◆根本的に低い空輸能力しか認められない現実
Weblog北大路機関、コメントの返事が遅れて申し訳ないです。かならず公開とお返事を作成しますのでいましばらくのお待ちを、そんな中昨日の記事に関する話題。
厚木航空基地第61航空隊に輸送機としてYS-11M輸送機4機が1966年から1973年にかけ導入され、運用されていますが、同じく海上自衛隊が運用していた下総航空基地第205航空隊のYS-11T-A練習機の引退が始まり、いよいよその寿命も限界が見えてきました。海上自衛隊が現在運用しているYS-1輸送機の後継として新しく中古のC-130輸送機を6機取得することとなったわけです。ここには、あくまで噂と類推を重ねると、一頃普天間移設案にDDHを6隻に増勢して充てる、と当時の鳩山総理に意見した某専門家の姿が見え隠れするのですが、それはおいておきましょう。
海上自衛隊がC-130を取得する、というのは、やはり新鮮でした、驚きでしたというべきかもしれません。この導入されるC-130輸送機はエンジン部分などで海上自衛隊が多数を運用するP-3C哨戒機いとエンジン部分などで共通部分があるのですが、航空自衛隊が同型機を運用しているので、寄せられましたコメントには取得を海上自衛隊が行って運用は航空自衛隊に一任してはどうだろうか、航空自衛隊の輸送機を造成してもらったほうがいいのでは、という内容がありましたのですが、ここについて一言。
本来であれば、コメントでいただいたように海上自衛隊が運用するのではなく航空自衛隊に十分な輸送機を配備し、統合運用の観点から陸海空自衛隊の輸送必要能力を計算し、これをもとに航空輸送司令部、というような組織を航空総隊司令部隷下に創設して陸海空の中で必要な輸送に対してそれぞれ運用を調整し、輸送計画を両立するように作成、対応することがり理想なのでしょうけれども、航空自衛隊の抱えている問題として、どうしてもこれが実現させることができない、という厳しい難点があります。
航空自衛隊の輸送機は、C-130H輸送機が16機、そしてC-1輸送機が26機、そこに戦時的にKC-767空中給油輸送機が4機と政府専用機として実質的な大型輸送機であるB-747が2機、というところですが、工区自衛隊が有事の際に航空団の維持や邦人救出任務輸送を行い、加えて陸上自衛隊が求めるであろう空挺部隊や中央即応集団といった部隊輸送の支援、更に海上自衛隊の必要な輸送を求める、となるとどうしても輸送機数が足りなくなるのです。
海上自衛隊としては、実際に東日本大震災で八戸航空基地をはじめ必要な輸送能力を航空自衛隊に求めたところ、航空自衛隊が求められている被災地への救援物資輸送という能力でさえも不足し、飛行開発実験団のC-1輸送機まで動員するほどでしたから、どう頑張っても協力の余地はなく、そこで海上自衛隊は自前の輸送能力を充実させなければ、本当にせっぱつまったときはどうにもならない、ということを痛感したのでしょう。補正予算に盛り込めば通る状況でしたので、ここで、ということでしょうか。
東日本大震災という状況下では、それこそ冷戦時代に北海道にソ連軍三個師団が上陸下、というような際に求められたほどの輸送能力を突き付けられました。なにしろ東日本太平洋岸一帯が津波被害を受けていたのですから、内陸部の運用可能な飛行場にどれだけ輸送しても救援物資は足りるものではありませんでしたので、これが一部で言われているように千年に一度の災害という、つまり西暦3011年まで次が来ないというのならば反省だけで済むのですが、東海東南海南海地震というこれまで無視してきた危険性が指摘されるようになり、次の宮城県沖地震の危険に曝されている状況では、もっと輸送機があっても、という気もするわけです。
C-2輸送機を50機程度整備し、C-130も20機程度を維持、空中給油機も16機程度を保有して戦域間輸送と戦術輸送体制を確立させ、今回政治は使い道を思いつかなかったようですが緊急物資を輸送する手段に大型輸送機としてC-747を人員輸送機として4~6機ほども配備できれば、これはこれで航空自衛隊の輸送と陸上自衛隊の部隊輸送を戦術戦域間輸送機が担い、海上自衛隊の輸送を戦術輸送機と空中給油輸送機の一部が支援、大型輸送機が邦人輸送を行うなどして何とかなるのでしょうけれども、これはちょっと無理でしょう。もっとも、政治家が覚悟を決めて防衛計画の大綱に、防衛防災、防衛にも十分使えますので輸送機とその運用人員の充実を追加するのならば、十分可能とは思いますけれどもね。
結局のところ、脅威度の見積もりについて、予防外交も抑止力も効果がない大規模災害という、日本が世界の地震と火山噴火のうち一割を引き受けている状況なのですから、世界的にみて有力な空輸能力を整備しても問題ないのでしょうけれども、諸外国に脅威を与えない、という観点からこの輸送能力、つまり戦力投射能力は低く推移してきました。これにより輸送機を所管する航空自衛隊は平時はともかく有事には自前のことで手いっぱい、この統合運用の限界が海上自衛隊に輸送機の導入を決意させたのだとおもいます。
北大路機関:はるな
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