《子ども手当に所得制限 民主党の予算重要要点(全文)》(asahi.com/2009年12月17日8時26分) 岡田副総理や仙谷由人が、マニフェストを破ったのは小沢氏が最初だと批判している。
その発言にはマニフェストを守れと言っていながら、最初に破っているのだから、マニフェストに掲げた政策のうちの以後の未達成の責任は同罪とするならまだしも、図々しくも帳消しになるといった自己免罪のニュアンスを含んでいる。
6月22日(2012年)の岡田副総理の記者会見(首相官邸HPから)。
記者「朝日新聞の河口です。先程の御発言でちょっと1点。御自身が離党(1993年小沢氏とともに自民党を離党、新生党を結成したこと)されたときに、国民もその大義を受け止めていただいたというふうにおっしゃいましたけれども、今回、小沢元代表は、消費増税に反対するといいますか、マニフェストについて実現されていないということで、反対する姿勢を見せておられますが、今回、まだ分かりませんが、反対票を投じられて、離党ということになれば、それは国民にとって大義があるというふうに受け止められると今の時点では思われますか」
岡田副総理「まずマニフェストについて、何も実現していないというのは、何を根拠にそう言っておられるのかということは、私は疑問に思います。多くの仲間が懸命に努力をして、勿論できていないものも沢山あります。しかし、できたものも沢山ありますので、そこは正当に評価していただきたいと思いますし、同じ党の中にあったわけですから、何もできていないとしたら、今日、私、国会質問で、きづなの質問者の方に申し上げたのですが、『では、あなたは民主党のときに何をしたのですか』と。自ら何もしなかったということを言っているに等しいわけですから、それはやはりそうではないと思うのですね。みんなが懸命に努力をして、ここまでやってきたと、マニフェストについてもかなり実現してきたと。
しかし、理由があってできないものもある。例えばガソリン税の増税、減税を止めるということですね。これはマニフェストの非常に金額から言うと大きな玉だったわけですが、これを国民の声と言って止められたのは当時の小沢幹事長ですから、それぞれ理由がいろいろあって、できていないものは、それはあるのです。そのことは十分お分かりになっているはずだと私は思います」
民主党は2009年衆院選マニフェストでガソリン税の暫定税率廃止を掲げていたが、政権獲得後、暫定税率廃止を撤回している。
先ず小沢氏がマニフェストを破ったことを先に持ってきて、以後のマニフェストの未達成を、「理由がいろいろあって、できていないものは、それはあるのです」と帳消しを謀ることで自己免罪を目指している。
離党の大義について何も発言していないが、少し前の質問に対して答えている。
記者「毎日の野口ですけれども、岡田副総理も昔、新人議員のときに、小沢さん達と一緒に自民党を離党して新党結成という、そういう経験があると思うのですけれども、今現在、こういった新党を結成して離党しようという議員に対して、なかなか大変だなという、そういう苦労話など、アドバイスなどありましたら、何かお願いします」
岡田副総理「政治家は最終的には自らの信念に従って意思決定し行動するということですから、最後突き詰めれば、それぞれの判断ということだと思います。その上で申し上げると、93年のときには、何としてでも政治改革をやり遂げるという、そういう思いを少なくとも私は持っておりましたし、国民にもその大義というか、そういうものを受け止めていただいたというふうに思います。今回いかなる理由を持ってということは、それぞれがよくお考えいただく必要があるのではないかというふうに思います。何のために、ということについて、静かに考えて、一人一人が考えていただきたいというふうに思います」
自分が離党する側に立ったときは、それを利益とした行動としているから、当然大義があることになり、自分が離党される側に立つと、不利益を被る側に位置することになるから、「よくお考えいただく必要がある」と言う。
ただそれだけのことに過ぎない。
次に仙谷由人。《野田首相再選支持を示唆=仙谷氏》(時事ドットコム/2012/07/13-21:40)
7月13日のTBSテレビの番組収録。
仙谷由人(9月の民主党代表選の対応について)「消費税を上げることをやり抜いたリーダーシップがあり、原発も安全確認しながら再起動し、中長期的には自然エネルギーでつくっていくと決めた。今の先進国の状況を見ても、評価は高い」
(新党「国民の生活が第一」を結成した小沢一郎氏に関して)暫定税率(廃止)をやらないと、マニフェスト(政権公約)を最初に破ったのは(当時の)小沢幹事長だった。マニフェストを守らないから野田首相は駄目というのは、ものすごく違和感がある」
「消費税を上げることをやり抜いたリーダーシップ」と褒め称えているが、主体はあくまでも社会保障制度である。消費税は目指す社会保障制度を実現し、維持していく財源に過ぎない。
消費税増税を遣り抜いたからといって、社会保障制度がついてこなければ、本末転倒となる。
要するに遣り抜くべきは自らが目指す社会保障制度の設計内容であるにも関わらず、「消費税を上げることをやり抜いた」と、消費税増税を主体に位置づけていることによって、逆に消費税増税先行であったことを証明している。
野田首相も機会あるごとに消費税先行ではないと言っている。
野田首相「今回の社会保障と税の一体改革では、社会保障改革を棚上げしたわけではありません。
しっかり、しっかりと子供・子育ての部分などを充実し、社会保障を安定化させる。そういう考え方のもとに行っている一体改革であります。決して増税先行ではございません」(MSN産経)
だが、本人は気づいていないだろうが、計らずも消費税先行であることを自ら暴露することになる。
桜内文城みんなの党参議院議員「社会保障の新しい姿を国会の中で議論する必要がある。次の衆議院選挙の前に社会保障の姿を示し、だから増税が必要だということを国民に示すべきではないか」
野田首相「社会保障の姿を国会の中で議論しようという趣旨は賛成だ。将来世代に、おんぶにだっこという形はよくないという視点の中で、何を安定させ、充実させるのか、胸襟を開いた議論ができるのではないか」(NHK NEWS WEB)
両者の発言は「社会保障の新しい姿」の議論の提案に対する応諾という構造を取っている。議論の提案は社会保障制度の未完成を意味する。
野田首相は「社会保障の姿」はまだ固まっていないとしていることに対して消費税増税が増税率も増税時期も既に完成していることから、消費税先行を図らずも証明したのである。
仙谷由人は野田政権の消費税増税先行を暴露し、尚且つマニフェストを最初に破ったのは小沢幹事長だったと、マニフェスト不履行のそもそもの張本人であるかのように批判し、「マニフェストを守らないから野田首相は駄目というのは、ものすごく違和感がある」からと、帳消しを通した自己免罪を意図している。
小沢氏のマニフェストに違約する暫定税率廃止撤回を自己免罪の道具に使うことに果たして正当性があるのだろうか。
いや、批判そのものに正当性があるのだろうか。
小沢氏と共に新党「国民の生活が第一」を結成した森ゆうこ参議院議員が7月20日のTwitterに次のように投稿している。
森ゆうこ参議員「リーマンショックによる10兆円近い減収と、政権交代後に短時間で予算編成をしなければならず年末ギリギリまで鳩山内閣は予算案を決定出来なかった。そこで小沢幹事長が官邸に乗り込み泥をかぶってガソリン税を次年度送りにし、ようやく予算編成が間に合った」
インターネット上には岡田副総理と仙谷の発言を批判する声が飛び交っているが、当時の新聞記事を振返って、自分なりに森ゆうこ議員の投稿文の検証を兼ねながら、岡田と仙谷の発言の正当性をなるべく実証的に確認したいと思う。
民主党が鳩山代表、岡田幹事長だった2009年6月の政権を獲る前、政権公約の工程表を早くも見直している。《民主政権公約、工程見直し 財源4兆円圧縮》(asahi.com/2009年6月25日5時4分)
●目玉公約に充てる財源を昨年秋に固めた当初案より4兆円程度圧縮し、16兆~17兆円とする。
●政権奪取後4年目の予定だった年金一元化実施を6年目に改める。
●ガソリン税などの暫定税率の即時撤廃は2年目以降に先送り。
●小沢一郎前代表の持論として07年参院選公約に明記した「市町村数を300程度」とする分権改
革目標は「平成の大合併に続いてさらなる強制合併を招く」などとする地方自治体側の反発
に配慮して削除。
●公約では「5本柱」として次を掲げる。
(1)天下り廃止・無駄遣い根絶
(2)子ども手当、高校無償化など教育支援
(3)年金・医療
(4)地域主権
(5)地球温暖化対策
鳩山代表、岡田幹事長のもとで、景気動向からの税収減を考慮してのことだと思うが、政権奪取約2カ月前には目玉公約の財源圧縮と暫定税率即時撤廃の2年目以降に先送りを決定している。
だが、鳩山代表と岡田幹事長の間に意見の食い違いがあって、政策変更はすんなりとは決まらなかった。
《民主公約 岡田氏「一部先送りも」 鳩山氏「認めない」》(asahi.com/2009年6月28日2時54分)
〈不況による税収減も考え、公約の一部先送りを求める岡田氏に対し、鳩山氏は今さら変えられないとの立場。執行部でマニフェストを最終的に詰める際の焦点になりそうだ。〉――
〈ガソリン税などの暫定税率の撤廃。政権交代後の初年度から実施し、2.6兆円の減税を掲げていたが、鳩山新体制でのマニフェスト見直しで岡田氏らの主導で先送りが固まった。しかし、鳩山氏は26日の記者会見で「即時撤廃は国民の間で既成事実化している」と先送りに反発した。〉――
要するに当時の岡田幹事長は暫定税率撤廃政権交代後即時実施の先送りを意図していた。小沢氏を批判した上記記者会見では、「非常に金額から言うと大きな玉だったわけですが」と、即時実施した場合の国民還元の利益が相当に歓迎された額であるかのように言っているが、実際は岡田自身が国民還元どころか、この2.6兆円を政府還元の財源に回そうとしていたのである。
盗人猛々しいこととはまさにこのことである。
6月26日記者会見。
岡田幹事長「暫定税率は財源を見つけ出して(から)廃止するのも考え方」
6月27日、テレビ東京の番組。
岡田幹事長「経済危機で税収が落ち込む中、先送りする政策も出てこざるを得ない」
だが、最終的には鳩山代表の主張が通った。《暫定税率撤廃、政権奪取後初年度から 民主党合意》(asahi.com/2009年6月30日13時35分)
6月30日午前、鳩山代表、岡田克也幹事長、直嶋正行政調会長ら幹部が党本部で協議。総選挙マニフェスト(政権公約)で固まっていたガソリン税などの暫定税率撤廃の先送り方針を撤回し、政権奪取後の初年度から実施することで合意。
〈財源の手当てを優先させ、岡田氏らの主導で先送りが固まったが、鳩山氏が「暫定税率(撤廃)は国民のなかで既成事実化している」と初年度からの実施を求めていた。30日の協議で岡田氏は「初年度でやりましょう。私に異存はありません」と発言したという。 〉――
以上の経緯を見る限り、止むを得ず、鳩山代表に妥協したということでなければならない。
ところが、暫定税率撤廃によって浮く2.6兆円の財源を、マニフェストで「ガソリン等の燃料課税は、一般財源の『地球温暖化対策税(仮称)』として一本化します」と謳っていた、一本化して名称を変更するだけの「地球温暖化対策税」に暫定税率を撤廃して浮く財源を振り向ける案が民主党内に浮上。
いわばタダで国民に渡したのでは勿体無いというわけである。「地球温暖化対策税」は2兆円規模とし、残る0.6兆円を減税とする設計だったらしい。
とすると、即時撤廃の場合は2兆円は「地球温暖化対策税」に化けてしまうことになるから、撤廃見送りであったとしても、現在、「マニフェストを最初に破ったのは小沢氏だ」と批判する割には額面通りには受け止めることができる程の影響はなかったことになる。
鳩山内閣は政権交代から2カ月後の11月に入ると、マニフェスト政策実施の初年2010年度所要額7.1兆円の圧縮に取り掛かった。対象は高速無料化予算、大幅削減、子ども手当の所得制限化などである。
鳩山首相(子ども手当の所得制限について)「まずは考えないのが基本線だ。ただ、裕福な人は子ども手当はいらないじゃないかという気持ちの国民が多いことも現実にある」
一見否定しているようで、肯定するブレを見せている。
結果は子ども手当は所得制限をかけない代わりに月2万6千円の約束が半額の1万3千円の減額でスタートすることになった。
鳩山首相はなおブレる。12月2日午後、国会内で講演。
鳩山首相「暫定税率の議論と環境税の議論を一緒にすれば、国民に約束違反と思われる。増税の部分はしっかりと議論する必要がある」(47NEWS/2009/12/02 16:31 【共同通信】)
暫定税率撤廃で浮く2.6兆円はしっかりと国民に還元し、環境税は「しっかりと議論する必要がある」と別個扱いにして先送り示唆である。
鳩山首相がどうブレようと、原因はマニフェストの約束と財源の手当ての間(はざま)で四苦八苦しているからに他ならない。
そして12月16日。小沢一郎幹事長は党を代表して政府に対して「重点要望 」を提出する。
平成22年度予算は、民主党政権が誕生して初めての本予算である。「国民の生活が第一」の基本理念に立って、政策や予算の旧来の優先順位を一新することが、国民の負託に応える我々の責務である。
無駄遣いの根絶、不要不急な事業の徹底的な見直しを行い、新しい優先順位に基づいてすべての予算を組み替えて財源を抽出し、国民に約束したマニフェストを誠実に、そして着実に実現していく必要がある。
子育て・教育、年金・医療・介護の充実や、地域の活性化に重点を置き、国民一人ひとりに直接手を差し伸べることによって、生活の安定を図り、希望を生み出していく。政権交代で我々が国民に約束した、こうした政治の実現のため、政府に対し、特に以下の点に留意して予算編成を行うよう求めるものである。
1 重点要望
(1)子ども手当
子育ての心配をなくし、社会全体で子育てを応援するため、「子ども手当」は、初年度、子供1人当たり、月額1万3千円とし、地方には新たな負担増を求めない。所得制限については、その限度額は予算編成にあたり政府与党で調整し決定する。
(2)高校無償化
みんなに教育のチャンスを与えるため、公立高校生の授業料を無償化し、私立高校生には年額12万円(低所得者世帯は24万円)を助成する。また、所得制限は設けない。
(3)農業戸別補償制度の導入
食の安全を確保し、わが国の農村を再生するため、戸別所得補償制度の早急な導入が必要である。要求額を確保することとし、その財源を確保するためにも、土地改良事業に偏ってきた農業予算の大転換を求める。
実施に当たっては、現在の交付金水準を下回らないようにする。
(4)地方財源の充実
地方が自由に使えるお金を増やし、自治体が地域のニーズに適切に応えられるようにするため、三位一体改革で削減された地方交付税と地方の歳出を復元充実する観点から、平成22年度から、所得税の税源移譲に際して削減された交付税相当額1.1兆円に見合う交付金制度を創設する必要がある。このため、公共事業について、既存の直轄・補助事業を見直し、自治体の創意工夫で社会資本整備をはじめとして原則として自由に使える、1.1兆円を上回る規模の使い勝手の良い新たな交付金を国土交通省・農林水産省において創設する。
(5)過疎法の延長
平成21年度で過疎地域自立促進特別措置法が失効する過疎対策については、過疎地域の現状を踏まえつつ必要な支援を行い、過疎対策に切れ目が生じることのないよう所要の立法措置を講ずる。
(6)国と地方の協議の場の設置
国と地方の協議の場を、地方公共団体の意見を踏まえつつ、法律に基づき設置することとし、所要の法律案を次期通常国会に提出すべきである。
(7)整備新幹線の整備
整備新幹線の整備については、各地域の要望が極めて強いことを受け止め、早期開業のため必要な予算措置を講ずる。
(8)高速道路の整備
(1)平成22年度において、高速道路会社による高速道路整備を推進するため、利便増進事業を抜本的に見直すとともに、いわゆる新直轄事業を取りやめ、これに見合う額を国が高速道路会社に対し支援する。また所要の法律を手当てする。
(2)平成23年度以降の新たな高速道路建設促進の枠組みとして、全国統一の料金設定、国の高速道路建設の高速道路会社への一本化をはかるとともに、地方自らが、必要とする高速道路建設を行うことができるようにするための国の支援策を検討し、来年6月中に政府として成案を得る。
(9)診療報酬の引き上げ
全国で発生している医療崩壊を防ぐため、地域医療を守る医療機関の診療報酬本体の引き上げが必要である。
特に、救急医療や不採算医療を担っている大規模・中規模病院の経営環境を改善するため、格段の配慮を求める。また、医療を現場で支えている看護師の待遇、生活の医療である歯科医療についても診療報酬の引き上げが必要である。
(10)介護労働者の待遇改善
介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する必要があり、とりわけ介護労働者の待遇改善が図られるべきである。
(11)障害者自立支援法廃止
障害者自立支援法の廃止に際して、障害者の負担が増加しないよう配慮すべきである。
(12)肝炎対策の予算確保
肝炎患者が受けるインターフェロン治療の自己負担額の上限を引き下げるとともに、インターフェロン以外の治療(核酸アナログ製剤)に対する支援に取り組み、要求額180億円を確保する。
(13)ガソリンなどの暫定税率
現在、石油価格は安定しているので、ガソリンなどの暫定税率は現在の租税水準を維持する。ただし、平成20年度上半期のような原油価格の異常高騰時には、国民生活を守るために暫定税率の課税を停止することができるような法的措置を講ずる。
自動車重量税については、暫定分の国分について、環境のことも考えながら半分程度の減税を行うべきである。
(14)高速道路の無料化
高速道路の無料化については、割引率の順次拡大や統一料金制度の導入など社会実験を実施し、その影響を確認しながら段階的に進める。なお、実施に当たっては、軽自動車に対する負担の軽減を図ることとする。
(15)国直轄事業の抜本的見直しと地方負担金の廃止
国直轄事業が担うべき範囲の抜本的見直しに応じて、同事業に対する地方負担金を廃止する。その第一歩として、平成22年度は、維持管理負担金の廃止を決定すべきである。
(16)租特見直し
不透明な租税特別措置を見直し、効果の乏しいもの、役割を終えたものは廃止すべきである。
(17)土地改良予算の縮減
土地改良事業費は要求額4889億円を半減することとし、所得補償制度等の財源とする。同時に、農業予算の大転換を求める。
(18)環境税
環境税は、今後の検討課題とする。
2 予算編成において政府・与党の調整を要する課題
(1)「協会けんぽ」の財政
(2)A重油の免税措置
(3)オーナー課税
(4)バス・トラックへの助成金
(5)たばこ税の増税
あくまでも財源と辻褄を合わせることができるように配慮した「重点要望 」であるはずだ。
「ガソリンなどの暫定税率」は次のような要望となっている。
「現在、石油価格は安定しているので、ガソリンなどの暫定税率は現在の租税水準を維持する。ただし、平成20年度上半期のような原油価格の異常高騰時には、国民生活を守るために暫定税率の課税を停止することができるような法的措置を講ずる」
そう、「要望」である。決定命令ではない。決定は鳩山内閣の仕事である。
この要望に対する鳩山首相と各閣僚の発言を見てみる。
鳩山首相「私は暫定税率を廃止すべきだとずっと申し上げてきた。ある意味で誓いだ。一方で、党からの要望は国民の皆さんの声だ。国民の皆さんが、国民の皆さんの声を大事にしろという風に思っておられるかどうか。そこに判断がある」(asahi.com)
論理的に辻褄の合わない発言となっているが、何れにしても「そこに判断がある」と言っているように、鳩山首相自身の判断にかかっている決定であることに変わりはない。
以下閣僚の発言は「NHK NEWS WEB」
仙谷行政刷新担当相「国民の声を吸い上げるのが政党の仕事であり、内閣として要望を咀嚼しながら主体的に結論を決めていくことが重要だ」
原口総務相「地方に配慮し、子ども手当も全額国庫負担と記述していただき、たいへん評価している。最終的には鳩山総理大臣のリーダーシップの下で内閣が決断する。こうしたプロセスは諸外国でもあることで、何もおかしなことではない」
福島消費者・少子化担当相「予想以上に税収が落ち込んだなかで、国民も今すぐマニフェストをすべて実行せよということにはならないのではないか。やむをえない措置として、否定はしない」
亀井郵政改革・金融担当相「他党のことには干渉しないが、鳩山総理大臣のような人や、わたしの孫に子ども手当を支給しますと言われても、もっと困っている家庭があると思うので、所得制限は必要だ。所得の捕捉は申告制にすればクリアできる」
長妻厚労相「党の要望は重く受け止めるが、最終的に決定するのは鳩山内閣であり、要望がそのまま政府の決定になるということではない。社会全体で子どもを育てる経費を負担するという考えから、子ども手当に所得制限を設けるべきではない」
川端文科相(高校の授業料の実質無償化について)「「政権公約どおり所得制限を設けないとしてもらったのは、ありがたいことだ」
直嶋経産相(ガソリンなどの暫定税率現在の水準維持について)「税収が極端に落ち込んでいるので、マニフェストの工程表どおりに暫定税率をすべて廃止するのは、率直に言ってなかなか厳しい状況なのではないか」
平野官房長官「要望は要望としてどこまで受け止められるかは、政府が最終的に決める。
政権公約に違反するかどうかは議論があるが、これまで言ってきたことと違う結論になるのであれば、しっかり説明し、国民の理解を得る必要がある」
前原国交相「党の要望というよりは国民の要望だという話だった。政府をバックアップするために出されたものだと理解しており、政府が積み上げてきた議論にどのように乗せていくか、しっかり議論したい。
マニフェストは着実に実行しなければならないが、同時に、来年度の税収が40兆円を大きく割り込む見通しのなか、財政規律も重視しなければならない。もしマニフェストの内容から変わるとしても、その整合性を国民にどう説明するかが大事であり、プロセスさえ踏めば理解してもらえる」
ほとんどの閣僚が、最終決定を内閣に置いている。要するに小沢幹事長は単に財源との辻褄を考えて、「要望」を提示したに過ぎない。
もし暫定税率撤廃の見送りをマニフェスト違反だ、マニフェストを破ったと批判するなら、批判の対象は鳩山首相とその閣僚としなければならない。
また、少なくとも鳩山政権誕生で外相となった岡田克也にしたら一旦は政権獲得前に見直しを主張した手前、暫定税率維持は歓迎すべきことであって、決して小沢氏を対象に批判すべきことではない。
また仙谷にしても、当時「内閣として要望を咀嚼しながら主体的に結論を決めていくことが重要だ」と発言して、内閣に決定権があるとしていた以上、「(政権公約)を最初に破ったのは(当時の)小沢幹事長だった」と批判することは盗人猛々しいお門違いも甚だしいということになる。
自分たちが最終決定したのである。
多分、小沢氏が内閣が決定したことだと言ったなら、同士である鳩山氏を窮地に陥れることになるから、言わないで我慢しているのかもしれない。
鳩山内閣に要望書を提出した際の小沢氏の発言を次の記事が伝えている。《小沢幹事長:政府を一喝 「本当に政治主導だったか」》(毎日jp/2009年12月16日 23時26分)
小沢幹事長「本当に政治主導だったか疑問がある」
〈出席者によると、小沢氏の迫力に室内の雰囲気は凍り付いたようになったという。〉――
小沢幹事長「予算編成を官僚に乗らずにできているのか。政府高官は研さんを積んで自ら決断して実行してほしい。
自民党政権との癒着があった(業界)団体にはあえて厳格に対処している。選挙に勝ったから内閣を組織できた。
誰かが言わねばならないことで、自分が憎まれ役を買って出た」――
財源不足からの遣り繰りで纏まらないでいた内閣の予算編成に手助けの「憎まれ役を買って出た」
どこに不都合があるというのか。
このことは2009年12月20日報道の読売新聞社の世論調査も証明している。
「ガソリン税などの暫定税率の維持について
賛成――52%
反対――33%
民主支持層
賛成――55%
反対――33%
暫定税率廃止撤回は小沢氏のマニフェスト違反だと批判することも、その違反を自分たちマニフェスト違反の自己免罪の道具に使うことのどこにも正当性を見い出すことはできない。
最後に再び、森ゆう新党「国民の生活が第一」参議院議員のTwitter投稿文。
森ゆうこ参議員「リーマンショックによる10兆円近い減収と、政権交代後に短時間で予算編成をしなければならず年末ギリギリまで鳩山内閣は予算案を決定出来なかった。そこで小沢幹事長が官邸に乗り込み泥をかぶってガソリン税を次年度送りにし、ようやく予算編成が間に合った」
森ゆうこ議員の言い分が正しいとしか検証できない。