◆信頼醸成の観点から問われる日本の参加規模
明日6月23日から8月1日まで、ハワイ周辺海域において環太平洋合同演習、リムパック2010が実施されます。海上自衛隊の参加部隊としては5月10日に記事として本ブログに掲載したのですが、護衛艦2隻、潜水艦1隻、航空機3機が参加します。
海上自衛隊では、現在沖縄県周辺海域で実施中の日米豪共同訓練や、パシフィックパートナーシップ2010への友愛ボート派遣、海賊対処任務への護衛艦及び航空機の派遣と重なった形でのリムパック参加ですが、護衛艦2隻、潜水艦1隻、航空機3機、というのは過去のリムパック参加規模と比べ、最初の参加となった1980年の、ひえい、あまつかぜ、P-2J8機と並び少ない規模での参加です。
今回のリムパック2010は、参加国がアメリカを筆頭にオーストラリア、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、オランダ、ペルー、シンガポール、タイの14カ国となっていて、参加予定部隊は艦艇34隻、潜水艦5隻、航空機100機以上、人員約20000名、と発表されています。航空機や人員の参加数分かるように航空母艦も参加するようです。
リムパックは参加各国の協同交戦能力の向上を目指して実施されるものですが、1980年から参加している海上自衛隊は、今回で参加は16回を数える事となりました。この中で海上自衛隊は、対潜戦、対水上戦、対空戦などの各種戦術訓練を行うとともに米海軍の演習支援設備の協力のもとでミサイルの実弾射撃訓練なども実施する事となっています。
海上自衛隊は護衛艦の近代化が本格化した1986年から2000年まで、リムパックには原則として一個護衛隊群の護衛艦8隻と補給艦、潜水艦と航空機8機の参加という参加国第二位の規模で参加してきたのですが、近年、インド洋給油支援や海賊対処任務、弾道ミサイル防衛など実任務が増え、加えて燃料費などの訓練費用が削減され、参加規模は毎回縮小し、今回は艦艇では護衛艦あたご、ありあけ、潜水艦もちしお、のみの参加となりました。
リムパックは、集団的自衛権の問題から海上自衛隊としてすべての面で参加できる訳ではないのですが、現行法の範囲内で自衛隊の行動が有事の際にどの程度まで可能なのか、という点を考える機会ともなりますし、何よりも各国海軍との平時の協力関係を構築することは信頼を醸成し、意図しない誤解からの対立を回避する重要な機会となります。
また、海上自衛隊は、大型水上戦闘艦の保有数や固定翼哨戒機、回転翼哨戒機の保有数で米海軍には及びませんが、ロシア海軍と比肩、中国やイギリス、フランス海軍を凌駕して世界トップクラス、掃海艇や潜水艦の保有数でも世界有数の規模を誇ります。こうした中で、装備を揃えている以上、最大限の訓練を実施することでその能力を高水準で維持させる必要があります。
専守防衛でアメリカ以外とは同盟関係を結ばない現状からは、前述の信頼醸成の話なのですが日本の海上自衛隊の装備や訓練水準、そして海洋の自由が共有財産であるという事で確認しあう事で誤解をされないようするという事も重要です。こういう視点からも、訓練経費の面や、ローテーションでの困難を超えてでも、もう少し大規模な部隊の派遣、ということは出来ないものかな、と考えます。
HARUNA
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