安倍晋三の「占領時代に作られた仕組みを変える」戦前回帰に手を貸すことになる来年参院選の自民への1票

2015-12-09 06:11:11 | 政治


 安倍晋三会長の右翼政治家の集まり「創生日本」が11月28日会合を開いて、安倍晋三が挨拶した。

 安倍晋三「憲法改正をはじめ占領時代に作られた仕組みを変えることが(自民党)立党の原点だ。

 そうしたことを推進するためにも、来年の参院選で支援をお願いしたい」(毎日jp/2015年11月28日 22時28分)

 安倍晋三は占領時代の占領政策によって「日本はどのように改造されたのか、日本人の精神にどのような影響を及ぼしたのか」との表現で、日本が改造され、日本人の精神が悪影響を受けたとして占領時代と占領政策を否定する思想に立っているのだから、当然の主張であろう。

 仕組みを変えるためには頭数が必要となる。そのために参院選で勝たせて貰いたいとお願いした。

 と言うことは、来年の参院選で安倍自民党を勝たせることは有権者は、国民はと言ってもいいが、「占領時代に作られた仕組みを変える」手伝いをすることになる。

 それがいい事なら、お手伝いという表現で結構だが、悪い事なら、加担するという表現を使わなければならない。

 「占領時代に作られた仕組みを変える」と言うことは、占領時代に今まであった仕組みを変えられたから、その仕組をさらに変えるということであって、では、今まであった仕組みとは占領時代の前にあった仕組み――戦前の仕組みに他ならない。

 そのような仕組みを日本という国に相応しい仕組みと把えているということである。

 ここに安倍晋三の戦前回帰がある。常々言っていることだが、安倍晋三の言う「戦後レジームからの脱却」とは戦前回帰を意味する。

 勿論、戦前の仕組みをそのまま持ってくることはできない。戦前は天皇は大日本帝国憲法によって神聖にして侵すべからずの絶対的地位を与えられて国の統治権を持ち、「国体の本義」によって現人神として祭り上げられ、この「国体の本義」や「修身」、「教育勅語」等を通して国民は天皇と国家への忠義と奉仕を日本人の血肉・精神として求めらる思想教育によって天皇主体・国家主体の国家主義体制に国民は絡め取られていた。

 戦後の今日、今更現人神を持ち出すわけにもいかないし、天皇と国家への忠義と奉仕を押し出すわけにはいかないが、安倍晋三は「皇室の存在は日本の伝統と文化、そのもの」であり、「日本では、天皇を縦糸にして歴史という長大なタペストリーが織られてきたのは事実だ」と言って、天皇を日本の政治・文化・経済・歴史、ありとあらゆるものの中心に置いて天皇中心主義の血を疼かせている以上、民主主義の装いを施しはするが、憲法を改正しても天皇中心主義の思想を文言の底に沈めことになるはずだ。

 例えば現日本国憲法は前文で国民を最初に持ってきて、「ここに主権が国民に存することを宣言し」と、国民主権であることを規定しているが、自民党の憲法改正案の前文は、「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」と、天皇を最初に持ってきて、「天皇を戴く国家」であるとして、天皇を「国民主権」の上に置いていることも戦前回帰の象徴的な顕現と見ないわけにはいかない。

 安倍第1次内閣の2006年に教育基本法を改正して、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と規定、他国の尊重や国際社会の平和と発展への寄与に触れながらも、安倍晋三とその一派が「皇室の存在は日本の伝統と文化、そのもの」との思想を抱えている以上、天皇統治の戦前の日本と伝統と文化に繋げた「伝統と文化」であり、その尊重を先に持ってきて、愛国心の育みを求めたことは、やはりそこに戦前回帰の色彩を否応もなしに感じ取らざるを得ない。

 安倍晋三が戦前回帰の思想を持つに至ったのは、いわば「戦後レジームからの脱却」を唱えるに至ったのは戦前の天皇中心の日本の政治・文化・経済・歴史、ありとあらゆるものが占領軍の日本を民主化する占領政策によって中断されたからである。 

 だが、戦後の日本は占領軍の占領政策なくして民主主義国家とはなり得なかった。新憲法草案が最初日本人自身の手によって着手され、それを引き受けた当時の松本丞治国務相によって示された改正案は大日本帝国憲法が天皇の地位を「天皇は神聖にして侵すべからず」と規定していたのに対して「天皇ハ至尊ニシテ侵スヘカラス」と文言の多少の違いはあっても、同じく天皇を絶対的存在に規定、民主主義を一かけらも憲法の精神とすることができなかったのである。

 安倍晋三が「日本国憲法はGHQ(連合国軍総司令部)の素人がたった8日間で作り上げた代物」だと日本国憲法を否定しようが、もし「たった8日間で作り上げ」ずに松本改正案を採用していたなら、安倍晋三が望む戦前同様の日本国家となっていたはずだ。

 安倍晋三は憲法改正の頭数を手に入れるためにも、来年の参院選挙での大勝利を狙っている。

 当然、有権者・国民が安倍自民党に1票を投ずか否かは安倍晋三の戦前回帰に手を貸すか、あるいは手を貸さないかの意味をも持つことになる。

 このことも心して投票しなければならない。

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