原子力安全・保安院が大飯再稼動決定後に言い出した原発敷地内断層活動性「安全再点検」の矛盾

2012-07-02 10:31:58 | Weblog

 経済産業省原子力安全・保安院が全国の原発敷地内にある断層の活動性に対する国の安全審査の議論を専門家に再点検して貰う方針を6月29日に固めたという。《保安院:原発内の断層、再点検へ 再稼働の大飯も対象》毎日jp/2012年06月29日 15時00分)

 保安院のこの再点検要請は東日本大震災後、断層が近接する活断層と連動して動くと指摘する声が高まっていることを受けた動きだと記事は書いている。

 いわば現在広く指摘を受けているように非活断層であっても、近くに活断層があって、地震によって活断層が動くと非活断層まで誘導を受け、想定していた以上の揺れを起こす危険性が生じると言うことなのだろう。

 勿論、全国の原発が対象だから、再稼動開始の大飯原発も再点検の対象に含まれる。

 だが、昨日日7月1日午後9時再稼動開始後の再点検となる。記事は、〈結果次第では再稼働のスケジュールに影響が出る可能性がある。〉と解説しているが、なぜ再稼動決定前に再点検を終了して、その結果を受けた上で、いわば安全の上にも安全を期した上で再稼動の判断を決定しなかったのだろうか。

 どうも矛盾を感じる。

 記事も触れているが、渡辺満久東洋大教授(変動地形学)等は大飯原発敷地内の断層の一種「破砕帯」について政府が再稼動を決定する前から再調査を要求していたのである。

 再点検は7月3日保安院開催の専門家から意見を聞く会合でその作業を開始するそうだ。

 初回は、関西電力美浜(福井県)・同高浜(同)・日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(同)

 これまでの安全審査の資料や議事録を点検し、現地での再調査が必要か検討。

 続いて、日本原子力発電敦賀(同)・東北電力東通(青森県)・大飯原発等。

 記事。〈国は原発の建設時や、原発の耐震設計審査指針改定に伴う耐震性再評価で、その断層が12万~13万年前以降に活動した活断層かどうかを確認。「安全」と判断したものに稼働を認めてきた。しかし震災後に得られた科学的な知見を踏まえ、これまでの審査を見直すことが必要と判断した。〉――

 要するに2006年制定の「新耐震指針」過去12万~13万年前以降に活動していない断層は、再び地震を起こさないとの考え方に基いて作成されたものだというが、この規程に反して12万~13万年前以降に活動した活断層と確認できたとしても、安全審査で安全と判断したものは稼働を許してきたことになる。

 抜け道を用意したようなもので、ここに矛盾を感じる。

 記事は渡辺満久東洋大教の要求に対して枝野詭弁経産相の6月29日閣議後記者会見の発言を伝えている。

 枝野詭弁経産相「既に活断層ではないと判断しているが、専門家会合で新たな知見があるか不断の検討はしていく。

 新たな知見が判明すれば再稼働に影響するが、そうでないというのが現時点での認識だ」

 渡辺満久東洋大教授の「破砕帯」に関わる危険性の指摘を「新たな知見」と見做していなかったことになる。

 だが、再稼動決定後に再点検を指示、その対象に大飯原発まで入れた動きに矛盾はないだろうか。

 順序が逆だと、再稼動が遅れる、あるは再点検次第で再稼動が中止になる可能性も否定できないから、再稼動を優先させたといったことはないだろうか。

 渡辺満久東洋大教の「破砕帯」の指摘と、調査要求は6月9日(2012年)当ブログ記事――《野田首相の言葉巧者を以てしても隠蔽不可能なマヤカシを漂わせた大飯原発再稼動正当性の記者会見 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で取り上げた。

 「YOMIURI ONLINE」記事(2012年6月8日)――《大飯原発敷地内 破砕帯は活断層か》に基づいて、以下のことを書いた。

 渡辺満久・東洋大教授(変動地形学)と鈴木康弘・名古屋大教授(同)が市民団体の依頼で資料を分析、関西電力大飯原発3、4号機の敷地内を通る「破砕帯」と呼ばれる断層は「活断層の可能性が否定できない」との調査結果を纏めた。

 破砕帯は断層運動などで砕かれた岩石が帯状に延びたもので、渡辺教授等が指摘する破砕帯は、2号機と3号機の間の地下を南北に通る「F―6破砕帯」(長さ約900メートル)のこと。

 但し破砕帯は関電が1985年に国に大飯原発3、4号機の設置許可申請を提出する際に行った断層面を掘り出す「トレンチ調査」を実施した際、既に把握していた。

 だが、坑内南側で破砕帯を覆う地層に変位がないことから「12~13万年前以降に動いた活断層ではない」と判断、経済産業省原子力安全・保安院も2010年の耐震安全性再評価で関電の評価結果を改めて「妥当」と評価し、安全性に問題ないとした。

 渡辺満久東洋大教授「トレンチ調査の断面図を見ると同じ坑内の北側でF―6破砕帯を覆う地層が上下にずれているように見える。粘土が含まれていることも断層活動があった可能性を示す。活断層である可能性は否定できない。

 大飯原発周辺にある海底活断層が動くと敷地内の破砕帯も連動して動く可能性がある。原子炉直下を通る破砕帯もあり、詳しく調査するべきだ」

 上出「毎日jp」記事が触れていた枝野詭弁家6月29日閣議後記者会見の、新たな知見次第で「不断の検討はしていく」の発言はブログに書き入れた、野田首相の6月8日(2012年)午後の「大飯原発再稼働記者会見」で、新たな知見が提示された場合、安全基準を見直していくとした発言との共同歩調だろう。

 野田首相「勿論、安全基準にこれで絶対というものはございません。最新の知見に照らして、常に見直していかなければならないというのが東京電力福島原発事故の大きな教訓の一つでございました。そのため、最新の知見に基づく30項目の対策を新たな規制機関の下での法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています」

 だが、野田首相にしても枝野詭弁家と同様に、渡辺満久・東洋大教授と鈴木康弘・名古屋大教授の調査結果を新たな知見だとは見做さなかった。

 見做さずに大飯原発再稼動に政府としてのゴーサインを出し、7月1日に至って、政府からしたら順調にということなのだろう、大飯原発3号機を再稼働に向けて起動した。

 渡辺満久・東洋大教授と鈴木康弘・名古屋大教授の調査を伝えた記事は6月8日付である。調査を開始、終了が6月8日1日でできるわけがないから、調査結果をまとめた日は少なくとも6月7日か、それ以前である。

 このことは市民団体が6月8日付で、『大飯原発3・4号の破砕帯、活断層3連動に関するおおい町長への要請書』と題して要請書を提出したことでも証明できる。 

〈2012年6月8日

専門家が指摘している、大飯原発の真下に延びるF-6破砕帯が活断層である可能性について、詳細な調査のやり直しが必要です。

活断層の3連動の評価について、「念のため」ではなく、実際に連動した場合の影響について、詳細な調査が必要です。

これらの調査・評価が完了するまでは、大飯原発3・4号の再稼働について判断しないでください。〉・・・・・

 「専門家が指摘している」とは渡辺満久・東洋大教授と鈴木康弘・名古屋大教授を指すはずだ。

 上記ブログで取り上げたが、保安院も専門家の指摘を受けて6月7日に記者会見を開いている。《大飯原発地下の断層、保安院が活動の可能性否定》YOMIURI ONLINE/(2012年6月8日10時03分)

 〈政府が再稼働を目指す関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の敷地の地下にある断層が活動する可能性を専門家が指摘した問題で、経済産業省原子力安全・保安院は7日、「断層の上にある地層は変形しておらず、活動性はない」と否定した。

 同日の記者会見で森山善範・原子力災害対策監が述べた。〉・・・・・

 新たなと言うよりも、改めて提示した知見が指摘する危険性を否定した。

 言ってみれば、大飯原発再稼動の断層面からの安全性の保証となっている。

 果たして専門家の指摘から保安院が地質学者等に依頼して再調査する十分な時間があったのか疑わしい。

 ブログには次のように書いた。〈調査報告から1日しか経過していないのだから、保安院が地震学者やその他を依頼して再調査する時間はなかったはずだ。いわば1985年を基に安全判断をした。〉・・・・

 〈調査報告から1日しか経過していない〉は間違いで(謝罪)、渡辺満久・東洋大教授と鈴木康弘・名古屋大教授が調査を纏め終わったのはいつの日か調べてみたものの分からなかったが、新聞報道の6月8日の日付、市民団体の「おおい町長への要請書」6月8日の日付から判断しても、それ程遠くに遡るはずはないから、調査纏めは6月8日に近い日だったはずだ。

 特に市民団体は政府が当時は大飯原発再稼働に向けた動きを活発化させていたから、おおい町長への要請書提出は急いだはずで、専門家の調査結果公表からさして日を置かなかったと考えることができる。

 さらに保安院が改めて断層の活動性を再点検することにした動きと併せて考えると、1985年の調査結果をそのまま利用したと疑う私の判断はさして間違っていないように思える。

 専門家が指摘した時点で、新たな知見として直ちに再点検に入らずに、指摘する危険性を否定した保安院の矛盾した行動からすると、大飯原発再稼動を優先させた全国の原発対象の断層活動性の再点検に思えてならない。

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