トランプは2016年1月27日にシリアからの避難民受け入れの無期限停止、すべての国からの難民受け入れ120日間停止、イラク・シリア・イラン・スーダン・リビア・ソマリア・イエメン7カ国の入国希望者90日間入国禁止措置の大統領令に署名した。
安倍晋三が「2016年の最後に」と記事が書いている日付で「夕刊フジ」の独占インタビューに応じている。
記者「過激な印象があるが、どんな人物だったか」
安倍晋三「穏やかでフレンドリーな人物だった。謙虚で熱心に話を聞く人物だった。選挙戦のイメージとは違った。孫娘のアラベラちゃんが、ピコ太郎の『PPAP』を熱唱している動画の話で打ち解けた(笑)。じっくり話して『信頼できる人物だ』と感じた。(私は)日米同盟は揺るがないと発信した」
安倍晋三のトランプ人物評は、「穏やかでフレンドリー」、「謙虚で熱心に話を聞く」、「信頼できる人物」と言うことになる。目薬を指し直す必要がないことだけを願う。
勿論、この目薬は目にさす目薬と言うよりも、頭にさす目薬である。
2017年2月5日夜7時からのNHKテレビのニュースでトランプが自身が大統領令で決めた入国制限に対して連邦地方裁判所が即時停止を命じる仮処分の決定を出しためにツイッターに批判の投稿をしたと伝えていた。
より詳しい内容を知りたいと思ってネットを調べてみると、トランプの英文のツイートを日本語訳している「サイト」に出会うことができた。投稿時間は省略。文飾は当方。
2017年2月5日分ツイート
〈一つの国が、安全性、セキュリティの観点から、「誰なら出入国してもよく、誰なら出入国してはダメ」などと言っていられる状況ではなくなっています。そんなことしていたらとんでもないトラブルになる!〉
〈いくつかの中東諸国が禁止に同意していることに興味があります。彼らは人々が死と破壊の中にあることが許されるべきか否か知っています。〉
〈一裁判官が国の安全保障のための渡航禁止措置を解除でき、悪意を持った者が誰でも入国できてしまう我々の国って何なのでしょう?〉
〈渡航禁止措置が裁判官によって解除されたとなれば、たくさんの凶悪で危険な人々がどっと押し寄せてくるかもしれません。ひどい判断だ。〉(以上)
難民に対する国別無期限入国禁止もしくは一時入国禁止、7カ国の国民の一時入国禁止は対象国民に対して無制限に網をかけているという点で人種差別であり、人種虐待だと2017年2月1日の当「ブログ」に書いたが、2月5日のトランプのツイッター投稿文に無制限に網をかけた人種差別観が如実に現れている。
先ず、〈「誰なら出入国してもよく、誰なら出入国してはダメ」などと言っていられる状況ではなくなっています。〉と言っていること。
だから、対象国とした国民の入国を誰彼なしに無差別に一時制限する。これは対象国とした国民全員を危険人物と見做していることになり、危険人物ではない人間にまで網をかけてしまう人種差別・人種虐待以外の何ものでもない。
結果的に対象国の国民全員を危険人物と価値づけていることになる。
この無差別性は危険で恐ろしい。
〈いくつかの中東諸国が禁止に同意していることに興味があります。彼らは人々が死と破壊の中にあることが許されるべきか否か知っています。〉
〈いくつかの中東諸国が禁止に同意している〉として入国制限の大統領令を自己正当化しているが、その禁止同意にかこつけて、〈彼らは人々が死と破壊の中にあることが許されるべきか否か知っています。〉との表現で、対象国とした国民全てが「死と破壊」を招く危険人物だと見做す否定的価値づけの網を無差別に掛けている。
上記精神性と何ら変わらない。
〈悪意を持った者が誰でも入国できてしまう我々の国って何なのでしょう?〉
現実には〈悪意を持った者が誰でも入国できてしまう〉わけでなない。そうであるなら、アメリカの入国審査が機能していないことになる。
と言うことは、アメリカ人全体が組織を設計し、運営する組織マネジメントの能力を欠如させていることになる。
トランプはこちらの方こそ問題にすべきだろう。組織設計・運営のマネジメント能力の欠如は入国審査のみに現れるわけではなく、他の組織の設計・運営にも影響しているはずだからである。
テロは貧困やその他の社会的矛盾が温床となっていると言われている。そして先進国は後進国の富を収奪してきた歴史がある。当然、先進国はテロの危険を分かち持つ責任と、それを制御・抹消する責任を有している。
だが、トランプはその責任に対する感覚はゼロで、入国制限という人種差別・人種虐待以外の何ものでもない荒業でテロを解決しようとしている。
〈渡航禁止措置が裁判官によって解除されたとなれば、たくさんの凶悪で危険な人々がどっと押し寄せてくるかもしれません。ひどい判断だ。〉
だからと言って、個人性を真っ向から無視して対象国の国民全てに無差別に渡航禁止措置の網をかけることは許されるだろうか。
〈凶悪で危険な人々〉だけではなく、凶悪でもない、危険でもない人々にまで渡航禁止の網を無差別にかけているのである。
あるいは〈凶悪で危険な人々〉だけを網にかけることができないからと、凶悪でもない、危険でもない人々にまで網をかけてしまう。
その人権蹂躙は特定の民族を餌食の対象としている。
この無差別性は多くの人が指摘しているよう、自らの民族的出自であるゲルマン民族の優越性の元、ユダヤ人種は劣る人種であり、身体障害者は役に立たない国民だからと無差別な大量虐殺に走ったナチスの人種選別と本質的には同じ構造を取っている。
あるいは第2次世界大戦当時アメリカが在住日系人全員に対して敵国日本に通じる危険人物の網をかけて収容所に収監した、当時のアメリカ政府上層部の精神性と同じ構造の人種レベルの排他性を有している。
また関東大震災時の日本人暴徒の朝鮮人・中国人虐殺は劣る人種としてその全体に網をかけて日本社会に有害な危険人物と見做していた精神性が発端となっている。
トランプが抱えている精神性と以上のような自民族優越意識からの人種差別、あるいは人種虐殺と似通っているということは、トランプのこのようなアラブ人やアフリカ人を対象とした入国制限・渡航禁止措置はアメリカ人、特にその中の白人種を優越民族に置いた価値観が可能にしている政策であるはずである。
人種や民族に関係なしにすべての人種・全ての民族を対等に価値づけていたなら、それぞれの個人性を無視して特定の国の国民や特定の民族を対象にして、その全体に無差別の網をかけることなどできなかったろう。
このように内面に人種差別・人種虐待の信用できない危険な精神性を抱えているトランプのような人物に対して日本の首相である安倍晋三は「穏やかでフレンドリー」で、「謙虚で熱心に話を聞く」、「信頼できる人物」だと最高の人物評価を与えている。