鉢呂民主党3党合意各修正法案賛成討論の全体的統一性が期待不可能の「社会保障と税一体改革」

2012-06-28 12:24:59 | Weblog

 6月26日衆院本会議「社会保障と税一体改革」関連法案の民主党、自民党、公明党の賛成討論を聞いた。3党で修正協議を行い、合意したと言っているが、幾つかの項目を先送りして、新設の「社会保障制度改革国民会議」で議論し、消費税率8%引き上げ時にまで結論を得るとしている。

 要するに消費税増税が先に決まって、社会保障制度改革分野に関しては部分的に結論を得ているが、全体的な完成は後回しとなっている。

 当然のことだが、各分野の各政策を全体のバランスを考えてすべて積み上げていって「社会保障と税一体改革」の全体を形作り、各政策に対して有機的な統一性を持たせた全体像とはなっていない。

 妥協を見い出すことができる政策に関してのみ、多分、それなりの成果を上げなければそれぞれの党が納得しないからだろう、先に決めたという方式の結論となっている。

 当然、ツギハギの積み上げとなって、有機的な統一性を持った「社会保障と税一体改革」の全体像は望みようがなくなる。

 民主、自民、公明にとっては3党合意ということで、賛成討論はメデタシ、メデタシシャンシャンシャン調子で終わるかと思ったら、野党の与党に対する力関係を如実に誇示した、いわば野田首相と内閣にとっては苦い賛成討論となっている。

 NHKの中継では野田首相が度々屈辱的な赤い顔を見せていた。

 ここでは民主党鉢呂吉雄議員の賛成討論の藻を取り上げて、必要個所だけを拾ってみる。

 鉢呂吉雄民主党「社会保障制度改革推進法案、年金制度改革関連2法案及び再修正案、子ども・子育て関連2法案及び両修正案、認定こども園改正案、税制改革関連2法案及び両修正案に賛成する立場で討論を行います」・・・・

 如何に妥協事項が多かったか、「改正案」、「両修正案」の言葉が多いことが証明している。

 鉢呂吉雄民主党「我が国が誇る皆年金、あるいは皆保険が達成されてから半世紀が経ちました。この間少子高齢化の進行や非正規労働者の増大など、我が国の社会・経済を取り巻く状況は大きく変化しました。

 今後とも社会保障制度を持続可能なものにしていくためには給付と負担の両面、即ち社会保障制度改革と消費税を含む税制の抜本改革を一体的に行うことは避けて通れない道でもあります」・・・・

 要するに政治が無力であったために少子高齢化が進行するままに任せ、非正規労働者の拡大と若者の貧困化を招くに至った。社会の矛盾が噴き出すたびに、「抜本改革だ、抜本改革だ」と政治家は騒ぐが、果たして“抜本能力”を発揮し得た試しがあっただろか。先送り、玉虫色の決着、後退等が精々の“抜本能力”であったはずだ。

今回の「社会保障と税に一体改革」にしても各政策を通して有機的な統一性を持たせた全体像に仕上げることができなければ、やはり抜本的改革は望めないに違いない。

 鉢呂吉雄民主党「特別委員会では130時間にも及ぶ委員会審議を行うなど、与野党が真摯に議論を重ねて参りました。そして民主・自民・公明の修正協議がなされ、合意に基づく立法府としての一定の結論を出すに至ったことは我が国の政治ににとって極めて意義があることであり、この間議論に携わったすべての皆さまに深く敬意を表するものであります」・・・・・

 時間をかければ、それだけ中身が充実するとは限らない。あくまでも「一定の結論」であって、それぞれのバランスを考えて積み上げていって、相互的な有効性と全体的な統一性を持たせて全体の決着をつけたわけではない。「社会保障制度改革国民会議」に先送りした結論もあって、相互反映的な全体的統一性という点で欠ける点がありながら、「我が国の政治ににとって極めて意義がある」などとトンチンカンなことを言っている。

 鉢呂吉雄民主党「民主党はこれまで人生前半の社会保障の充実を訴え、子ども・子育て支援を社会保障と税の一体改革に於ける重要な柱と位置づけて参りました。政府提出法案は全ての子どもに良質な生育環境を保障し、子ども・子育て家庭を社会全体で支援し、幼保一元化を含め、関連する制度と財源を一元化して新しい仕組みを構築し、質の高い教育・保育の一体的提供、保育の量的拡大、家庭での保育支援の充実を図るために必要な制度を導入するためでありました。

 特別委員会に於ける審議の中で幼児教育や子育て支援の基本的な考え方、実施主体に関わる考え方について各党それぞれの考え方がありましたが、喫緊の課題についてそれぞれが共有できたと考えています」

 総合こども園の創設を子ども・子育て支援に関わる「社会保障と税の一体改革に於ける重要な柱と位置づけ」てきたはずだが、総合こども園の「ソ」の言葉も触れずじまいで、続けて自公が制度として設けた現行の認定こども園に対する賛意表明となっている。

 与党の主体性を頭数の点で売り渡さざるを得なかったということであり、これが野田首相が言う「不退転」の正体であるということであろう。

 鉢呂吉雄民主党「最後に申し上げます。私はかつて消費税が3%から5%に上がる最終判断をしたときの大蔵政務次官を務めさせていただきました。国民に増税をお願いするという仕事は政治家として非常に辛いものであり、避けて通ることができるのであれば、誰もが避けて通りたいと思うところがあろうと思います。

 しかしどんなに苦しい時でも国民に正直に説明をし、少しでも多くの国民に賛同していただけるよう、最善の努力をすべきである、このように思います」・・・・・

 増税に「賛同していただけるよう、最善の努力」をする以前に健全な財政運営、実効性ある政策立案と遂行にこそ最善の努力を払うべきだろう。

 これらを怠ってきた末の増税のお願いであり、自分たちの不始末がつくり出したとは決して言わない悪化した財政や、少子高齢化、人口減少等の「説明」に過ぎない。

 自分たちがつくり出したツケをエサに増税を釣り上げようとする自己都合なお願いに過ぎない。

 このことに対する厳格な自省心を持ち、ムダを徹底的に排除できる厳格・健全な財政運営のノウハウ、実効性ある政策立案と遂行のノウハウを政治家・官僚共に身につける「最善の努力」を払わなければ、来た道と同じ道を歩むことになるに違いない。

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