マタハラ被害調査、なぜ正社員約2割で派遣社員約5割なのか

2015-12-10 09:59:04 | 政治


 「毎日jp」記事から見てみる。  
 
 被害調査は労働政策研究・研修機構が厚労省の委託で今年9~10月に民間企業6500社を通じて25~44歳の女性計約3万1000人を対象に実施、妊娠や出産等の経験者のうち現在や以前の職場でマタニティハラスメント(マタハラ)を受けた割合を雇用形態別に統計を取っている。

 マタハラ経験者約3500人

 派遣社員 48・7%   
 正社員  21・8%

 被害経験率

 契約社員    13・3%
 パートタイマー  5・8%

 この「被害経験率」という言葉の意味が分からない。 「Weblio辞書」に広告用語として、「購入経験率」とは、「ある商品やブランドを過去に買ったかどうかで測定される。買った人(世帯)の数をサンプル数で割った比率」と出ていたから、マタニティハラスメント被害者数をサンプル数の「25~44歳の女性計約3万1000人」で割った比率のことなのだろうか。

 いずれにしても社内地な地位の点で弱い立場にある女性が被害の割合が高いことに変わりはない。

 尤も派遣社員や契約社員、パート等を弱い立場だと見ること自体が間違っているはずだ。能力や真面目さ等を正当な評価対象としていれば、正社員だろうと非正社員だろうと、あるいは男性・女性の別なく、人間としての扱いに変わりはないはずだが、地位の上下や性別で人間の価値を見ているから、能力や真面目さも地位の上下や男女の別に準拠させることになる。

 だから、同じ人間が社長等の上の地位の者にはペコペコと頭を下げて、地位が下の者には踏ん反り返るといったことが起きる。

 あるいは男性上司が地位の下の男性には同じ男性として気を使うが、同じ地位の下の女性に対しては命令口調となるといったことが同じ人間の中で起こることになる。

 地位の上下や男女の性別の違いで人間の価値や能力を計る思考及び行動を権威主義的思考様式・権威主義的行動様式と言う。

 当然、立場の弱い女性に対するマタニティハラスメントの割合が大きいということは地位で人間を見るだけではなく、男性を上に置き女性を下に置く男尊女卑の傾向も混じえた権威主義が深く関わっていることになる。
 
 正社員に対するマタニティハラスメントにしても加害者は主として社内的に地位が上の者か、上でなくても、より強い立場にある者と言うことになるはずだ。

 引き続いて調査結果を見てみる。

 マタハラの内容(複数回答)

 「迷惑」+「辞めたら」47・3%
 「雇い止め」+「解雇」 約20%

 加害者

 「直属の男性上司」19・1%
 「女性上司」   11・1%
 「同僚や部下」
          女性9・5%
          男性5・4%

 「女性上司」の部下の女性に対するマタニティハラスメントは男尊女卑に傾向からではなく、地位で人間の価値を計る権威主義からの態度であろう。

 「同僚や部下」が嫌がらせができるのも、地位とは関係なしに勤続年数が長いとか、上司と親戚関係にあるとか、自分の方が仕事の能力があるとか、それらを以って自身を上の価値に置き、相手を下の価値に置く権威主義性を関与させていなければ不可能な現象であるはずである。

 既に結論は出ている。派遣社員等の弱い立場にある妊娠や出産等の経験者の女性に対するマタニティハラスメントは地位の上下や性別で人間の価値を見る権威主義が深く関与している。

 その結果が現れた正社員約2割のより少ない割合であり、派遣社員約5割というより弱い立場の確率がより高いマタニティハラスメント被害と言うことであるはずだ。
 
 安倍政権が政策の決定過程への女性の参画を拡大するために2015年度末までに中央省庁の課長や室長以上の管理職に占める女性の国家公務員の割合を5%程度、国の地方機関の課長や中央省庁の課長補佐以上の役職に占める割合を10%程度にするとした数値目標を掲げているが、2015年7月現在で中央省庁の管理職に占める女性の国家公務員の割合が2014年年9月比+0.2ポイントの3.5%、国の地方機関の課長や中央省庁の課長補佐以上の役職に占める女性の割合は2014年1月比+0.6ポイントの6.2%だったと12月1日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えていたが、安倍政権が数値目標を与えて尻を叩いて以てしても、それぞれ+0.2ポイントと+0.6ポイントしか増えていない。

 数値目標を与えてもこの少なさはやはり地位の上下や男女の性別の違いで人間の価値や能力を計る権威主義性が影響しているように思える。
 
 例え尻を叩きに叩いてそれぞれの目標を達したとしても、もしそれぞれの組織に権威主義的な人間関係が渦巻いていたなら、あるいはそういった力学が無視できない強さで働いていたなら、自然発生的な女性登用の要素は削がれて、目標をクリアする義務感からのみの女性の登用ということになり、権威主義に侵されていない上司に恵まれて能力に応じて女性が登用されるという例はごく少数あるだろうが、多くは登用したものの、権威主義の力学が影響することになり、マタニティハラスメントと同様の上司や同僚・部下からの差別・軽蔑・嫌がらせ・無視といったパワーハラスメントを受けない保証はなく、どこかに無理が生じて、職務上の効率を失う恐れが出てくるように思える。

 女性の真の登用とその心おきない活躍は権威主義の思考様式・行動様式を排して、地位や性別で価値や能力を決めないことから始まるはずだ。

 そのことがまた、マタニティハラスメントを減らす方法でもあるはずだ。

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