安倍晋三自身に日韓慰安婦問題合意の「軍関与」認定は「河野談話」に立っているのか否か、明確にさせるべき

2016-01-04 10:06:35 | 政治
 


 日韓慰安婦問題合意を二度程ブログに書いた。似た内容となるが、今回は別の角度からさらに取り上げてみる。 

 2015年12月28日の韓国ソウルで行われた日本の外相岸田文雄とユン韓国外相による日韓外相会議で両国間に対立事項として横たわっていた従軍慰安婦問題が合意に至った。

 この合意は「共同記者発表」で、〈慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。〉と日本側が旧日本軍の関与と日本政府の責任を認定した内容となっていた。

 だが、岸田外相は「共同記者発表」後の記者会見で、軍関与と日本政府の責任認定は「従来から表明してきたもので、歴代内閣の立場を踏まえたものだ」とした。

 つまり安倍内閣が内閣として「歴代内閣の立場を踏まえる」として引き継ぐことを「従来から表明してきた」「河野談話」の歴史認識の範囲内での軍関与と日本政府の責任の認定であった、今回初めて認定したわけではないと岸田は発言したことになる。

 だが、安倍晋三は「河野談話」が認めている旧日本軍の従軍慰安婦強制連行を認めていない。

 と言うことは、安倍晋三自身が本心では認めていない「河野談話」を利用して、その範囲内で軍の関与と日本政府の責任を認定したことになる。

 安倍晋三は国会答弁や記者会見等の公式的な発言では「『河野談話』を引き継いできた歴代内閣の立場を安倍内閣としても踏まえる」としているが、同時に公式的な発言で「河野談話」を否定する二重基準を平気で侵している。

 2007年3月5日の参議院予算委員会。

 小川敏夫民主党議員「最近、総理は強制はなかったというような趣旨の発言をされましたか、この慰安婦の問題について」

 安倍晋三「その件につきましても昨年の委員会で答弁したとおりでございまして、この議論の前提となる、私がかつて発言をした言わば教科書に載せるかどうかというときの議論について私が答弁をしたわけでございます。

 そして、その際私が申し上げましたのは、言わば狭義の意味においての強制性について言えば、これはそれを裏付ける証言はなかったということを昨年の国会で申し上げたところでございます」

 小川敏夫民主党議員「この3月1日に強制はなかったというような趣旨の発言をされたんじゃないですか、総理」

 安倍晋三「ですから、この強制性ということについて、何をもって強制性ということを議論しているかということでございますが、言わば、官憲が家に押し入っていって人を人攫いの如く連れていくという、そういう強制性はなかったということではないかと、こういうことでございます」

    ・・・・・・・・・・・・

 小川敏夫民主党議員「一度確認しますが、そうすると、家に乗り込んで無理やり連れてきてしまったような強制はなかったと。じゃ、どういう強制はあったと総理は認識されているんですか」

  安倍晋三「この国会の場でこういう議論を延々とするのが私は余り生産的だとは思いませんけれども、あえて申し上げますが、言わば、これは昨年の国会でも申し上げましたように、そのときの経済状況というものがあったわけでございます。御本人が進んでそういう道に進もうと思った方は恐らくおられなかったんだろうと、このように思います。

 また、間に入った業者が事実上強制をしていたというケースもあったということでございます。そういう意味において、広義の解釈においての強制性があったということではないでしょうか」

 要するに「日本軍兵士が家に押し入っていって人を人攫いの如く連れていくと言った種類の狭義の強制性はなかった」と、「河野談話」が「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担した」と認めている軍関与による強制性を否定、業者が行った「広義の強制性」、広い意味での強制連行は認めて、「『河野談話』を引き継いできた歴代内閣の立場を安倍内閣としても踏まえる」とする二重基準を国会答弁その他で同じ公式的な発言として行っている。

 つまり「河野談話」の従軍慰安婦に関わる歴史認識を否定しながら、安倍内閣として「河野談話」の歴史認識を歴代内閣同様に引き継ぐという自己撞着で成り立たせた二重基準を用いている。

 当然、安倍晋三に対して日韓合意の「軍関与」と日本政府の責任の認定は「河野談話」が認めてはいるが、安倍晋三自身が閣議決定もされていないとしている軍関与――いわば安倍晋三自身が否定し、非事実としている軍関与と日本政府の責任を指すのか、あるいはこれまで否定してきた「官憲が家に押し入っていって人を人攫いの如く連れていく狭義の強制性」をあったこととして認めて、「河野談話」に立った軍関与と日本政府の責任の認定なのか、明らかにするように迫らなければならない。

 もし前者であるなら、これまでの国会や記者会見等の公式の場での「河野談話」否定の発言はそれなりに整合性を保つことができるが、それでも公式的な場で「河野談話」の歴史認識を否定することは「歴代内閣の立場を踏まえる」とする、同じく公式的な場での発言と矛盾することになるし、後者なら、「河野談話」の歴史認識、従軍慰安婦連行の強制性を否定した2007年3月16日に閣議決定した政府答弁書を撤回しなければならないし、同じ趣旨で行った国会答弁や記者会見発言を撤回しなければ、過去の発言との整合性が取れないことになる。

 今こそ、安倍晋三の表向きの歴史認識のマヤカシを暴く絶好のチャンスではないだろうか。

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