩山首相がオバマ大統領と10分間の接触をしたのは日本時間13日午前。アメリカでは会談ではなく、会話(=talk)と位置づけられていたとテレビで報道していたが、オバマ大統領から決着を危ぶむ不信の声を掛けられたが事実とすると、鳩山首相の「ある意味でじっくりと2人だけで話ができました」はいくら体裁を飾る自己擁護とは言え、国民にウソの報告をしたことになるし、徳島案に関して地元に「何の話もない」「何の説明もない」ままにオバマ大統領に「オバマ大統領にも、ぜひ協力を願いたいということを申し上げ」、「5月末までにこの決着をするということを、私の方から申し上げた」ことになる。

 そして4日後の17日夜に民主党鹿児島県連が臨時常任幹事会を開催、報道上のみ存在する、あるかどうかも分からない徳島案が実際にあるとしたらの条件付きで、白紙撤回を求める決議を行った。

 いわば身内の民主党鹿児島県連に4日後に白紙撤回を求めると決議されるような欠陥を一部分含んだ移設案でもって鳩山首相はオバマ大統領との“会話”で「5月末までにこの決着をするということを、私の方から申し上げ」ていたのである。

 そこへきて昨18日日曜日に徳之島で基地移設反対の3度目の集会が開催された。《徳之島、三たび大規模集会 1万5千人「基地いらない」》asahi.com/2010年4月18日18時27分)

 3月28日の第一回約4200人(主催者発表)を遥かに上回る約1万5千人(同主催者発表)が人口約2万6千人の島に島内や奄美群島などから集まったという。幼児、子どもまで参加した反対運動となった。徳之島、天城、伊仙3町と市民団体が主催。

 「長寿、子宝の島に米軍基地はいらない」

 3町代表の大久保明・伊仙町長「もう政府は徳之島に基地をという案は出せないと確信した。振興策という甘い汁はいらない」

 記事は書いている。〈鳩山政権では、普天間のヘリコプター部隊の大半を徳之島に移す案を検討しているが、米側は「地元との合意がない」と反発。社民党も反対を表明し、民主党鹿児島県連も白紙撤回を求めており、協議は進んでいない。
 異例の規模の反対集会となり、首相が地元の合意を得るのは極めて困難な情勢であることが浮き彫りになった。25日には、沖縄県でも県内移設に反対する大規模集会が開かれ、鳩山由紀夫首相が繰り返してきた「5月末決着」は絶望的との見方も強まっている。(石松恒)〉――

 政府からは「何の話もない」「何の説明もない」といった不手際な状況をなぜ生じせしめたのだろうか。

 同じ反対されるにしても、最初に説明があって、その説明に対する賛成・反対の態度を求めた結果、反対という順序を取るべきだが、政府からは「何の話もない」「何の説明もない」うちから大規模な反対集会を打たれる逆順序な事態を生じせしめている。

 このような推移を逆説するなら成算を確信できるところまで持っていかなかった“腹案”だったということではないのか。党首討論で“腹案”を紹介するときだけ、確信ある言葉となっていたということではないのか

 なぜ、地元への説明を最初に持ってこなかったのだろうか。なぜ鳩山首相は自ら動いて、地元首長や地元住民、地元県連への説得を行わなかったのだろうか。頭を下げてお願いに回らなかったのだろうか。

 それでも反対を受けて断念せざるを得なくなったとしても、努力した姿勢だけはある程度の評価を受けることになるはずだ。「沖縄が負担するのは構わないが、自分の地元が負担するのはいやだという地域エゴに負けた」とすることもできる。

【追記】(7:35)

 鳩山政権が鹿児島県徳之島移設案に関して、〈今月中にも県や同島の3町の首長に正式に受け入れを要請する方向で調整に入った〉と《普天間移設、徳之島に正式要請へ 地元は反発、難航必至》asahi.com/2010年4月19日3時4分)が伝えている。

 既に反対運動が激しくなっているのに、「今月中」の正式な受入れ要請への調整となっている。

 伊仙町大久保明町長「政府が移設を打診してくれば、墓穴を掘る」

 遅きに逸した感のある「今月中」の正式申入れは、〈米側との実務者協議で具体的な移設案をまとめた上で候補地に正式提案する考えだった〉としていたことからの遅れだったとしているが、〈米側は地元合意のない案については協議できないとの立場〉を取っていたというから、このミスマッチを政府は放置したまま米側の合意を得ようと時間を費やしていたことになる。

 もしかしたら鳩山首相がオバマ大統領との10分間の“talk” で「オバマ大統領にも、ぜひ協力を願いたいということを申し上げ」たのは地元合意を後回しにして米側合意を先に得るための「ぜひ協力を」のお願いだったのかもしれない。

 いずれにしても、米軍合意重視、地元合意軽視の姿勢だったと受け取られたとしても仕方はあるまい。

 記事は最後に、〈政府高官の一人は「移設先は徳之島しかない」と明言。「政府が説明しないままこのような事態になっている。何も言わずにいると5月になる。とにかく表に出すことが必要だ」と述べた。〉と書いている。政府の失態を政府高官が自ら認めてた発言であるが、いくら認めても、例え徳之島が受入れに動いたとしても、遅すぎた事実を覆すことはできない。

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