菅仮免が真っ赤なウソつきだと分かる国会事故調参考人証言「東電全面撤退問題」

2012-06-06 14:06:44 | Weblog




 菅仮免国会事故調参考人証言についての前のブログに引き続いて桜井委員の残りの質問が当選の全面撤退問題と、菅が最後に責任逃れに原子力災害対策特別措置法に対する見解を述べていたから、その両方を取り上げることにする。

 菅が全編真っ赤なウソつきだと分かる発言となっている。 

 桜井委員「ありがとうございました。次に俗に撤退問題と言われている東電の撤退問題についてお伺いします。

 東電の方は総理の方にどのように申し出てこられたのか、どなたから、どの方から報告があったのでしょうか」

 菅仮免「15日の午前3時頃だったと思います。私は11日の発災後1週間、夜中も官邸に詰めておりましたので、仮眠と言いましょうか、奥の部屋でそういう状態にあったところ、経産大臣から相談があると、秘書官から起こされたというか、連絡がありました。

 そこで経産大臣が来られて、『東電が撤退したいと、そういう話がきている、どうしようか』と。

 そういう形で撤退の話を聞きました」

 桜井委員「それについてどのように思われ、どのように受け止められましたか」


 菅仮免「私はそれまでもですね、この原子力事故がどこまで拡大するのか、どこで停まってくれるのか、どこまで拡大するのか、私なりにも頭を巡らせていました。

 そいう中で少なくともチェルノブイリは1基の原子力です。スリーマイルも事故を起こしたのは一つだけです。しかし福島第1サイトだけでも6基の原子力と7つの使用済燃料プールがあります。

 20キロ以内にある第2サイトにはさらに4基の原子炉と4基のプールがあります。

 もしこれらがすべてですね、何らかの状況でメルトダウンなり、原子炉の破壊や、そうしたプールの破壊が起きたときにはチェルノブイリの何倍、どころでなくて、何十倍、何百倍というですね、放射性物質が大気中なり、海水中なりに出ていくと、そのときの及ぼす影響というのは、どれ程のものになるかと言うことを私なりに考えていました。

 そういうふうに考える中で私なりに思っていたのは、これは見えない敵との戦いだと。やはり何としても抑え込まなければいけないと。

 私自身はやはり命を賭けてやらざるを得ないと。

 そういう戦いなんだと。

 こういう認識を私の中で持っていました。

 ですから、経産大臣からその話があったときに撤退という言葉を聞いて、いやー、飛んでもないことだと。先ずそう感じました」 

 桜井委員「先程福島の原発を視察された際の成果みたいなこととして、吉田所長に対する信頼が高いというご発言を受けたのですが、責任感があるという。

 その吉田所長が現場で指揮を取っている東電として全員が撤退する、あるいは撤退するような申し入れをしているということについてどのように思われました」

 菅仮免「吉田所長とのですね、私は直接会話を、電話ですが、したのは色々とご指摘がありましたので、私なりにもう一度確認をしてみましたが、確か2回であります。

 一度は14日の夕方から夜にかけて、細野補佐官、当時の補佐官に、これは本人から聞きましたが、細野補佐官から聞きましたが、吉田所長から2度電話があったそうです。

 1度目は非常に厳しいというお話だったそうです。注水が難しいと考えていたその理由が何か燃料切れで注水が可能になったからやれるという話だったそうで、この2度目の時に細野補佐官から私に取り次いで、吉田所長がそう言っているからということで、私に取り次いでくれました。

 その時に話をしました。その時は吉田所長はまだやれるという話でした。

 もう1度は私の方から秘書官に調べさせて電話をしたということなんですが、どういうことを話したのか、事細かに覚えておりません。一般的に言えば、何らかの状況をお聞きしたことがもう1度あると認識しております。
 
 それ以外には私から直接と言いましょうか、誰かを通して直接話をしたことはありません。

 また私が携帯の電話を私が聞いていたということを野村委員が言われたので、私は全部調べてみました。(首を傾げて)記憶は呼び戻って来ませんし、同席をしていた秘書官、補佐官、審議官3名にも聞いてみましたが、そういう場面は見聞きしていないと言っておりまして、私の携帯電話にも登録は少なくとも記録はされておりません」

 桜井委員「清水社長に呼ばれまして、清水社長はいわゆる撤退問題についてどのような返答をしておられましたでしょうか」

 菅仮免「私の方から清水社長に対して、『撤退はあり得ませんよ』と、いうことを申し上げました。それにたいして清水社長は『ハイ、分かりました』。そういうふうに答えられました」

 桜井委員「その回答を聞いて、当時総理としてどのように思われました」

 菅仮免「その回答についてですね、勝俣会長などが清水社長が撤退しないんだと言ったと言っておりますが、少なくとも私の前で自らは言われたことはありません。

 私が撤退はありませんよと言ったときに、『ハイ、分かりました』、言われただけであります。

 国会の質疑でも取り上げられておりますけれども、基本的には私が撤退はあり得ませんよと言ったときに、(清水社長の方から)そんなことは言っていないとかですね、そんなことは私は申し上げたつもりはありませんとか、そういう反論は一切なくて、そのものを受け入れられたものですから、そのものを受け入れられたということを国会で申し上げたことをですね、何か清水社長の方から撤退はないと言ったことに話が少し変わっておりますが、そういうことはありません。

 私としては清水社長が、『ハイ、分かりました』と言ってくれたことは、一つは、ホッとしました。

 しかしそれでは十分ではないと思いました。そこで併せて私の方から統合対策本部をつくりたいと。そしてそれは東電本店に置きたい。細野補佐官を常駐させる。あるいは海江田大臣もできるだけ常駐をしてもらう。

 そういう形で私は本部長に。海江田さんと、その時確か勝俣会長と申し上げたつもりですが、会長か社長か海江田大臣と副本部長。事務局長は細野補佐官。そういう形でやりたいということを申し上げて、清水社長が分かりましたと了承していただきました。

 さらに私が申し上げたのは、それでは第1回の会合を開きたいから、東電の方で準備をして欲しい、どのくらいかかりますかと聞きましたら、確か最初2時間ぐらいと言われたので、もう少し早くしてくれということで、確か1時間ぐらい後に東電に私として第1回の会議を開くために出かけました」

 桜井委員「私の方が最後の質問の段階になると思いますが、総理の方に情報が上がらないと色々なことがあったと思います。で、本来地下に緊急対策センターというものがあって、そこに情報が集約されてくるということは総理もご存知だったと思いますが、なぜ近く、ずうっととは申しませんが、その近くに、発災から暫くの間は、その中、オペレーションセンターという中にあるわけですから、そこで情報の集約や情報の指示に使わなかったのでしょうか」

 菅仮免「先ず地震・津波という最大級の災害と、そしてこれまた最大級の原発事故というものが事実上同時に起きているわけです。地下のセンターにも、私も勿論、実際に戻って先ず行きました。

 先程申し上げました緊急対策本部を立ち上げました。同時に二つの極めて重要なことをやるということが非常に難しかったことが一つと、もう一つは総理そのものが、今ご指摘の緊急、何とか、言いました、チーム、これはどちらかと言えば、危機管理官がヘッドのチームでありまして、総理がそこに常駐しているということにはなっていませんし、そういう組織ではありません。

 必要があれば、同じ官邸に私、おりますから、そこの報告なり、何らかの決済が上がってくることになっております。加えて原子力災害については先程来お話がありますように、私が申し上げましたように、本来はオフサイトセンターについては、つまり炉以外のものについてはですね、オフサイトセンター、現地のオフサイトセンターがやることになっていたわけです。

 それが動かない。炉のことについては基本的には電気事業者がやることになっていました。しかしこれも後程議論になるかもしれませんが、小さい事故ならそれで済んだかもしれませんが、しかしベント一つ取ってもですね、一つ取ってもですね、ベントをするかどうかということは炉の問題であると同時に、それは影響が一般住民にもどんどん出るわけですから、それを事業者だけで判断することは、それはできないわけでありまして、そういった意味では現在の原子力災害対策特別措置法が想定した事故というものは、今回のようなシビアアクシデントで何十万、何百万という人に影響を及ぼすということには対応できていなかったわけでしてありまして、そういう点で私が地下にいた、いないということではなくて、元々総理がじぃっと、じぃっとと言うか、いるという仕組みになっておりませんし、その災害対策特別措置法そのものが、言えばたくさんありますが、例えば、オフサイトセンターも地震と原子力事故が別々に起きることを前提にしているわけですよ。

 地震で副大臣が入れないなんていうことは想定していなんですね。それらのすべての想定が不十分だったためにやらざるを得ないという意味で色々なことをやりました。

 それで本来の姿だと思っているわけではありません。 しかしやらなければならない状況であるということは是非ご理解を頂きたいと、こう思っています」

 桜井委員「ありがとうございました」

 (以上、桜井委員の質問は終了。)

 清水社長が海江田経産相に電話でなのか、撤退したいと申し入れ、海江田経産相は菅に取り次いだ。

 もし撤退の申し入れが事実なら、撤退は福島第一原発の現場の吉田所長から出た要請であるはずである。勝手に東電本店が撤退を決めるはずはないし、決めることはできないはずだ。

 先ずこのことを前提に置かなければならない。 

 桜井委員は菅が信頼を置いている吉田所長が指揮を取っているのに東電が撤退すると申し入れてきたことについてどう思うか尋ねた

 小此木潔・朝日新聞編集委員が書いた、《福島原発「悪魔のシナリオ」回避で菅直人氏の役割を検証・再評価すべきだ》WEBRONZA/2012年04月03日)には海江田経産相が記憶している清水東電社長の電話の内容と、その電話の後、枝野官房長官が現場の吉田所長と電話でやり取りした内容を次のように伝えている。

 3月14日深夜の海江田氏が記憶する清水社長の電話。

 清水東電社長「(福島)第1原発の作業員を第2原発に退避させたい。なんとかなりませんか」

 この後、枝野が吉田所長に電話で確かめる。 

 枝野官房長官(吉田第1原発所長に)「まだやれますね」

 吉田所長「やります。頑張ります」

 電話を切ってから、枝野が呟く。

 枝野官房長官「本店の方は何を撤退だなんて言ってんだ。現場と意思疎通ができていないじゃないか」

 この記述どうりだとすると、本店が勝手に撤退を決めたことになる。

 上記記事では、〈15日午前3時、官邸で枝野官房長官、海江田経産相、細野補佐官、寺田補佐官らが菅首相にこう言った。「東京電力が原発事故現場から撤退したいと言っています」〉となっているが、菅は海江田経産相から聞いたとしている。

 当然、吉田所長の「まだやれます」という言葉を伝えていたはずで、それが「14日の夕方から夜にかけて」「吉田所長から2度電話」があり、「2度目の時に」「吉田所長はまだやれるという話」だったと言っていることに相当するはずだ。

 15日午前4時17分(上記「WEBRONZA」)、清水社長を官邸に呼ぶ。

 菅としたら、この食い違いを当然持ち出さなければならない。現場が「まだやれる」と言っているのに本店の方が撤退したいと申し入れるのはあり得ない事実であって、あまりに奇怪過ぎるからだ。

 それにしても菅は携帯の番号を聞いたと言われているが記憶はないだの、同席をしていた者に聞いてみたが、そういう場面は見聞きしていないと言ってだの、質問とは関係のないことを雄弁に延々と話している。

 質問とは関係ないことを雄弁に延々と喋るというのも見事な逆説だが、相手の話を的確に聞いてそれに対して的確に答える、的確な情報処理能力(情報の把握と情報解釈、解釈した情報の的確な伝達)に欠けている。一国のリーダーとして著しい非適格性をさらけ出している。

 桜井委員「清水社長に呼ばれまして、清水社長はいわゆる撤退問題についてどのような返答をしておられましたでしょうか」

 菅仮免「私の方から清水社長に対して、『撤退はあり得ませんよ』と、いうことを申し上げました。それに対して清水社長は『ハイ、分かりました』。そういうふうに答えられました」

 現場が「まだやれる」と言っているにも関わらず、本店が撤退したいというのはどういうことなかと、その矛盾を尋ねたといったことは一言も触れていない。

 聞くべきことを聞かないこの不自然な矛盾は何を意味するのだろうか。

 菅はこのあと国会質疑に言及、「そんなことは言っていないとかですね、そんなことは私は申し上げたつもりはありませんとか、そういう反論は一切なくて、そのものを受け入れられたものですから、そのものを受け入れられたということを国会で申し上げたことをですね、何か清水社長の方から撤退はないと言ったことに話が少し変わっておりますが、そういうことはありません」と自己正当化に努めている。

 いわば菅の「撤退はあり得ませんよ」に対して、「ハイ、分かりました」以外に清水社長の反応は何もなかったことになる。

 但し、「ハイ、分かりました」で撤退問題は片付いたはずだが、「それでは十分ではないと思」って、統合対策本部を東電本店に設置したいと申し出て、直ちに第1回の会合を開催したいからと、確か1時間ぐらい後に東電に私として第1回の会議を開くために出かけ」た。

 しかし桜井委員は撤退問題についてこれ以上追及はしなかった。

 菅が東京・内幸町の東電本店に乗り込んだのは15日午前5時半過ぎだと言われている。部屋に入るなり、「撤退なんてあり得ない!」と怒鳴ったとされているし、部屋の外にもその声が漏れたとされているが、「ハイ、分かりました」で片付いていたものの、念を押す意味で再度口にしたというのは理解できるが、怒鳴ったが事実だとすると、念を押す意味から外れることになる。

 この矛盾は別の委員があとから追及するかもしれない。 

 だが、何よりもの矛盾点は首相を退陣してから受けたマスコミのインタビューでは菅の「撤退はあり得ませんよ」の言葉に対しての菅が言う清水社長の反応は違ったものになっている。

 《菅前首相 原発事故を語る》NHK NEWS WEB/2011年9月12日 5時24分)

 2011年9月11日のNHKインタビュー。

 菅仮免(清水東電社長を官邸に呼び出して)「『撤退したいのか』と聞くと、清水社長は、ことばを濁して、はっきりしたことは言わなかった。撤退したいという言い方もしないし、撤退しないで頑張るんだとも言わなかった。私からは、『撤退は考えられない』と強く申し上げた」――

 《菅前首相インタビュー要旨》時事ドットコム/2011/09/17-19:58)

 記者「東電は『撤退したい』と言ってきたのか」

 菅前首相「経産相のところに清水正孝社長(当時)が言ってきたと聞いている。経産相が3月15日の午前3時ごろに『東電が現場から撤退したいという話があります』と伝えに来たので、『とんでもない話だ』と思ったから社長を官邸に呼んで、直接聞いた。

 社長は否定も肯定もしなかった。これでは心配だと思って、政府と東電の統合対策本部をつくり、情報が最も集中し、生の状況が最も早く分かる東電本店に(本部を)置き、経産相、細野豪志首相補佐官(当時)に常駐してもらうことにした。それ以降は情報が非常にスムーズに流れるようになったと思う」・・・・

 最初のインタビューの「清水社長は、ことばを濁して、はっきりしたことは言わなかった。撤退したいという言い方もしないし、撤退しないで頑張るんだとも言わなかった」と次のインタビューの「社長は否定も肯定もしなかった」の二つの反応はほぼ符合する。

 だが、この両反応とこの国会事故調での、「ハイ、分かりました」ではまるきり食い違っている。

 但し枝野官房長官の5月27日国会事故調参考人証言が上の両反応と一致する。《枝野氏“情報発信十分でなかった”》NHK NEWS WEB/2012年5月27日 18時15分)

 詭弁家枝野「清水社長との正確なことばのやり取りまでは覚えていないが、『そんなことしたら、コントロールできなくなり、どんどん事態が悪化する』と私が指摘したのに対し、、清水社長は、口ごもった答えだったので、部分的に残すという趣旨でなかったのは明確だ」・・・・・

 菅の両インタビュー証言と枝野の国会事故調証言は口裏合わせでもしたかのように奇妙に一致する。

 だが、枝野の5月27日国会事故調証言からたった1日経過の翌5月28日菅の国会事故調証言に於ける清水社長の発言は、「ハイ、分かりました」と明快な反応に変わっていた。

 どこかにウソがなくて、このような食い違い、あるいは矛盾は生じない。一見小さなウソのように見えても、証言全体が自己正当化を働かせた言葉の羅列となっている以上、責任逃れのウソとなるということだけではない。一国の総理である。悲惨な大きな被害をもたらした地震・津波、さらに原発事故に関わる政府対応の国民に対する説明・情報公開の一つである以上、小さなウソでは済まない、他の発言にも関わっていく真っ赤なウソと言える。

 最後に桜井委員は官邸地下の緊急対策センター近くで的確な情報処理になぜ当たらなかったのか、そうすれば的確な情報処理ができたのではなかったかという示唆のもと尋ねる。

 対して菅は「危機管理官がヘッドのチームでありまして、総理がそこに常駐しているということにはなっていませんし、そういう組織ではありません」と形式的なことを言っている。

 常駐云々ではなく、どこにいようとも、的確な情報収集と情報処理に基づいた指揮・命令が滞りなく行うことができていたかどうかが問題であるはずだ。桜井委員の質問からそのことを瞬時に汲み取って情報処理する能力を欠いているからだろう、誰がヘッドだ、総理は常駐することにはなっていないだと組織上の形式で答えることになる。

 その上で聞かれてもいない「原子力災害対策特別措置法」にまで踏み込んで答えている。勿論、責任逃れの趣旨となっている。

 「炉以外のものについてはですね、オフサイトセンター、現地のオフサイトセンターがやることになっていた」、「炉のことについては基本的には電気事業者がやることになってい」た。ベントは「炉の問題であると同時に、それは影響が一般住民にもどんどん出るわけですから、それを事業者だけで判断することは」できない。

 そして「現在の原子力災害対策特別措置法が想定した事故というものは、今回のようなシビアアクシデントで何十万、何百万という人に影響を及ぼすということには対応できていなかった」と法律の不備に責任転嫁している。

 その具体例の一語として「オフサイトセンターも地震と原子力事故が別々に起きることを前提にしている」と詭弁そのものの薄汚いゴマカシを言っている。

 厳密にはあくまでも地震・津波を受けた原子力事故であって、そのような状況下での原子力事故に限った対応を必要としたはずだ。

 飛行機が原子力施設に墜落して重大な原子力事故が起きた場合、法律は飛行機墜落と「原子力事故が別々に起きることを前提にしているわけですよ」と言うだろうか。

 何が原因であっても、法律に基づいて対策組織を立ち上げ、法律が義務づけている原子力安全委員会や原子力安全・保安員の協力と助言を受けながら事故そのものへの対策を臨機応変に統括して事故を収束させていくことが政府の危機管理であるはずだ。

 さらに「地震で副大臣が入れないなんていうことは想定していなんですね」と言っている。

 ここには臨機応変の危機管理対応能力という点についての視点が一切ない。法律が対応するのではなく、あくまでも初期的には法律に基づいて政府が対応するものの、法律で足りないところは臨機応変の対応で補っていくのが危機管理であるはずだ。

 原子力災害対策特別措置法に基づいて先ず頂点の組織として原子力災害対策本部(本部長:内閣総理大臣)を設置、そのもとに法律が規定している各関連組織を立ち上げて、後は各組織員の臨機応変の対応で処理、それらすべてを原子力災害対策本部本部長の菅が統括すると同時に各関連組織を事故収束に向けて機能的・機動的に動かしていく。

 いわばあくまでも政府のその場その場の対応が問題となるのであって、それらの対応まで原子力災害対策特別措置法が補ってくれるわけではない。

 また、菅仮免は官邸に20以上の対策組織を立ち上げて、結果的に情報処理、指揮命令系統に混乱を来たし、批判を受けて整理することになったが、そういった組織にしても全て法律が規定しているわけではないはずである。

 さらに菅仮免は10人近い内閣官房参与を任命しているが、これも法律が規定しているわけではない。自身の危機管理対応に応じた任命であったはずだ。

 法律には書いてないことでも自身が自身の危機管理対処方法に基づいて行動していながら、その一方で法律が想定していないことを取り上げて、さも不備があるかのように言う。

 どちらも的確に行動できていなかったのだから、的確な危機管理に基づいた臨機応変の対応ができていなかっただけのことに過ぎない。

 責任転嫁も甚だしいと言わざるを得ない。

 法律はオフサイトセンターに「地震で副大臣が入れないなんていうことは想定していなんですね」などと言っているが、法律がそこまで規定しなければ的確な対応が取れないということなら、すべて法律その他のマニュアルに則った機械的な危機管理しかできないことになる。

 東電の「福島第一原子力発電所事故の初動対応について」にはオフサイトセンターについて次のような記述がある。

 〈オフサイトセンターの原子力災害現地対策本部は、地震による外部電源の停電や非常用ディーゼル発電設備の故障の影響もあって当初活動ができない状態となっており、一部要員を除き、オフサイトセンターが開設された翌12日まで待機〉、12日3時20分に活動開始、〈その後、原子力災害の進展に伴い、オフサイトセンター周辺の放射線量の上昇や食料不足などに伴い、継続的な活動が困難との判断がなされ、15日に現地対策本部は福島県庁に移動した。〉云々。

 3月11日午後原発事故発災直後から地震の影響で機能不全に陥り、3月12日午後まで待機、3月12日3時20分機能回復を受けて活動開始したものの、継続的活動が困難となって3月15日に現地対策本部(オフサイトセンター)を福島県庁に移動した。

 なぜもっと早くに福島県庁に移動しなかったのだろうか。ここにも臨機応変な危機管理対応の不在を見ることができる。

 東電本店に福島事故対策統合本部を設置したのが3月15日5時35分。但し上記東電の「福島第一原子力発電所事故の初動対応について」に原子力災害対策特別措置法がオフサイトセンターに設置を義務づけている原子力災害現地対策本部に関して次のような記述がある

 オフサイトセンター設置の原子力災害現地対策本部には自治体組織も加わることになっているにも関わらず、〈最終的には当社本店が事故対策の統合本部となったが、自治体組織は統合本部に組み入れられなかった。〉

 リアルタイムの情報共有に自治体組織は預かることができなかった。

 東電本店への福島事故対策統合本部設置は法律が規定しているわけでない。素早い危機管理対応ではなかったが、臨機応変の対応で設置を決めた。要するに法律が対応するわけではなく、あくまでも政府の対応が問題となっていることを証拠立てている。

 だが、そこに自治体組織を加える臨機応変の危機管理対応を政府は果たすことができなかった。

 大体が法律の記述通り、あるいは法律が想定した規模・事態内で事故が発生すると想定すること自体が菅仮免の危機管理能力不足、危機管理に関わる創造性の貧弱さを暴露している。

 法律への責任転嫁は自身の危機管理無能力を誤魔化す心理操作であり、真っ赤なウソつきを性格としていなかったならできない責任転嫁であろう。

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