菅首相続投の選択基準、「首相をたびたび交代すべきではない」の結末

2010-11-08 07:04:44 | Weblog

 菅・小沢の民主党代表選は9月14日(2010年)。菅首相が民主党所属国会議員票では拮抗したものの、地方議員・党員・サポーター票で圧倒的大差をつけて勝利。

 勝因は「首相が短期間で代るのは良くない」、「首相をたびたび交代すべきではないから」といった短期交代否定論と小沢アレルギーが7、80%を占めた有権者の支持による。

 代表選が行われている当時、アメリカのメディアは次のように論評していた。

 「指導者の頻繁な交代は目まいがするほどで、ますます非生産的だ」

 「日本の総理大臣が頻繁に交代することは、世界にとってマイナスだ」

 「回転ドアから出てくるように次々と指導者が交代するのは、日本だけでなく世界の得にもならない」――

 非生産的で、世界にとってマイナス。日本国民も似たような考えを持った。

 当時でも菅首相に対する指導力、政策への期待ではどのマスコミの世論調査でも10%以下しかなかった。アメリカのメディアのように非生産的で、世界にとってマイナスだから・・・とまで考えたかどうかは分からないが、首相がコロコロ代るのは良くないという理由を唯一の選択肢とした世論を受けた地方議員・党員・サポーターの支持を背景に菅首相は代表選で国会議員以外では圧倒的支持で民主党代表に選ばれ、引き続いて首相を続投することとなった。

 菅首相が再び代表となり、改造内閣を発足させた直後の朝日新聞世論調査での内閣支持率は57%。不支持は24%。菅首相が小沢元代表を破って首相を続けることになったことを「よかった」と答えた有権者は72%の圧倒的好感度。よくなかったの嫌悪感度はたったの12%。

 私自身は後者である。鳩山首相辞任を受けた代表選で菅氏が「普通のサラリーマンの息子」だと自身を宣伝したとき、指導力のない政治家だと看做した。政治は結果責任である以上、これから何をなすかが問題であって、出自は政治能力と何ら関係ないからだ。

 コロコロ代るのは良くないからと続投を支持したものの、菅続投で「政治がうまく進む」と受け止めた有権者は28%。「うまく進まない」と醒めた目の有権者が38%で内閣支持率とも好感度とも異なる見解となっていた。

 それから約2ヶ月。共同通信社が11月6、7日に実施した世論調査では菅内閣支持は前回調査47・6%から14・9ポイント下落の32%に急降下。不支持率は前回36・6%から+12ポイントボーナス付きの48・6%。

 最悪は外交政策。74%が外交を評価しないと散々な点数をつけている。

 読売新聞社が11月5~7日に実施した全国世論調査でも共同と同じ傾向を描いている。菅内閣支持率は前回10月1~3日実施の53%から滑落の35%。不支持率は前回37%から18ポイント増の55%。

 前回84%もあった民主党政権の外交・安全保障政策に対する不安感が7ポイントも増えて91%。

 記事も書いているように尖閣とロ大統領国後島訪問に対する無為無策が影響したことは間違いない。

 このように見てくると、菅・小沢代表選当時、7、80%の国民が「首相が短期間で代るのは良くない」、「首相をたびたび交代すべきではないから」等々を続投支持の唯一の基準としたことは何だったのだろう。

 政治はそれぞれが得意分野とする政策を持った雁首を揃えたチームワークなのだから、指導力があり、自身の政策判断が適切且つ合理的であるなら、これらを背景とした決断によって適切な政治遂行は可能となるはずだが、支持率を下げているということは指導力、政策判断共に代表選当時の見立てどおりに相変わらず慢性的欠陥症の状態にあったということであろう。

 だが、大半の世論と共に民主党所属の国会議員の半数、地方議員と党員、サポータの大多数が指導力、政策への期待を続投支持の基準から外した。

 首相の資質として必要条件とする実質的な能力は指導力と政策創造能力と政治遂行能力であって、コロコロ代るとか代らないとかの外形的理由ではないはずだが、外形的理由を優先させた。

 そしてその成果の答が世論調査に現れた。「首相が短期間で代るのは良くない」、「首相をたびたび交代すべきではないから」といった選択基準に目を閉じ、指導力、政策への期待といった選択基準にのみ目を開くことにした。そうしたお陰で菅首相と菅内閣の実態がよりはっきりと見えてきたということであろう。

 「首相が短期間で代るのは良くない」、「首相をたびたび交代すべきではないから」といった選択基準に目を閉じたことは10月31日までの2日間で行ったFNN世論調査の「首相にふさわしい政治家」で、「ふさわしい人がいない」が最も多い27.0%、前原外相が10.2%、菅首相8.9%の数値に現れている首相交代の意思表示が証明している。

それとも2ヶ月も経てば、首相を代えてもいい時期だということなのだろうか。

 他の世論調査でも支持率を下げていることは首相交代の意思表示を大分含んでいるはずである。

 こうまで支持率を下げても、やはり「首相が短期間で代るのは良くない」、「首相をたびたび交代すべきではないから」と言う選択基準で菅首相が首相でいることを支持している有権者はどのくらい残っているのだろうか。

 菅内閣が支持率を下げても、公明党の協力を得て、数の力を助けとして長期政権を続けるかもしれない。だが、国民は無能な政治家を首相として頭に戴くことになる。

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