韓国慰安婦少女像設置は歴史の事実証明 安倍晋三の日韓合意10億円拠出,日本の誠実な義務実行はマヤカシ

2017-02-18 09:07:32 | 政治

 韓国ソウルの日本大使館前だけではなく、昨年暮れ、2016年12月30日、韓国南東部の釜山にある日本総領事館前に地元の学生などで作る団体が慰安婦少女像を設置した。日本政府は2015年12月の日韓合意の精神に反するものだとして2017年1月9日に駐韓大使と釜山総領事を一時帰国、現在も帰国したままの状態になっている。

 帰国前日の2017年1月8日のNHK「日曜討論」に安倍晋三が出演、釜山の総領事館前の慰安婦少女像設置について次のように発言している。

 安倍晋三「慰安婦問題の日韓合意は最終的かつ不可逆的な合意だとお互いに確認している。日本は誠実に義務を実行し10億円を既に拠出している。次は韓国がしっかりと誠意を示して頂かなければならない。それは例え政権が代わろうとも実行するのが国の信用の問題だ」

 一旦国と国との間で合意した問題は「例え政権が代わろうとも実行するのが国の信用の問題だ」と言っているが、オバマ政権時代の日米等12カ国環太平洋パートナーシップ協定(TPP)合意を次期トランプ政権は破棄している。安倍晋三は「例え政権が代わろうとも実行するのが国の信用の問題だ」とトランプにこそ言うべきだったろう。

 安倍晋三は10億円拠出を日本の誠実な義務実行行為だと臆面もなく言い、「次は韓国がしっかりと誠意を示して頂かなければならない」と要求しているが、「日本の誠実」の内容が言葉通りなのか、言葉通りなら問題はないが、そうでなければ、日本政府が言っている日韓合意の精神にしても、胡散臭さを臭わせることになる。

 2015年12月28日、日本の外相岸田文雄とユン韓国外相が韓国ソウルで会談、両国間に横たわっていた従軍慰安婦問題で合意を見た。

 そのときの合意事項が外務省サイト(2015年12月28日)に記載されている。日韓間で対立した問題点の一つとなっていた女性を従軍慰安婦に強制的に仕立てたことに日本軍の関与があったかどうかについて言及した個所のみを抜粋する。 

〈1 岸田外務大臣

 (1)慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。

安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。〉――

 一見すると、今回初めて日本軍の強制連行と強制売春を事実認定し、この点について同じく初めて公式的に日本政府の責任を受容したように見える。

 2016年1月18日の参議院予算委員会

 中山恭子「今回の共同記者発表は極めて偏ったものであり、大きな問題を起こしたと考えております。共同記者発表では『慰安婦問題が当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本の責任を痛感している』。

 すべての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復の代替として日本のために戦った日本の軍人たちの名誉と尊厳が救いのない程に傷つけられています。さらに日本人全体がケダモノのように把えられ、日本の名誉が繰返しがつかない程、傷つけられています。

 外務大臣にお伺い致します。今回の共同発表が著しく国益を損なうものであることに思いを致さなかったのでしょうか」

 対して岸田文雄は、この合意は「従来から表明してきた歴代の内閣の立場を踏まえたものであります」と答えている。

 この「歴代の内閣の立場」とは、歴代内閣が従来から引き継ぎ、安倍内閣も内閣としてその立場を踏まえると表明してきた「河野談話」の従軍慰安婦に関わる歴史認識に基づいた「日本軍の関与」であり、日韓合意によって何も変わっていないという趣旨となる。

 安倍晋三自身が一見すると日本軍関与の従軍慰安婦の強制連行と強制売春を認めているように見えるが、この趣旨に反する発言を国会その他で発言している。

 安倍晋三「河野洋平官房長官談話によって強制的に軍が家に入り込み女性を人攫いのように連れていって慰安婦にしたという不名誉を日本は背負っている。安倍政権のときに強制性はなかったという閣議決定をしたが、多くの人たちは知らない。河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある。孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかない」

 安倍晋三「河野談話は基本的に継承している。狭義の意味で強制性を裏付ける証言はなかった。いわば官憲が家に押し入って連れて行くという強制性はなかったということだ。そもそもこの問題の発端は朝日新聞だったと思うが、吉田清治という人が慰安婦狩りをしたという証言をしたが、まったくのデッチ上げだったことが後(のち)に分かった。慰安婦狩りのようなことがあったことを証明する証言はない。裏付けのある証言はないということだ」

 要するに外交問題となるから、安倍内閣の立場として「河野談話」を引き継ぐが、河野談話に書いてあるような日本軍関与の強制性は歴史の事実に反するとの立場を取っている。

 安倍晋三のこの強制性否定はこの日の「日本のこころ」代表の右翼中山恭子の続いての質問に対する安倍晋三の答弁にも現れている。

 安倍晋三「海外のプレスを含め正しくない事実による誹謗中傷があるのは事実でございます。性奴隷 あるいは 20万人 といった事実ではないこの批判を浴びせているのは事実でありまして、それに対しましては政府としては、それは事実ではないということはしっかりと示していきたいと思いますが、政府としてはこれまでに政府が発見した資料の中には、軍や官憲による所謂強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったという立場を辻本清美議員の質問主意書に対する答弁書として平成19年、これは第一次安倍内閣の時でありましたが、閣議決定をしておりまして、その立場には全く変わりがないということでございまして、改めて申し上げておきたいと思います。

 また 当時の軍の関与の下にというのは、慰安所は当時の軍当局の要請により設営されたものであること、慰安婦所の設置、管理及び慰安婦の移送について旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与したこと、慰安婦の募集については軍の要請を受けた業者が主にこれにあたったこと、であると従来から述べてきている通りであります。

 いずれにいたしましても重要なことは今回の合意が、今までの慰安婦問題についての取り組みと決定的に異なっておりまして、史上初めて日韓両政府が一緒になって慰安婦問題が最終的且つ不可逆的に解決されたことを確認した点にあるわけでありまして、私は私たちの子や孫そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと考えておりまして、今回の合意はその決意を実行に移すために決断したものであります」――

 要するに旧日本軍の関与は慰安婦所の設置、管理及び慰安婦の移送のみであって、日韓合意で認めた日本軍関与はその線に添ったものであり、強制連行や強制売春を認めているわけではないという趣旨となる。

 そしてその根拠として前の発言で、「吉田清治という人が慰安婦狩りをしたという証言をしたが、まったくのデッチ上げだったことが後(のち)に分かった。慰安婦狩りのようなことがあったことを証明する証言はない。裏付けのある証言はないということだ」

 確かにいわゆる「吉田証言」は全てデッチ上げであったことが判明したが、この発言にはそのデッチ上げの「吉田証言」を前面にクローズアップさせて、他の証言も全てデッチ上げだと右へ倣えさせて言いくるめようとする詭弁を見ることができる。

 なぜなら、台湾でも、フィリピンでも、インドネシアでも20歳前の少女を含む若い女性が日本兵自身の手による従軍慰安婦狩りによって強制連行され、強制的に売春に従事させられた証言が数多存在する。

 戦前のインドネシアで当時宗主国であったオランダの捕虜民間人収容所から未成年を含む少女を日本軍のトラックで強制的に連れ去り、売春に従事させた事実は広く知られている。

 その一人は性病検査の日本人軍医にまで姦されたことを証言している。

 安倍晋三はこういった証言の事実を「吉田証言」のデッチ上げを以てして全てデッチ上げだとするペテンを臆面もなく披露している。

 要するに2017年1月8日のNHK「日曜討論」で安倍晋三が言っている日韓合意を受けた10億円拠出の“日本の誠実”とは従軍慰安婦に関わる強制連行と強制売春の歴史の事実を一切認めないが正体であり、裏に偽りやゴマカシを隠した“日韓合意の精神”に過ぎない。

 認めていなからこそ、歴史の事実の一つの証明である従軍慰安婦少女像の設置に偽りやゴマカシでしかない“日韓合意の精神”を持ち出して撤去を求めることになる。

 日本政府の少女像撤去要請に応じたなら、韓国は歴史の事実を自ら葬り去ることになって、安倍晋三と共に歴史改竄の共犯者となる。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする