詭弁家枝野の尖閣ビデオ流出を「外交カードを失った」は非公開の薄汚い正当化に過ぎない

2010-11-07 09:03:50 | Weblog

 昨6日午前ののBSテレビ番組。《【尖閣ビデオ流出】「内閣として責任ある」民主・枝野氏》MSN産経/2010.11.6 12:24)

 尖閣映像ネット流出について――

 枝野幹事長代理「結果的に内閣として責任がある。この問題の前には警察情報が流れた。抜本的に情報管理のあり方を変えないといけない」――

 「抜本的に情報管理のあり方を変えないといけない」――、「情報管理のあり方」よりも、基本的には簡単に情報が洩れる時代だという警戒感を常に持ち、そのことに備える姿勢のあり方が問題となるはずである。そういった緊張感ある姿勢を常時維持していたなら、自ずと適正な情報管理の方法を見い出すであろう。

 そのためには身内でも信じないことである。上役であろうと部下であろうと、相互に信じないことにして、重要な情報を取り出す場合は誰がいつ取り出したか分かるシステムとする。 

 インターネットを通じて情報を保存してあるパソコンに外部から侵入があって漏洩したということなら、そのようなパソコンにそもそもからして残しておくこと自体が簡単に情報が洩れる時代だという警戒感を備えていなかったことになる。

 ビデオ流出による外交上の影響について――

 枝野幹事長代理「いくつかあるカードの一つは使えなくなった。向こう(中国)が公開されたくないものを公開しない方が有利な立場にある」

 果して詭弁家枝野が言っているようにネット流出以前までのビデオ非全面的公開が中国に対して「いくつかあるカードの一つ」となり得ていたのだろうか。そのカードによって中国側が何か沈黙していた、あるいは日本に気兼ねした態度を取っていたのだろうか。

 例えば中国側から日本に対して関係修復を求めるサインを出したとか。日本との間の戦略的互恵関係を崩したくない、戦略的互恵関係を確認するために中国側から首脳会談を働きかけたとかいった動きが一つでもあったのだろうか。

 だが、実際には常に日本側からの働きかけとなっている。ベルギーのブリュッセルで行われたASEM(アジア・ヨーロッパ首脳会議)でも前以て日本側が温家宝首相との会談を働きかけ、菅首相がベルギー入り後も日本側は働きかけながら実現せず、首脳会議閉幕後の10月4日夜、やっと温家宝首相との間で25分間の会談を持つことができた。

 その25分にしても、中国は正式の会談ではなく、「交談」(話し合い)に過ぎないとした。

 10月末開催の東アジアサミットを機会とした日中首脳会談にしても日本側が模索し、菅首相がベトナム入りしてからやっと会談が決定したが、直前になって中国側からキャンセルされ、このことを埋め合わせるように10月30日午前、菅首相は温家宝首相とブリュッセルの25分よりも少ない10分間の懇談を行ったが、中国側はこの顔合わせをブリュッセルの「交談」よりも格下げの「寒暄」(時候のあいさつ)程度だとした。

 中国漁船衝突事件から始まったこの日中間の一連の経緯は中国と日本との位置関係が主導権を握っているのは日本ではなく、中国であり、日本は中国をして決定権を握る場所に常に立たせていたことを証明している。日本側が中国に主導権と決定権を委ねてきたとも言える。

 いわば全体的なカードは常に中国側の手の内にあったということである。この関係を言い換えると、中国は受ける側、日本は受けて貰う側としていた。菅内閣は対中外交に於いて既に対中追従外交を開始していたのである。

 ビデオが日本の「いくつかあるカードの一つ」などとはなっていないことと日本が働きかける側に立たされていて、働きかけて受けて貰う立場にあることを示す記事がある。

 《日本の世論に神経とがらせる》NHK/10年11月6日 5時41分)

 洪磊中国外務省報道官談話「日本側の行為は違法で、映像によってもこの事実を変えることはできない。違法な行為を隠すこともできない」

 この談話には「釣魚諸島(尖閣諸島)は中国固有の領土である」とする文言は入っていないが、「中国固有の領土」を前提とした談話であることは一目瞭然である。「日本固有の領土」を前提としていたなら、このような談話は出てこない。

 ネット流出の尖閣ビデオが中国のネットにも流出していることを受けて、民放テレビが中国国内で中国人通行人にインタビューしている映像を流していた。

 中国人若者「どっちがぶっつかったかは問題ではない。尖閣諸島は中国の領土だから、逮捕自体が間違っている」

「日本人を打倒すればいい」という過激な意見を言う若者もいた。

 逮捕された中国人船長にしても「中国固有の領土」を前提として漁を行っていたとしたら、日本巡視船への衝突は違法な退去命令に対する正義の抗議とすることもできる。当然、日本官憲による逮捕は違法行為、不当行為と見ているだろう。

 「中国固有の領土」だとしていて、自分たちの行為は正しい、間違っていないとしている立場に立っていることからしたら、まさしく「日本側の行為は違法で、映像によってもこの事実を変えることはできない。違法な行為を隠すこともできない」は正当性ある主張となる。

 このような立場と主張の前にビデオを全面公開しなかったことが果してどのようなカードとなり得ただろうか。何のカードともなり得ないことの証明以外の何ものでもないはずだ。

 それをビデオのネット流出を以って、「いくつかあるカードの一つは使えなくなった」とさももっともらしげに言う。

 「NHK」記事――《“映像の公開 慎重に判断を”》(10年11月6日 13時39分)では枝野発言は記事題名どおりとなっている。

 枝野「刑事事件の証拠品のビデオ映像を、中国人船長の最終的な刑事処分も確定していない段階でどこまで公開してよいかは、刑事訴訟手続きの問題がある。今回の件(ネット流出)で、事実上映像が出ているからということだけでは割り切れない」

 要するに今後とも全面公開したくない口実として「いくつかあるカードの一つは使えなくなった」を持ち出したに過ぎないと言うことであろう。
 
 尖閣諸島に於ける中国の立場と主張を許してきたのは代々の日本政府が「尖閣諸島は日本固有の領土である」とする国家意志を曖昧、事勿れな原則で扱ってきたからだろう。

 枝野の発言は小賢しいばかりの詭弁に過ぎない。

 最初の「NHK」記事題名は今日7日(2010年11月)から横浜市で開幕のAPEC首脳会議会場前で日本人による大規模な反中デモが起きることの中国側の懸念を伝えるものである。

 崔天凱外務次官「日本政府に誠意があるなら、両国関係が直面している困難を克服し、戦略的互恵関係の推進を続けていくべきだ。さまざまな妨害が生じないよう、最大の努力を払うべきだ」

 この発言から記事は次のように解説している。

 〈尖閣諸島沖で起きた中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突したときの状況を撮影したとみられる映像がインターネット上に流れている問題で、中国政府は、来週予定されている胡錦涛国家主席の訪日に向けた雰囲気を損ねかねないと受け止めており、日本国内の世論の動向に神経をとがらせています。〉――

 例え大規模な反中デモが発生、中国国内のインターネット上にその映像が流れたとしても、従来からそうしてきたように極力ネットアクセス禁止や検索削除等の情報統制で対抗して、国内での影響を抑えるに違いない。

 胡錦涛主席が恐れるのは対外的影響に対するメンツであろう。主席来日を狙い撃ちした日本人による大規模な反中デモの映像が世界中に流れる。そこに尖閣諸島問題で中国に対する批判が生じた場合の少なくとも国際世論上不利な立場に立たされるかもしれない都合の悪さを懸念してことだと予想できる。

 ということは、ビデオを全面公開しなかったことよりもAPECの反中デモの方がカード足り得る可能性を秘めることになる。

 だが何よりも崔外務次官の発言が相も変わらず日本側への要求となっている点に留意しなければならない。友好関係構築の環境整備に向けた働きかけを日本政府に求め、「最大の努力を払うべきだ」としている。そして中国は日本側が行った環境整備の上に乗っかろうと言うわけである。

 まさしく日本が働きかける側に立たされていて、働きかけて受けて貰う立場にあることを示している。

 これは中国が主導権と決定権を握っていた、あるいは日本側が中国に主導権と決定権を委ねていた従来からの関係に添った崔外務次官の要求であろうが、直接的には戦略的互恵関係の修復の名のもと、横浜でのAPEC開催を機会とした胡錦涛主席との日中首脳会談を恋焦れ、この期に及んでも決定していない、その実現に向けた日本側の働きかけを背景としていて、その働きかけに対する要求として出ているはずである。

 かくまでも日本は中国に対して付き従う関係に置いている。カードと言えるカードなど持っていないし、例え持つことになったとしても、ここ一番で有効に切ることができない追従関係となっている。

 以前、ブログに取り上げたことだが、詭弁家枝野は10月2日(2010年)、尖閣沖での中国漁船衝突事件についてさいたま市で講演で対中国観について発言している。

 枝野「中国との戦略的互恵関係は、外交的な美辞麗句だ。中国は悪しき隣人でも隣人は隣人だが、日本と政治体制が違う。・・・・政治的システムや、法治主義、人権に対する考え方を見ると、日本と米国のような同盟関係を中国との間で期待することは間違っている。法治主義が通らない国だという大前提でお付き合いしないといけない。・・・・中国に進出する企業、取引をする企業はカントリーリスクを含め自己責任でやってもらわないと困る。・・・・隣の国同士、どんなに大嫌いでも、仲が悪くても付き合わなくてはいけないし、顔を見たら挨拶ぐらいはしないといけない。・・・・日本と同じ方向を向いたパートナーとなり得るモンゴルやベトナムとの関係をより強めるべきだ」

 リーマンショックを受けた「100年に一度と言われる金融不況」から僅かながらでも抜け出ることができたのは主として中国外需の恩恵を受けた成果であり、枝野が言っていることは既に承知の上の、最大限の国益を見込めるからこその中国との間の戦略的互恵関係であり、その実質的利益性から言って、決して「外交的美辞麗句」などではない。

 但し、国家と国家の関係は国益と国益のぶつかり合いであり、自国国益を損なってまで優先させる戦略的互恵関係は存在しないということである。“互恵”という相互性を失うからだ。

 だが、菅内閣は領土問題で毅然たる態度を損なってまでして戦略的互恵関係を優先させている。少なくとも精神的な自国国益の損傷を認めず、経済的な国益を優先させる戦略的互恵関係に立とうとしている。

 枝野が問題とすべきはこのような身内である菅内閣の姿勢であり、それを言わずに「日本と政治体制が違う」といった誰もが既に常識としていることをあげつらって、中国側にのみ過ちを置こうとしている。

 いわば枝野が言っていることはビデオのネット流出を「いくつかあるカードの一つは使えなくなった」としているのと同様、菅内閣の姿勢を正当化しようとする薄汚い詭弁に過ぎないということである。

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