NHKの朝のテレビが求職者支援制度利用者の約70%が就職に繋がったと伝えていたから、ホー、大したもんだなと思った。視ているうちにその70%がなかなかのクセモノと分かった。放送の記事。
《支援制度の利用者 約70%が就職》(NHK NEWS WEB/2012年7月3日 4時6分)
この70%は厚労省の目標を上回った記録だそうだ。
求職者支援制度は雇用保険に入っていないため仕事を失っても失業給付を受け取れない生活者が毎月10万円の生活費と交通費を受給しながら就職を目指して職業訓練を受ける制度。2011年10月からスタート。厚生労働省が今年1月末までに訓練を終えた2600人余りを対象に調査。
3カ月以内に就職できた生活者は約70%。
パソコン技術等を身につける「基礎コース」の受講・訓練者70%(厚労省目標60%)
介護やマンション管理などの技術を学ぶ「実践コース」の受講・訓練者72%(厚労省目標70%)
ここまでを見ると、すべての数字が制度創設の創造性、制度設計の才能、制度運営の的確性の素晴らしさ、非の打ち所のなさを物語っている。
記事。〈今回の調査はアルバイトやパートなどに1度でも採用されれば就職と見なされているため、どこまで安定した雇用に結びついたかは分かっていません。
このため厚生労働省は今後、改めて就職先を調査して制度の効果を検証することにしています。〉
野田首相は散々に社会保障制度の持続可能性を言っているが、わざわざ制度を設け予算を注ぎ込んでおきならが、雇用に於ける持続可能性に関しては重点を置いていなかったようだ。
置いていたなら、雇用期間の観点からの調査となったはずだ。
また如何なる政府であってもその雇用政策は安定雇用を優先眼目としているはずで、そのことにも反した、「安定」なるキーワードを無視した調査となっている。
要するに意味のある調査とは決して言えない。意味がなければ、当然、ムダな調査だと言うこともできる。
そもそもから言って、一度で済ますべき調査を〈改めて就職先を調査して制度の効果を検証する〉二度手間のムダまで費やすことになる。
このムダは単に仕事のムダで終わらない。当たり前のことだが、費用のムダを伴う。
いわば最初からムダ排除の作業手順を身につけた自然な発想としていなかったことを意味する。
ムダ排除をごく自然な発想としていないと、至る所でムダをつくることになる。
次の記事がそのことを証明している。《求職者支援制度 就職率は70% 厚労省まとめ》(MSN産経/2012.6.28 23:07)
記事前半は上記記事とほぼ同じ内容となっている。
2011年10月スタートから今年3月末までの利用者厚労省予定目標15万人に対して実質利用者5万800人。
記事。〈同制度は働ける世代が生活保護を受給する前の「安全網」となることを期待されているが、活用上の課題も浮き彫りとなった。〉
要するに5万800人に対する就職率70%であって、15万人に対する70%ではないということである。にも関わらず、雇用期間も明示しない、アルバイト・パートもひっくるめた就職率70%という数字に制度の有用性を見せかけた調査報告は情報操作そのものである。
年齢別利用者
25~29歳――15・7%。
35~39歳――14・7%
30~34歳――14・5%
講座分野別利用者
基礎コース――27・4%
介護コース――18・8%
営業・販売・事務コース――15・2%
情報通信コース――10・6%
確かに制度は始まったばかりである。だが、今年5月(2012年)の年齢階層別完全失業者数34歳~15歳は117万人。上記記事が、〈同制度は働ける世代が生活保護を受給する前の「安全網」となることを期待されている〉と書いてあることは既に触れたが、昨年10月時点に於ける保護受給世帯は過去最多の141万世帯。このうち病気や障害がなく働ける年齢の世帯は23万世帯。
また2009年時点で生活保護世帯に占める世帯主が39歳以下である生活保護世帯数の割合は2009年で11万70世帯。生活保護全世帯に占める割合は9.0%。しかも不況が長引いて、生活保護世帯は年々増えている。
生活保護世帯に関しては両者はかなりの部分で重なるだろうが、求職者支援制度利用者予定目標15万人は若年失業者117万人のうち失業保険非受給者のみならず、労働可能年齢者生活保護23万世帯や若壮年生活保護11万世帯等の存在のうち何割かを対象としているはずで、そうでありながら予定目標15万人に対して5万800人しか吸収できなかったということは制度設計にどこか不備があるか、運営方法に不備があるか、広報に問題があるか、あるいは全てに問題があるか、いずれかを考えなければならない。
新卒者にはそれなりの求人があるが、中途就職の場合、求人がなかなかないというのは理由にならない。このような傾向をも前提に入れた制度設計であるはずだし、景気回復に期す原因療法ではなく、不況を前提として失業者を手当していく対処療法であることも計算の内としていたはずだからだ。
計算に入れていなかったと言うことなら、制度設計そのものに欠陥があったことになる。
6月3日閣議後記者会見。
小宮山厚労相(3分の1の利用率いついて)「生活保護の前の第2のセーフティーネット(安全網)としてしっかりと充実させたい。必要なことをPRし、周知をしていくことが大事だ」(YOMIURI ONLINE)
広報だけの問題と把えるのは判断能力を欠いていることになる。広報のみならず、制度自体の検証、運営方法の検証も必要としなければならないはずだ。
すべての検証を通して、目標とした効果を阻害するムダがどこにあったかが分かる。
と同時にムダをつくり出す能力とそのことに費やした費用のムダを問題にしなければならない。
いわば費用対効果から見たムダである。
求職者支援制度の初年度事業費は労働保険特別会計455億円(労使折半の雇用保険料)を含む628億円。
この予算額は利用者予定目標15万人を想定して計算した必要額であるはずだ。
だが、実際に利用したのは5万800人。利用率約39%。事業費628億円に対して利用率約39%は約245億円の効果。628億円-245億円=383億円のムダが生じていたことになる。
政府予算は628億円-雇用保険料455億円=173億円×利用率39%=約67億円。国費のみで106億円のムダである。
率にしたら、173億円に対して61%ものムダを費やしたことになる。
こういったムダをつくりながら、政府は2012年度の「求職者支援制度」予算として、訓練定員24万人(2011年度15万人+9万人)、1383億円(2011年度628億円+755億円)、内国庫負担額361億円(2011年度173億円+188億円)を計上している(《平成24年度社会保障予算について》/厚労省HP)
このHPには書いてないが、国庫負担以外は2011年度と同様に労使折半の雇用保険料を使うのかもしれない。
2011年度で満足に効果を上げていなかったにも関わらず、2012年度のこの大盤振舞いである。
景気が十分に回復すれば半ば役割を失う制度であり、対処療法であるという点で、大盤振舞いの予算額に対応した大盤振舞いの効果を上げるとは思えない。
これを性懲りもなくと見るか、正当と見るかであるが、既にブログに取り上げたが、2011年度計上分約15兆円の復興予算のうち9兆円余りを利用、約5.9兆円が未利用だったという事実は色々な事情があったとしても、それを差し引いても、制度設計や運営にムダをつくり出す能力の存在を感じ取るばかりで、「求職者支援制度」のムダにしても納得のいくムダに思えてくる。
2012年7月2日あさひテレビ「ビートたけしのTVタックル」でも、川内博史民主党議員が予算のムダを指摘していた。
川内博史民主党議員「やろうとしないだけ。財源はあります。藤井先生自身がですよ、消費税増税に走りに走っている藤井先生は政権交代直前に日本記者クラブでの記者会見でですね、財源はいくらでもあるって豪語していたんですよ」
江田憲司みんなの党幹事長「言ってましたね」
川内博史民主党議員「豪語してたんですよ。あるんですよ。ただ財務省には騙されて、ないないと思わせられてしまうんですね、政府に入る先生方は。
そこが残念なとこです」
江田憲司みんなの党幹事長「さっき予算編成権は財務省にあるって藤井さんは言ってたけど、あれは分かっていてウソをついているんですよ。
予算編成権は内閣にあるって言って、憲法に書いてあるんです。大蔵省は事務員しているだけですから。
あんなことを言ったことはね、藤井さんは政権交代してからは財務省の虜になっちゃってるんですね」
日本国憲法は次のように規定している。
第73条 内閣の職務
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
1 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
2 外交関係を処理すること。
3 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要
とする。
4 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
5 予算を作成して国会に提出すること。
6 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。
但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができな
い。
7 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
民主党マニフェストに書いてある、予算のムダ排除による16兆8千億円の財源捻出について。
川内博史民主党議員「平成23年度の一般会計予算のですね、決算、つい最近出ましたけども、3兆円使い残しが出ている」
萩谷順「それは設計がまずかったから出てきた」
川内博史民主党議員「復興財源のですね、一次補正、二次補正、3次補正とですね、こお3月末でですね、使い残しが6兆円出ているんですね。
要するにきちんと予算・決算というのを精査してムダな予算というのは一杯ついているわけです。そういうことをきちんとできるかどうかってことです」・・・・
「求職者支援制度」の61%ものムダは異例だろうが、以上見てきたように制度設計の能力、予算付けの能力、事業運営能力、広報能力にムダは付き物だと考え、各省庁が予定している各事業のうちから事業費の大きい事業をサンプル調査の形式で適宜抽出、前年度の予算執行状況と比較したムダを弾き出して、それが10%のムダなら、すべて事業に10%のムダを当てはめて削っていく大鉈を振るえば、16.8兆円の財源はたちまち出てくるはずだ。
平成24年度一般会計予算案は総額90.3兆円規模に10%をかけると、9兆円となる。
特別会計の歳出総額は394.1兆円、会計間のやりとり等を除いた歳出純計額は190.5兆円。190.5兆円の10%としても、19兆円。併せて28兆円。
事業によっては「求職者支援制度」を例に取るまでもなく、20%、30%のムダも存在するはずだ。
ムダがあるから、天下り官僚が古巣からかつての顔を効かせて予算を分捕り、高額の報酬を得ることができる。いわばムダが保証する高額報酬と言える。
国民の税金であることを忘れてはならない。
小沢一郎が総理の地位に就いたなら、やるはずだ。