2017年1月29日付「The Huffington Post」記事が罰当たりな米新大統領トランプの難民・中東7カ国国民の無期限、あるいは一時入国禁止の大統領令について解説していて、その中で大統領令で大統領令の概要に言及している。
大統領令概要 ・シリアからの避難民受け入れを無期限で停止する。 ・すべての国々からの難民受け入れを120日間停止する。その期間中、政府は事情に応じて難民を受け入れることが可能だが、次の状況下のみに限られる。 (例外) 宗教的迫害を受けている宗教的少数派であること アメリカが国際協定に応じるためにその難民を承認しなければならない場合 難民が既に輸送中で、受け入れを拒否することで不当な困難をもたらす場合 ・以上の期間後は国土安全保障省、国務省、国家情報長官が共同で承認した国からの難民だけを受け入れる。 ・2017会計年度の難民受け入れ許可数を5万人までとする。 (対してオバマ政権の2017会計年度の難民受け入れ許可人数は11万人) ・移民国籍法217項(a)(12)、8U.S.C.1187(a)(12)で定められている国からの個人で「移民」または「非移民」の入国を90日間禁止する。 ・「特に懸念される」国へのビザ発行を見合わせる。60日後、国土安全保障省、国務省、国家情報長官は、情報提供の要請に従わない国のリストを作成する。それらの国々から来る外国人は、アメリカ入国が禁止される。 ・「攻撃を受けているシリア住民たちを保護するための安全地帯」を確立する。大統領令では、国防長官に対し、90日以内にシリア国内に安全地帯を設置する計画案を提出するよう指示する。 これにより、アメリカのシリア介入が拡大する可能性がある。また、これは、トランプ大統領がシリア紛争にどのような関与をするのかを示す、初めての公式な指示となる。 ・アメリカへの訪問者全員を対象にした、生体認証による出入国追跡システムの完成を進める。そして、非移民ビザを申請する個人全員に対面での面接を要求する。 ・ビザ面接免除プログラムを無期限で中断する。そして、締結国との互恵協定となっている従来のビザ免除合意が、本当に互恵的になっているかどうか再検討する。 |
上記項目以外に記事本文の中で、イラク・シリア・イラン・スーダン・リビア・ソマリア・イエメンの7カ国の入国希望者に対するビザ発給90日間停止が大統領令は含んでいると伝えている。
いわば難民ではなくても、7カ国からの入国希望者は全て90日間入国禁止措置とするということを意味する。
例外措置は極く極く少数に限られている。と言うことは、大統領令で対象となった全ての国々の難民と7カ国の国民をほぼ無制限に網をかけた一時的米入国禁止措置となっていることになる。
トランプは1月29日に、「イスラム教徒の禁止ではない。宗教ではなくテロと国家の安全の問題だ」との声明を発表、ケリー国土安全保障長官は1月31日に緊急の記者会見を開き、「イスラム教徒の入国を禁じているのではなく、いまの難民やビザの審査の仕組みを見直すための一時的な停止だ」と理解を求めたと、共に「NHK NEWS WEB」が伝えているが、入国一時禁止対象者はほぼイスラム教徒である以上、トランプやケリーが言っていることは、実際はイスラム教徒を狙い撃ちしながら、そうだと言うことができないことからの自己正当化の方便に過ぎない。
狙い撃ちの的を7カ国のイスラム教徒に絞ったということであり、全ての国々の難民と言っているが、その中でも特にイスラム教徒の難民ということであろう。
このように自分たちの利益のみを考え、その利益によって相手が被るどのような不利益・苦痛も問答無用に、いわば民主的なルールや国際慣行を一切無視して特定の宗教や人種・民族を無制限に網をかけて自らの利益を優先的且つ一方的に押し付ける政策は歴史的にナチスのユダヤ人虐殺に見てきたし、太平洋戦争当時のアメリカでの日系アメリカ人の収容所隔離にも見てきたし、関東大震災当時の日本人暴徒による対朝鮮人・中国人虐殺、その他の民族レベルの虐殺に見てきている。
トランプの全ての国々の難民と7カ国の国民に対する一時的入国禁止措置は、例えそれが一時的であっても、対象国のイスラム教徒に対して無制限に網をかけているという点で、それが身体的虐殺に至っていなくても、精神的虐殺と言えなくもないのだかから、本質的には上記虐殺の構造と何ら変わらない人種差別であり、人種虐待と言うことができる。
あるいは民族差別であり、民族虐待だと言える。
上記「The Huffington Post」記事はトランプが大統領令を発表した1月27日はホロコーストの犠牲者を記念する国際デーである「国際ホロコースト記念日」だと伝えている。
「Wikipedia」は「国際ホロコースト記念日」について次のように記載しいている
〈2005年11月1日、国連総会はナチス・ドイツ政権により600万人以上のユダヤ人、200万人のロマ人、1万5千の同性愛者が迫害され大量に殺害されたホロコースト(大量虐殺)を確認し、憎悪、敵対感情、人種差別、偏見がもつ危険性を永遠に人々に警告することを目的とした国際連合総会決議60/7を採択した。1月27日はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所がソ連軍によって解放された1945年1月27日を基準としている。〉
発表をこの日にしたことのトランプの発言を記事は伝えている。
トランプ「亡くなった方の名において、私は、任期中そして生きている限り、二度と悪が善を打ち負かすことのないよう、最善の努力をすることを誓います。我々は共に、世界中に愛と寛容さを浸透させます」――
トランプのイスラム教徒を無制限に網にかけた米入国一時的禁止措置がナチスのユダヤ民族虐殺と構造的には本質的一致を見ている者からしたら、「世界中に愛と寛容さを浸透させます」云々は逆説的に過ぎて滑稽な限りである。
そしてトランプの言動を見ていると、この手の差別・虐待は一国繁栄主義・一国安全主義によって成り立っているということである。
トランプは自分の国さえ繁栄すれいいと考え、自分の国さえ安全であればいいと願っている。
ここには国際協調の精神が何も見えてこない。
このようなトランプに対して日本の首相安倍晋三は個人的信頼関係を築くことに汲々としている。