肩書が仰々しい、その仰々しさに活動が伴って仰々しさを打ち消すことができるのかどうかは未知数だが、岡田副総理兼社会保障と税の一体改革担当相が消費税に関して増税することは国民に伝わっているが、その使途について「政府の説明も必ずしも明確ではない」と1月17日(2012年)、記者会見で発言したという。
《副総理 “増税分は子育てなどに”》(NHK NEWS WEB/2011年1月17日 18時54分)
岡田副総理「消費税率を引き上げることは国民に伝わっているが、段階的に5%引き上げる分で何をするのかは十分に理解されておらず、政府の説明も必ずしも明確ではない」
今さら何を言っているのだろう。民主党はバカばっかなのだろうか。
増税率5%と使途は切っても切れない深い関係にあって、使途は増税率の算出根拠となっているはずである。増税率を決めてから、使途を考えるわけではあるまい。
口には出さないが腹の中で、国民からこれくらいふんだくっても大丈夫だと5%の増税を決め、合わせて10%だ、10%の税収があれば、これとこれに使うことができると、使途を後付けのものとしたわけではあるまい。
当然、「何をするのか」の使途――何にどう使って社会を活性化する、あるいは社会を向上させるかは頭に持ってこなければならない説明であって、そのためには財政(と言うよりも正確に言うと、巨額赤字財政との兼ね合いで)これこれの増税が必要だと、このことを次の説明とし、そして後先の説明のそれぞれの正当性と両者の整合性ある関係性を国民の判断に委ねて理解を得る基とする手順を踏まなければならなかった。
それを増税率は「国民に伝わっているが」、使途は「十分に理解されて」いないと逆の手順としているばかりか、常に政府の説明は明確でなければならないにも関わらず、当然、頭に持ってきて理解を“明確に”得ていなければならない説明の理解がまだだ、その理由が政府の説明が「必ずしも明確ではない」からだと、間が抜けたことを間が抜けたことと知らずに真面目臭って口にしている。
バカ丸出しではないか。
要するに満足に説明責任を果たしてこなかった。そのことに今更ながらに気づいた。説明責任を果たすことができない野田内閣は失格内閣である。
読売新聞の世論調査では、野田首相が自らの政策や考えを国民に十分に説明していると思わない国民が昨年11月調査から3か月連続で8割を超えて、「説明不足だ」としていることも頷くことができる岡田副総理の説明手順を間違えたトンチンカンな発言であり、使途と増税率のそれぞれの正当性と両者の整合性ある関係性が政府の説明責任不履行のために理解されていないにも関わらず、増税時期だけはしっかりと決めたトンチンカンな政策決定だと言わざるを得ない。
また、使途と増税率のそれぞれの正当性と両者の整合性ある関係性を説明するにしても、大多数の国民の生活が成り立つことを前提とした増税となっていなければならないはずだ。
当たり前のことを言うが、生活が成り立つ前提がなければ、消費税増税に対する国民の拒絶反応は払拭できない。いくら政府の側が「増税には痛みが伴う」と口を酸っぱくして言っても、生活が成り立たない痛みまで引き受ける国民はいまい。
「人間はパンのみにて生きるにあらず」と言うが、パンあってこその精神的生活である。一般的に精神的生活はパンの量に比例する。
いわばパンが基本となる。パンの保障こそが、国民の生活が成り立つ前提――生活の保障となる。
各マスコミの世論調査では消費税増税に半数を超えた国民が反対を示し、半数を下回る国民が賛成を示している。中には民主党に反対だから、消費税増税に反対するという国民もいるだろうが、人間が生活の生きものである以上、生活が成り立つか成り立たないかを前提とした増税判断となり、このことは世論調査の賛否にほぼ重なっているはずである。
ということは、特に中低所得層、そして小零細企業が増税されても生活の保障を前提とした使途と増税率のそれぞれの正当性と両者の整合性ある関係性の納得のいく説明と国民の理解が必要となる。
こういったプロセスを踏まないことには岡田副総理が説明が十分でない政策として子育て支援を挙げ、次のように発言したというが、意味を成さないことになる。
岡田副総理「働きながら子育てをする態勢の準備ができていないという議論に、さらにドライブをかけて取り組むことを子育て世代に伝わるようにしなければいけない」
非正規雇用ゆえに所得が不安定で少なく、結婚出来ない、子育てに無縁の場所に立たされている20代、30代の若者がゴマンといる。当然、雇用の点でも、給与の点でも、消費税増税の点でも、生活保障の前提は欠かせないことになるが、岡田副総理にはその視点がないようだ。
消費税増税反対派の「この不景気に消費税増税は自殺行為だ」という警告は生活の保障を第一番の前提としているからこその発言であろう。
いわば生活の保障を欠かすことのできない前提に置いているということを意味する。
この前提に関して閣議決定した素案では、〈所得の少ない家計ほど、食料品向けを含めた消費支出の割合が高いために、消費税負担率も高くなるという、いわゆる逆進性の問題も踏まえ、2015 年度以降の番号制度の本格稼動・定着後の実施を念頭に、関連する社会保障制度の見直しや所得控除の抜本的な整理とあわせ、総合合算制度や給付付き税額控除等、再分配に関する総合的な施策を導入する。〉としているのみで、確定した前提となっているわけではない。
確定していないのに、大多数の国民の生活を保障することを前提とした増税だと、どう説明ができるのだろうか。
また、低所得層の逆進性対策としての給付付き税額控除はバラ撒きだと多くの識者が指摘し、反対している。バラ撒きは歳出のムダを生む。回りまわって特に中小所得層に生活上の打撃を与えることになる新たな増税となる。
ただでさえ、多くの国民が生活に不安を抱えているのである。バラ撒きとはならないと国民に十分に納得させる説明こそが国民の生活が成り立つことを前提とした増税ということになるが、懇切丁寧なその説明もない。
安住財務相を含めた政務3役が今週末から各地を回って一体改革の狙い、使途について理解を求めるという。《財務省 一体改革を地方で説明へ》(NHK NEWS WEB/2011年1月18日 4時0分)
1月17日記者会見。
安住財務相「5%の引き上げ分を具体的にどう使うのか、分かりやすい説明をする必要がある。私自身もこれから日本全国津々浦々に伺って、国民の皆さんと精力的な話し合いをしたい」
何に使うかだけでは言葉だけの説明で終わるに違いない。パンを約束する説明――生活の保障を前提とした増税だと請合うことのできる説明を欠いていたなら、心からの理解、心からの賛意を得ることはできないだろう。
また政治が国民の生命・財産を守るとしている以上、増税にかぎらず、大多数の国民の生活を保障することを前提とした政治、生活の保障を前提とした政治でなければならないことは断るまでもない。
こういった姿勢が見えてこないのはやはり民主党はバカばっかだからなのだろうか。 |