民主党は維新に対して国家公務員給与法改正案の扱いで議論の段階から絶対的二者択一の態度を取るべきでない

2015-12-24 08:42:13 | 政治
 

 
 今年2015年8月、人事院が国家公務員一般職(行政職)の2015年度月収を0.36%、ボーナスを0.1カ月分の引き上げを勧告した。平均年収にして5万9000円の増額になるという。

 政府は勧告の完全実施を決め、国家公務員給与引き上げの給与法改正案を年明けの1月4日招集の通常国会に提出するという。

 この給与法改正案を巡って、12月18日(2015年)、衆議院で統一会派結成した(参議院での統一会派は来月以降に先送り)ばかりの民主党と維新の党の間で対立が起きていると2015年12月23日付「YOMIURI ONLINE」記事が伝えている。  

 維新の党は公務員給与削減を看板政策に掲げている関係上、改正案への反対が根強い。

 民主党は官公労(官公庁にある労働組合の総称)から支援を受けている都合上、賛成に回らなければならない利害を抱えている。

 12月22日、維新の党は国会内で両院議員懇談会を開き、改正案への対応を協議。

 井坂信彦衆院議員「社民党に憲法改正に賛成しろと迫るのと同じくらいの内容だ」

 今井幹事長(記者会見で)「知恵を出して良い解決策を見い出すべきだ」

 これは民主党側に柔軟な対応を求めた発言だそうだ。

 民主党幹部「嫌なら統一会派を出ていけということだ」――

 記事は〈民主党が(法案への)賛成を求め「踏み絵」を迫っている。〉と書いているが、要するに統一会派を維持できるかどうかは法案の賛否にかかっている、賛成か否かの「踏み絵」を迫っている状況となっていると見ているということなのだろう。

 以上の経緯を見る限り、民主党と維新の党が来夏参院選の共通公約づくりを議論した結果、民主党が維新の党の看板政策の「身を切る改革」を受け入れ、国家公務員の給与2割削減を明記した上で国会議員の定数削減も盛り込む方針となったという10月初旬の報道は間違いか、あるいは民主党がこの報道を受けた官公労の抗議で方針転換した、いわば豹変したか、いずれかということになる。

 いずれにしても民主党のように議論の段階で自分たちを絶対者に仕立てて賛成を全てとするか、あるいは反対を全てとするかといったオール・オア・ナッシングの絶対的二者択一を迫って異論を排除していたなら、会派の統一という共闘体制は名ばかりで、支配の形を取ることになるのだから、統一会派を組むこと自体が土台無理な話だったということになる。

 こういった支配的な遣り方はそもそのからして民主的方法とは決して言えず、民主党という名に恥じることになるし、自民党や公明党から、やはり談合に過ぎなかった、野合に過ぎなかったと批判の格好の餌食になりかねない。

 統一会派を結成した以上、今井幹事長が言うように「知恵を出して良い解決策を見い出す」しかないはずだ。つまり民主党も維新の党もオール・オア・ナッシングの絶対的二者択一を持ち出すことがないよう相互に戒め合わなければならない。

 改正案は月収0.36%、ボーナス0.1カ月分の国家公務員の給与引き上げを謳っている。

 国家公務員と言っても、ピンからキリまであり(「ピン」はサイコロの目の一のことで、最上の意味。「キリ」は最低の意味)、上は月収300万円以上、ボーナスを加えると5千円以上と言われている最高裁長官や、月収200万円ちょっと、夏冬で1千万円近くのボーナスが手に入って年収が3千万円を超える内閣総理大臣、この収入にほぼ同じの省庁最高職の事務次官の月収200万円近くからボーナスを加えて年収3千万円超、そして年収ベースで総額は2200万円程になるとされている国会議員の歳費を加えた年収、下は省庁一般職の月収30万~40万までと様々である。

 このような違いを無視して、全ての給与に同じ割合が加算される。多く得ている者はより多く得ることになるし、少ない給与者は雀の涙程しか上積みされないことになって、格差は拡大していく。

 民主党にしても、アベノミクスは格差ミクスと断じて格差是正を政策に掲げている。もし一定の年収を限度に、それ以上の年収に対しては人事院勧告を無視すると、それ以下の年収に対しては勧告通りに適用するとすれば、政権を取りさえすれば、何年か後に、あるいは十数年掛かるかもしれないが、維新の党公約国家公務員給与2割削減に近づいていくし、民主党が掲げる格差是正の約束を一定程度果たすことができる。

 この方法が官公労に反対されたり、抗議を受けたりしたら、安倍晋三の格差拡大政策に賛成するのかと反論すれば、何も言えなくなるはずだ。

 維新の党にしても、統一会派の維持を重視するなら、この方法に納得しなければならないし、両党共に支持者に対しての言い訳も立つ。

 特に労働組合とかの組織に所属せず、また公務員でもない一般有権者に対しての理解は得やすくなるはずだ。

 もし民主党が安倍内閣の人事院勧告通りの改正案に賛成を投じた場合、民主党支持の一般有権者の中には失望して離れていく可能性も否定できない。

 このような方法論が妥当性あるものかどうか分からないが、少なくとも民主党という名の政党が議論の段階から自分たちを絶対者に仕立てて賛成を全てとするか、あるいは反対を全てとするかといったオール・オア・ナッシングの絶対的二者択一を迫って異論を排除しようとする政策決定の方法論を取るべきではないことは確実に言うことができる。

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