安倍晋三は江田憲司に南スーダン派遣自衛隊員が戦死の場合の進退の覚悟を問われ、隊員の覚悟を言うトンチキ

2017-02-07 10:16:11 | Weblog

 2017年2月1日の衆院予算委員会で安倍晋三は民進党代表代行の江田憲司に南スーダン派遣自衛隊員が万が一戦死した場合の出処進退の覚悟を問われた。


 江田憲司「南スーダンへの自衛隊派遣、これは昨年の12月から新任務、駆け付け警護、それから宿営地の共同防衛という、まさに昨年大騒ぎした違憲新安保に基づいて、これは安倍総理が主導した中で、初めて具現化したと言うか、現実になった問題ですね。

 南スーダン、皆さんね、外務省のホームページを見ると、スーダンというのはレベルスリーがレベルフォー、去年4月にアップされましたね。レベルスリーというのは渡航をやめてください、国民の皆さん。

 今あるレベルフォーというのは、今いる人は退避してください。何でこうなっているのか。ご存知のように昨年7月にジュバ、首都周辺で政府軍と非政府軍とで衝突があって、270名の方が戦死した。

 今でも首都郊外では散発的に戦闘が起こっている中にですね、こういった新任務を付与した判断、自衛隊を派遣された。されたことは総理の判断。その中身、時間がありませんから問い質しませんが、自衛隊の最高司令官は総理大臣ですからね。

 こういう危険な所にね、万が一のことも起こる、自衛隊に。こんな所に敢えて派遣された。最高司令官として、勿論のこと、覚悟を持って派遣されたんでしょうね。覚悟を持って。

 駆け付け警護と言って、空砲で威嚇射撃したって、なんたって、銃声一発で戦闘が起こることは過去の歴史を見るとおり。そうした中で、こんなことは想定したくありませんよ。ありませんけれども、もし自衛隊が多少、そうした事態になったらね、総理、当然責任を取られるんでしょうね。

 それ程の覚悟を持って、当然、安倍総理なら派遣されたと思いますけれども、総理のお考えをお聞きします」

 安倍晋三「南スーダンはですね、国連に加盟した国の中に於いて独立して間もない国で、一番若い国と言ってもいいんだろうと思います。その国が失敗した国とならないように、立派に自分の足で立てるようにまさに60カ国が参加してPKO部隊を出して、この国の発展のために貢献をしているわけであります。

 勿論、その中に於いては反政府勢力の存在や部族間の対立があって、治安状況は極めて厳しい。治安情勢が厳しいからこそ、各国は軍隊を出して、我々は自衛隊を出してですね、そして貢献しているわけであります。こうした中に於いて断固としてその地にとどまって鋭意(?)活動しているのも事実であります。

 そこで覚悟ということでありますが、当然ですね、我々は様々な任務をお願いします。私が最高指揮官であるわけですが、当然、これ自衛隊というのは国民のリスクを低下させるために自らリスクを取っている。これは服務の宣誓に於いても示しているわけであります。

 だからこそですね、その中に於いても彼らの安全を担保しなければならないと、こう考えておりますが、私も防衛大学の卒業式に臨み、私の前で服務の宣誓を行うわけでありますが、『事に臨んで危険を顧みず、身を以て責務の完遂に務め、以って国民の負託にこたえることを誓』うわけでありますが、その中で彼らは任務を全うしている。

 この南スーダンの活動だけではありません。あるいはスクランブルしたとき様々な危険が伴う。災害活動に於いてもそうです。そしてそうした中で事実今までも事故によって亡くなった方もたくさんいらっしゃいましたし、自衛隊員自身の覚悟を語っているし、レンジャー訓練も、レンジャー訓練も、レンジャー部隊も、訓練というのは相当過酷な訓練であります。

 で、これ訓練と言ってもですね、普通の訓練とは違うですね。その中で何人も命を落としているんですよ。先般も命を落とされて、今まで1900名の方々がこれ命を落とされております。

 私は毎年必ず殉職職員のですね、追悼式に出席をし、そこにはご遺族のみなさんが出席をされ、そこでは涙に暮れておられて、まあ、この皆さんの悲しみを私は最高指揮官としてしっかりと受け止めながら、出来る限りの安全確保をしていきたい。

 しかし同時にですね、彼らは国民の命を守るために尊い命を落とし、しかしその職務を全うしたと感謝をしながら、ご遺族の皆さんの気持ちを受け止めなければならないと、しっかりとそのこと誓っているところでございます」

 江田憲司「そんなことを言っているんじゃないですよ。要は安倍総理が主導された去年の安保法制が新しく付与した任務で派遣をしている。訓練とか、それは違う話です。

 安倍総理が主導したことで、戦後外国人を殺傷したり、殺傷されたりしたことはないんですが、もしそういった危険な所で殺傷されたら、そんなことは考えたくないんだけど、ちゃんと覚悟はあるんですねということをお聞きしたんです。

 覚悟ないんですか、総理。テロ人質事件(1996年12月の在ペルー日本大使公邸占拠事件のこと)のときに(何百人と人質になった、テロリストに押し入れられてですね、日本人が多く捕らわれたときにですね、私は覚えていますけど、橋本総理と梶山官房長官はね、もしトゥパク・アマルというテロリストが一人でも日本人に犠牲が出たら、総理か官房長官かどちらかが辞めようと話をしていたことをですね。事実ですから、申し上げますよ。

 それ程の覚悟で一国の総理大臣、官房長官をやるんですよ。それぐらいの覚悟あるんでしょ?勿論、こんな所に派遣しているんですから。覚悟があるとね、何でおっしゃらないんですか」

 安倍晋三「もとより、もとより最高指揮官の立場上に於いてはそういった覚悟は持たなければいけないんですよ。私はそういうことを申し上げている。

 PKOの活動もそうですよ、しかし同時にですね、様々な事態に備えるために相当過酷な訓練を行っているレンジャー部隊の諸君もいますよ。この訓練のレベルを上げていっているわけです。今に於いてもですね、相当の訓練をしているんです。

 例えば海の中でナイフを持って格闘するという訓練をしている。尋常な訓練じゃないんです。そういう訓練があって、初めて我が国の安全を守るために対応を整えていくことができるわけであります。

 実際その中で命を落とした、その家族の方々に、それはですね、気持というものをですね、受け止めなければいけないわけでありまして、追悼式に出て、涙に暮れるご家族、小さなお子さんたち、目の前にしてですね、常に自分はそういう立場にある、私の命令で命を絶つ人がいる。そして残された家族という現実に直面するという覚悟を持っていますね。

 当然、我々は毎回、指揮官としての立場を、指揮官としての責任を負っている。職務を遂行していく。そういう思いでございます」

 江田憲司「総理、そういう答弁を最初にお聞きしたかったですよ。当然ですからね。官房長官、官房等閑は梶山静六先生を政治の師としておられますが、先程私が出したエピソードを踏まえて、官房長官の覚悟を」

 菅義偉「今、総理の覚悟というか、常にそうした決意をしながら、日々仕事をしていかなければならないですから、私共もまさにそういう思いの中で一つ一つこの国を前進させるために何が必要なのか、その中で日々過ごしているところであります」

 江田憲司「自衛隊員の皆さんが本当に危険を顧みずに命懸けでそういう業務をされている。よーく分かっていますから、派遣された最高司令官、政府幹部の方は、それ以上の覚悟を持っておられる。そういう御答弁を頂きました」(次の質問に移る。)

 江田憲司が最初の質問で、「駆け付け警護と言って、空砲で威嚇射撃したって、なんたって、銃声一発で戦闘が起こることは過去の歴史を見るとおり。そうした中で、こんなことは想定したくありませんよ。ありませんけれども、もし自衛隊が多少、そうした事態になったらね、総理、当然責任を取られるんでしょうね」と言っていることは、南スーダン派遣の自衛隊員の中から駆け付け警護、もしくは宿営地共同防衛の任務上、もし戦死者が出た場合の自衛隊最高指揮官としての安倍晋三の出所進退の覚悟を問う質問であったはずだ。

 このことは江田憲司が次の質問で、安倍晋三の最初の答弁を「そんなことを言っているんじゃないですよ」と見当違いの内容だと退けて、「安倍総理が主導したことで、戦後外国人を殺傷したり、殺傷されたりしたことはないんですが、もしそういった危険な所で殺傷されたら、そんなことは考えたくないんだけど、ちゃんと覚悟はあるんですねということをお聞きしたんです」という言葉が証明している。

 安倍晋三は最初の答弁でも、次の答弁でも自身の出所進退の覚悟ではさらさらなく、自衛隊員が持ち、その家族が分かち合うことになる職務上の覚悟を述べたに過ぎない。ところが、江田憲司は安倍晋三の次の答弁を出所進退の覚悟を述べたものと勘違いして、「総理、そういう答弁を最初にお聞きしたかったですよ。当然ですからね」と納得をしている。

 安倍晋三は最初の答弁で、「そこで覚悟ということでありますが」と言いつつも、「服務の宣誓に於いても示しているわけであります」との謂(いい)で、防衛大卒業時に「服務の宣誓」で示すことになる自衛隊員の職務上の覚悟を取り上げたのであって、自身の出処進退の覚悟を取り上げたわけではない。

 このトンチンカン、見当違いは如何ともし難い。

 任官時の服務の宣誓、「事に臨んでは危険を顧みず、身を以って責務の完遂に務め、以って国民の負託にこたえることを誓います」――

 自身が所属することになる組織の約束事を遵守し、与えられた任務を忠実に履行することを誓うということは、特に自衛官はそうすることの覚悟の表明でもあろう。

 自衛隊員は命を賭す場合があるのだから、その覚悟があって、初めて宣誓することができる。

 安倍晋三は最初にトンチンカンを侵したままにトンチンカン状態で突っ走ることになる。

 スクランブル(緊急発進)活動や災害活動等で「事故によって亡くなった」自衛官が存在し、そういった死に対して「自衛隊員自身」が「覚悟を語っている」と言っていることも自衛隊員自身の覚悟を述べているに過ぎない。

 「今まで1900名の方々がこれ命を落とされて」、その追悼式で「ご遺族のみなさんが出席をされ、そこでは涙に暮れておられ」ると言っているが、例え涙に暮れていても、家族として分かち持っていた職務上の覚悟を内に秘め、噛み締めながらの涙だろうから、単に自衛隊員の家族の覚悟を述べているに過ぎない。

 そういった自衛隊員、そして家族の職務上の覚悟がそのまま裏目に出て家族を悲しみに落とす。「まあ、この皆さんの悲しみを私は最高指揮官としてしっかりと受け止めながら、出来る限りの安全確保をしていきたい」と、安倍晋三はこの程度の覚悟しか示すことができない。

 安倍晋三は江田憲司から改めて出処進退の覚悟を問われた次の答弁で、「もとより、もとより最高指揮官の立場上に於いてはそういった覚悟は持たなければいけないんですよ。私はそういうことを申し上げている」と、最初の答弁で、一言も言っていないのに、さもそういった出処進退の覚悟を述べたかのような詭弁を用いている。

 尤もいくら詭弁を用いても、どの程度の出処進退の覚悟か正直に言い直すならまだ可愛気があるが、上記最初の言葉を裏切って、自身の出処進退の覚悟ではなく、相変わらず自衛隊員の職務上の覚悟に言及したのみで済ますトンチンカンを働かせている。

 「海の中でナイフを持って格闘する」等のレンジャー部隊の過酷な訓練を挙げているが、レンジャー部隊に所属する自衛隊員が戦闘で、あるいは訓練中であっても万が一の死に巻き込まれる覚悟を持つがゆえの、そういった死を避ける戦闘術・身体能力を養う激しい訓練であって、いわばそういった激しい訓練自体が覚悟の一つ一つの必死な表現と見なければならないはずだ。

 当然、安倍晋三は自衛隊員の職務上の覚悟に言及しただけとなる。

 「目の前にしてですね、常に自分はそういう立場にある、私の命令で命を絶つ人がいる。そして残された家族という現実に直面するという覚悟を持っていますね」と言っていることも、安倍晋三の出処進退の覚悟とは無関係で、単に自衛隊員の戦死の可能性と戦士した場合に夫、あるいは子どもを失う家族の出現という現実に直面する可能性に対する覚悟、そういったこともあり得るという覚悟に過ぎない。

 かくこのように南スーダンPKO部隊派遣の自衛隊員の中から戦死者が出た場合の出処進退を問われて、自衛隊員の職務上の覚悟を述べることしかできないのだから、最後の締め括りに「当然、我々は毎回、指揮官としての立場を、指揮官としての責任を負っている。職務を遂行していく。そういう思いでございます」と言っていることにしても、「私は毎年必ず殉職職員のですね、追悼式に出席をし、そこにはご遺族のみなさんが出席をされ、そこでは涙に暮れておられて、まあ、この皆さんの悲しみを私は最高指揮官としてしっかりと受け止めながら、出来る限りの安全確保をしていきたい」と言っている通りそのままに自衛隊員の死やその家族の覚悟の悲しみを受け止める程度の「指揮官としての責任」といったところであるはずだ。

 安倍晋三がどう言葉を尽くそうと、自衛隊員かその家族の覚悟を縷々と述べているに過ぎないのであって、安倍晋三自身の出処進退の覚悟は一言も述べていない。官房長官の菅義偉にしても右へ倣えである。

 どうして江田憲司は安倍晋三が自らの出処進退の覚悟を述べたと納得したのか、これもトンチキなことで、皆目見当がつかない。

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