「日立 エコポイントで最高益」の記事見出しが教える景気回復の道筋

2010-11-05 09:29:05 | Weblog

 今日のTwitter――

 ①YouTube に尖閣ビデ流出。野党の公開請求、政府対応批判の国民世論に抗し切れないと見て、公開を流出ビデオに替えてかわす作戦からの内閣による流出と見ることもできる。もしそうであり、流出ビデオが海保が撮影したすべてでないとしたら、中国を刺激する部分は隠している可能性が出てくる。

 ②YouTube に尖閣ビデ流出。あるいは中国を刺激しないために政府が公開したわけではないと言う形を取るための内閣による流出の可能性もあり。
 
 《日立 エコポイントで最高益》NHK/10年11月3日 1時45分)

 記事は万々(=この上なく)目出度しを謳っている。〈大手電機メーカー「日立製作所」のことし9月の中間決算は、いわゆる家電エコポイントの経済対策の効果などで、去年の赤字から黒字に転換し、半年間としては過去最高の利益となりました。〉

 メデタシ、メデタシ。

 日立製作所が発表した今年4月から9月までの中間決算、売上げ高は去年の同じ時期より9.2%多い4兆5024億円。最終的な損益は去年の1330億円の赤字から一転して1580億円の黒字。

 これは半年間としては過去最高の利益そうだが、この1580億円の黒字は急激な円高の進行で最終利益ベースで430億円の損失が出た上で獲得した1580億の黒字だというから、政府様々であろう。

 内訳は、テレビやエアコンなどの省エネ家電に対する家電エコポイントの経済対策の効果などで家電の販売が好調だったこと、国内や海外向けの自動車用の電子部品の販売が大きく伸びたことによるものだそうだが、自動車用の電子部品にしても、政府のエコカー減税制度やエコカー補助制度が恩恵した販売増加であろう。

 三好崇司日立製作所副社長「中間決算は好調だったが、急激な円高の進行で、先行きは楽観視できない」

 ホンネの半分はその通りだろうが、後の半分は税金であげた利益だから、国民に失礼に当たるからと手放しで喜ぶことができない気持の抑えも加味した円高懸念に違いない。

 以上のことは政府の補助があったものの、モノ(商品)が売れれば、急激な円高の影響を相殺して企業が利益を上げることができることを示している。

 政府の補助で利益を上げたのは電気関係だけではなく、当然、自動車関係も仲間に入る。

 《日産9月中間決算 新興国販売好調で最終益23倍》SankeiBiz/2010.11.4 16:50)

 説明は記事題名だけで十分過ぎる。

 日産自動車が10月4日(2010年)発表した2010年9月中間連結決算。本業の儲けを示す営業利益が前年同期比3.5倍の3348億円、最終利益も23.2倍の2083億円。

 恐れ多いから、拡大規模を赤太字で表した。

 中国を中心にアジア新興国の販売が大きく伸びたほか、国内も政府のエコカー購入補助金が追い風になったため。

 中国も景気対策で新車購入に補助金制度を設けている。

 円高が552億円のマイナス要因になったが、販売増やコスト低減で、営業利益は3年ぶり、最終利益も4年ぶりの増益を達成したという。

 記事は最後に「自動車各社の決算情報」という中見出しで記事をリンクつきで記載している。(ここではリンクなし)

1.スズキ、“稼ぎ頭”インド好調 9月中間、最終益2.4倍304億円(11月3日)
2.ホンダ「エコカー」「アジア」寄与 9月中間 最終利益6.6倍4084億円(10月30日)
3.通期利益、過去最高に ダイハツが上方修正(10月29日)
4.三菱自、9月中間68億円の営業黒字 エコカー補助や新興国販売が好調(10月29日)
5.富士重、9月中間の業績予想を上方修正 エコカー補助で過去最高(10月26日)

 殆んどが「エコカー補助」の恩恵を受けていることを題名で謳っている。

 だが、この企業の大儲けを一般国民は何らかの形で恩恵を受けていたのだろうか。今年9月に発表した日銀短観(企業短期経済観測調査)によると、企業の景気判断は大企業の製造業で景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた差がプラス8ポイントとなり、6期連続で改善としている(NHK)。

 多分この状況を受けてのことだろう、今年夏のボーナスは4年ぶりの増加だそうだ。《今年夏のボーナス、1人平均36万円 4年ぶり増加》izasahi.com/2010年11月1日12時9分)

 厚生労働省11月1日発表の毎月勤労統計調査。今年夏の賞与は1人平均36万7178円で、前年比1.1%増え、4年ぶりに増加というもの。

 これは前年比9.7%減だった2009年の反動という面もあり、水準は依然厳しい状況にあると解説しているものの、プラスとなったことは企業のそれなりの好景気を示している。

 調査は常用労働者(パート含む)5人以上の全国約3万3千事業所を対象。

 産業別平均支給額の最多は電気・ガス・水道業の79万6412円(前年比3.2%減)。最少は飲食サービス業の7万2670円(区分変更で前年比なし)。

 就労者数が多い製造業は45万2212円(前年比3.9%増)、卸売業・小売業は29万1096円(同6.8%増)。減少幅最大は医療・福祉の5.6%減で、28万224円。

 9月の全産業平均の現金給与総額は前年同月比0.9%増の26万8010円で、7カ月連続で前年を上回り、基本給は同0.1%増の24万5236円で、29カ月ぶりに前年より増えた。9月の平均残業時間は同7.6%増の9.9時間、残業代も同9.9%増の1万7899円で、いずれも9カ月連続で前年を上回った。

 以上から分かることは、電気・ガス・水道業はそれぞれが公益事業として電気事業法、水道事業法、ガス事業法に守られていることによる安定収入であって、直接的には一般生活者の参考にはならないはずだ。特に水道事業は市営、あるいは市関連の企業局といった組織の経営が多く、事業従事者は安定した収入が保証されている公務員か準公務員の地位にある。

 一般生活者の参考になるのは製造業以下であるが、製造業はエコ関連で利益を上げているが、卸売業・小売業以下になると、製造業と15万円から16万円と差がつく。

 このことは部分的には製造業の利益が卸売業・小売業以下にまで循環していない状況を示すはずだ。

 エコ関連の企業が軒並み多額の利益を上げていながら、一般には利益還元が起きていない状況は国全体としての景気が芳しい構造にないことを示唆している上に、例えモノ(商品)が売れても余裕所得層といった部分的消費者に限った消費では、そのことによって一部企業が利益を上げても、社会全体の景気回復は適わないということを教えている。

 いわば低所得層をも含めた生活者全体でモノ(商品)を買う状況が出現しないと景気回復局面を迎えることはできないということであろう。

 だが、逆に低所得層は困窮した状況にあることを端的に示す記事がある。《生活保護受けた世帯 過去最多に》NHK//10年11月4日 4時2分)

 〈7月に生活保護を受けた世帯は、これまでで最も多いおよそ139万世帯に上っていたことが厚生労働省のまとめで分かりました。〉という内容である。これは前の月の6月よりも1万1819世帯も増加しているそうだ。

増えた世帯の内訳――

▽「高齢者」が2666世帯
▽「母子家庭」が1204世帯
▽「障害者」が1084世帯
▽仕事を失った人を含めた「その他の世帯」が最多で4429世帯――

 人数から言うと、生活保護受給者は前の月より1万6722人増えて、192万3898人に上っている。

 生活保護費受給者が増加しているということは生活保護を受けるまではいかないその予備軍の生活水準をも下げているはずだ。新たに生活保護受給に加わった生活困窮者だけの生活水準の低下ではなく、低所得層全体に亘る生活水準の低下であるはずだからだ。

 エコ関連の政府補助は前自民党j麻生政権末期から開始していて、景気回復策として民主党政権が引き継いだ。麻生政権は平成21年度第1次補正予算で約2946億円、第2次補正予算で約2321億円。合計約5268億円も事業予算としてつけている。民主党政権は家電エコポイント関連予算だけでも22年度予算に6000億円もつけている。

 家電エコポイント制や普通車では25万円、軽自動車12.5万円の補助金が支給されるエコカー補助金制度とエコカー新車購入した場合、取得税と重量税が無料となるエコカー減税制度で関連企業が利益を上げている過程で生活保護受給者の増加が過去最多となったという状況は関連企業と高価な新車を購入できる余裕所得層の利益にはなっても、中低所得層、少なくとも低所得層を占める一般生活者には何ら恩恵をもたらしていなかった構図を描いていたことを証明している。

 今デパートなどで円高差益還元と称してセールを展開し、多くの顧客を集めているが、それとて余裕所得層相手であり、彼らとデパート等に利益をもたらしても、一般の利益となって広がる可能性は低い。

 既に触れた、例えモノ(商品)が売れても余裕所得層といった部分的消費者に限った消費では社会全体の景気回復は適わないという条件から外れているからだ。

 当然、社会全体に亘って言える景気回復とは一部の生活者の購買に頼るのではない、低所得者でもその収入に応じてモノ(商品)を買うことができる所得状況をつくり出すことが必要条件となる。

 この条件自体が政府の補助によるエコ関連制度が一般生活者には何ら恩恵をもたらさなかったばかりか、本質的な景気回復に殆んど役に立たなかったことによって証明されている。

 消費税の一時停止によって低所得生活者に対しても5%分の可処分所得を増やすことを提案してきたが、政府は上に補助を与えて関連企業に利益を提供する景気対策ではなく、下に何らかの対策を打って、社会全体に景気を行き渡らせる対策を打つべきではないだろうか。

 モノ(商品)が売れる状況を余裕所得層のみではなく、非余裕所得層にも広げるということである。

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