安倍晋三の「私は50万円、妻は25万円。安倍家の収入は合計75万円に増える」の譬話に見る現状認識能力

2016-01-14 12:08:58 | 政治


     

















 民主党山井議員が2016年1月8日の衆院予算委員会で、民主党政権よりも安倍政権3年間の方が実質賃金も実質賃金増加率も下がっていると追及したのに対して安倍晋三が答弁した内容から窺うことのできるパート女性の雇用に関する現状認識能力を1月12日に民主党の西村智奈美議員が、翌1月13日に同じ民主党の山尾志桜里議員が問い質している。

 上記画像は1月8日に山井議員に対して安倍晋三が答弁した内容を1月13日の山尾志桜里女史がフリップにして提示したものである。

 最初に断っておくが、ある事実を何らかの例で説明する場合、極く稀な特殊な例や、普通に見ることができる例、あるいは一部の集団に見られる例等々、様々に用いるが、どのような例であっても一般的に理解を得ることができる例でなければ、説明とならない。

 ましてや一国の政治を司るリーダーが議会の答弁や記者会見、その他で用いてメディアを通して情報伝達される例は出席議員ばかりか、一般国民にも理解できる例でなければ、例としての役目を果たさないことになる。

 つまり一般国民の理解可能な内容であることが例示の最低限の条件となる。そして用いる例が常に一般国民の理解を得るためには優れた現状認識能力が必要となる。

 西村智奈美女史も山尾志桜里女史もほぼ同じ趣旨の追及となっている。「安倍晋三はパート雇用の女性就業者がどのくらいの給与を得ているのか心得ているのか」の一点に尽きる。

 心得ていれば、安倍晋三の現状認識能力は機能していることになり、現実から離れた給与水準を頭に描いているということなら、首相としての資質に疑いが出る現状認識能力ということになる。

 勿論、フリップに示してある山井議員に対する安倍晋三の答弁から、二人共安倍晋三の現状認識能力の欠陥を疑っている。だから、2日の続けて追及することになったのだろう。

 1月12日の西村智奈美女史は発言冒頭近くで、安倍晋三のパート女性の雇用に関する現状認識能力への疑いから、「閣僚の席を今見ておりましても、失礼ながら、2世、3世の大臣が非常に多い。総理自らも3世でいらっしゃいます」と、安倍晋三の現状認識能力の欠如を一般的な2世、3世が否応もなしに抱えることになる庶民感覚の欠如と相互に関連付けて批判し、最後に「総理、パートの平均の月収、大体のどのくらいだと、幾ら貰えると思っていらっしゃるのか」と現状認識の程度を尋ねている。

 安倍晋三「先ず私の答弁を正確に聞いて、答えて頂きたい。私、パートと言っておりません。ちゃんと見て頂きたいと思います。私は私が50万円で、そして家庭で、私が50万のときは安倍家の平均は50万円になります。しかし妻が働き始める。例えば25万円頂いていたら、安倍家の収入は75万円になりますが、平均は75割る2になるわけですから、これは50を下回って、そうなりますと、平均賃金は下がったが如くに見られるけれども、そうではなくて、大切なことは安倍家の収入は75万円に増えたわけであります。

 ですから、これは総雇用者所得でみなければならないと、こういうことであります。これを私は(山井議員に)申し上げたわけであります。50プラス25を足して、それを2で割ったところが、平均になりますが、パートであれば、8万か9万払うと、こう思うわけでありますが、まさに私が例として申し上げたのは、いわば平均賃金という見方ですね、その一つ一つに割り戻していくのが果たしてその時の経済の現状を正しく見るのかと例で申し上げたわけでございます。

 そこのところをちゃんと申し上げた次第でございます」

 安倍晋三は以後もパート女性雇用の現状認識能力を問われる度に、「妻がパートで働きに出るとは言っていない」ことと、雇用の現状は実質賃金で見るのではなく、総雇用者所得で見るべきだとの同じ内容の答弁を繰返す。

 衆議院のインターネット中継で確かめてみたが、確かに安倍晋三は妻がパートで働きに出ているとは言っていない。フリップに書いてあるとおりに答弁をしている。

 だが、翌1月13日の衆院予算委で山尾志桜里女史が2015年2月4日の衆院予算委員会で安倍晋三が「私の妻がパートで」と発言していることを取り上げ、私自身も当ブログ(2015年3月17日記事 )で3月13日の衆院予算委で前原誠司が実質賃金の統計の取り方を追及する中で2月4日の「私の妻がパートで」の答弁を取り上げ、その答弁に対する安倍晋三の答弁について色々と書いてみたが、過去の発言と照合すると、例え「私の妻がパートで」と言っていなくても、過去の発言を訂正していないのだから、文脈上は「私の妻がパートで」ということになる。

 参考までに2015年2月4日の安倍晋三の答弁を掲げておく。文飾は当方。

 安倍晋三「そこで、実質賃金について言えば、この国会でも何回も議論したわけでございますが、景気が回復局面になりますと、人々は仕事が得やすくなるわけであります。しかし一方、スタートする時点においては、短時間のパートから始める人も多いと思いますし、また企業側も、なかなか正規の雇用はしない、慎重な姿勢がまだ残っているのも事実であります。その中で、働く人の数はふえている。しかし、働く人の数はふえていきますが、いきなり1千万円とか50万円という収入にはならない、パートからスタートする。

 例えば、安倍家において、私がそれまで30万円の収入を得ていて、しかし、女房がどこかで仕事をする、残念ながらそういう経済状況ではない中において、しかし、私が30万円の収入であれば、いわば平均すれば30万円なんですが、では、景気がよくなって、女房がパートで10万円の収入を得たとすると、安倍家としては40万円なんですが、平均すれば20万円に減ってしまうという現象がまさに今起こっているのがこの実質賃金の説明であって、ですから、総雇用者所得で見なければいけない」――

 私の30万円が50万円に変わった以外、1月8日に山井議員に答弁した内容と何ら変わりはない。

 但し私の給与の額と妻のパート収入の額に関しては2015年2月4日の答弁内容の方が遙かに現実に近い現状認識能力を示している。だが、夫と妻の収入を合わせた総雇用者所得で収入の現状を見るのはシングルマザーやシングルファザー、若者を含めて未婚の男女合わせた単身者が多く存在するするのだから、一般的に理解を得ることができる例と言うことはできないし、夫と妻共に低収入の非正規雇用という例も多く存在することを考えると、「私が50万円で妻が25万円」という例も国民一般に理解を得ることは決してできない例であって、指導者としての現状認識能力に疑いが出てくる。

 要するに本質的にはパートと言った言わなかったの問題ではない。あくまでも一国の首相の現状認識能力の問題である。安倍晋三はそこのところを最初から最後まで履き違えている。

 アベノミクスの成功を謳うために現状を無視して50万円と25万円という高額の収入を持ち出したとしか見えない。現状を無視できる現状認識能力はその能力の否定以外の何ものでもない。

 その後似たような両者の応酬があってから、安倍晋三の執念深さを見る思いがするが、西村智奈美女史の「2世、3世の大臣が非常に多い」という先程の発言を捉えて、しっぺ返しのつもりなのだろう、同じ現状認識能力を欠いた発言を得意気に発信している。

 安倍晋三「西村智奈美議員はですね、ここにいるメンバーにですね、経歴等についてお話をされたけれども、大切なことはですね、経歴ではないんですよ。結果を出すことですよ。(与党議員席からだろう、拍手が起きる。)

 私たちはね、110万人雇用を増やしたんですよ。そして高校生については今までに24年振りの内定率を確保ししているんですよ。若い人たちが心配しなくても済むようになったんですよ」

 そして現状認識能力が問われていることに気づかずに、有効求人倍率がどうのこうのと、見当違いにも統計上の数字だけをあげつらった。

 安倍晋三がここで言ったことは一見正論に見える。だが、経済格差と教育格差の連鎖という現状に対する認識能力を欠いているからこそできる発言でしかない。

 政治の世界に限ったことではないが、確かに結果が全てではある。だが、一定の、あるいは一定以上の学歴を必要として、結果に挑戦できる地位に就くためには一般的に親の収入がより有利な条件として働くという社会の現状は無視できない。

 特に政治家に関しては親の収入が学歴獲得に有利に働くのみならず、親が政治家であるなら、そのジバン・カンバン・カバンをも引き継ぐことのできる有利な条件が結果挑戦への端緒として働く。だからこその国会議員や閣僚に2世、3世が多いということであろう。

 このことを無視して、結果だけを言う。安倍晋三の現状認識能力はどうなっているのだろうか。

 1月13日衆院予算委でも山尾志桜里女史は、「パートの実態が分かっていないんじゃないか」と安倍晋三の現状認識能力を問い質した。

 安倍晋三は「まさに本質を見ない枝葉末節な議論でしてね、本質を見なければ経済は良くなりませんよ」と自らの現状認識能力の欠如を棚に上げて立派なことを言い、あとは同じ内容の繰返し、一国の首相でありながら、高額所得者に限っては普遍化できても、国民一般には普遍化できない総雇用者所得を振りかざして国民の収入の話とし、あるいはアベノミクスの成功譚とし、「私は妻がパートで働き始めたなどと言ってはいないんじゃないですか」と最後まで言い張り、一国の首相である以上、より大切であるはずのパート雇用についての現状認識を詳らかにすることをしないままに延々と同じ内容の答弁を繰返した。

 パート雇用についての現状を認識するだけの能力を満足に持ち合わせていないから、以上のような譬え話になったのであり、だから詳らかにすることができないのであって、そうである以上、パート雇用対策は安倍晋三とは関係のない場所で動かしていることになる。

 元々国民の在り様よりも国家の在り様を優先させる国家主義者である。足許の政策は役人に教えられて進めているだけで、頭の中は偉大な日本国家の姿しかないはずだ。

 そうであることによって現状認識能力を欠如させた姿と釣り合いが取れる。

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