◆任務増ならば見合った人的予算的配慮を
長島防衛政務次官が講演でインド洋での給油支援の再開を示唆する発言を行いました。長島氏は米軍再編などの著書を通じて民主党では比較的、防衛に関する知識に長けた代議士として知られています。
本日は民主党と自民党のマニフェスト/政権公約を比較する予定でしたが、こちらの方が大きな話題ですので掲載です。民主党マニフェストですが、具体的な安全保障に関する内容が盛り込まれるという展望に若干期待していたのですが、観てみると失望しました。自民党の政権公約は細部に入り過ぎていて少々失敗のようにも見えましたが、民主党のものは理念理想先行型、鳩山内閣時代に制定されたものを若干手直ししたという事が明白でちょっと残念でした。
時事通信から引用:インド洋給油の再開検討を=菅首相は「現実主義者」-防衛政務官 【ワシントン時事】長島昭久防衛政務官は17日、ワシントン市内で開かれた日米関係のセミナーで講演、日本の安全保障政策に関し、「自衛隊は海外での活動から手を引いてはならない」と述べた上で、インド洋での海上自衛隊による給油活動の再開を検討すべきだとの考えを示した。
また、菅直人首相と鳩山由紀夫前首相のタイプの違いについて「鳩山さんは夢想家で、菅さんは現実主義者といわれている」と指摘。菅首相は米軍普天間飛行場移設に関する先の共同声明を完全に引き継ぎ、重要な外交政策では非常に現実的に行動するはずだと語った。
一方、同じセミナーで講演したシファー国防次官補代理は、共同声明の発表は日米同盟の成熟を示したとの認識を示すとともに、「平等な同盟関係は米政府が歓迎し、切望するものだ」と強調。普天間代替施設の工法や位置などに関する協議は「8月末までに完了すると確信している」とも述べた。(2010/06/18-09:47)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010061800208◆
社会民主党が連立から離脱した事で民主党は安全保障問題への発言の選択肢が増えた、というところでしょうか、その社会民主党も参院選政権公約にて米軍主導の安全保障体制からアジアとの集団安全保障体制に転換する、という最大の禁忌、集団的自衛権の問題に自ら足を踏み込んだあたり政権に参加した事は無意味では無かったとも思えるのですが、出たおかげで民主党では一歩進んだ発言が実現した、という印象です。
注意しなくてはならない一点、今回の長島政務官の発言は民主党議員という立場での発言ですが、インド洋給油支援を再度実施するべき、という自らの理念を述べた、というかたちを採っていて、決して菅直人首相自身がインド洋給油支援再開の検討を行っている、というは立場はとっていません。口述筆記が出ていませんので、どういう文脈で出たのかは想像するほかないのですが、こうした発想が出せた、ということは有意義ですね。
インド洋給油支援の中止は民主党が昨年の衆院選において政権公約として繰り返し提示していたものですが、代わりに実施するとしていたアフガニスタンへのPKO部隊の派遣、まだ民主党は断念していないとのことですけれども、そもそも国連主導の復興人道支援任務を行う事が出来ないほどの治安状態、再度米軍は兵力を集中させていますので間もなく大規模な掃討作戦が実施されるのでしょうか。
こうした状況から現状ではアフガニスタンへ戦闘部隊以外の自衛隊を派遣できるような状況ではありません。そうした中で鳩山政権において、インド洋給油支援中止とアフガニスタン復興支援は連節した複合政策として提示されていたのを大急ぎで無かった事にして、急遽インド洋給油支援のみを今年一月に終了させた、というのは記憶に新しいところです。
しかし、インド洋給油支援の再開を提示したのですけれども、現在のところ、一応鳩山政権時代にハイチPKO,パシフィックパートナーシップ派遣、そしてスーダン派遣が検討されており、自民党時代からの海賊対処任務部隊派遣も継続中、そこで人員充足率の向上が予算で認められなかった訳で、これでは難しいのでは、というのが正直な印象です。日本周辺では南西諸島、台湾海峡、朝鮮半島とロシア軍、冷戦時代と比較して脅威の総量は変わらず、多方向から迫っているという状況です。
充足率を高めてほしい、つまり定員割れの状況下でしく泊している状況をこのままでヨシ、とした民主党なのですが、加えて、補給艦の数も充分では無く、日本周辺の防衛警備を維持しつつ、広域化する任務に必死に対応している、という状況ですので、仕事だけ増やしてその他打つ手なし、では民主党が改めるべき、とした労働環境や過労死の問題と矛盾してしまいます。
それでなくとも、ロシア軍のボストーク2010演習を筆頭にロシア軍の動向が冷戦時代のソ連に匹敵する規模になりつつ、中国海軍の南西諸島での動向が活性化、加えて北朝鮮への弾道ミサイル対処が加えられ、アフリカ沖で海賊から船団を防護しつつ、輸送艦が友愛の為に東南アジアへ展開という状況。インド洋給油支援再開を示唆するのならば、防衛大綱の年末画定に際して、相応の配慮を行う、という補足の一言を加える事が重要でしょう。
HARUNA
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