北大路機関

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22DDH(平成22年度護衛艦)、全通飛行甲板型護衛艦その多機能運用についての一考察

2011-09-18 23:12:36 | 先端軍事テクノロジー

◆UAVの運用という視点も考えるべきか

海上自衛隊の新しい護衛艦について、ここ数日、関心が集まっているようで22DDHが予算承認された時期の記事へアクセスが多くなています。

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鳩山政権時代に出された概算要求に記された19500t型護衛艦は満載排水量24000t、これは現在護衛艦隊に配備されている、ひゅうが型護衛艦ひゅうが、いせ、の満載排水量19000tを上回るものでして、戦後に建造された水上戦闘艦としては最大の規模となる護衛艦です。

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全通飛行甲板を有する護衛艦は、ひゅうが、いせ、そして22DDHとその同型艦で現在の、しらね型を置き換えますので、四隻が日本周辺における防衛警備及び災害派遣を担うこととなります。22DDHが鳩山政権下において予算認可となった背景に社民党の福島代表が東海地震をはじめとした大規模災害への対応能力を認めた、ともいわれていますので、日本の存亡にかかわる大災害にも期待されるといえましょう。

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その有力な水上戦闘艦、22DDHですけれども全通飛行甲板を有していることから、ヘリコプター搭載護衛艦としてのヘリコプター運用を超えて、更に何か有力な航空機を搭載できれば、と思うのは多くの方が思うことではないでしょうか。尤も元来がヘリコプターの運用を念頭に設計されているものなのですから当たり前の結論としてカタパルトを搭載していませんし甲板長や強度から現実問題としてF/A-18EやF/A-18Cのような固定翼艦載機を搭載することはできないのですけれども。

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 理想としてはAV-8Bを搭載できれば、AV-8BはAPG-65レーダーを装備していてAMRAAMを搭載できますので例えばインド洋シーレーン防衛などに一定の能力を発揮でするでしょうけれども、肝心のAV-8Bが生産終了になっており、イギリス軍の中古機で比較的新しいGR-7などが残っているようですけれども、AMRAAM運用能力からイギリスの一存で取得することはできません。・・・、いや何とかなりそうな気がしなくもないですけれども。

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 F-35Bが実用化されれば、採用の可能性は出てくるかもしれません。非常に高価な航空機ではありますが、必要性が取得費用を上回れば可能性を高めることになります。F-35Bそのものの開発が遅延に遅延を重ねているのですが、海兵隊のAV-8B後継機や40000tを超えるアメリカ級強襲揚陸艦の艦載機としての必要性が高いですから、開発は恐らく進められるでしょう。しかし、実用化されたとしても海上自衛隊が導入を検討するのはさらに先、独自の教育体系を構築するのはさらに先、それまでヘリコプター一択なのか、ということに。

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 この視点から考えられるのは無人航空機UAVの運用でしょう。UAVには短距離空対空ミサイルの運用能力を有する航空機も技術的には多数が完成しており、対艦ミサイルの運用に必要な情報優位獲得、潜水艦の行動や通信を阻害する哨戒機の駆逐、敵無人機への対処や戦闘機の行動妨害などの運用を行うことができるでしょう。また、冒頭に記した大規模災害への対処ですけれども、無人機は無人偵察機として情報収集に充てることができます。ヘリコプター搭載護衛艦は指揮通信能力も高いですから、無人機運用能力と取得した情報の解析にも高い能力を発揮するでしょう。

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 無人機の海上での運用ですが、現在スペインで建造中であるオーストラリア海軍の強襲揚陸艦キャンベラ級などはAV-8BのようなVSTOL機を現時点で搭載しないという運用計画の上で、VSTOL機の発進を効率的に行うスキージャンプ台を艦首付近に設置しています。スキージャンプ台とはイギリス海軍がハリアーの艦上運用を開始した際に短距離を加速中の機体について一挙に押し上げ、そのまま発進した場合よりも搭載能力を高めるための装置として開発されたものです。

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 海上自衛隊でも、無人機の運用をヘリコプター搭載護衛艦上で実施する、ということは考えられないでしょうか。スキージャンプ台であれば後日追加も可能ですし、ヘリコプターの運用との両立も現実的に可能、22DDHはもちろん、既存の、ひゅうが、いせ、についても無人機の運用は検討の余地はあるのではないでしょうか。

Img_6920_1北大路機関では、現在の護衛艦隊が四個護衛隊群八個護衛隊から編成されていて、ヘリコプター搭載護衛艦による対潜掃討等を中心に考える護衛隊、イージス艦による弾道ミサイル防衛を念頭に置いている護衛隊、その二つから護衛隊群を編成していますが、対潜掃討部隊にもイージス艦もしくは艦隊防空を行うミサイル護衛艦を運用していますので、むしろ弾道ミサイル防衛を行う護衛隊にもヘリコプター搭載護衛艦を配置して、任務の能力水準を合致させるとともに、多任務対処能力を向上させてはどうか、と提案しているのですけれども、無人機の搭載でヘリコプター搭載護衛艦の任務対応能力が多様化すれば、この意味合いにも加えられるものが出てくるやもしれません。

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 22DDHは就役が2015年、目一杯運用されれば2040年代後半まで現役にとどまることとなるでしょう。その能力を最大限発揮するには、もちろん、F-35Bや可能ならば運用研究としてAV-8B中古機の取得という選択肢はあるでしょうけれども、同時に無人機UAVの導入と運用、という検討は為されて然るべきなのではないでしょうか。昨今、22DDHへの注目が集まっている中、そんなことを考えてみました次第。

北大路機関:はるな

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コメント (7)
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