安倍政権は今こそ国連安保理南スーダン武器禁輸等制裁決議案棄権の責任を取るべし

2017-02-14 09:55:37 | Weblog

 2016年12月23日、米国主導の南スーダン武器禁輸等制裁決議案が国連安保理で採決された。この制裁は南スーダンへの武器輸出の禁止や内戦当事者の資産凍結等を柱としていると言う。

 採決では米英仏スペインなど7カ国が賛成したが、日本、ロシア、中国、エジプトなど8カ国が棄権し、否決された。

 アメリカは日本に対して賛成するよう、強く働きかけたと言う。だが、日本は棄権した。

 なぜ日本は棄権したのだろうか。安倍政権は2016年11月15日に自衛隊に対して駆け付け警護と宿営地共同防衛の新任務を付与、新任務を担った自衛隊施設部隊先発隊が南スーダンに向けて2016年11月20日に現地へと出発している。

 この1カ月後の採決である。

 2016年12月31日の当ブログに次のように書いた。  

 〈アメリカが国連安全保障理事会に南スーダンへの武器禁輸を含む制裁決議案を提出したのは南スーダンの両派が民族浄化を色濃くした戦闘行為に走るのを前以て予防する目的を持たせていたはずだ。

 だが、2016年12月23日の採決で米英仏スペインなど7カ国が賛成したが、日本、ロシア、中国、エジプトなど8カ国が棄権し、否決された。

 日本は自衛隊PKO部隊を南スーダンに派遣している。武器禁輸が実施されて、何が不都合なのだろうか。

 日本が棄権した理由は武器禁輸が却って混乱を招き、陸上自衛隊PKO部隊のリスクが高まりかねないと判断したためだとマスコミは伝えている。

 だが、南スーダンで武力衝突が起き、その衝突が現地自衛隊PKO部隊の対応可能範囲を超えた場合はPKO参加5原則に照らして撤収することを前以て決めているのだから、リスクが高まれば、撤収すれば混乱は回避できる。

 武器禁輸による混乱と、相手の軍備よりも自らの軍備をより強力に装備すべく相互に競争し合って武器を掻き集めて生じる混乱とどちらが危険なのだろう。

 後者の混乱の方が一般市民に対する危険は高いはずだ。戦いを有利に進めるための兵力の増強を図るとき、兵器だけの増強では済まない。増強した兵器に応じた兵員を必要とする。

 そのために少年まで狩り集める。

 だが、武器禁輸がある程度の抑制効果として働くはずだ。

 武器禁輸が却って混乱を招くという日本の棄権理由に合理性を認めることができるだろうか。

 考え得る理由は安倍晋三は南スーダンを駆け付け警護の実験場として選んだ。もし日本がアメリカ提案の武器禁輸を含む制裁決議案に賛成票を投じたなら、そのことだけで南スーダンが武器を禁輸しなければならない程の危険な治安状況に差し迫っていることを自ら認めることになって、南スーダンでは戦闘行為は行われていない、首都ジュバは比較的に治安は守られているとしていた安倍政権が説明してきた自衛隊PKO部隊派遣の理由を直ちに失うことになる。

 実験を成功させて、更に実験を各地に拡大し、積み重ねていって、自衛隊の存在を世界に知らしめたい安倍晋三の思惑に反して実験そのものを中断させなければならなくなって国民の批判を受けた場合、自衛隊海外派遣の正当性さえ失いかねない。〉――

 2016年12月25日付「しんぶん赤旗」は採決後の日米国連大使の発言を伝えている。

 パワー米国連大使「棄権した国々の決定にたいして歴史は厳しい判断を下すだろう」

 別所浩郎日本国連大使「より大規模な暴力を防ぐために、こうしたこと(国民対話)を具体的行動に移していくことが必要」

 別所浩郎が言っている「国民対話」とはネットで調べたところ、2016年12月13日にキール大統領が「南スーダンの政府は赦しと一致、そして国の発展という問題について議論するために国民的対話を開始する」と国民暫定議会に語ったことに由来しているらしい。

 南スーダンの現状をマスコミ報道から見てみる。

 「南スーダンで「戦争犯罪の可能性」=市民攻撃に警告-国連安保理時事ドットコム/2017/02/12-00:51)

 【ニューヨーク時事】国連安保理は2017年2月10日、南スーダンで続く戦闘を「強く非難」し、即時停戦を呼び掛ける報道機関向け声明を発表した。また、市民が標的になっている事態は「戦争犯罪」に当たる可能性があると指摘し、関与した者は制裁対象になり得ると警告した。

 また、南スーダン政府が現地の平和維持活動(PKO)部隊による市民保護などの任務を妨害していると指摘した。

 市民への攻撃については「最も強い言葉で非難する」と強調。現地で市民の殺害や性暴力、民族間の暴力などが報告されていることに「深刻な懸念」を表明した。

 戦争犯罪にも等しい市民が標的になっている状況は2017年2月11日の当ブログにも書いたが、共に大型兵器を使って武力抗争を続けているキール大統領派の出身部族が南スーダン最大部族のディンカ族、反大統領派の元副大統領マシャールの出身部族が2番目部族のヌエル族で、部族同士の抗争へと変質、共に相手部族への憎悪が根ざすことになって、それが一般市民までを攻撃対象とする状況に至っている。

 一般市民は何らかの情報によって自分たちが攻撃対象となっていることを知った場合、あるいは攻撃を受けたものの運良く難を逃れることができた場合、当然、攻撃から自身を遠ざけることを考え、行動に移すことになる。それが難民という形となって現れているということなのだろう。

 どのくらいの難民が生じているか、2017年2月11日付の「asahi.com」が伝えている。  

 2017年2月10日に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が記者会見を開き、大規模な戦闘が起きた2013年12月以降、南スーダンから周辺国に逃れた難民が150万人を超えたと発表したという。

 この150万人は規模としてはアフリカ最大で、シリアやアフガニスタンに次いで世界第3位の難民危機だと警告しているそうだ。

 南スーダンの約1200万人の人口うち、150万人の国外難民だけではなく、国内難民が210万人、国連保護施設などに身を寄せているという。

 また難民の60%以上は子どもで、その多くが栄養失調の状態だという。

 南スーダンの人口の約30%の360万人が難民化し。その半数以上の60%、216万人が子どもと言うことは極めて重大な事態だと言わなければならない。

 記事は、〈昨年7月に首都ジュバで大規模な戦闘が発生して以降、難民の数が急増しており、昨年9月からの4カ月間だけで約50万人が国外に逃れた。〉と伝えている。

 〈最大の流入先は南隣のウガンダで約70万人。東隣エチオピアが約34万人、北隣スーダンが30万人以上〉――

 難民からの聞き取りによって南スーダン国内で激しい戦闘や誘拐、レイプ、深刻な食料不足が報告されていると伝えている。

 昨年7月の首都ジュバでの大統領派と反大統領派の激しい戦闘の後、自衛隊PKO派遣施設部隊が駐屯する首都の治安状況は比較的良好だが、国連安全保障理事会が2017年2月10日、北部のアッパーナイル州や南部のエクアトリア地方で市民を殺害する攻撃が繰返され、略奪が横行しているとして非難する声明を発表したと、「NHK NEWS WEB」が伝えている。  

 要するにキール大統領の南スーダン政府は機能不全に陥っていることを示している。である以上、国連大使の別所浩郎が言っていたキール大統領提唱の「国民対話」にしても、「国民対話」とは逆のことが起きているのだから、何ら活かすことができていない証明としかなっていないことになる。

 首都ジュバ以外の地での激しい戦闘、止むことのない市民殺害、略奪の横行、誘拐やレイプ――こういった事態を受けた生産機能の低下による、あるいは生産機能の麻痺による食料不足の現出ということなのだろう。

 全てが「国民対話」とは逆の現象である。

 そして戦闘の資源は戦車や戦闘ヘリなどの大型兵器であり、ライフル銃や機関銃のような小型兵器である。勿論、これらの兵器を手に入れる資金が大本の資源となる。

 このことは首都ジュバの治安が比較的良好だと言うことに関係しない。首都ジュバさえ治安が良ければいいというわけではないからだ。

 南スーダン政府が機能不全に陥っていて、戦闘を止める能力を失っていたなら、他国軍が介入して、双方に犠牲が生じ、市民への被害が増大する危険性は生じるが、目には目を、武力には武力の力を以てして抑えつけるか、これも絶対とは言えず、却って泥沼化する危険性も否定できないが、南スーダンに対する武器禁輸や内戦当事者の資産凍結等の国連決議による制裁の方法も、次善策として選択し得るはずだ。

 日本政府は南スーダン武器禁輸と内戦当事者の資産凍結等の国連決議による制裁に棄権した理由を武器禁輸が却って混乱を招き、陸上自衛隊PKO施設部隊のリスクが高まりかねないと判断したことと、キール大統領提唱の「国民対話」の具体的行動化への期待からのようだが、後者は実現させることができていない状況に陥っているし、前者は市民の殺害や略奪の横行、誘拐やレイプ、食料不足よりも首都ジュバに駐屯する陸上自衛隊PKO施設部隊のリスクの回避を優先させた制裁決議の棄権を意味することになる。

 どう考えても、上記紹介の2016年12月31日の当ブログに書いたように南スーダン派遣の陸上自衛隊PKO施設部隊に新任務として付与した駆け付け警護と宿営地共同防衛の実験を成功させるために武器を禁輸しなければならない程の治安状況だと思わせないことを意図した棄権としか見えない。

 と言うことは、そのためには市民が犠牲になっても、難民となっても良しとしていることになる。

 何という無責任な新安保法制優先のご都合主義な考えなのだろうか。

 安倍晋三は常々「国民の生命と幸せな生活を守る」と公言している。どうも安倍晋三は自国民だけの「生命と幸せな生活」だけを考えて、南スーダンの国民の「生命と幸せな生活」は派遣自衛隊の駆け付け警護と宿営地共同防衛の新任務を完遂させるために何ら躊躇(ためら)いもなく無視しているようだ。

 この自国民と他国民の差別もご都合主義に入る。

 このような数々のご都合主義は許されるはずはない。新安保法制を主導した安倍晋三はそれ相応の責任を取るべきだろう。

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安倍晋三が自らトランプの支配下に入ろうとしていることは日米首脳共同記者会見冒頭発言が証明

2017-02-13 11:14:56 | 政治

 日本時間2017年2月11日未明、安倍晋三は約40分間、ホワイトハウスでトランプと初の首脳会談を行い、その後共同記者会見を行った。

 先ず安倍晋三の冒頭発言を見てみる。

 「日米共同記者会見(首相官邸/2017年2月10日)     

 安倍晋三「米国を訪問するのは、昨年のハワイ・真珠湾以来。この半年間で4度目となります。

 アメリカ国民の皆様のいつも変わらない温かい歓迎に、心から感謝申し上げたいと思います。

 そして、トランプ大統領には、就任100日という大変重要なとても忙しいこのタイミングでホワイトハウスにお招きいただいたこと、大統領に心から感謝申し上げます。

 私の名前は『安倍』でありますが、時折、アメリカでは『エイブ』と発音されます。しかし、私は余り悪い気はしないわけでありまして、あの偉大な大統領の名を我が国においても知らない人はいないからであります。

 農民大工の息子が大統領になる。

 その事実は、150年前、(江戸幕府の)将軍の統治の下にあった日本人を驚かせ、民主主義へと開眼させました。米国こそ民主主義のチャンピオンであります。

 大統領はすばらしいビジネスマンではありますが、議員や知事など公職の経験はありませんでした。それでも、1年以上にわたる厳しい厳しい選挙戦を勝ち抜き、新しい大統領に選出された。これこそ、正に民主主義のダイナミズムであります。大統領就任を心から祝福したいと思います。

 米国は世界で最もチャンスにあふれた国である。それは、今までも現在もこれからも変わることはないと思います。

 だからこそ、自動車産業を始め多くの日本企業が全米各地に工場をつくり現地生産をしてきました。昨年も、日本から米国へ新たに1500億ドルを超える投資が行われました。これらは米国内に大きな雇用を生み出しています。

 正に互いに利益をもたらす経済関係を日米は構築してきました。

 トランプ大統領のリーダーシップによって、今後、高速鉄道など大規模なインフラ投資が進められるでしょう。

 日本の新幹線を一度でも体験した方がいれば、そのスピード、快適性、安全性は御理解いただけると思います。最新のリニア技術なら、ここワシントンD.C.からトランプタワーのあるニューヨークに、たった1時間で結ばれます。

 日本はこうした高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。そして、米国に新しい雇用を生み出すことができます。

 こうした日米の経済関係を一層深化させる方策について、今後、麻生副総理とペンス副大統領との間で分野横断的な対話を行うことで合意いたしました。

 さらに、急速に成長を遂げるアジア・太平洋地域において自由な貿易や投資を拡大する。これは日米双方にとって大きなチャンスです。

 しかし、もちろんそれはフェアな形で行われなければなりません。国有企業による、国家資本を背景とした経済介入はあってはならない。知的財産へのフリーライド(タダ乗り)は許されてはなりません。

 アジア・太平洋地域に自由かつルールに基づいた公正なマーケットを日米両国のリーダーシップの下でつくり上げていく。その強い意志を、今回、私と大統領は確認しました。

 アジア・太平洋地域の平和と繁栄の礎。それは強固な日米同盟であります。

 その絆は揺るぎないものであり、私とトランプ大統領の手で更なる強化を進めていく。その強い決意を私たちは共有しました。

 安全保障環境が厳しさを増す中にあって、尖閣諸島が安保条約第5条の対象であることを確認しました。米国は地域におけるプレゼンスを強化し、日本も積極的平和主義の旗の下、より大きな役割を果たしていく考えであります。

 同時に、抑止力を維持し負担軽減を進めるため、在日米軍の再編をこれまでどおり進めてまいります。普天間飛行場の全面返還を実現すべく、唯一の解決策である辺野古移設に向け、引き続き日米で協力して取り組んでいきます。

 北朝鮮に対しては、核及び弾道ミサイル計画を放棄し、更なる挑発を行わないよう強く求めます。拉致問題の解決の重要性についても大統領と完全に一致いたしました。

 そして、東シナ海、南シナ海、インド洋、いずれの場所であろうとも、航行の自由を始め法の支配に基づく国際秩序が貫徹されなければならない。日本と米国は、力の行使や威嚇による、いかなる現状変更の試みにも反対するとの強い意志を改めて確認しました。

 私と大統領は、二国間や地域の課題だけではなく、世界の平和と繁栄のための貢献についても率直な意見交換を行いました。

 あらゆる形態のテロリズムを強く非難し、テロとの闘いにおいて、引き続き協力を強化していくことで合意いたしました。日本は、日本の役割をしっかりと果たしていきます。

 さらには、地域紛争、難民、貧困、感染症など、世界は今、様々な課題に直面しています。これらはいずれも日本にとってもまた米国にとってもその平和と安定を脅かしかねない深刻な課題です。

 そして、我が国や米国を始め、国際社会全体が手を携えて取り組まない限り解決することはできません。

 当然、意見の違いはあります。

 しかし、その中で共通の目標や利益ではなく、違いばかりが殊更に強調されることで対話が閉ざされてしまうことを私は恐れます。

 それは、既存の国際秩序に挑戦しようとする者たちが、最も望んでいることであるからです。

 対話を閉ざしてしまえば何も生まれない。むしろ意見の違いがあるからこそ、対話をすべきであります。私はこの4年間、その一貫した信念の下に、日本ならではの外交を展開してきました。

 いかに困難な課題があろうとも、私はトランプ大統領と対話を行いながら、相互の理解を深め、そこから共有できる解決策を生み出す。その努力を続けていきたいと考えています。

 さて、ランチの後は大統領と一緒にフロリダの週末であります。本当に待ち遠しい気分であります。

 ゴルフも一緒にプレーする予定であります。私の腕前は残念ながら大統領にはかなわないと思いますが、私のポリシーはNever up, Never in。(届かなければ絶対に入らない)。常に狙っていく。「きざむ」という言葉は私の辞書にはありません。もちろんこれは、ゴルフに限ったことであります。

 リラックスした雰囲気の中で、たっぷりと時間をかけて、両国の未来、そして地域の未来、また世界の未来に向けて、私たちが何をすべきか、何ができるかについて、じっくりとお話をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

 安倍晋三の冒頭発言全体からトランプに対する持ち上げ、おべっかが滲み出ている。

 「米国を訪問するのは、昨年のハワイ・真珠湾以来。この半年間で4度目となります」と言っている。国会答弁では、「ファクトこそ重要だ」、「結果こそ意味がある」と言っていながら、相変わらず回数を誇っている。

 安倍晋三はプーチンと16回だか首脳会談を重ね、プーチンとの信頼関係を言い立てているが、北方四島の帰属問題は日本の方向に傾くどころか、逆にロシア領土の既成事実化の方向に進んでいる。

 2016年12月15日、16日の安倍晋三とプーチンの安倍晋三の地元山口での首脳会談直前の12月11日、ロシア軍は北方領土の国後島と択捉島に最新鋭の地対艦ミサイルを配備したことを明らかにした。

 これは北方四島が自国領土であることの意思表示であると共に北方四島をロシア全土に対する重要な防衛拠点とすることの意思表示でもあるはずだ。

 ロシア政府は北方領土を含む極東の土地を国民に無償提供する制度の申請者を極東の住民に限定していたが、2017年2月1日に全国民に拡大した。これも北方四島がロシア領土であることの意思表示であるはずだ。

 安倍晋三が提唱の北方四島での日露共同経済活動を餌にする意図も含まれているかもしれない。経済発展の見込みがあるから、皆さん、北方四島に移住をどうぞ、とばかりに。

 2017年2月11日、メドベージェフ・ロシア首相がクリル諸島(北方領土と千島列島)で名前が付いていなかった五つの無人島に旧ソ連の将軍や政治家らにちなんで命名したとタス通信等が伝えたとマスコミが報道している。細部に亘ってロシア領土だと宣言するための命名であろう。

 安倍晋三が言い立てる首脳同士の信頼関係はそれぞれの国益の前に意味をなさない例に過ぎない。

 「私の名前は『安倍』でありますが、時折、アメリカでは『エイブ』と発音されます。しかし、私は余り悪い気はしないわけでありまして、あの偉大な大統領の名を我が国においても知らない人はいないからであります。

 農民大工の息子が大統領になる。

 その事実は、150年前、(江戸幕府の)将軍の統治の下にあった日本人を驚かせ、民主主義へと開眼させました。米国こそ民主主義のチャンピオンであります」と言って、自身を密かにエイブラハム・リンカーンに擬(なぞら)え、 農民大工の息子が大統領になったことが「将軍の統治の下にあった日本人を驚かせ、民主主義へと開眼させました」と日本という国を誇っている。

 これは安倍晋三お得意の歴史改竄に過ぎない。ウソつけ、である。江戸時代の将軍(=武士)独裁から天皇独裁へと進み、天皇の存在とその名を利用した軍部独裁へと発展していった。

 「民主主義へと開眼させました」は日本人自身の手による“開眼”ではなく、安倍晋三が嫌悪する戦後の占領軍の手による“開眼”である。

 この歴史改竄には日本民族優越主義が紛れ込んでいる。日本民族は利口で優秀だから、農民大工の息子エイブラハム・リンカーンが大統領となった一事を以て日本人が民主主義に開眼できたようなことを言うことができる。

 尤もこのような考えは安倍晋三自身が日本民族優越主義に毒されていることが素地となっている。

 「米国こそ民主主義のチャンピオンであります」と言っていることはトランプに対する持ち上げ・おべっかに過ぎない。アメリカの民主主義にしても様々な矛盾を抱えている。人種差別、黒人を銃で殺してしまう法の無視、極端な経済格差という反平等等々が否応もなしにアメリカの民主主義に巣食い、蝕んでいる。

 特にトランプのイスラム教徒に対する人種差別発言は目に余るものがある。これらの現実に向ける目を持っていないはずはないのだが、「米国こそ民主主義のチャンピオンであります」と、その民主主義が完全無欠、非の打ちどころもないかのように言うことができるということは持ち上げ・おべっかの類いでなければ口にすることはできない優れ技であろう。

 「大統領はすばらしいビジネスマンではありますが、議員や知事など公職の経験はありませんでした。それでも、1年以上にわたる厳しい厳しい選挙戦を勝ち抜き、新しい大統領に選出された。これこそ、正に民主主義のダイナミズムであります。大統領就任を心から祝福したいと思います」とトランプを偉大な人物として褒めちぎっている。

 だが、トランプには米マスコミによって税制の抜け穴を利用して最高18年間に亘り連邦所得税の支払いを免れていた疑惑が報じられている。

 選挙選時、対立候補のヒラリー・クリントンがトランプに対して納税申告書の開示を求めていたが、クリントンのメール問題などを持ち出して非難する、安倍晋三お得意の問題のすり替えで逃げて、開示に応じていない。

 2017年1月22日、コンウェイ大統領顧問が米ABCテレビの番組に出演、「彼は納税申告書を開示しない。国民は気にしておらず、トランプ氏に投票した」(asahi.com)と、さも国民は開示しないことに納得したような発言をしているが、大統領選の一般投票でのそれぞれの獲得投票数はクリントンが6420万票、トランプ氏が6220万票、クリントンが200万票上回っている。  

 コンウェイ大統領顧問の論理を当てはめると、トランプに投票した米国民に200万人上回る6420万人はトランプが納税申告書を開示しないことを批判していたことになる。

 何よりも税金を正直に収めていたかどうかは人格に関わる第一番の問題である。そういった人間が大統領になって国民に正直な納税を求める資格はない。税制を悪用してビジネスの世界で富を築き、有名人となって、その知名度と過激な発言で大統領となったとなると、「正に民主主義のダイナミズム」とは言えない。税制悪用のダイナミズムでしかない。

 安倍晋三にしたってトランプが納税申告書の開示を逃げ回っていることは知っているはずだ。にも関わらず、「正に民主主義のダイナミズム」だと褒めそやすことができる。

 これが持ち上げ・おべっかでなくて、何と表現できるだろうか。

 そしてトランプの波乱の人生を例に「米国は世界で最もチャンスにあふれた国である。それは、今までも現在もこれからも変わることはないと思います」と言う。

 確かにアメリカは移民を多く受け入れ、自国民の才能・可能性のみならず、移民の才能・可能性にまでチャンスを与え、挑戦させる精神風土を備えている。だが、トランプは自国民だけのことを考えて、移民排斥に乗り出しているし、白人優越主義を言動の端々に滲ませている。

 当然、トランプが大統領でいる間はかなりブレーキがかかったチャンスの国ということになるはずだが、にも関わらず、安倍晋三が無頓着・無差別にアメリカは「今までも現在もこれからも変わることはない」「世界で最もチャンスにあふれた国」だと太鼓判を押すことができるのは、やはり持ち上げ・おべっかでなければできない太鼓判であろう。

 トランプの移民入国制限に激しく異を唱えたのがシリコンバレーのIT企業なのは移民の才能を多く活用しているからであって、IT企業のチャンスのみならず、移民たちのチャンスまでを奪う政策と見たからだろう。

 だが、安倍晋三にとってはトランプに対する持ち上げ・おべっかが最重要であって、その持ち上げ・おべっかにかかっては移民のチャンスなどどうでもいいらしい。

 当然、「だからこそ、自動車産業を始め多くの日本企業が全米各地に工場をつくり現地生産をしてきました。昨年も、日本から米国へ新たに1500億ドルを超える投資が行われました。これらは米国内に大きな雇用を生み出しています」と言っていることは持ち上げ・おべっかの線上と見なければならない。

 「米国内に大きな雇用を生み出して」いるから、日本の為替政策やアメリカの対日貿易赤字は余り責めないで下さいという持ち上げ・おべっかである。

 「トランプ大統領のリーダーシップによって、今後、高速鉄道など大規模なインフラ投資が進められるでしょう。

 日本の新幹線を一度でも体験した方がいれば、そのスピード、快適性、安全性は御理解いただけると思います。最新のリニア技術なら、ここワシントンD.C.からトランプタワーのあるニューヨークに、たった1時間で結ばれます。
 
 日本はこうした高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。そして、米国に新しい雇用を生み出すことができます」――

 「最新のリニア技術なら、ここワシントンD.C.からトランプタワーのあるニューヨークに、たった1時間で結ばれます」と言っていることはトランプに対する最たる持ち上げ・おべっかとなっている。

 ニューヨーク市などの交通渋滞の激しい地域を取り上げて、そういった地域に車で乗り入れるよりも新幹線やリニア新幹線で通勤等をすれば渋滞緩和に役立つとアメリカ市民の利益を言うのではなく、「ここワシントンD.C.からトランプタワーのあるニューヨークに、たった1時間で結ばれます」とトランプの個人的利益を論(あげつら)っている。

 何という情けなさだろか。

 トランプの意を迎え入れようと懸命になっている姿しか浮かんでこない。迎合そのものである。

 「急速に成長を遂げるアジア・太平洋地域において自由な貿易や投資を拡大する。これは日米双方にとって大きなチャンスです」と言っていること、「アジア・太平洋地域に自由かつルールに基づいた公正なマーケットを日米両国のリーダーシップの下でつくり上げていく。その強い意志を、今回、私と大統領は確認しました」と言っていること、「アジア・太平洋地域の平和と繁栄の礎。それは強固な日米同盟であります」と言っていることは恰も日米共同作業のような言い回しになっているが、世界一の経済大国・軍事大国のアメリカにピッタリと引っ付いていこうという意思の現れでしかない。

 このことは北朝鮮が2017年2月12日午前8時前に日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射したことを受けて訪米中の安倍晋三とトランプが共同声明を発表したが、そのときの安倍晋三の発言そのものが証明している。

 安倍晋三「今般の北朝鮮のミサイル発射は断じて容認できません。北朝鮮は、国連決議を完全に順守すべきです。先程、トランプ大統領との首脳会談の中に於いて米国は常に100%、日本と共にある、そういうことを明言されました。そしてその意思を示すために今私の隣に立っておられます。

 私とトランプ大統領は日米同盟をさらに緊密化し、そして強化していくことで完全に一致を致しました」(NHK NEWS WEB記事動画から)   

 トランプが首脳会談の中で、「米国は常に100%、日本と共にある」と言った。「そしてその意思を示すために」トランプは現在、安倍晋三の「隣に立っている」・・・・・

 いわば安倍晋三は自らをトランプの庇護の下に置いて米国の100%の関与と共に歩むことの宣言以外の何ものでもない。と言うことは、アメリカを守護者として、日本をその支配下に庇護される存在として置くことを意味することになる。

 持ち上げ・おべっかにしても、相手に取り入り、自らをその支配下に入ろうとする心理がそうさせる状況を示しているが、トランプの意を迎え入れようと懸命になっているからこその米国の100%の関与と共に歩むことの宣言であり、トランプの意を迎え入れようとする迎合そのものであるはずだ。

 もし対等な意識で日米同盟を考えているなら、北朝鮮のミサイル発射問題では対応が一致していたとしても、冒頭発言で「拉致問題の解決の重要性についても大統領と完全に一致いたしました」とは言っているが、現実問題として日米意識の差がある拉致問題も考慮した場合、トランプが「米国は常に100%、日本と共にある」と言ったことに対してアメリカの独自性、日本自らの独自性は決して無視できないのだから、いわばどのようなケースであっても、米国が「常に100%、日本と共にある」ことなどないのだから、「北朝鮮のミサイル発射に関しては米国と共に厳しく対応していく」ぐらいの発言で済ますべきだったはずだ。

 このようなトランプに対する支配下意識からすると、「アジア・太平洋地域の平和と繁栄の礎。それは強固な日米同盟であります」と言っていることにしても、既に触れたように世界一の経済大国・軍事大国のアメリカにピッタリと引っ付いていく日米同盟であろう。

 「東シナ海、南シナ海、インド洋、いずれの場所であろうとも、航行の自由を始め法の支配に基づく国際秩序が貫徹されなければならない。日本と米国は、力の行使や威嚇による、いかなる現状変更の試みにも反対するとの強い意志を改めて確認しました」

 安倍晋三はロシアのクリミア併合という「力の行使や威嚇による」「現状変更の試み」に対して欧米並みには厳しくノーを突きつけることはなかったし、トランプはロシアのその現状変更の試みを無視して、アメリカの利益だけを考えてロシアとの関係改善を図ろうとしているのだから「いかなる現状変更の試みにも反対」は安倍晋三にとっても、トランプにとってもご都合主義の方便に過ぎない。

 「いかに困難な課題があろうとも、私はトランプ大統領と対話を行いながら、相互の理解を深め、そこから共有できる解決策を生み出す。その努力を続けていきたいと考えています」――

 このように言っていることに関しても、安倍晋三は自らをトランプの庇護の下に置いて米国の100%の関与と共に歩む相互対話であり、相互理解と見ないわけにはいかなくなる。

 そして、「さて、ランチの後は大統領と一緒にフロリダの週末であります。本当に待ち遠しい気分であります。

 ゴルフも一緒にプレーする予定であります。私の腕前は残念ながら大統領にはかなわないと思いますが、私のポリシーはNever up,Never in。(届かなければ絶対に入らない)。常に狙っていく。『きざむ』という言葉は私の辞書にはありません。もちろんこれは、ゴルフに限ったことであります。

 リラックスした雰囲気の中で、たっぷりと時間をかけて、両国の未来、そして地域の未来、また世界の未来に向けて、私たちが何をすべきか、何ができるかについて、じっくりとお話をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。」と冒頭発言を終える。

 トランプのゴルフの腕前はプロ並みだということだから、ゴルフに誘ったのも、トランプをいい気持ちにヨイショする持ち上げ・おべっかの一環であって、結果的に自身をトランプの支配下に庇護される存在としたい心の働きがあったはずだ。

 安倍晋三の正体見たり、枯れ尾花といったところだ。

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南スーダン:安倍・稲田の“法的意味・解釈”を振りかざした現地自衛隊部隊との感覚のズレは隊員の命の軽視

2017-02-11 12:03:44 | 政治

 以前もブログに書いたが、安倍政権は「テロ対策特措法」を法的根拠とした2002年2月5日の政府答弁書に基づいて、〈「国際的な武力紛争」とは、国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いを言〉い、〈「戦闘行為」とは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為を言う。〉と定義づけて、それを以って「戦闘行為」の意味・解釈としている。

 裏を返すと、国家又は国家に準ずる組織の間に於いて生ずる〈国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為〉でなければ、それがどのような大量破壊兵器を用いようと、どれ程に過激な攻防であっても、「戦闘行為」ではないという意味・解釈となる。

 あるいは、〈国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争い〉でなければ、「国際的な武力紛争」とは言わないと言うことになる。

 そして南スーダンに於ける大統領派と反大統領派の衝突を〈国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争い〉とは認めていないから、その衝突を、例え戦車を用いようと、バズカー砲を発射しようと、戦闘ヘリを飛ばそうと、その衝突を以てして法的には「戦闘行為」ではないと規定することが当然の意味・解釈となる。

 一昨日、2018年2月8日の衆院予算委員会で民進党の小山展弘が稲田朋美に対して安倍政権が廃棄したとしていた南スーダンPKO派遣自衛隊施設部隊の昨年7月の日報の存在を認め、公表した資料に基づいて、日報を読んだ上で昨年の国会で大統領派と反大統領派の衝突を「戦闘行為ではない」と答弁したのかと問い質すと、直接読んではいないが、日々説明を受けていた状況に基づいて、「国際的な武力行使の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為と定義されるところの法的な意味に於ける戦闘行為ではない」と解釈したといった答弁をしている。

 小山展弘は日報が描いている現場の状況と稲田が答弁で示している「法的な意味では戦闘行為ではない」としている状況との違いに驚いて、「何に基づいて戦闘行為ではないと答弁したのか」とさらに追及した。

  以下、右翼防衛相の稲田朋美が南スーダンの衝突の状況は「法的な意味では戦闘行為ではない」と答弁した発言を一部取り上げてみる。

 稲田朋美「南スーダンの状況について国又は国準(くにじゅん・国家に準ずる組織のこと)、そして国対国の間の国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、又は物を破壊する行為と定義されているようなものではないということを答弁させていただいたのです」

 稲田朋美「当時(昨年9月・10月等)の国会に於いて7月の状況も踏まえて、南スーダンの状況、武力衝突による衝突の状況は戦闘行為に当たるかどうかと言うことが議論になって、7月の状況も踏まえ、当時の状況も踏まえた上で国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、又は物を破壊する行為、これは法律上定義をされている法的な用語でありまして、それとの混乱を避けるために戦闘という言葉ではなくて、戦闘という言葉を使わないということを後藤(祐一)委員に繰り返し申し上げたところでございます」

 稲田朋美「何度も申し上げて恐縮でございますけども、法的な意味に於ける戦闘行為というのは国又は国準、又は国準との国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、又は物を破壊する行為でありますが、この点一般的な用語に於ける戦闘と法的な意味に於ける戦闘行為、これが混濁することがないように私は戦闘という言葉は使わないと言うことを繰返し申し上げて来たということを今答弁させて頂いているところでございます」

 小山展弘「そしたら、この戦闘という言葉が今回の日報、あるいはモーニングレポートにも、今回公開されたものに出ています。戦闘があったことはお認めになるんでしょうか」

 稲田朋美「法的な意味に於いて意味があるのは戦闘行為かどうかでございます。そういう意味に於いて戦闘行為、法律に定義されているところの戦闘行為ではないと言うことになります。

 いくらそこ(日報)の文章で戦闘行為という言葉が一般的な用語として使われたとしても、それは法律な意味に於ける戦闘行為、即ち国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、又は物を破壊する行為ではないということでございます」

 以後も同様の答弁が繰返される。埒が明かないから、この辺で切り上げることにする。

 繰返しになるが、要するに大統領派と反大統領派の衝突は国際的な(=国際間の)武力紛争ではなく、一つの国内に於ける二大勢力の争いに過ぎないから、どのような武力衝突であっても法的には戦闘行為と言えないんだと繰返し答弁していることになる。

 だが、武力紛争を“国際的”と“国内的”で分けることによって紛争の程度に差別をつけていることにならないだろうか。

 異なる国内勢力による武力紛争であっても、国際間の異なる国同士の武力紛争よりも苛烈な抗争を出現させる場合がある。「Wikipedia」を参考にすると、例えば1990年から1993年にかけてアフリカのルワンダで勃発したルワンダ紛争はフツ族とツチ族との部族間の衝突、異なる国内勢力による武力紛争でありながら、政府軍のフツ族によるツチ族に対する虐殺によって100万人が犠牲となっている。

 このような例を見ると、武力紛争を“国際的”と“国内的”で分けることによって紛争の程度に差別をつけることはできないことになる。

 南スーダンにしてもキール大統領は南スーダン最大部族であるディンカ族の出身で、反大統領派の元副大統領のマシャールは2番目に大きな部族のヌエル族の出身だそうで、部族間同士の相手部族に対する憎悪に発した虐殺も起きているという。

 昨年7月11日の全56ページの日報には「戦闘」という単語が11回出てくると、2017年2月9日の「日経電子版」は伝えている。    

 現場の自衛隊の感覚ではそれがまさしく“戦闘”に当たる兵器を使った激しい衝突だったからだろう。稲田朋美がその言葉を「一般的な用語」だと退けている感覚は武力紛争を“国際的”と“国内的”で分けることによって紛争の程度に差別をつけていることがそのまま現場の自衛隊の感覚を低く見る意識へと繋がってはいないだろうか。

 何、いくら戦闘と言っても、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、又は物を破壊する行為に当たらないのだから、法的な意味・解釈に於ける戦闘とは言えない、一般的な用語で言っているに過ぎない大したことのない戦闘だと。

 このように南スーダンで武力衝突が起きたとしても、大したことのない戦闘だと一律的に見ることになる一連の論理は、その論理を裏切る激しい戦闘が勃発しない保証は何一つない以上、例えば国連等のスタッフが自衛隊の現場感覚で激しい戦闘に巻き込まれ、駆け付け警護を要請されて駆け付けた自衛隊部隊までが激しい攻撃を受けて戦闘を交える事案が発生して死傷者が出る場合も否定できないことを考えると、自衛隊員の命の軽視を前提とした思考の組み立てをしているとしか見えない。

 この大したことはない戦闘だと一律的に見る論理はまた、南スーダン自衛隊PKOを継続させることを優先させるために参加5条件のうちの「紛争当事者間で停戦合意が成立していること」という状況を無理やり虚構化する思考の組み立てなくして成り立たない。

 このような思考の組み立ても、自衛隊員の命の軽視を前提とすることによって可能となる。

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安倍政権の自衛隊PKO部隊日報作成と開示の経緯を防衛省が機能していないと見るか、情報隠蔽と見るか

2017-02-10 11:43:05 | Weblog

 
【謝罪】


 昨日2017年2月9日の当ブログで、南スーダン自衛隊PKO施設部隊の2016年7月時作成の日報(活動記録)の情報公開法に基づいた開示請求日を「2017年」9月と間違えて表記してしまいました。正しくは「2016年」9月でした。謝罪します。

 改めて日報作成から始まったこれまでの経緯を見てみる。


 「日報作成と開示の経緯」

●2016年7月 南スーダンの首都ジュバで大統領派と反大統領派が激しい戦闘行為
        現地PKO自衛隊施設部隊はその日報(活動記録)を作成、作成後、陸自の中央即応集団司令部に報告
●2016年9月末 フリージャーナリストが情報公開法に基づいて開示請求
●2016年9月、10月を中心に上記武力衝突が「戦闘行為に当たるかどうか」の国会質疑
●2016年12月2日 陸自の中央即応集団司令部は説明資料に使った後、廃棄したとして非開示扱い。
           開示請求に対して30日以内に対応を判断する必要上、電子データ保存の統合幕僚監部までは探索せず
          〈PKO関連文書の保存期間は原則3年。例外的に「随時発生し、短期に目的を終えるもの」は廃棄が認められている。〉(時事ドットコム)  
●2016年12月12日 この日を境に自衛隊南スーダンPKO派遣部隊に駆け付け警護と宿営地防衛の新任務が実施
●2016年12月26日 統合幕僚監部で電子データー化された日報を発見
●2017年1月27日 稲田朋美へ報告
●2017年2月7日 防衛省、日報の存在を公表
          統合幕僚監部「マスキング(黒塗り)処理などを行ったため、今月7日の公表に至った」(時事ドットコム
     

 フリージャーナリストとは「平和新聞」編集長の布施祐仁氏だそうだ。

 2016年7月に作成した南スーダン派遣PKO自衛隊施設部隊の日報を約3カ月後の2016年9月末にフリージャーナリストの布施祐仁氏が情報公開法に基づいて開示請求した。請求後、30日以内に開示するかどうかの対応を判断しなければならない決まりなら、2016年10月末までに開示か非開示かを連絡しなければならない。

 だが、〈原則1ヶ月で開示決定すべきところを防衛省は期限を1ヶ月延長した上で12月初めに「廃棄済みにつき不存在」と通知してきた。〉(《布施祐仁 (@yujinfuse) Twitter》      

 「12月初めに」とは12月2日だと思われる。請求後、30日以内の対応判断が原則である以上、10月末には開示か不開示の決定を通知しなければならないはずだが、それがさらに1カ月余経過した12月2日の不開示決定となった。

 2017年9月、10月を中心に上記武力衝突が「戦闘行為に当たるかどうか」の国会質疑が激しく展開されていた時期である。この第192回国会は臨時国会であって、2016年9月26日召集、11月30日までの66日間の予定を14日延長、さらに3日延長となって、2016年12月17日に閉会している。

 そして臨時国会が閉会した2016年12月17日から起算してきっちりと10日後の2016年12月26日に電子データー化された日報が統合幕僚監部で発見されたと公表。12月17日の翌日からの起算だとしても、9日も経過した公表となる。

 さらに自衛隊南スーダンPKO派遣部隊に駆け付け警護と宿営地防衛の新任務実施の2016年12月12日を間に挟んでいる。

 別の言い方をすると、新任務実施の2016年12月12日が過ぎてから、公表に踏み切っている。

 日報の開示請求から30日以内の対応決定に反して不開示の決定が60日以上も要したことと、新任務実施の2016年12月12日を間に挟んで統合幕僚監部での電子データーの発見が臨時国会閉会から9日か10日も経過していたことはどのような符合があってのことだろうか。

 さらに2016年12月26日に統合幕僚監部で電子データー化された日報が発見されながら、防衛省に於ける一番の上司である防衛相の稲田朋美へ報告が約1カ月遅れの翌年の2017年1月27日となったのはなぜなのだろう。

 そして日報の存在を公表したのは12月26日の発見から1カ月と12日も経過した2017年2月7日となったのはどのような理由があってのことなのだろう。

 公表された日報は2016年年7月11、12日付分の約110ページと上級部隊の中央即応集団がその日報を纏めた「モーニングレポート」だそうだが、公表に日数を必要としたことを統合幕僚監部は「マスキング(黒塗り)処理などを行ったため」と言っているが、マスキング(黒塗り)処理に1カ月と12日も必要なのだろうか。

 一般的にはマスキング(黒塗り)が必要な場合は印刷してあった元の日報を河野克俊統合幕僚長にしても稲田朋美にしても目を通しているだろうから、どのような文字をマスキング(黒塗り)するか指示を出し、指示を受けた職員が電子データーをWord文書等にしてパソコンのモニターに表示、その文字を検索すれば、範囲指定した状態でヒットするから、そのまま蛍光ペンの機能で黒色を選択すれば、簡単にマスキング(黒塗り)できる。

 日報が110ページだとしても、それを纏めた「モーニングレポート」は日報以下のページだろうから、全体で200ページ以下の文書を検索、範囲指定、蛍光ペンの作業を繰返すだけで済むのだから、そんなに時間はかからない。

 完了したら、それを再び印刷して、河野克俊統合幕僚長と稲田朋美に閲覧に回して、両方で両方で200ページ以下の文書を仕事の合間を見て読むにしても、それ程時間を必要とするわけではない。両者から了解を得れば、公表可能となる。

 稲田朋美が事実目を通していなかったとしても、閲覧に一人が抜けるだけのことで、却って時間短縮を図ることができる。
 
 ところが2016年12月26日の日報を発見からマスキング(黒塗り)に2017年2月7日まで1カ月と12日も必要とした。稲田朋美への2017年1月27日の報告から11日も必要とした。

 もし稲田朋美への報告が事実、2017年1月27日であるなら、2017年2月7日の公表までの11日間の間に稲田朋美は文書に目を通していたことになる。

 上司たる稲田朋美が目を通さずして文書の存在を公表することはないからである。

 だとすると、河野克俊統合幕僚長が目を通す場合も似たような時間であるはずである。両者が目を通す時間はほぼ重なっていて、それ程のズレはないはずだから、要したとしても15日以内と見なければならない。

 それが発見から公表までに1カ月と12日という日数の経過があった。

 但し一つ疑問が残る。日報には11個所も「戦闘」という言葉が記載されているとマスコミは伝えている。国会質疑上不都合な「戦闘」という言葉をなぜマスキング(黒塗り)を掛けなかったのだろうか。

 日報には大統領派と反大統領派が戦車や迫撃砲を用いて激しく戦闘を展開したといった表現があったという。「戦闘」という文字のみにマスキング(黒塗り)を施しても、「戦車」や「迫撃砲」という文字を残したなら、却って疑惑を招く。

 「戦闘」という文字のみならず「戦車」という文字や「迫撃砲」という文字までをマスキング(黒塗り)したなら、衝突の状況まで隠すことになって、既に南スーダンのPKO国連本部やマスコミが激しい戦闘を繰り広げたと報道していることと整合性が取れなくなることから、これまた疑惑を招くことになる。

 勿論、「戦闘」という言葉を「武力衝突」という言葉にも、単に「衝突」という言葉にも変換可能である。

 だが、変換した場合、南スーダン現地の自衛隊員の中には何人かが変換を知ることになって、その内の一人か、あるいはその者がある意図を持って他人に知らせ、その他人がマスコミ等に内部告発しない保証はない。文字を変換できたとしても、情報隠蔽のための変換に憤って内部告発しようとした場合のその意図まで変換することはできない。

 結局のところ、昨年9月、10月の国会質疑同様に“法的な意味では戦闘ではない”という手で逃げることにしたといったところではないか。

 昨日のブログにも書いたが、最近は事後、何のために必要になるかもしれないために文字で記録した文書はバックアップも取って電子データ化して残すの通例となっている。その上で廃棄してもいい文字文書は廃棄する。 

 このことを考えると、フリージャーナリストが2016年9月末に南スーダン自衛隊PKO施設部隊の日報を開示請求してから、1カ月以内に開示か否かを通知しなければらない原則を破って不開示の通知までに2カ月余かかったこと、一旦破棄したとしていた日報が統合幕僚監部に電子データーとして残されていたと公表したのが南スーダンの治安情勢が国会で問題となっていた臨時国会閉会の2016年12月17日以後の2016年12月26日であったこと、さらに発見から稲田朋美への報告が1ヶ月も経った2017年1月27日という緩慢な連携であること、さらに日報の存在の公表が稲田朋美への報告後、11日間も間を置いたこと。

 全てが表向きの事情でなければ、防衛省という組織は機能していないことになる。

 もし機能していると見るなら、 表向きの事情とはその裏に情報隠蔽を存在させていなければ、このように仕向けられることのない事の次第となるはずだ。

 自衛隊の南スーダンPKO派遣部隊に駆け付け警護と宿営地防衛の新任務を2016年12月12日から実施するに前以て、それが実現できない不都合を避ける情報隠蔽と見るのが極く自然であるはずだ。

 勿論、この情報隠蔽たるや安倍晋三や稲田朋美の意を受けた策略と見なければならない。

 
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2/8衆院予算委稲田朋美南スーダン答弁は憲法9条の網を通した戦闘行為解釈と自衛隊日報非開示は情報隠蔽

2017-02-09 11:48:34 | 政治
 
 2016年7月に南スーダンの首都ジュバで大統領派と反大統領派が激しい戦闘行為を繰り広げた。安倍政権は首都ジュバに派遣している自衛隊PKO施設部隊の当時の活動記録を2016年9月に情報公開法に基づいて開示請求されたものの、内規では保存期間は「1年未満」(日経電子版)となっているが、廃棄したとして2016年12月に非開示扱いとした。

 ところが一昨日、2017年2月7日、電子データーとして残っていたとして、一転して開示に踏みきった。開示された2016年7月11日と7月12日のその日報にはマスコミ報道によると、「戦闘」の文字が11個所もあるという。

 2018年2月8日の衆院予算委員会で民進党の小山展弘が昨年2016年9月、10月当時の政府側答弁は戦闘行為を否定、単に武力衝突があったのみとしていたことを取り上げて、日報が示している戦闘が実際にはあったのではないか、そのことを認めべきではないかという点と、日報が電子データとして残っていながら、昨年の内に開示しなかったのは情報隠蔽ではないかという点に絞って防衛相の稲田朋美を追及した。

 だが、戦闘があったのではないかという点については、民主党の衆議院議員だった金田誠一の2001年12月3日提出の質問書に対する2002年2月5日の政府答弁書を根拠に昨年の国会答弁と同じく論旨で交わした。

 その政府答弁書は〈テロ対策特措法第二条第三項の「国際的な武力紛争」とは、国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いを言〉い、〈テロ対策特措法第二条第三項の「戦闘行為」とは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為を言う。〉としている。

 以後、「国際的な武力紛争」と「戦闘行為」の解釈は「テロ対策特措法」に基づく法的根拠として繰り返し政府側答弁に利用されることになった。

 要するに大統領派と反大統領派の争いは一つの国の中の二つの勢力争いに過ぎなく、「国家又は国家に準ずる組織」とは言えないのだから、そのような両者間に於いて生ずる「国際的な武力紛争」には当たらないことになり、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する」「戦闘行為」とは解釈できないという論理の当てはめである。

 小山展弘は両派共に迫撃砲や戦車を用いて戦っているのだから、戦闘でないはずはないと何度も追及を続けるが、稲田朋美は追及を受けるたびに国と国、または国と国に準ずる組織との間の国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為に当たらないから戦闘行為と認めることはできないと、昨年の秋の国会論戦と同じ堂々巡りが繰返されたのみである。

 そのような不毛な繰返しよりも、安倍政権の法的根拠が現実とかけ離れているとの理由で政府解釈自体の変更を求めた方が近道のように思える。例えばアフガニスタンではアフガニスタン政府とタリバンと間で内戦状態に陥っている。タリバンは国内勢力であり、両者の争いは「国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争い」とは言えない。

 だからと言って、両者の衝突を「国際的な武力紛争」の一環とは言えないだの、その武力衝突を「戦闘行為」とは言えないなどとは解釈できないはずだ。

 稲田朋美は答弁の中で憲法9条に言及している。

 稲田朋美「なぜ法的な意味に於ける戦闘行為があったかどうかに於ける法的な意味での戦闘行為に拘るかと言うと、国際的に武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、物を破壊する行為が仮に行われていたとすれば、それは憲法9条上の問題になりますよね。

 そうではない。だから戦闘行為ではないと言うことになぜ意味があるかというと、憲法9条の問題に関わるかどうかということでございます。その意味に於いて戦闘行為ではないということでございます。

 そして何が問題かと言うと、国際的な武力紛争の一環として行われるかどうか、この点がないので、戦闘行為ではないということでございます」

 稲田朋美「(大統領派と反大統領派との間の衝突は)事実行為としてはですね、武器を使って人を殺傷したり、あるいは物を行為はあったが、それは国際的武力紛争の一環として行われるものではないので、法的な意味に於ける戦闘行為ではないということであります。

 そして国会答弁する場合は法的な意味に於いて法律、または憲法9条上の問題に於いて規定されている言葉を使うべきではないということから、私は一般的な意味に於いて武力衝突という言葉を使っております。

 しかしながら、日報の中では一般的な、辞書的な意味に於いて戦闘という言葉を使われたのではないかと推測しております」

 ネットで調べたところ、政府は1991年に「隊員個人の生命・身体を守るための必要最小限の武器使用は自己保存のための自然権的権利に基づくものであって、憲法の禁じる武力行使には当たらない」といった趣旨の統一見解を示している。

 稲田朋美が言っていることは、国際的武力紛争の一環としての戦闘行為が行われていた場合、駆け付け警護か宿営地共同防衛でその戦闘に関わった際の自衛隊の武器使用は最小限度のものであっても憲法が禁じる武力行使には当り、違憲となるから、「戦闘行為」とすることはできないという意味になる。

 とすると、現実問題として、それが国際間であろうとなかろうと、戦闘行為でしかない武力衝突を憲法9条の網を通して戦闘行為でないと解釈していることになる。憲法9条に触れるから、戦闘行為とすることはできないんだとの論理となる。

 いわば現実の事案が憲法に触れるかどうかではなく、現実の事案を曲げて、憲法に合わせていることになる。そんなことは許されるはずもないのだから、稲田朋美のこの発言を捉えて追及すべきだったはずだが、 小山展弘は追及しないまま、「戦闘があった」という言質を一貫して取ろうとし、対して稲田朋美は法的根拠としている「戦闘行為」の解釈を振りかざし続けて、追及しきれずじまいの不毛な質疑で終わっている。

 小山展弘は持ち時間の最後の方になって開示請求した日報が開示されずに今回開示された問題についての稲田の責任を問う。

 稲田朋美は一旦は非開示としたが、その後も複数の開示請求がなされたことを踏まえて、探索範囲を広げた結果、見つかったと答弁している。

 稲田朋美「河野太郎議員からも再度探索すべきとのご指摘受け、私からもさらに探索するよう指示し、再度日報にアクセス可能な部局に範囲を広げたところ、統合幕僚監部に於いて日報が電子データーとして見つかった次第でございます。

 防衛相としては再度同種の開示請求がなされれば、日報が二つ見つかったことを踏まえ、適切に対応したいと思います」

 対して小山展弘は河野太郎から言われてできたというは情けないとか、文書だったら廃棄するけど、データーだったら、残っていることは多いとか、国民に謝罪する考えはあるかなどと尋ねているが、稲田朋美は最後まで謝罪するなどと言わない。

 河野太郎議員だけではなく、私も探索を指示していた、非開示としたのは情報隠蔽ではない、防衛省は4500件、月に約400件の開示請求に対応している、当該文書の不存在が確認されても、再度入念に確認して探索範囲を拡大して、行政文書の特定の判断は正確を期していきたいなどと安倍晋三ばりの関係のない話で時間を稼いで、小山展弘を時間切れに追い込んでいる。

 南スーダンPKO派遣自衛隊施設部隊にしても日報を書くのに手書きではなく、パソコン入力をし、作成後、そのパソコン文書を陸自の中央即応集団司令部に送信したはずである。

 それを必要部数印刷して、必要個所に閲覧に回したはずである。

 例え電子メールシステムに侵入される危険を避けるためにパソコン文書を印刷して郵送していたとしても、それを再度電子データ化することによって内規の保存期間「1年未満」という短い期限に常に対応可能な態勢を取ることができる。

 電子データー化せずに全ての文書を廃棄したなら、そのときの事例や経験を他の部隊やPKOの計画立案の部署が参考とすることも学習することも不可能となってしまう。

 大体が今時電子データー化せずに文書を廃棄することなどあり得ない。

 昨年2017年9月、10月と国会で南スーダンでの大統領派と反大統領派の武力衝突が「戦闘行為に当たるかどうか」で盛んに議論していた時期であることも考え併せると、安倍晋三が遣りそうな不都合は隠す情報隠蔽を目的とした日報の非開示そのものであるはずだ。

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安倍晋三は江田憲司に南スーダン派遣自衛隊員が戦死の場合の進退の覚悟を問われ、隊員の覚悟を言うトンチキ

2017-02-07 10:16:11 | Weblog

 2017年2月1日の衆院予算委員会で安倍晋三は民進党代表代行の江田憲司に南スーダン派遣自衛隊員が万が一戦死した場合の出処進退の覚悟を問われた。


 江田憲司「南スーダンへの自衛隊派遣、これは昨年の12月から新任務、駆け付け警護、それから宿営地の共同防衛という、まさに昨年大騒ぎした違憲新安保に基づいて、これは安倍総理が主導した中で、初めて具現化したと言うか、現実になった問題ですね。

 南スーダン、皆さんね、外務省のホームページを見ると、スーダンというのはレベルスリーがレベルフォー、去年4月にアップされましたね。レベルスリーというのは渡航をやめてください、国民の皆さん。

 今あるレベルフォーというのは、今いる人は退避してください。何でこうなっているのか。ご存知のように昨年7月にジュバ、首都周辺で政府軍と非政府軍とで衝突があって、270名の方が戦死した。

 今でも首都郊外では散発的に戦闘が起こっている中にですね、こういった新任務を付与した判断、自衛隊を派遣された。されたことは総理の判断。その中身、時間がありませんから問い質しませんが、自衛隊の最高司令官は総理大臣ですからね。

 こういう危険な所にね、万が一のことも起こる、自衛隊に。こんな所に敢えて派遣された。最高司令官として、勿論のこと、覚悟を持って派遣されたんでしょうね。覚悟を持って。

 駆け付け警護と言って、空砲で威嚇射撃したって、なんたって、銃声一発で戦闘が起こることは過去の歴史を見るとおり。そうした中で、こんなことは想定したくありませんよ。ありませんけれども、もし自衛隊が多少、そうした事態になったらね、総理、当然責任を取られるんでしょうね。

 それ程の覚悟を持って、当然、安倍総理なら派遣されたと思いますけれども、総理のお考えをお聞きします」

 安倍晋三「南スーダンはですね、国連に加盟した国の中に於いて独立して間もない国で、一番若い国と言ってもいいんだろうと思います。その国が失敗した国とならないように、立派に自分の足で立てるようにまさに60カ国が参加してPKO部隊を出して、この国の発展のために貢献をしているわけであります。

 勿論、その中に於いては反政府勢力の存在や部族間の対立があって、治安状況は極めて厳しい。治安情勢が厳しいからこそ、各国は軍隊を出して、我々は自衛隊を出してですね、そして貢献しているわけであります。こうした中に於いて断固としてその地にとどまって鋭意(?)活動しているのも事実であります。

 そこで覚悟ということでありますが、当然ですね、我々は様々な任務をお願いします。私が最高指揮官であるわけですが、当然、これ自衛隊というのは国民のリスクを低下させるために自らリスクを取っている。これは服務の宣誓に於いても示しているわけであります。

 だからこそですね、その中に於いても彼らの安全を担保しなければならないと、こう考えておりますが、私も防衛大学の卒業式に臨み、私の前で服務の宣誓を行うわけでありますが、『事に臨んで危険を顧みず、身を以て責務の完遂に務め、以って国民の負託にこたえることを誓』うわけでありますが、その中で彼らは任務を全うしている。

 この南スーダンの活動だけではありません。あるいはスクランブルしたとき様々な危険が伴う。災害活動に於いてもそうです。そしてそうした中で事実今までも事故によって亡くなった方もたくさんいらっしゃいましたし、自衛隊員自身の覚悟を語っているし、レンジャー訓練も、レンジャー訓練も、レンジャー部隊も、訓練というのは相当過酷な訓練であります。

 で、これ訓練と言ってもですね、普通の訓練とは違うですね。その中で何人も命を落としているんですよ。先般も命を落とされて、今まで1900名の方々がこれ命を落とされております。

 私は毎年必ず殉職職員のですね、追悼式に出席をし、そこにはご遺族のみなさんが出席をされ、そこでは涙に暮れておられて、まあ、この皆さんの悲しみを私は最高指揮官としてしっかりと受け止めながら、出来る限りの安全確保をしていきたい。

 しかし同時にですね、彼らは国民の命を守るために尊い命を落とし、しかしその職務を全うしたと感謝をしながら、ご遺族の皆さんの気持ちを受け止めなければならないと、しっかりとそのこと誓っているところでございます」

 江田憲司「そんなことを言っているんじゃないですよ。要は安倍総理が主導された去年の安保法制が新しく付与した任務で派遣をしている。訓練とか、それは違う話です。

 安倍総理が主導したことで、戦後外国人を殺傷したり、殺傷されたりしたことはないんですが、もしそういった危険な所で殺傷されたら、そんなことは考えたくないんだけど、ちゃんと覚悟はあるんですねということをお聞きしたんです。

 覚悟ないんですか、総理。テロ人質事件(1996年12月の在ペルー日本大使公邸占拠事件のこと)のときに(何百人と人質になった、テロリストに押し入れられてですね、日本人が多く捕らわれたときにですね、私は覚えていますけど、橋本総理と梶山官房長官はね、もしトゥパク・アマルというテロリストが一人でも日本人に犠牲が出たら、総理か官房長官かどちらかが辞めようと話をしていたことをですね。事実ですから、申し上げますよ。

 それ程の覚悟で一国の総理大臣、官房長官をやるんですよ。それぐらいの覚悟あるんでしょ?勿論、こんな所に派遣しているんですから。覚悟があるとね、何でおっしゃらないんですか」

 安倍晋三「もとより、もとより最高指揮官の立場上に於いてはそういった覚悟は持たなければいけないんですよ。私はそういうことを申し上げている。

 PKOの活動もそうですよ、しかし同時にですね、様々な事態に備えるために相当過酷な訓練を行っているレンジャー部隊の諸君もいますよ。この訓練のレベルを上げていっているわけです。今に於いてもですね、相当の訓練をしているんです。

 例えば海の中でナイフを持って格闘するという訓練をしている。尋常な訓練じゃないんです。そういう訓練があって、初めて我が国の安全を守るために対応を整えていくことができるわけであります。

 実際その中で命を落とした、その家族の方々に、それはですね、気持というものをですね、受け止めなければいけないわけでありまして、追悼式に出て、涙に暮れるご家族、小さなお子さんたち、目の前にしてですね、常に自分はそういう立場にある、私の命令で命を絶つ人がいる。そして残された家族という現実に直面するという覚悟を持っていますね。

 当然、我々は毎回、指揮官としての立場を、指揮官としての責任を負っている。職務を遂行していく。そういう思いでございます」

 江田憲司「総理、そういう答弁を最初にお聞きしたかったですよ。当然ですからね。官房長官、官房等閑は梶山静六先生を政治の師としておられますが、先程私が出したエピソードを踏まえて、官房長官の覚悟を」

 菅義偉「今、総理の覚悟というか、常にそうした決意をしながら、日々仕事をしていかなければならないですから、私共もまさにそういう思いの中で一つ一つこの国を前進させるために何が必要なのか、その中で日々過ごしているところであります」

 江田憲司「自衛隊員の皆さんが本当に危険を顧みずに命懸けでそういう業務をされている。よーく分かっていますから、派遣された最高司令官、政府幹部の方は、それ以上の覚悟を持っておられる。そういう御答弁を頂きました」(次の質問に移る。)

 江田憲司が最初の質問で、「駆け付け警護と言って、空砲で威嚇射撃したって、なんたって、銃声一発で戦闘が起こることは過去の歴史を見るとおり。そうした中で、こんなことは想定したくありませんよ。ありませんけれども、もし自衛隊が多少、そうした事態になったらね、総理、当然責任を取られるんでしょうね」と言っていることは、南スーダン派遣の自衛隊員の中から駆け付け警護、もしくは宿営地共同防衛の任務上、もし戦死者が出た場合の自衛隊最高指揮官としての安倍晋三の出所進退の覚悟を問う質問であったはずだ。

 このことは江田憲司が次の質問で、安倍晋三の最初の答弁を「そんなことを言っているんじゃないですよ」と見当違いの内容だと退けて、「安倍総理が主導したことで、戦後外国人を殺傷したり、殺傷されたりしたことはないんですが、もしそういった危険な所で殺傷されたら、そんなことは考えたくないんだけど、ちゃんと覚悟はあるんですねということをお聞きしたんです」という言葉が証明している。

 安倍晋三は最初の答弁でも、次の答弁でも自身の出所進退の覚悟ではさらさらなく、自衛隊員が持ち、その家族が分かち合うことになる職務上の覚悟を述べたに過ぎない。ところが、江田憲司は安倍晋三の次の答弁を出所進退の覚悟を述べたものと勘違いして、「総理、そういう答弁を最初にお聞きしたかったですよ。当然ですからね」と納得をしている。

 安倍晋三は最初の答弁で、「そこで覚悟ということでありますが」と言いつつも、「服務の宣誓に於いても示しているわけであります」との謂(いい)で、防衛大卒業時に「服務の宣誓」で示すことになる自衛隊員の職務上の覚悟を取り上げたのであって、自身の出処進退の覚悟を取り上げたわけではない。

 このトンチンカン、見当違いは如何ともし難い。

 任官時の服務の宣誓、「事に臨んでは危険を顧みず、身を以って責務の完遂に務め、以って国民の負託にこたえることを誓います」――

 自身が所属することになる組織の約束事を遵守し、与えられた任務を忠実に履行することを誓うということは、特に自衛官はそうすることの覚悟の表明でもあろう。

 自衛隊員は命を賭す場合があるのだから、その覚悟があって、初めて宣誓することができる。

 安倍晋三は最初にトンチンカンを侵したままにトンチンカン状態で突っ走ることになる。

 スクランブル(緊急発進)活動や災害活動等で「事故によって亡くなった」自衛官が存在し、そういった死に対して「自衛隊員自身」が「覚悟を語っている」と言っていることも自衛隊員自身の覚悟を述べているに過ぎない。

 「今まで1900名の方々がこれ命を落とされて」、その追悼式で「ご遺族のみなさんが出席をされ、そこでは涙に暮れておられ」ると言っているが、例え涙に暮れていても、家族として分かち持っていた職務上の覚悟を内に秘め、噛み締めながらの涙だろうから、単に自衛隊員の家族の覚悟を述べているに過ぎない。

 そういった自衛隊員、そして家族の職務上の覚悟がそのまま裏目に出て家族を悲しみに落とす。「まあ、この皆さんの悲しみを私は最高指揮官としてしっかりと受け止めながら、出来る限りの安全確保をしていきたい」と、安倍晋三はこの程度の覚悟しか示すことができない。

 安倍晋三は江田憲司から改めて出処進退の覚悟を問われた次の答弁で、「もとより、もとより最高指揮官の立場上に於いてはそういった覚悟は持たなければいけないんですよ。私はそういうことを申し上げている」と、最初の答弁で、一言も言っていないのに、さもそういった出処進退の覚悟を述べたかのような詭弁を用いている。

 尤もいくら詭弁を用いても、どの程度の出処進退の覚悟か正直に言い直すならまだ可愛気があるが、上記最初の言葉を裏切って、自身の出処進退の覚悟ではなく、相変わらず自衛隊員の職務上の覚悟に言及したのみで済ますトンチンカンを働かせている。

 「海の中でナイフを持って格闘する」等のレンジャー部隊の過酷な訓練を挙げているが、レンジャー部隊に所属する自衛隊員が戦闘で、あるいは訓練中であっても万が一の死に巻き込まれる覚悟を持つがゆえの、そういった死を避ける戦闘術・身体能力を養う激しい訓練であって、いわばそういった激しい訓練自体が覚悟の一つ一つの必死な表現と見なければならないはずだ。

 当然、安倍晋三は自衛隊員の職務上の覚悟に言及しただけとなる。

 「目の前にしてですね、常に自分はそういう立場にある、私の命令で命を絶つ人がいる。そして残された家族という現実に直面するという覚悟を持っていますね」と言っていることも、安倍晋三の出処進退の覚悟とは無関係で、単に自衛隊員の戦死の可能性と戦士した場合に夫、あるいは子どもを失う家族の出現という現実に直面する可能性に対する覚悟、そういったこともあり得るという覚悟に過ぎない。

 かくこのように南スーダンPKO部隊派遣の自衛隊員の中から戦死者が出た場合の出処進退を問われて、自衛隊員の職務上の覚悟を述べることしかできないのだから、最後の締め括りに「当然、我々は毎回、指揮官としての立場を、指揮官としての責任を負っている。職務を遂行していく。そういう思いでございます」と言っていることにしても、「私は毎年必ず殉職職員のですね、追悼式に出席をし、そこにはご遺族のみなさんが出席をされ、そこでは涙に暮れておられて、まあ、この皆さんの悲しみを私は最高指揮官としてしっかりと受け止めながら、出来る限りの安全確保をしていきたい」と言っている通りそのままに自衛隊員の死やその家族の覚悟の悲しみを受け止める程度の「指揮官としての責任」といったところであるはずだ。

 安倍晋三がどう言葉を尽くそうと、自衛隊員かその家族の覚悟を縷々と述べているに過ぎないのであって、安倍晋三自身の出処進退の覚悟は一言も述べていない。官房長官の菅義偉にしても右へ倣えである。

 どうして江田憲司は安倍晋三が自らの出処進退の覚悟を述べたと納得したのか、これもトンチキなことで、皆目見当がつかない。

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トランプのツイッターが証明の一定国のアラブ人等を無差別に一時入国禁止に処する信用できない危険な精神性

2017-02-06 10:44:01 | 政治

 トランプは2016年1月27日にシリアからの避難民受け入れの無期限停止、すべての国からの難民受け入れ120日間停止、イラク・シリア・イラン・スーダン・リビア・ソマリア・イエメン7カ国の入国希望者90日間入国禁止措置の大統領令に署名した。

 安倍晋三が「2016年の最後に」と記事が書いている日付で「夕刊フジ」の独占インタビューに応じている。     

 記者「過激な印象があるが、どんな人物だったか」

 安倍晋三「穏やかでフレンドリーな人物だった。謙虚で熱心に話を聞く人物だった。選挙戦のイメージとは違った。孫娘のアラベラちゃんが、ピコ太郎の『PPAP』を熱唱している動画の話で打ち解けた(笑)。じっくり話して『信頼できる人物だ』と感じた。(私は)日米同盟は揺るがないと発信した」

 安倍晋三のトランプ人物評は、「穏やかでフレンドリー」、「謙虚で熱心に話を聞く」、「信頼できる人物」と言うことになる。目薬を指し直す必要がないことだけを願う。

 勿論、この目薬は目にさす目薬と言うよりも、頭にさす目薬である。

 2017年2月5日夜7時からのNHKテレビのニュースでトランプが自身が大統領令で決めた入国制限に対して連邦地方裁判所が即時停止を命じる仮処分の決定を出しためにツイッターに批判の投稿をしたと伝えていた。

 より詳しい内容を知りたいと思ってネットを調べてみると、トランプの英文のツイートを日本語訳している「サイト」に出会うことができた。投稿時間は省略。文飾は当方。    

 2017年2月5日分ツイート

 〈一つの国が、安全性、セキュリティの観点から、「誰なら出入国してもよく、誰なら出入国してはダメ」などと言っていられる状況ではなくなっています。そんなことしていたらとんでもないトラブルになる!〉

 〈いくつかの中東諸国が禁止に同意していることに興味があります。彼らは人々が死と破壊の中にあることが許されるべきか否か知っています。

 〈一裁判官が国の安全保障のための渡航禁止措置を解除でき、悪意を持った者が誰でも入国できてしまう我々の国って何なのでしょう?
 
 〈渡航禁止措置が裁判官によって解除されたとなれば、たくさんの凶悪で危険な人々がどっと押し寄せてくるかもしれません。ひどい判断だ。〉(以上)

 難民に対する国別無期限入国禁止もしくは一時入国禁止、7カ国の国民の一時入国禁止は対象国民に対して無制限に網をかけているという点で人種差別であり、人種虐待だと2017年2月1日の当「ブログ」に書いたが、2月5日のトランプのツイッター投稿文に無制限に網をかけた人種差別観が如実に現れている。  

 先ず、〈「誰なら出入国してもよく、誰なら出入国してはダメ」などと言っていられる状況ではなくなっています。〉と言っていること。

 だから、対象国とした国民の入国を誰彼なしに無差別に一時制限する。これは対象国とした国民全員を危険人物と見做していることになり、危険人物ではない人間にまで網をかけてしまう人種差別・人種虐待以外の何ものでもない。

 結果的に対象国の国民全員を危険人物と価値づけていることになる。

 この無差別性は危険で恐ろしい。

 〈いくつかの中東諸国が禁止に同意していることに興味があります。彼らは人々が死と破壊の中にあることが許されるべきか否か知っています。

 〈いくつかの中東諸国が禁止に同意している〉として入国制限の大統領令を自己正当化しているが、その禁止同意にかこつけて、〈彼らは人々が死と破壊の中にあることが許されるべきか否か知っています。〉との表現で、対象国とした国民全てが「死と破壊」を招く危険人物だと見做す否定的価値づけの網を無差別に掛けている。

 上記精神性と何ら変わらない。

 〈悪意を持った者が誰でも入国できてしまう我々の国って何なのでしょう?〉

 現実には〈悪意を持った者が誰でも入国できてしまう〉わけでなない。そうであるなら、アメリカの入国審査が機能していないことになる。

 と言うことは、アメリカ人全体が組織を設計し、運営する組織マネジメントの能力を欠如させていることになる。

 トランプはこちらの方こそ問題にすべきだろう。組織設計・運営のマネジメント能力の欠如は入国審査のみに現れるわけではなく、他の組織の設計・運営にも影響しているはずだからである。

 テロは貧困やその他の社会的矛盾が温床となっていると言われている。そして先進国は後進国の富を収奪してきた歴史がある。当然、先進国はテロの危険を分かち持つ責任と、それを制御・抹消する責任を有している。

 だが、トランプはその責任に対する感覚はゼロで、入国制限という人種差別・人種虐待以外の何ものでもない荒業でテロを解決しようとしている。

 〈渡航禁止措置が裁判官によって解除されたとなれば、たくさんの凶悪で危険な人々がどっと押し寄せてくるかもしれません。ひどい判断だ。〉

 だからと言って、個人性を真っ向から無視して対象国の国民全てに無差別に渡航禁止措置の網をかけることは許されるだろうか。

 〈凶悪で危険な人々〉だけではなく、凶悪でもない、危険でもない人々にまで渡航禁止の網を無差別にかけているのである。

 あるいは〈凶悪で危険な人々〉だけを網にかけることができないからと、凶悪でもない、危険でもない人々にまで網をかけてしまう。

 その人権蹂躙は特定の民族を餌食の対象としている。

 この無差別性は多くの人が指摘しているよう、自らの民族的出自であるゲルマン民族の優越性の元、ユダヤ人種は劣る人種であり、身体障害者は役に立たない国民だからと無差別な大量虐殺に走ったナチスの人種選別と本質的には同じ構造を取っている。

 あるいは第2次世界大戦当時アメリカが在住日系人全員に対して敵国日本に通じる危険人物の網をかけて収容所に収監した、当時のアメリカ政府上層部の精神性と同じ構造の人種レベルの排他性を有している。

 また関東大震災時の日本人暴徒の朝鮮人・中国人虐殺は劣る人種としてその全体に網をかけて日本社会に有害な危険人物と見做していた精神性が発端となっている。

 トランプが抱えている精神性と以上のような自民族優越意識からの人種差別、あるいは人種虐殺と似通っているということは、トランプのこのようなアラブ人やアフリカ人を対象とした入国制限・渡航禁止措置はアメリカ人、特にその中の白人種を優越民族に置いた価値観が可能にしている政策であるはずである。

 人種や民族に関係なしにすべての人種・全ての民族を対等に価値づけていたなら、それぞれの個人性を無視して特定の国の国民や特定の民族を対象にして、その全体に無差別の網をかけることなどできなかったろう。

 このように内面に人種差別・人種虐待の信用できない危険な精神性を抱えているトランプのような人物に対して日本の首相である安倍晋三は「穏やかでフレンドリー」で、「謙虚で熱心に話を聞く」、「信頼できる人物」だと最高の人物評価を与えている。

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安倍晋三の対中国包囲網は機能しているのか その外交能力を俯瞰

2017-02-05 11:35:09 | 政治

 日本の首相安倍晋三は2016年5月28日、名古屋市内でスリランカのシリセナ大統領と会談している。

 〈インド洋のシーレーン(海上交通路)に位置する同国の発展と地域の連結性強化が地域全体の繁栄に不可欠との認識で一致〉、安倍晋三は〈その上で両国の海洋協力強化の一環として、スリランカに巡視船2隻を供与することを表明〉、〈送電線や上下水道のインフラ整備のため総額約380億円の円借款供与も発表〉、〈中国をにらみ関係強化を重視する姿勢を鮮明にした。〉と、2016年5月28日付け「産経ニュース」が伝えていた。  

 記事は昨年1月に就任したシリセナ・スリランカ大統領がラジャパクサ前大統領の中国重視外交を見直し、日本との関係強化に意欲を持っていると伝えている。

 供与する巡視船は新建造の2隻だそうだ。中古を譲り渡すわけではない。安倍晋三は常々オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所によって国際法違反と判断された南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設が航行の自由を奪う現状変更に当たるとして航行の自由都会お湯に於ける法の支配を主張している。

 スリランカは東シナ海から遠く離れているが、シーレーン(海上交通路)の要衝に位置している。巡視船は航行の自由・法の支配を守護する象徴でもあり、その供与によって少なくとも対中包囲網の象徴的一環を担わせようとしていたはずだ。

 安倍晋三は巡視船供与以外に送電線や上下水道のインフラ整備のため総額約380億円の円借款供与も発表している。

 2017年1月2日付の「NHK NEWS WEB」記事が中国がスリランカで建設中の港を99年間に亘って管理運営する合意をスリランカ政府と結ぶ見通しとなったと伝えている。
 
 〈NHKが入手したハンバントタ港の管理運営をめぐるスリランカ政府と中国企業による最終合意案によりますと、中国企業が港の管理会社の株式の80%を保有し、99年間の運営権を持つと記されています。さらに、港の安全を確保する責任も中国企業に託されると明記されています。〉――

 ハンバントタ港はスリランカ南部に位置していて、中国が約14億ドルを融資して建設が進行中で、完成すれば大型船舶が停泊可能の南アジア最大級の港となるという。

 港の安全確保の責任が中国企業に委託される条件に便乗してのことだろう、港の安全確保を口実に中国海軍の艦船が寄港できる可能性が指摘されているという。

 そのため〈中国がスリランカへの影響力を強めることで、この地域での海洋進出を強めたい狙いがあると見られ、インドなど周辺国が警戒をさらに強めることになりそう〉だと記事は伝えている。

 安倍晋三が2016年5月28日に名古屋でスリランカ大統領と会談して少なくとも対中包囲網の象徴的一環とするはずの新造の巡視船2隻の供与は果たしてその力を発揮するのだろうか。中国の艦船が日本提供の巡視船を見下ろす図が目に見えてくる。

 中国の大型艦船がハンバントタ港を堂々と入港し、堂々と出向するのを港の隅から日本提供の巡視船がおとなしく眺めることになりそうだ。

 日本は前ベニグノ・アキノ大統領時代にフィリピン沿岸警備隊への巡視艇供与を行っている。ベニグノ・アキノは親日家であり、中国との間で南シナ海南部に位置するスプラトリー諸島の領有権を争い、2014年、南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設などが国際法に違反するとして中国を相手にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴、中国対決姿勢を鮮明にし、1992年に米軍のフィリピンからの撤退完了以来相対的に低下した対中防衛力強化を図って2014年に米軍の事実上の再駐留を可能とする「米比防衛協力強化協定」を締結している。

 だが、2016年6月30日に新大統領に就任したドゥテルテ大統領は反米というよりも、大統領就任後、警察官に対して麻薬犯罪に関わる容疑者を司法の手を煩わさずにその場での射殺を許可した「麻薬犯罪者の射殺命令」を人権侵害として反対した米大統領の反オバマの立場を取り、島嶼部の領有権問題を抱えながら、ドゥテルテの麻薬戦争に一定の理解を示したからなのか、中国寄りの姿勢を取るようになった。

 だが、米新大統領に当選したトランプが人権を問題視しない過激思想を示していたところから、肌が合うと気に入ったのか、今までの姿勢を転換、アメリカに近づく気配を示している。だからと言って、中国寄りを転換したわけではない。

 2017年1月12日、安倍晋三はフィリピンを訪れて、ドゥテルテと首脳会談を開催している。「NHK NEWS WEB」記事によると、ODA=政府開発援助と民間投資を含めて今後5年間で1兆円規模の支援を行うことと、ドゥテルテ大統領が重要視している麻薬対策で、治療施設の整備や更生プログラムの作成など日本のノウハウを提供する方針を示し、海洋に於ける法の支配や紛争の平和的解決の重要性を確認したという。

 海洋に於ける法の支配や紛争の平和的解決の重要性の確認とは、その両要素を危うくしている中国に対する日比連携した牽制であり、警告を象徴していることは断るまでもない。

 但しドゥテルテが来日し、2016年10月26日に安倍晋三と首脳会談したとき、日本に先立ち訪問した中国での習近平との首脳会談でオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が下した南シナ海問題に関する中国国際法違反について言及しなかったことについて、「いずれ語らなければならない問題だが、いまそれを語るべきときではない」と説明、「中国と領有権を争う日本とフィリピンの類似点を指摘し、「ときが来たときには日本の側に立つ。安心してほしい」と語ったと2016年10月27日付け「Newsweek」がが伝えている。 

 この首脳会談後の共同記者会見ではドゥテルテは「日本は兄弟よりも親しい特別な友人だ」とも述べている。

 こういった発言に安倍晋三は気を良くしたのか、2017年の初外遊にフィリピンを選び、今後5年間で1兆円規模の支援のお年玉を振る舞い、法の支配の重要性を確認し合うことができたのかもしれない。

 だが、2017年1月12日の安倍晋三・ドゥテルテ首脳会談から19日後の2016年1月31日、ドゥテルテは同国のイスラム過激派集団アブサヤフによる海賊行為が横行している南方海域にパトロール船を送るよう中国に支援を要請したことを明らかにしたと、2017年2月1日付の「ロイター」が伝えている。

 フィリピン沖での海賊急増により、船舶は他の海域への迂回を余儀なくされ、輸送コストの上昇や輸送期間の長期化を招いているという。

 記事は、〈中国から回答があったかどうかについては明らかにしなかった。〉と書いているが、日本にその役割を獲られたくないだろうし、日比の海洋のに於ける法の支配の連携を崩すためにも引き受けることになるだろうし、引き受けざるを得ないはずだ。

 引き受けてフィリピン海域に於ける航行の自由・法の支配を中国が担うことになったなら、日本が提供した、航行の自由・法の支配を守護する象徴たる巡視船はその象徴を解かれはしないだろうか。

 安倍晋三がせっせと築こうとしている対中包囲網も綻びかねない。

 タイ軍事政権のプラウィット副首相兼国防相は2017年1月24日、海軍が中国から潜水艦を購入する方針を明らかにしたと2017年1月24日付け「時事ドットコム」記事が伝えている。  

 2017年度予算で潜水艦1隻を約135億バーツ(約430億円)で購入する計画で、その理由を次のように述べている。

 「近隣諸国がすべて潜水艦を保有しているからだ。たった1隻の潜水艦を購入するのでは意味がない」

 安倍晋三が自衛隊の存在感を世界に知らしめるために自衛隊の海外派遣を進めているようにタイは軍の存在感を周辺国に知らしめるために潜水艦の所有で示そうとしている。

 存在感は1隻よりも2隻の方が示すことができるから、1隻では意味が無いということなのだろう。

 問題はなぜ日本からの購入ではなく、中国からなのかである。

 中国から購入した場合、その操舵技術ばかりか、各機関の運転技術、修理技術を養成する各要員がタイに駐留することになり、少なくともタイ海軍への影響力が無視できないことになる。

 タイはインドネシア、ベトナムと共に南アジアの一応の大国である。タイが中国軍の影響を受けることになれば、安倍晋三の対中包囲網はあちこちで意味をなさないことになり、機能しないその姿を曝け出すことになる。

 安倍晋三は地球儀を俯瞰する外交を掲げ、積極的平和主義外交を看板に世界各国を50カ国以上訪問、各国首脳と会談を繰り返して基本的価値の重要性を訴え、海洋の安全・法の支配を説いているが、中国の地理的影響力の届かない、尚且つこれと言った外交懸案のない国々では通用しているものの、その地理的影響力を受ける国々では例え中国と外交懸案を抱えていても、日本が唱える海洋の安全・法の支配は中国主導の海洋の安全・法の支配に傾かない保証はない。

 何カ国を訪問し何人の首脳と会談を行ったといくら自慢しようと、安倍晋三外交の実態たるや、その限界を俯瞰しないわけにはいかない。

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横浜市専門委員会のイジメに於ける加害者・被害者の関係構造を見ない150万円支払いの原発イジメ判断

2017-02-04 11:18:08 | 教育

 福島第一原発の事故後の2011年8月に福島県から横浜市へと自主避難した家族の現在中学1年生で、当時小学校2年男子が転校当初から同級生に名前に「菌」をつけられてイジメを受け、150万円相当奢(おご)らされていた。

 これら一連の行為をイジメと認定したものの、150万円奢らされていた行為はイジメとは認定しなかった横浜市教育委員会に対して中学1年男子は家族と共に2017年1月10日、イジメと認めることと150万円の返金を求める文書を提出したとマスコミが伝えていた。

 調査主体の「横浜市いじめ問題専門委員会」から横浜市教育委員会に宛てた、《調査結果と再発防止策》(2016年12月12日)(原題は長たらしい物となっている)から、なぜイジメと認定しなかったのか見てみる。


 原題「いじめ防止対策推進法第28条第1項に係る重大事態の調査結果と再発防止の取り組みについて」(こども青少年・教育委員会 平成28年教育委員会事務局)

 2.Aが小学2年生で■小学校に転校してきた直後頃から、同じ学級の児童がAを執拗lと追い回したり、鬼ごっこの鬼をわざとやらされたり、ランドセルを引っ張ったり、「○○菌」と呼んだりすることがあって、Aは嫌な思いをした。

 担任は、Aから訴えがあったときは、その都度、■には注意をした。また、Aから■に「家に鉛筆がいっぱいあるからあげるよ。」と言われ、■は2回ほど鉛筆をもらった。    
                    
 3.Aが小学3年生になると、平成24年6月から10月まで不登校となった。当時、Aの保護者は担任に「学校とは関係_ない。被災で傷ついている。」と言っていた。Aは、この時のことを「いじめられるのが嫌だな、辛いと思づて、行かなくなった。」と述べている(本委員会での聴取)。

 4.(小学校4年生になって)Aは鉛筆を折られたり、ノートが無くなったり.蹴られたり、ものさしで叩かれたり、階段で押されて落とされそうになったりした。このようななことをAに対して行ったのは、主に■であったとAは本委員会の聴取で述べている。

 しかし、この頃のAは、これらの事実を担任に相談しなかったので、担任や学校はこれらの事実を把握していない。

 一方、Aは苛立つと机や壁や文房具にあたり.鉛筆を自分で折ってしまうこともあった。

 5.平成26年4月Aは小学5年生になった。■ごっことかプロレスごっこと称し、A1人が数人の児童から叩かれるようなごとがあった。その際には見張り担当する児童もいたとAは本委員会の聴取で述べている。

 6.同年5月頃、Aは他の関係児童10人くらいと、当初は■駅近く、後半は横浜駅近くや、みなとみらい遊園地等のゲームセンターでたぴたぴ遊び、遊興費・食事代・交通費等をすぺてAが負担した。Aによると、このようなことは10回くらいあり、1回につき5万円から10万円くらい使ったと言っており、そのお金は自宅にある親のお金を持ち出していた。

 これに関し、Aは、■に今までにされてきたことも考えて、威圧感を感じて、家からお金を持ち出してしまったという。Aが約10人の関係児童の遊興費等を負担(いわゆる「おごり」)することで、それ以降はプロレスごっこ等のいやなことは一切されなくなり、更にAは他の児童に対し、友好感が生じることができたので、同様のことが多数回繰り返されてしまったと思われる。

 7.この頃学校はAと他の関係児童との金品のやり取りについて知ったが、Aらのゲームセンターでの遊興はこの後のものが大半であった。同月20日、学校に■保護者からAが何人かの関係児童にゲームセンターでおごっているようだとの連絡が入った。しかし、その後も(たとえぱ、5月24白、同月28日)Aらのゲームセンターでの遊興は続いた。

 8.同年5月28日には、Aの保護者から「■帽子がなくなった。隠されたのではないか。」との訴えがあった。■帽子はロッカーの上で発見された。
 9.Aは、同月■より不登校になり、その後同28年3月の卒業まで全く登校していない。

 学校は、Aと約10人の関係児童との金品のやり取りについて、同26年6月より調査に入った。

 (5)本事案の経過といじめに係る事実分析

  これらのことから、本事案一見小学校2年生当時に児童が■小学校に転じてきたときから、数々の事態が起こっているのであるが、それが同様な内容が繰り返し起こっていたのではなく、学年進行に従って様相を代えながら、断続的に起こっていた事案が積み重なったものであるということがいえる。

 それぞれの様相が認められる時期を分類すると、以下の5つの期間に分けることができる.

 ①■小学校に転入時(2年生の8月)から最初の不登校に至る期間(3年生の6月まで)
 ②最初の不登校期間(3年生の6月から10月まで)
 ③再登校期(3年生の10月から4年生最終まで)
 ④5年生の最初の期間(4月から5月)
 ⑤2度目の不登校期間(5年生の6月から現在)

 「事実分析」は上記のように5つの期間ごとに分けて、〈一定の「いじめ」があったと認定する。〉とか、Aが〈友人関係等を構築するまでにいたらず、「いじめ」に繋ったと推察する。〉、あるいは、〈この時期の当該児童の不登校状態については「いじめ」との因果関係は否定できない。〉と継続的な身体的・心理的な攻撃を加えて、Aに心理的な苦痛を与えていたことを認めているが、これらの表現自体から判断すると、イジメの程度を過度のものとは判定していない。

 これを正確な分析だと認めたとしても、このような判定がAがイジメ加害者に遊興費の一切を支払っていたことをイジメと認定しなかったことに影響しているはずだ。

 事実分析は④以降を見てみる。


 ④5年生の最初の期間(4月から5月)

 この時期の事案については、表面的には「いじめ」事案というよりも、非行・虞犯行為が中心となっているが、この点についても、学校側は、児童の生活指導上の問題として捉え、適切た対応を行っていたとは言えない。

 当該児童は、登校の意思を持ち、その中で友人関係等をより良いものとしたいという思いで努力をしていたことは、聴取等から認められた。    

 しかしながら、当該児童としての精一杯の適応行動は、友人等のゲームセンターでの遊興費等を“おごる”という形で、過去における「いじめ」と同等の行為を受けないようすることであったと推察できる。

 当該児童の聴取時に訴えていた内容では、加害を疑われている児童たちから「おごるよう言われた気持ち」になっていた。

 学校側からの報告書等では当該児童から加害を疑われている児童たちに、自主的に“おごった”こととされているが、思春期前期にさしかかり他の児童たちとの相互関係の在り方に伴う不安定さに由来すると考察すると、どちらが真実であろうかと認定することは難しい。

 ただ、認定しうる“真実”とすれぱ、当該児童が聴取時に、当時の5年生の教室の横に■という場所があり、ここで日常的に「プロレスごっこ」が行われており、それも見張りを立て、教員に見つからないようにした中で、当該児童がその標的となっていたが、「おごる」ようになって、それが無くなったと話した。

 ■小学校の現地調査において、当該児童の聴取時の発言とおりの物理的環境が確認でき、十分に真実と認定できる心象を得た。 

 これらのことから、当該児童が複数回にわたり加害を疑われている児童を中心にゲームセンター等に一緒に出掛け、金銭を負担していたことも、採られた方法論は明らかに間違っているが、「いじめ」から逃れようとする当該児童の精一杯の防衛機制(適応機制)であったということも推察できる。

 これらの問題に対しての学校側の対応としては、表面的な問題行動のみに注視して児童の内面的な葛藤に対しての対応ができておらず、教育上の配盧に欠けていたといわざるを得ない。

 金銭的な授受の問題についても、当該児童と関係児童の言っている金額の相違などを問題にする前に、小学生が少なくても万単位の金額を“おごる・おごられる”ということをすること自体、生徒(児童)指導の対象と考え、教育的な支援を行うことが必要であった。しかしながら、「正確な金額がわからないので、その解明は警察にまかせたい」とか、「返金問題には学校は関与しない」として、学校は上記の教育的支援を十分に行ったといえない。

 学校は、加害を疑われている児童たちに対しても、適切な教育活動を行ったとは言えず、当該児童及び関係児童全てに対し、行うべき教育的指導・支援を怠ったと言わざるを得ない。

 以上のことから、この時期については、おごり・おごられ行為そのものについては 「いじめ」と認定することはできないが、当該児童の行動(おごり)の要因に「いじめ」が存在したことは認められる。

 以上取り上げた中から遊興費負担以外の報告について点検してみる。

 「報告書」は、イジメは〈小学校2年生当時に児童が■小学校に転じてきたときから、数々の事態が起こっているのであるが、それが同様な内容が繰り返し起こっていたのではなく、学年進行に従って様相を代えながら、断続的に起こっていた事案が積み重なったものであるということがいえる。〉と書いているが、イジメを受けていないのは不登校となっていた時期であって、例え〈学年進行に従って様相を代えながら〉であっても、不登校期間を除いてイジメ行為自体はその種類を違えていたとしても、継続していた以上、〈同様な内容が繰り返し起こっていたのではなく〉ても、あるいは〈断続的に起こっていた事案が積み重なったもの〉であったとしても、イジメ自体の一貫性は認めなければならないはずだ。

 イジメは一方的な上下の人間関係、あるいは強弱の人間関係を出発点としている。そのような人間関係が暴力介在や金銭強要の介在を構造として成り立たせる。

 いわばどのような形で推移しようと、イジメの一貫した継続は、そこに一方的な上下・強弱の人間関係の一貫した継続性を同時に見なければならない。

 〈「一定の『いじめ』があった」と認定〉している以上、イジメ加害者と被害者の間に“一定の”上下・強弱の人間関係が一貫して継続していたことになる。

 このような観点から、被害者の加害者に対する遊興費支払いに関わる報告書の妥当性を見てみる。

 「横浜市いじめ問題専門委員会」は遊興費支払いを、〈当該児童が聴取時に、当時の5年生の教室の横に■という場所があり、ここで日常的に「プロレスごっこ」が行われており、それも見張りを立て、教員に見つからないようにした中で、当該児童がその標的となっていたが、「おごる」ようになって、それが無くなったと話した。〉Aの証言と、〈学校側からの報告書等では当該児童から加害を疑われている児童たちに、自主的に“おごった”こととされている〉との〈学校側からの報告書等〉から判断することになったのだろう、「報告書」に〈当該児童としての精一杯の適応行動は、友人等のゲームセンターでの遊興費等を“おごる”という形で、過去における「いじめ」と同等の行為を受けないようすることであったと推察できる。〉、あるいは、〈「いじめ」から逃れようとする当該児童の精一杯の防衛機制(適応機制)であったということも推察できる。〉と書いてあって、遊興費支払いはイジメ回避の自主的な“適応行動”と見ている。

 〈当該児童から加害を疑われている児童たちに、自主的に“おごった”こととされている〉としているこの推測は何を意味しているのだろうか。もしAが「自主的に“おごった”」と証言したなら、推測の表現を取ることはないし、150万円の支払いをイジメと認めることとその返金を求めることはないし、求めることはできない。

 もし加害生徒にのみ聞き取りをし、その証言に基づいていた在籍していた小学校なのだろうか、〈学校側からの報告書等〉であるなら、推測の表現とならざるを得ない。

 だが、一方でそのような推測情報に基づいて150万円支払いをイジメかどうかの判断材料とすること自体、「横浜市いじめ問題専門委員会」の感覚、その姿勢を疑わなければならないことになる。

 だからだろう、〈思春期前期にさしかかり他の児童たちとの相互関係の在り方に伴う不安定さに由来すると考察すると、どちらが真実であろうかと認定することは難しい。〉ことを理由に、〈おごりおごられ行為そのものについては 「いじめ」と認定することはできないが、当該児童の行動(おごり)の要因に「いじめ」が存在したことは認められる。〉とどっちつかずの結論となったのではないだろうか。

 また、Aが加害生徒の遊興費まで全額払うようになってからイジメの標的とされることはなくなったとAが証言しているのに対して平成28年5月からAは〈不登校になり、その後同28年3月の卒業まで全く登校していない。〉としていることに関しての「専門委員会の認定」を見てみる。

 〈⑤2度目の不登校期間(5年生の6月から現在)

  この時期の不登校は、直接的に「いじめ」と因果関係は認められないが、金銭問題が発覚したこと、学校側と当該児童及ぴそめ保護者との関係が悪化してしまったこと、当該児童が抱く「いじめ」再発への漠然とした不安等の複合的な要因が絡み合った結果の不登校とはいえる。

  しかしながら、学校として、当該児童への不登校支援は至って消極的であり、たとえ当該児童の保護者等との関係が悪化していたことを斟酌しても、当該児童及びその保護者の心情をきちんと聴取することなく、一方的な思い込みで、事態の収拾のみに奔走していた傾向が認められることは残念である。

  このことが、本事案を長期化させた原因の一つであり、当該児童の「教育を受ける権利」を侵害する一因になってしまったことは否めない。

 卒業までの最後の不登校の原因は、〈直接的に「いじめ」と因果関係は認められないが〉、金銭問題が発覚して学校とAとその保護者の関係が悪化したことと、Aのイジメ再発への不安等の複合的要因だとしている。

 だが、不登校が〈当該児童が抱く「いじめ」再発への漠然とした不安〉を要因の一つとしていることからも、〈7.この頃学校はAと他の関係児童との金品のやり取りについて知ったが、Aらのゲームセンターでの遊興はこの後のものが大半であった。同月20日、学校に■保護者からAが何人かの関係児童にゲームセンターヤおごっているようだとの連絡が入った。しかし、その後も(たとえぱ、5月24白、同月28日)Aらのゲームセンターでの遊興は続いた。〉という、学校が金銭の遣り取りを知った後もそれが続いていたという事実関係からも、不登校の間も加害者たちの被害者に対する一方的な上下・強弱の人間関係に心理的な支配を受けていたと考えなければならない。

 また、イジメ加害者と被害者を結びつけていたこのような一方的な上下・強弱の人間関係に縛られてからこそ、その程度がどれ程のものであっても、遊興費の支払いが行われていたはずである。

 もし対等な関係だったなら、奢ったり、奢られたりの関係にあったはずである。金額がはっきりしないということだが、一度に遊びに使う小遣いが1万円でも大金であるはずの小学校5年生、6年生からしたら、奢ったり、奢られたりだったなら、一人が使うカネは1万を超えることは滅多にないはずで、ましてやそれが10万、20万を超えて、100万も超えるといったことは普通どころか、異常そのものですらある。

 それを自主的な奢りだとすることができるのだろうか。百歩譲って自主的な奢りだとしても、奢る方も異常なら、黙って奢られる方も異常である。関係性の程度の違いはどうであれ、一方的な上下・強弱の人間関係抜きには考えられない異常さであろう。

 だが、「横浜市いじめ問題専門委員会」は〈「おごり・おごられ」行為そのものは、「いじめ」であったとまでは認定できない。〉とし、〈友人等のゲームセンターでの遊興費等を“おごる”という形で、過去における「いじめ」と同等の行為を受けないようする〉適応行動だと判断している。

 この判断に妥当性を見い出すことのできない根拠を挙げてみる。

 「横浜市いじめ問題専門委員会」は、〈当該児童が聴取時に、当時の5年生の教室の横に■という場所があり、ここで日常的に「プロレスごっこ」が行われており、それも見張りを立て、教員に見つからないようにした中で、当該児童がその標的となっていたが、「おごる」ようになって、それが無くなったと話した。〉と報告している。

 現在はうるさくなったが、かつてのヤクザは標的としたバーにサングラスのチンピラを何人か客として通わせて、ホステスに「可愛いネエチャンだなあ、こんなネエチャンと付き合いたいなあ」とか、来た客に「サラリーマンは気楽でいいなあ、酒飲んで社長の悪口を言っていりゃあいいんだから」とか声をかける。ホステスも客も変に絡まれたら厄介だからと、ホステスは客に愛嬌を振りまくこともできず、客は酒を飲んでも酔うこともはしゃぐこともできず、満足に話もできなくなって、客足は遠のき、店は暇になる。

 そこへカタギらしい身なりの紳士がやって来て、「こういった連中の溜まり場になったら、繁盛する店も繁盛しなくなる。こいつらの上の人間と顔見知りだから、何だったら話をつけてやるよ」と申し出る。「但し少しはカネはかかるよ」

 月々の用心棒代を支払うことに話がつくと、チンピラは一斉に姿を消し、店は元の姿を取り戻すことができる。と言っても、用心棒代というオマケがついて離れないことになる。

 ヤクザたちがこのようにできることも、自分たちと店との間に一方的な上下・強弱の人間関係を置いているからである。

 イジメの〈標的となっていたが、「おごる」ようになって、それが無くなった〉と言うことと同じ構造のカネの遣り取りである。

 例え“奢り”がA自身が申し出た自主的な支払いだっとしても、イジメ加害者と被害者の両者間を一方的な上下・強弱の人間関係で結びつけていた以上、弱い側の人間が強い側の人間に少しでも気に入れられようとする媚から出た支払いであるはずだ。

 また「報告書」が〈Aから■に「家に鉛筆がいっぱいあるからあげるよ。」と言われ、■は2回ほど鉛筆をもらった〉としている件に関しても、一方的な上下・強弱の人間関係下にあって、そのことから出た気に入れられようとする同じ構造の媚からの行為と見なければならないだろう。

 結果、従来のイジメが遊興費支払いの強要というイジメに姿を変えた。例えそれとない体裁を取ったとしても。

 但し一旦支払うと、それが暗黙のものであったとしても、際限もない要求(厳密には強要)へとエスカレートしていき、100万や150万になったということであって、一見Aから支払っているように見えたとしても、一方的な上下・強弱の人間関係の力学に縛られていたからこその奢ったり奢られたりの対等性から外れた、奢る一方の支払いと見なければならない。

 イジメに関係していく一方的な上下・強弱の人間関係に囚われていなければ、小学生5年生、6年生の誰が自分のカネではない、親のところから持ち出した100万も200万もという大金を他人の遊興費の支払いに当てるだろうか。

 1月20日に横浜市教育委員会の岡田優子教育長が、「関わったとされる子どもたちが、『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは疑問がある」(NHK NEWS WEB)と述べたところ、林文子横浜市長が1月25日の定例の記者会見で、「教育長は第三者委員会の結論を尊重する立場から、『認定は難しい』という考え方を答弁したということだった。生徒がつらい思いをしている中、丁寧に趣旨を伝えるべきで、至らない、大変申し訳ない発言だった」(NHK NEWS WEB)と謝罪したそうだが、岡田優子教育長の発言を見ると、加害生徒の証言を主たる理由としてイジメではないと判断したことになる。

 上に上げたヤクザの譬え話は例え警察に事情を聴かれることがあったとしても、最終的に警察がどう判断しようと、「俺達が用心棒代を強要したわけではない。店の方から払うと申し出あった」と言い張るだろう。

 いずれにしても「報告書」は、イジメが一方的な上下、あるいは強弱の人間関係を出発点として、そのような人間関係が暴力介在や金銭強要の介在を構造とすることを踏まえて、このような関係の一貫性の有無でイジメかどうか判断しなければならないはずだが、この点を抜きに150万円としている遊興費の一方的な支払いをイジメとは認定できないとする検証不足に陥っている。

 奢ったり奢られたりではない、奢るだけであった点だけを見ても、そこに一方的な上下、あるいは強弱の人間関係を見なければならないはずだ。

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安倍晋三のトランプ7カ国入国制限大統領令「コメントする立場にない」よりも呆れる民進党議員の連携のなさ

2017-02-02 11:21:38 | 政治

 2017年2月1日の衆院予算委員会の質疑をNHKで視聴していて、民進党の江田憲司、大串博志の二人共が7カ国米入国一時禁止のトランプ大統領令に関しての安倍晋三の「コメントする立場にない」の答弁に対して何ら連携がないままに自分たちの遣り方で同じ内容の質問をし、似たような答弁しか収穫できない時間のムダ遣いをしていることに気づいた。

 この点に触れる前に1月30日と翌日の1月31日の参議院予算委員会の質疑でも、その模様は見ていなかったが、1月30日は民進党代表の蓮舫が、1月31日には福山哲郎が同じ質問をし、「コメントする立場にない」という同じ答弁を引出していたことをマスコミが伝えているから、各記事から見てみることにする。文飾は当方。

 1月30日の安倍晋三の答弁。

 安倍晋三「米国の大統領令という形で米政府の考え方を示したものだろうと思う。私はこの場でコメントする立場にはない。いずれにせよ我々は、難民への対応は国際社会が連携して対応していくべきだと考えている」(asahi.com) 

 1月31日の安倍晋三の答弁。

 安倍晋三入国管理政策は基本的には内政事項であり、アメリカ国内においても、さまざまな意見があると承知しているが、いわば難民、移民、出入国管理をどのようにやっていくかは、その国が判断することだ。われわれは注視しているが、今、直ちにコメントすることは差し控えたい。

 難民が出ている状況に対して、アメリカを含めて世界が対応していくべきだというのは当然のことだ。大統領令の実施状況を日本政府としても関心を持って見守っていきたいが、難民が出てくる状況を根絶するため、日本も大きな役割を担っていかなければならない」(NHK NEWS WEB)    
 
 「asahi.com」記事は「内政事項」という言葉を使っていない1月30日安倍晋三の答弁となっているが、使っていたら、そのまま紹介するだろうから、使っていなかったのだろう。

 だが、「米国の大統領令という形で米政府の考え方を示したものだろうと思う」と言っている「米政府の考え方」という言葉の中に内政問題だとするニュアンスを含んでいるはずである。

 いずれにしても、1月31日の答弁で7カ国の国民全てを入国制限の網にかける大統領令を「内政事項」だと言明した。

 シリアからの避難民受け入れを無期限で停止することやイラク・シリア・イラン・スーダン・リビア・ソマリア・イエメンの7カ国の入国希望者の入国を一時禁止することはアメリカと外国との関係に話し合いもなく大きな変更をもたらす国際上の措置であって、それを果たして「内政事項」とすることができるのだろうか。

 西欧の首脳やカナダの首相、あるいは中東の首脳がトランプの大統領令を批判しているが、もしそれを内政問題だとしたら、彼らはアメリカに対する内政干渉を侵していることになる。

 アメリカ一国の問題ではなく、正常な国際関係を維持していく上で由々しき問題だと見たからこそ、批判しているはずだ。

 2017年2月1衆院予算委員会。民進党江田憲司

 江田憲司「7カ国の入国禁止大統領令についてコメントする立場にないという答弁なんですけど、少々おかしいんじゃないでしょうかね。これまで日米というのは基本的な価値を共有するんだということで自由だとか、人権の尊重とか、民主主義であるとか、法の支配とか言って、来られたわけでしょ。

 トランプさんも同じだというのであれば、しっかりと説明したって(構わないではないか)、今度の首脳会談で。だって、イギリスのメイ首相だって、カナダのトルドー首相だって、ドイツの首相だって、みんな釘を刺しているわけですから。

 西側の基本的価値を脅かされているような状態に対してコメントする立場にないというのは余りにも常識に反しませんか。しっかり首脳会談では言うことは言うということでぜひ対処して頂きたいと思いますけども、総理の見解を求めます」

 安倍晋三「先般申し上げましたのはですね、国境管理、いわば出入国に対してどういう対応を取っていくか、あるいは移民について、難民についてどのような姿勢を取っていくか、いわば内政問題でありますから、コメントする立場にはない、と同時に注視しているということはお答えさせて頂きました。

 同時に私が述べているのはですね、今まさに国際的にですね、難民の問題、移民の問題がある中に於いてですね、そうした問題を根本的に解決していくと同時にそうした問題に対応する上に於いて国際社会がですね、お互いが相協力して応ずれば、しっかりその役割を果たしていくべきであると、難民についてそうであります。

 そいういう意味に於いてしっかり役割を果たしていく。国際社会が共にそういった対応を協力しながらそうしていくことは当然のことであろうと、そう考えているところでございます」

 江田憲司「難民に限っただけではないですか。一般国民、人種であるとか、宗教であるとか、肌の色で差別しちゃあいかんということは根幹中の根幹ですからね、そこについてものを言わなければ。

 難民は当たり前ですよ、おっしゃることは。難民に限って、それは違う。逃げた答弁だと思いますがね。しっかりと釘を差さないとね、何も言えなくなりますよ。トランプさんに。そういうことを申し上げて、私の質問は終わります」

 入国制限の大統領令は「内政問題」とし、それ以後の答弁は上記「asahi.com」記事と「NHK NEWS WEB」がそれぞれ紹介している安倍答弁の後段の答弁と同じ趣旨となっている。

 いわば1月30日の蓮舫と1月31日の福山哲郎から2月1日の江田憲司と質問者は代えていても、同様の質問をし、同様の答弁でうまく躱(かわ)されるという時間のムダ遣いをしたに過ぎない。

 江田憲司はトランプの大統領令に絡めて自由・人権の尊重・民主主義・法の支配の支配は日米間の基本的価値であるのみならず、西側のそれでもあると、いわば欧米全体の基本的価値だと発言していることからして、大統領令は「内政問題」ではなく、国際問題だと見ているはずだが、江田憲司も含めて質問に立った民進党の各議員が大統領令を米国の内政問題だと見ているとしたら、安倍晋三が「内政問題」とした時点で質問を打ち切らなければならない。「内政問題」だから、安倍晋三の「コメントすることは差し控えたい」という答弁は尤も至極だと最大級の納得をしなければならない。

 いや、最初からこの件に関して質問できないことになる。

 だが、江田憲司の場合は時間切れとなって打ち切ったが、安倍晋三の答弁に納得せずに「しっかりと釘を差せ」と要求し、江田憲司に続いて答弁に立った大串博志は安倍晋三が「内政問題」だとした後も、江田憲司同様に国際問題であるとする文脈でしつこく追及している。

 この矛盾に誰も気づいていない。大串博志は江田憲司に引き続いて質問に立っている。

 大串博志「私が非常に気になったのはトランプ新大統領の大統領令、7カ国の皆さんの入国制限の話ですね。総理は基本的なことを共有する世界各国の皆さんと手を相携えていくと言うことをおっしゃっている。

 私は非常に感動するところがあるんです。平和、自由、あるいは基本的人権、これを世界に押し広げていこう。とっても大切な考え方だと思うんですね。しかしトランプさんが出した大統領令、7カ国の皆さんの入国を一時的にせよ、制限する、禁止する。これは非常に自由とか基本的人権とか、こういったものに対してどうかなと思うんです。

 (パネルを出して)で、これは世界各国の、これは総理が一緒に仕事をしていらっしゃる首脳の皆さん、表で皆さん発言されてるんですね。フランスのオランド大統領、『難民保護の原則を無視すれば世界の民主主義を守ることが困難になる』。

 メルケル首相、ドイツ『特定の出身地や宗教の人々を全て疑う遣り方は納得していない』。あるいはイギリスのメイ首相はこの間首脳会談をやられていい関係を築かれている。でも、言うことは言わなければならないということで、『賛成できない。英国民に影響するなら、米国に対して申し入れる』とおっしゃっている。

 カナダのトルドー首相は、これはツイッターですけれども、『迫害やテロから逃れた人をカナダは歓迎する。多様性は我々の強みだ』とおっしゃってる。国連のグテレス事務総長、『世界で最も発展した国々などが余りにも多くの国境を閉じているときにアフリカ諸国の国境は保護をする人々のために開かれている』というふうに言われているんですね。

 ビジネス界でも色々発言があって、このように発言されている(パネルの発言個所を示す)。

 安倍総理に改めてお尋ねしますけども、2月10に向けて大統領と会われる際に7カ国の入国制限をするという大統領令を受けて総理はコメントしないという態度でいらっしゃいますけれども、本当にそれでいいんでしょうか。

 先程の答弁にもありましてけれども、例えば自由や平和や人権といった基本的価値を共有して欲しいと言うぐらいの発言ですら、トランプ大統領に今この場から発信することは日本の総理としてできないでしょうか」

 安倍晋三「日本と米国は基本的価値を共有する同盟であるからこそですね、私は希望の同盟だとこう申し上げているわけであります。自由・民主主義・基本的人権、そして法の支配、こういう価値を共有している同盟であるというのが日米同盟でなければならないということでございます。

 そしてこの入国の管理、あるいは難民や移民に対する対応等につきましてはですね、これは内政事項であり、コメントすることは差し控えたいと思いますが、先程申し上げましたように他方ですね、他方、移民・難民問題についてテロ対策は世界的な課題だと認識しております・・・・・」

 以下の答弁の続きはここに挙げた質問者たちに対する答弁に共通した、移民・難民問題は国際社会が協力して対応するという内容で問題のすり替えを行っている。

 大串博志にしても、トランプ大統領令が「自由とか基本的人権」等の世界共通とすべき普遍的価値に反するという文脈で把え、そのような文脈でトランプ大統領令に対する安倍晋三の「コメントすることは差し控える」とする答弁を追及していながら、あるいは各国首脳がトランプ大統領令は国際問題だと見て、批判を発していると取り上げていながら、自身の質問の趣旨に反して安倍晋三の大統領令は「内政事項」だとする発言を看過してしまっている。

 大串はなおも安倍晋三からコメントを引き出そうと食い下がる時間のムダを費やすのみで、安倍晋三に「今ここで簡単に米国の問題について日本が批判的にコメントすれば、この大串委員はこれは大向こうから喝采を受けるからいいだろうと、そういう観点から恐らくおっしゃってるかも知れなせんが」と軽くいなされ、その果てに一般的な難民・移民問題に逃げ込まれてしまう。

 民進党は質問に立つ議員が全員集まって、重なる質問があかどうか照合し合い、それぞれの質問内容を各自が明確に把握するということをして、安倍晋三が一番バッターに対してどう答弁するか細心の注意を払い、その日の質疑終了後にその内容を全員で検証して、その矛盾を洗い出し、二番バッターがその矛盾を突くといった連携のための作戦会議を開かないのだろうか。

 連携ができていれば、安倍晋三が入国制限の大統領令をアメリカの「内政問題」としている点にのみ追及の把えどころがあるはずだが、連携がなかったからだろう、質問に立った誰もが把えどころを掴むことができずに追及し切れない似たような質疑を繰返すことになったはずだ。

 こんなことを続けていたなら、いつまで経っても安倍晋三の詭弁を打ち破ることはできないだろうし、結果的にこれまで通りのただ時間を費やす質疑を曝すだけのことになるはずだ。

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