安倍晋三のトランプ7カ国入国制限大統領令「コメントする立場にない」よりも呆れる民進党議員の連携のなさ

2017-02-02 11:21:38 | 政治

 2017年2月1日の衆院予算委員会の質疑をNHKで視聴していて、民進党の江田憲司、大串博志の二人共が7カ国米入国一時禁止のトランプ大統領令に関しての安倍晋三の「コメントする立場にない」の答弁に対して何ら連携がないままに自分たちの遣り方で同じ内容の質問をし、似たような答弁しか収穫できない時間のムダ遣いをしていることに気づいた。

 この点に触れる前に1月30日と翌日の1月31日の参議院予算委員会の質疑でも、その模様は見ていなかったが、1月30日は民進党代表の蓮舫が、1月31日には福山哲郎が同じ質問をし、「コメントする立場にない」という同じ答弁を引出していたことをマスコミが伝えているから、各記事から見てみることにする。文飾は当方。

 1月30日の安倍晋三の答弁。

 安倍晋三「米国の大統領令という形で米政府の考え方を示したものだろうと思う。私はこの場でコメントする立場にはない。いずれにせよ我々は、難民への対応は国際社会が連携して対応していくべきだと考えている」(asahi.com) 

 1月31日の安倍晋三の答弁。

 安倍晋三入国管理政策は基本的には内政事項であり、アメリカ国内においても、さまざまな意見があると承知しているが、いわば難民、移民、出入国管理をどのようにやっていくかは、その国が判断することだ。われわれは注視しているが、今、直ちにコメントすることは差し控えたい。

 難民が出ている状況に対して、アメリカを含めて世界が対応していくべきだというのは当然のことだ。大統領令の実施状況を日本政府としても関心を持って見守っていきたいが、難民が出てくる状況を根絶するため、日本も大きな役割を担っていかなければならない」(NHK NEWS WEB)    
 
 「asahi.com」記事は「内政事項」という言葉を使っていない1月30日安倍晋三の答弁となっているが、使っていたら、そのまま紹介するだろうから、使っていなかったのだろう。

 だが、「米国の大統領令という形で米政府の考え方を示したものだろうと思う」と言っている「米政府の考え方」という言葉の中に内政問題だとするニュアンスを含んでいるはずである。

 いずれにしても、1月31日の答弁で7カ国の国民全てを入国制限の網にかける大統領令を「内政事項」だと言明した。

 シリアからの避難民受け入れを無期限で停止することやイラク・シリア・イラン・スーダン・リビア・ソマリア・イエメンの7カ国の入国希望者の入国を一時禁止することはアメリカと外国との関係に話し合いもなく大きな変更をもたらす国際上の措置であって、それを果たして「内政事項」とすることができるのだろうか。

 西欧の首脳やカナダの首相、あるいは中東の首脳がトランプの大統領令を批判しているが、もしそれを内政問題だとしたら、彼らはアメリカに対する内政干渉を侵していることになる。

 アメリカ一国の問題ではなく、正常な国際関係を維持していく上で由々しき問題だと見たからこそ、批判しているはずだ。

 2017年2月1衆院予算委員会。民進党江田憲司

 江田憲司「7カ国の入国禁止大統領令についてコメントする立場にないという答弁なんですけど、少々おかしいんじゃないでしょうかね。これまで日米というのは基本的な価値を共有するんだということで自由だとか、人権の尊重とか、民主主義であるとか、法の支配とか言って、来られたわけでしょ。

 トランプさんも同じだというのであれば、しっかりと説明したって(構わないではないか)、今度の首脳会談で。だって、イギリスのメイ首相だって、カナダのトルドー首相だって、ドイツの首相だって、みんな釘を刺しているわけですから。

 西側の基本的価値を脅かされているような状態に対してコメントする立場にないというのは余りにも常識に反しませんか。しっかり首脳会談では言うことは言うということでぜひ対処して頂きたいと思いますけども、総理の見解を求めます」

 安倍晋三「先般申し上げましたのはですね、国境管理、いわば出入国に対してどういう対応を取っていくか、あるいは移民について、難民についてどのような姿勢を取っていくか、いわば内政問題でありますから、コメントする立場にはない、と同時に注視しているということはお答えさせて頂きました。

 同時に私が述べているのはですね、今まさに国際的にですね、難民の問題、移民の問題がある中に於いてですね、そうした問題を根本的に解決していくと同時にそうした問題に対応する上に於いて国際社会がですね、お互いが相協力して応ずれば、しっかりその役割を果たしていくべきであると、難民についてそうであります。

 そいういう意味に於いてしっかり役割を果たしていく。国際社会が共にそういった対応を協力しながらそうしていくことは当然のことであろうと、そう考えているところでございます」

 江田憲司「難民に限っただけではないですか。一般国民、人種であるとか、宗教であるとか、肌の色で差別しちゃあいかんということは根幹中の根幹ですからね、そこについてものを言わなければ。

 難民は当たり前ですよ、おっしゃることは。難民に限って、それは違う。逃げた答弁だと思いますがね。しっかりと釘を差さないとね、何も言えなくなりますよ。トランプさんに。そういうことを申し上げて、私の質問は終わります」

 入国制限の大統領令は「内政問題」とし、それ以後の答弁は上記「asahi.com」記事と「NHK NEWS WEB」がそれぞれ紹介している安倍答弁の後段の答弁と同じ趣旨となっている。

 いわば1月30日の蓮舫と1月31日の福山哲郎から2月1日の江田憲司と質問者は代えていても、同様の質問をし、同様の答弁でうまく躱(かわ)されるという時間のムダ遣いをしたに過ぎない。

 江田憲司はトランプの大統領令に絡めて自由・人権の尊重・民主主義・法の支配の支配は日米間の基本的価値であるのみならず、西側のそれでもあると、いわば欧米全体の基本的価値だと発言していることからして、大統領令は「内政問題」ではなく、国際問題だと見ているはずだが、江田憲司も含めて質問に立った民進党の各議員が大統領令を米国の内政問題だと見ているとしたら、安倍晋三が「内政問題」とした時点で質問を打ち切らなければならない。「内政問題」だから、安倍晋三の「コメントすることは差し控えたい」という答弁は尤も至極だと最大級の納得をしなければならない。

 いや、最初からこの件に関して質問できないことになる。

 だが、江田憲司の場合は時間切れとなって打ち切ったが、安倍晋三の答弁に納得せずに「しっかりと釘を差せ」と要求し、江田憲司に続いて答弁に立った大串博志は安倍晋三が「内政問題」だとした後も、江田憲司同様に国際問題であるとする文脈でしつこく追及している。

 この矛盾に誰も気づいていない。大串博志は江田憲司に引き続いて質問に立っている。

 大串博志「私が非常に気になったのはトランプ新大統領の大統領令、7カ国の皆さんの入国制限の話ですね。総理は基本的なことを共有する世界各国の皆さんと手を相携えていくと言うことをおっしゃっている。

 私は非常に感動するところがあるんです。平和、自由、あるいは基本的人権、これを世界に押し広げていこう。とっても大切な考え方だと思うんですね。しかしトランプさんが出した大統領令、7カ国の皆さんの入国を一時的にせよ、制限する、禁止する。これは非常に自由とか基本的人権とか、こういったものに対してどうかなと思うんです。

 (パネルを出して)で、これは世界各国の、これは総理が一緒に仕事をしていらっしゃる首脳の皆さん、表で皆さん発言されてるんですね。フランスのオランド大統領、『難民保護の原則を無視すれば世界の民主主義を守ることが困難になる』。

 メルケル首相、ドイツ『特定の出身地や宗教の人々を全て疑う遣り方は納得していない』。あるいはイギリスのメイ首相はこの間首脳会談をやられていい関係を築かれている。でも、言うことは言わなければならないということで、『賛成できない。英国民に影響するなら、米国に対して申し入れる』とおっしゃっている。

 カナダのトルドー首相は、これはツイッターですけれども、『迫害やテロから逃れた人をカナダは歓迎する。多様性は我々の強みだ』とおっしゃってる。国連のグテレス事務総長、『世界で最も発展した国々などが余りにも多くの国境を閉じているときにアフリカ諸国の国境は保護をする人々のために開かれている』というふうに言われているんですね。

 ビジネス界でも色々発言があって、このように発言されている(パネルの発言個所を示す)。

 安倍総理に改めてお尋ねしますけども、2月10に向けて大統領と会われる際に7カ国の入国制限をするという大統領令を受けて総理はコメントしないという態度でいらっしゃいますけれども、本当にそれでいいんでしょうか。

 先程の答弁にもありましてけれども、例えば自由や平和や人権といった基本的価値を共有して欲しいと言うぐらいの発言ですら、トランプ大統領に今この場から発信することは日本の総理としてできないでしょうか」

 安倍晋三「日本と米国は基本的価値を共有する同盟であるからこそですね、私は希望の同盟だとこう申し上げているわけであります。自由・民主主義・基本的人権、そして法の支配、こういう価値を共有している同盟であるというのが日米同盟でなければならないということでございます。

 そしてこの入国の管理、あるいは難民や移民に対する対応等につきましてはですね、これは内政事項であり、コメントすることは差し控えたいと思いますが、先程申し上げましたように他方ですね、他方、移民・難民問題についてテロ対策は世界的な課題だと認識しております・・・・・」

 以下の答弁の続きはここに挙げた質問者たちに対する答弁に共通した、移民・難民問題は国際社会が協力して対応するという内容で問題のすり替えを行っている。

 大串博志にしても、トランプ大統領令が「自由とか基本的人権」等の世界共通とすべき普遍的価値に反するという文脈で把え、そのような文脈でトランプ大統領令に対する安倍晋三の「コメントすることは差し控える」とする答弁を追及していながら、あるいは各国首脳がトランプ大統領令は国際問題だと見て、批判を発していると取り上げていながら、自身の質問の趣旨に反して安倍晋三の大統領令は「内政事項」だとする発言を看過してしまっている。

 大串はなおも安倍晋三からコメントを引き出そうと食い下がる時間のムダを費やすのみで、安倍晋三に「今ここで簡単に米国の問題について日本が批判的にコメントすれば、この大串委員はこれは大向こうから喝采を受けるからいいだろうと、そういう観点から恐らくおっしゃってるかも知れなせんが」と軽くいなされ、その果てに一般的な難民・移民問題に逃げ込まれてしまう。

 民進党は質問に立つ議員が全員集まって、重なる質問があかどうか照合し合い、それぞれの質問内容を各自が明確に把握するということをして、安倍晋三が一番バッターに対してどう答弁するか細心の注意を払い、その日の質疑終了後にその内容を全員で検証して、その矛盾を洗い出し、二番バッターがその矛盾を突くといった連携のための作戦会議を開かないのだろうか。

 連携ができていれば、安倍晋三が入国制限の大統領令をアメリカの「内政問題」としている点にのみ追及の把えどころがあるはずだが、連携がなかったからだろう、質問に立った誰もが把えどころを掴むことができずに追及し切れない似たような質疑を繰返すことになったはずだ。

 こんなことを続けていたなら、いつまで経っても安倍晋三の詭弁を打ち破ることはできないだろうし、結果的にこれまで通りのただ時間を費やす質疑を曝すだけのことになるはずだ。

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