◆DDH四隻体制へ修理完了間近
観艦式から母港佐世保へ向かう途中、関門海峡で急接近した韓国船に衝突され長崎にて修理を行っている護衛艦くらま、ですが、間もなく現役復帰です。
くらま修理ですが、その実施を報じる際に修理は六月までかかる見込み、とされており、いよいよ六月となった訳です。破損した艦首部分の修理はほぼ完了しており、問題は対潜中枢艦としてのソナーの修理ですが、遠くない時期に完了するということが期待されます。満載排水量7200㌧、ヘリコプター3機を運用する、くらま、は佐世保を拠点に南西諸島を始め防衛警備に当たってきました。
海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦は対潜中枢艦として設計されていて、そもそも海上自衛隊は長い期間対潜戦闘に主軸を置いた編成を採ってきましたので、ヘリコプター搭載護衛艦は護衛艦部隊の旗艦としての役割が期待されたのですが、四隻が配備されたヘリコプター搭載護衛艦のなかで、最新型ひゅうが、は現在慣熟訓練中、しらね型の、しらね、は2007年の火災事故の復旧途上にあり、現時点で、はるな型ひえい、のみが稼働状態にある、という状況でした。
ひえい一隻が頑張っているという状況下で、間もなく、くらま、が復帰できる、という状況に加えて、しらね、も間もなく修理が完了するようです。2007年に戦闘指揮の中枢である戦闘指揮所(CIC)で火災事故が発生し、コンピュータを集約させた、しらね型の設計が災いして結局、除籍された護衛艦はるな、の部品を流用し修理が行われている護衛艦しらね、ですが、その修理完了が今月中に行われる、とのことです。
修理には当初小型護衛艦新造に匹敵する費用を要するとして、しらね、はこのまま除籍させよう、という検討も為されたといわれるのですが、はるな、の部品を流用することでかなり低いコストで修理できる見通しが経ちました。はるな、は船体こそ1973年就役と古いことは否めないのですが、近代化改修で、しらね型に匹敵する新しいコンピュータを搭載していますので、能力水準は維持できるわけです。
ヘリコプター3機を運用するとともに、一機が離発着しもう一機が待機できる広大か飛行甲板を後部に持ち、中央部には上部構造物を集中、前方には対空・対水上に高い能力を発揮する5インチ砲を背負い式に二門搭載して、力強い印象を与える艦容をもつのが海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦なのですが、この力強い印象から、海上自衛隊の象徴として、また、一番艦しらね、は第七艦隊旗艦ブルーリッジとの姉妹艦関係を結ぶほど海上自衛隊を代表する護衛艦となっています。
この象徴となるような護衛艦は、同時に強力な対潜中枢艦ですので、特に日本周辺の国々が潜水艦勢力を急速に増大させている昨今、その位置づけは重要性が高いものとなっている一方、事故により二隻が動けない状況に陥っていたということは日本の安全保障上かなり大きな問題となっていました。
象徴というのは飾りではなくかなりの重要性を持っています。なにもたった二隻の修理で、と思われるかもしれませんが、舞鶴で、はるな除籍後に北朝鮮が弾道ミサイル実験を強行し、くらま修理中に中国海軍が南西諸島周辺での示威活動を強化したことで、あながち杞憂ではない、といえるような状況にもなっている訳です。
さて、ひえい、ですが間もなく公試が開始される新鋭艦いせ、に道を譲り除籍されるのですが、しらね型についても後継艦として22DDHが建造されます。しかし、せっかく、しらね、くらま、共に修理を行ったのですし、2015年の22DDHの一番艦就役とともに除籍するのではなく、護衛艦隊旗艦に配置しては、と考えたりします。現在、護衛艦隊は旗艦を持たず、直轄艦として、さわかぜ、を運用しています。しかし、間もなくの除籍に対し、後継艦を建造していませんので、護衛艦隊は直轄艦を失う訳です。そこにヘリコプター搭載護衛艦を充てれば、航空機格納庫上は指揮通信用アンテナを配置する余裕がありますし、格納庫内の一部を司令部施設に充てることも出来ます。そういうかたちで長期間運用することは出来ないかな、と思ったりもしました次第です。
HARUNA
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